「あ〜あ、ずいぶん遠くまで来ちゃったなぁ〜・・・」
ニザムに渡されたお金を使い果たしてしまったアイシャは、
カモメと貨物船が行き交うメルビルの港で、ただ広大な海を眺め、溜め息をついていた。
一日中歩き回ったその足はなかなか言う事を聞いてくれず、フェンスにアゴをつけうな垂れていた。
「あう〜、あぢゅい・・・」
澄み渡る青い空、疲れ果てたアイシャを容赦なく照りつける太陽。
そよ風にも恵まれず、下品に舌を出し、まるで犬のような息遣いをしていた。
「・・・村に帰りたくなっちゃったなぁ。」
半泣きでそう呟くと、口を尖らせながら無意識に歩き出した。
まずカラカラになった喉の乾きを癒そうと冷たい水を求め、仕方ないという面持ちでメルビルの街へ向かった。
・・・がやがや ・・・がやがや
しばらく歩いていると、この街の住民があちこちに見られるようになった。
タラール族が珍しいのか、過ぎ行く人々がアイシャをじろじろ見ていた。
「あのっ・・・」と街の人に声を掛けようにも、そそくさと逃げられてしまい
アイシャは困り果てた様子で眉間にシワを寄せた。
「あのっ、ここら辺に、えっと、井戸かなにかはありませんか!?」
アイシャの突拍子もない問い掛けに、街の人々は面白い動物を見るような目でただクスクスと笑うだけで、
まるで相手にしてもらえなかった。
全く噛み合わない会話と、満足に人と溶け込めない自分にアイシャは不安を募らせていった。
しばらく歩き続けていると街の中央付近に辿り着いていた。
「わぁ!湖があるわ! わ〜〜い!」
アイシャが求めていた水がすぐ目の前に広がっていた。
彼女は宝石のように目を輝かせ、無造作に靴を脱ぎ捨て一目散に湖の中へ飛び込んで行った。
じゃぶじゃぶじゃぶっ じゃぶじゃぶっ
乾ききった体にはたまらない快感に、アイシャは小さな子供のように思いっきりはしゃいだ。
「あ〜〜なんて気持ちがいいの〜♪」
アイシャは体いっぱい使って嬉しそうに平泳ぎをした。
顔を洗ったり、腕を洗ったり、顔だけ出して浮き、足をバタつかせたりもしていた。
その時だった。
フワリとアイシャの体が宙に浮いたのだ。
「おい、なにやってんだお前!」
なにやら重そうな鎧を着た男が、まるで猫の首根っこを掴むように、アイシャの服の襟を掴んで持ち上げていた。
「?」
アイシャは状況がよく判らず、その顔はまるで頭にハテナマークが付いていた様だったが
後ろを振り返り、自分が持ち上げられていることに気がつきハッとした。
「まったく、神聖な噴水に入るとは・・・」
男は憤慨というよりは、たまげた様子でアイシャを見つめた。
「え?ここ入っちゃだめなのぉ?なんで?」
悪びれる様子もなく、アイシャは淡々と聞いた。
「なんでって・・・ ん〜、なんでもだ! この噴水は宮殿の・・・まあ、とにかく噴水に入ってはならん!」
どうやらその男の正体はメルビル宮殿に仕える巡回兵だった。
アイシャは既に宮殿の近くまで来ていた様で、辺りには他の兵士もちらほら集まっていた。
「・・・ふ〜ん」
納得がいかない様子のアイシャ。
メルビル兵は掴んでいたアイシャを降ろすと、鼻でため息をついた。
「ん・・・?見慣れない奴だな。 ・・・まあいい、とにかくこっちへ来い」
メルビル兵はアイシャの顔をまじまじと見ると、
その細い手首を強く握り絞め、宮殿の方へ連れて行こうとした。
「い、痛いっ」
引っ張られるというよりは、無理矢理引きずられる様に連行された。
びしょ濡れのアイシャが通った跡には、小さな水溜りが出来ていた。
「お待ちなさい」
その時、透き通った美しい女性の声がした。
その声にメルビル兵はすぐに立ち止まった。
「これはこれは、クローディア様」
同行していた他の兵士が、なにか用件でもと言おうとしたそのとき、すぐに口を挟まれた。
「その子を放しなさい」
小さくゆっくりとした口調の中に、異様とも言える鋭さがあった。
「か、かしこまりました!」
メルビル兵は圧倒され、なぜかと聞き返す余裕もなく、
まるで危険なものを捨てるようにアイシャの手首からすぐに手を放した。
「・・・」
クローディアは、そそくさと持ち場へ戻るメルビル兵を見届けた後、
