-夢-
-夢を、見ていた-
「ねぇ、しよう・・・」
ベットの上に座っている男の足にしなだれかかりながら、オレは雌猫のような甘ったるい声を出す
「今日は無しだって言っただろう?」
男の顔はわからない。見ようと思っても何故か確認できない。
だけど、その声は聞き覚えがある。ひどく懐かしい声。いつもいつも聞いている声。
「やだ。したい。」
またオレは甘ったるい声で男を誘う。
「・・・・まったく、仕方ない。おい、余計な事を言うなよ。」
男は少し離れた所にいる人影に声をかけながら気だるそうに、
それでも軽々とオレを抱き上げる。 ・・・? ここでするんじゃないのか?
今、誰に声をかけたんだ? そっちの人影もやはり確かめることができない。
そもそも隠すようなやましいことは・・・。
・・・やましいこと。そう考えた途端にオレの胸に一瞬小さな痛みが走った。
男はオレを抱きかかえたまま、キィッと小さな音を立てて部屋のドアを開ける。
そこにあったベットにオレはうつぶせの状態で下ろされた。
「あっ・・・?」
違和感を感じて自分の体を見ると、丸裸。
「な、なんで・・・?・・・っあ・・・!?」
オレが驚いてるのなんか遠慮無しに男が体を触ってくる。
それも一番敏感な部分を。
まだキスもしてない、それなのにそんな所触られても気分が乗らない。
・・・はずだった。
「んっ!あっ!ああっ・・・く・・・ふぅ・・・・」
どうなってる?いきなりなのに・・・なんで、こんなに・・・濡れてる?
ぐちゅぐちゅいやらしい音がして、後から後から液が溢れてくる。
背後で男がフッと笑うのがわかる。自分の指についた愛液を見て、笑ってる。
オレからは見えないはずなのに、どうしてわかる?
・・・違う。見えてるんだ。どうなってるのかわからないけど、見える。
・・・恥ずかしい。たまらなく恥ずかしいし、少し怖い。
せめて、顔を。ちゃんと男の顔を見て・・・・キスだけでも。
そう思って体を捻って振り向こうとした瞬間
「ーっ!ぁぁあああっ!」
腰をつかまれてうつぶせのまま後ろから入り込まれてしまった。
「はっ!あああっ!イイ・・・気持ちいいっ!」
あまりの快感に気が狂いそうだ、とさえ思った。こんなに気持ちがいいのは初めてだ。
男に抱かれる事に快感を求めることはあまりなかった。
こういうのは、想いを確かめあう行為だって、どこかで思ってたから。
想いを、確かめあう・・・?
また胸が少し痛んだ。
「はああっ!イイっ!イイのっ!」
オレはあられもない喘ぎ声を上げながら、無意識に腰を振り、
クリトリスに片手を持っていって弄ぶ。
「すごい・・・っ!ぁっ!くぁあああ!」
思わずハッとして、クリトリスを弄っていた手を引っ込める。
何をやってるんだオレは・・・。こんないやらしい・・・。
思わず顔が熱くなる。
でも・・・でも腰の動きは止められない。
より快感を求めて腰が動いてしまう。
「あっ!?そこっ・・・!ああっ!」
肉芽が擦れてものすごい快感が襲ってくる。
こんなに気持ちいいんじゃ、すぐに終わってしまう・・・。
駄目だ・・・もっと、もっと、気持ちよく・・・。
そんな気持ちとは裏腹に男の動きもオレの動きも激しさを増していた。
このまま終わってしまってはもったいない気がして、オレは男に訴える。
「待って・・・オレが、オレが動くから・・・っ!」
その言葉と共にオレが主導権を貰うと、自らの快感を貪るように動いた。
「んあああっ!あああっ!もっと・・・」
・・・・
・・・・?
おかしな夢を見ていた、気がする。
そう思いながら「俺」は目を覚ました。
まだ外は暗い。どうやら真夜中のようだ。
・・・・!
「これは・・・・っ!!」
下半身が熱い気がして見てみると、股間の部分が明らかに盛り上がっている。
「俺は・・・俺は・・・」
何やら恥ずかしいやら屈辱やら、僅かな胸の痛みやらがない交ぜになって
なんとも言えない気分になる。
「俺は・・・・誰なんだ。」
自分よりも鮮やかな赤い髪、均整の取れた体、そんなものが一瞬記憶を掠めるが
今の俺にとっては混乱を助長させるにすぎない。
自分は一体何者なんだ。ハァ・・・とため息をつき、再び俺は眠りにつくのだった。