物静かにアイシャの方へ向き直った。
「あなた、タラール族ね」
ポタ・・・ ポタ・・・
クローディアに礼を言うでもなく、うつむいたまま頻りに濡れた衣服を雑巾のように絞るアイシャ。
一通り満足に水を絞り上げた後、上を向いた。
「あ、あの〜・・・」
アイシャは少しずつ目を合わそうとクローディアの顔を見た。
「ふふっ」
先程までの冷徹な表情とは正反対に、目を合わせてくれたアイシャに対して
クローディアは嬉しそうにニコッと微笑んだ。
「っ!!」
アイシャは驚いた。
今まで感じた事のない胸の高鳴りと、妙な高揚感に言葉も出なかったのだ。
しばらくぼーっした後、自分の顔が熱くなっている事に気付き
アイシャはすばやく首を横に振り、下を向いた。
するとアイシャの頬に、細くしなやかな手が当たった。
「私はクローディア・・・あなたは?」
クローディアは目を細めそう聞くと、おもむろに手の平サイズの手拭いを取り出し
まだ濡れているアイシャの顔を軽く叩くように優しく拭いた。
「あたしアイシャ!」
元気良く自己紹介したアイシャの顔は、初めて友達が出来た様な
一点の曇りも無い純粋な笑みだった。
二人は、バファル帝国の美しい景色が見渡せる近くの石垣に腰を下ろした。
強い日差しの中、暑さを忘れ、アイシャは嬉しそうに語った。
ニザムのこと、愛馬のこと、村を飛び出したこと、初めて船に乗って船酔いしたこと、
アイシャは時を忘れて話し続けた。
そんな無垢な表情のアイシャに、クローディアは次第に彼女の瞳に心を奪われ、
疲れた表情を一切見せずにただただ聞いていた。
無邪気なアイシャの長話しが終わることも無く、
気付くと空はすっかり日が暮れ、美しい夕日が辺り一面をオレンジ色に染めていた。
「あっ!ずっとあたしばっかり話してて・・・」
ごめんなさいと言うように上目使いでクローディアの顔色を覗った。
急に話を中断したアイシャに、一瞬だけびっくりした様な表情になったクローディアは
ニコッと微笑み、首をゆっくり横に振った。
この時クローディアは自分の胸の中で何かが弾けるものを感じた・・・
クローディアは腰を小さく浮かしアイシャに寄り添った。
詰め寄ってきたクローディアに、アイシャは意識してしまい思わず唾を飲み込んだ。
アイシャはどうしてよいか分からないといった表情で恥ずかしそうにうつむいた。
すると、アイシャの目に映ったのは、自分の太腿目掛けてスラリと伸びてくる手だった。
アイシャの顔は真っ赤になりたまらず目を瞑った。
「もう乾いてしまったわね」
思いがけない声にハッとしたアイシャは、
目を開けると、自分の服の前掛けを持つクローディアがいた。
「ん?」
リンゴのように真っ赤な顔で見つめてきたアイシャを見て
クローディアはふと前掛けから手を放し、不思議そうな顔をする。
「アハハハハハッ」
気が抜けて笑いが込み上げてきたアイシャは、
恥ずかしさや照れに寄るものなのか、大きな口を開けて腹の底から笑った。
それにつられてクローディアもクスクスと笑う。
「アハハハ・・・ ハハ・・・ クシュン!!!」
この地方にはまだ不向きなアイシャは、昼と夜の温度差に身体が冷えてしまい、思わずくしゃみをした。
「えへへ」と笑顔で鼻をすするアイシャに、クローディアは心配そうな面持ちで彼女の腕を摩った。
「夜は冷えるわ。PUBへ行きましょう」
クローディアは立ち上がり、アイシャの手を握った。
軽く引っ張られ「あっ」と、つまづいたアイシャはバランスを崩し、
雪崩るようにクローディアの胸に飛び込んだ。
アイシャの顔は見事に胸に挟まれ、
勢い良く飛びついたその手はしっかりとクローディアの腰に巻きついていた。
「ご、ごめん・・・クローディア・・・」
アイシャの顔に、彼女の胸の大きさと柔らかさが、衣服の上からでも十分に伝わっていた。
高鳴る鼓動は抑えきれず、喉から出そうな程だった。
「アイシャ・・・」
すると、クローディアはアイシャの顔を両腕で優しく抱き、とても幸せそうな表情をした。
アイシャは、彼女の胸も自分と同じようにドキドキと脈を打っている事に気付いた。
「ところで、PUBってなに??」
バファル帝国は今日も美しい夜を迎え、空を見上げると、無数の星が輝いていた。
街の灯りも、寄り添う二人を誘うように、悩ましくちらつかせていた。
カランカランカラン・・・
二人はPUBに着いた。
ドアの向こうには別世界が広がっていた。
ホールには心地良い薔薇の香りが優しく包まれ。、
隅の方を見渡してみると、ギターを持った詩人が独り静かにジャズを奏でていた。
初めて見る世界にとまどいを隠せないアイシャは、握った拳を胸に当て、困惑した様子でキョロキョロと辺りを見回す。
カウンターの方へ歩き出すクローディアにアイシャは気付き、そそくさと早足でついて行った。
クローディアはマスターにワインを注文すると、カウンター独特の高めのイスに腰をかけた。
それに見習い、アイシャも真似してちょこんと座る。
二つのグラスに赤い色をしたワインが注がれ、クローディアは二人の出会いに乾杯をした。
チーンッ
ワイングラスを不器用に持つアイシャに、クローディアは嬉しそうに持ち方を教えた。
「これ、なんの木の実の汁だろう・・・」
不思議そうにワインを見つめているアイシャはゴクッと一気に飲み干した。
「ゴホッ!ゴホッ!」と、当然のように噎せるアイシャに、
グラスを回し香りを楽しんでいたクローディアは、慌ててアイシャの背中を摩り、
「大丈夫?」と、まるで妹を世話するように口元を拭いてあげた。
「夜は長いわ。ゆっくり楽しみましょう」
クローディアは耳元に囁くような細い声でそう言うと、
今度はちびちびワインを飲んでいるアイシャを見つめた。
「お口に合うかしら?」
軽く首を傾げて、アイシャにそう問いかけ、
クローディアはサラサラの長い髪を、細くしなやかな指で色っぽく耳に掛けた。
「うん!もちろん!」
クローディアの一つ一つの仕草にドキッとし、
一瞬間を置き、元気良く答えた。
しかし本音はほろ苦く、とてもじゃないが、まだアイシャには満足に飲めるようなものではなかった。
少し酔いが回り、二人は次第に気分が良くなっていった。
普段多くを語らないクローディアは、アイシャにメルビル地下であった事件や、
宮殿であった出来事を懐かしむように楽しそうに話した。
会話も弾み、クローディアは、こんなに喋っている自分自身を変だなと思うくらいだった。
一方、アイシャは絵本を読んでもらう子供のような顔で、クローディアの話を食い入るように聞いていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、
アイシャはクローディアに注文してもらった軽食を全て平らげ、うつらうつらと眠そうにしていた。
クローディアはカウンターに金貨を置き、アイシャを連れPUBを後にした。
外に出ると冷たい風が吹いた。
ほとんどの街の灯りが消え、深夜の静けさが二人の距離をより一層近くさせていた。
「さ、寒い・・・」
アイシャは急激な寒さで眠気が覚め、両手を抱え震えた。
「・・・ねえアイシャ、今日は泊まる所あるの?」
外の澄み切った空気を吸い、上を向き深呼吸をしていたクローディアはそう聞くと、
寒そうに震えているアイシャの腰に手を回した。
「・・・ない」
アイシャは甘えたように呟きクローディアに抱きついた。
「そう・・・じゃあいらっしゃい、私の故郷(ふるさと)へ」
寒さで震えているアイシャを庇いながら、かなりの距離を歩いた。
気がつくと二人は、大きな樹木で敷き詰められた森に辿り着いた。
「クローディア・・・ 行き止まりだよぉ・・・」
まるで木の壁の様になっている森を目の当たりにして、アイシャは不安そうに、か細い声でそう言うとクローディアの横顔を覗った。
すると、彼女は先ほどまでの優しい顔はどこにも無く、凛々しい顔つきに変わっていた。
「シリルよ・・・ お願い・・・」
クローディアは遠くにいる者に語りかけるようにそう囁くと、アイシャの手を強く握り直し、樹木の壁に向かってゆっくりと歩き出した。
「ちょっ、ちょっと待って!クローディ・・・」
アイシャは道のない方向へ歩みだすクローディアを必死に呼び止めた。
一方クローディアも、叫ぶアイシャに負けじと力強い声で呼びかける。
「アイシャ、私を信じて!」
ゴオォォォォォォォォォォーーーー!!!
轟音と共に、なんとも云い難い不気味な感覚で、前方にある樹木が物凄い勢いで襲ってきた。
「きゃああああ!!!」
なんと無数の樹木がアイシャの身体を通り抜けて行ったのだ。
アイシャはたまらず強く目を瞑り、反射的に身を小さく縮めた。
恐怖のあまり放しそうになるクローディアの手を必死に握りながら、何度もクローディアの名を呼んだ。
「・・・アイシャ、アイシャ!立ち止まらないで!!」
クローディアは苦しそうにしてるアイシャを見て、次第に焦りを覚えながら、何度も何度も呼びかけた。
「う、うう・・・」
アイシャは五感を全て奪われる様な恐ろしい感覚の中で、ただ目を閉じ全力で走った。
薄れゆくクローディアの手の感触と、フェードアウトしてゆく声が脳内で駆け巡った。
「(ああ・・・ もう・・・だめ・・・)」
無重力の空間に浮いているような感覚の中で、体の力が全て抜けた。
「・・・アイシャ ・・・アイシャ」
徐々に五感が回復していき、クローディアの声が頭の中でこだました。
今日逢ったばかりなのに彼女の声がひどく懐かしく聴こえた。
恐る恐る、アイシャは目を開けた。
・・・すると、クローディアがこちらを見ていたのに気付いた。
強張ったその手はクローディアの手をギュッと握っていた。
「クローディア!!!」
アイシャは嬉しいようにも悲しいようにも聴こえる声で叫び、彼女に抱きついた。
辺り一面、絵に描いたような、幻想的な森が広がっていた。
夜の森を、体を発光させて飛び交う虫は、その美しさから、まるで精霊が彷徨っている様にも見えた。
クローディアはアイシャの頭を軽く撫でた後、両手を静かに広げた。
「シリルが・・・ 森が・・・あなたを歓迎しているわ」
なんとも不思議な森だった。
二人を案内するかの様に、通る道を全て、草木や蔦が奇妙に避けているのだ。
しかも、震え上がるほどの寒さだったのが、今は嘘みたいに暖かい。
それは外部からの温度ではなく、例えるなら身体の芯から沸きあがる様な、心地良い暖かさだった。
アイシャは先程まで寒がっていた自分の事などすっかり忘れ、
クローディアの腕にしっかりとしがみ付きながら歩き、関心した眼差しで辺りを見渡していた。
「ねえ、クローディア・・・」
なにやら心配そうな表情に変わり、声をかけるアイシャ。
しがみ付く手に自然と力が入る。
「どうしたの?」
クローディアも、アイシャの消えてしまいそうなその声に心配そうに聞き返す。
「ううん、なんでもない・・・ ただ、声が聴きたかったの・・・」
こんなにも近くにいるのに、不思議な出来事の連続で、急にクローディアが遠くにいる気がしたのだ。
今にも泣き出しそうなその声は、クローディアの腕にしがみ付いている事で必死に耐えていた。
「・・・そう」
目を瞑り、少し嬉しそうに笑い、小声で呟いた。
クローディアはそんなアイシャが愛おしくて仕方なかった。
しばらく歩き続けていると、今までの風景とは一風変わった大きな広場に辿り着いた。
「着いたわ」
クローディアは、アイシャを優しく諭す様に、真っすぐ正面を向いたまま言った。
見渡すと遠くの方で、狼と大きな熊が寝ていた。
少し歩いたところに、大木を刳り貫いて作られた家があった。
「ここが・・・ クローディアの・・・」
アイシャは大きな瞳をぱちくりさせ、口は半開きのまま、童話に出てきそうな家をまじまじと見ていた。
その珍妙な作りにアイシャは緊張が和らいだのか、再び笑顔がもどった。
付近で寝ていた熊は、アイシャの匂いが気になったのか
「ぐわおおおお〜」と大きな声を上げアイシャに歩み寄った。
「えっ、えっ」
一瞬動揺しただけで、熊に近寄られてもアイシャは特に恐がったりはしなかったが、
その大きさに圧倒され、アイシャは思わず尻餅をついた。
大きな熊は「くんくんくん」と一通り匂いを嗅ぎ終わると、元の場所に戻りすぐに伏せて寝た。
クローディアはこちらを見て無邪気に微笑んでいるアイシャを見て、思わず笑顔がこぼれた。
動物好きのアイシャは、愛馬の事を思い出し心が落ち着いた。
それまで張っていた肩も、すーっと下りてくる様だった。
クローディアは寝ているもの達を見て軽く自己紹介をした。
アイシャはそんな動物達に近づき、頭から背中にかけて何度も撫でた。
「あたしアイシャ、よろしくねシルベン、ブラウ」
アイシャはクローディアに誘われ木の小屋に入った。
「わぁ・・・ すごぉい・・・」
中は檜のような良い香りがした。
アイシャは部屋の空気を小さな鼻でいっぱい吸い込み、辺りを見渡すと、
部屋の壁には見慣れない民族の首飾りや仮面などが、あちこちに飾り付けられているのが目に入った。
クローディアは、ふかふかのベッドにゆっくりと腰を下ろすと
部屋の飾りなどを物珍しそうに見ているアイシャに静かに語りだした。
オウルの事、幼少の頃、本当の姉のようなシルベンに何度も助けられた事など色々話した。
「そうだわ、あなたに見せたいものがあるの」
クローディアは急に何かを思い出した様に話を中断すると、
何時の間にか横に座り、不思議そうな眼差しで自分の顔を覗き込んでいるアイシャの肩を抱いて言った。
アイシャの手を取り、クローディアは部屋を出た。
着いた先は、巨大な木の前だった。
おおよその樹齢も判別不可能な、その圧倒的な存在感は見る者を絶句させ虜にした。
「神さま・・・?」
アイシャはその巨大な木に向い合い、ゆっくりと上を見上げ片手を触れると、
その神々しさから自然とその言葉が漏れた。
「そう、森の神シリルよ」
「あたたかい・・・ お母さんの様な・・・」
アイシャは不思議なオーラを感じ、そっと瞳を閉じた。
「ここでは、誰もが素直な気持ちになれるの・・・」
クローディアはアイシャの背中に透き通る声で呟いた。
アイシャはゆっくりと振り返ると、
今まさに服を脱ぎ、綺麗な肩を露出しているクローディアがいた。
予想もしなかった彼女の行動にアイシャは目を疑い、しばらく声も出なかった。
裸足で大地に立つその脚は細く美しく、その白さは向こう側も見渡せるとも思えるほどの透明感があった。
腰は身体の側面から見事な曲線を描いており、胸当てからは今にも飛び出しそうな豊満な胸が谷間から覗かせていた。
茶色の髪は月に照らされ、より輝きを増し、たまに吹くそよ風に乗せられしなやかに靡いていた
「あ・・・」
アイシャは動揺を隠せず声を漏らし、
神秘的なクローディアの美しい身体から目が離せないでいた。
瞳を閉じたままのクローディアは、手を後ろに掛け、器用に胸当てを外した。
すると、溶けそうなほど柔らかそうな乳房が露わになった。
まるで玉の様な、形の良いその乳房から薄いピンク色の乳首が見えた。
ついには最後の下着を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になった。
生えかけの細い恥毛は、前を隠すためにはほとんど役立っていない。
「アイシャ・・・好きよ・・・」
クローディアはアイシャに歩み寄り、頬を両手で添え、唇を奪った。
「んっ・・・」
口づけをされた時にはまだ開けていた瞳を静かに閉じ、クローディアの唇の弾力を感じた。
だんだんといやらしく動く唇にアイシャは身体の力が抜けていった。
『ちゅ・・・ちゅぱ・・・』という音が森の静寂をひそかに打消していた。
クローディアの舌がアイシャの唇を抉じ開けヌルっと入ってくる。
アイシャも舌を伸ばし絡ませ合った。
アイシャは顔を赤らめ、今にも口から飛び出しそうな心臓を抑えるのに精一杯だった。
「アイシャ・・・ あなたの全てを見せて・・・」
クローディアはそう言うと唇を離し、アイシャの首筋をなぞるように舐めた。
「あふっ、う、うん・・・」
首筋に生温かい感触が走り、ビクッとしながらもクローディアを受け入れた。
クローディアは目を細め、嬉しそうにゆっくりとアイシャの服を脱がせた。
アイシャの服はするりと脱げ落ち、膨らみかけた可愛らしい乳房が見えた。
アイシャもクローディアに負けじ劣らず、細く綺麗な身体をしていた。
日によく当たっていた事が窺える、ほんのり小麦色の肌が健康的なイメージを醸し出していた。
「んっ、あ、あ・・・」
アイシャは乳首にねっとりとした舌の感触を感じ、おもわず身を捩らせた。
クローディアはアイシャの乳房の周りを円を描くように舐め上げると、
乳輪を唇で覆い被せ、小さな乳首を舌で転がした。
「綺麗よ・・・」
クローディアはアイシャの身体の様々な部分を両手で悩ましく触る。
「や、やんっ、くすぐったい・・・」
時折り指で背中やお尻をなぞられると、何度も身体をくねらせる。
くすぐったさの中に、妙な気持ち良さも感じれるようになった。
「あ・・・ だめ・・・」
アイシャは立っていられなくなり、足が崩れ尻餅をついた。
それに合わせ、クローディアが膝を着きゆっくりと上に被さった。
「自分に素直になっていいのよ・・・」
クローディアは横になるアイシャの耳元に囁くと、
首筋から、下腹部にかけてキスをするように愛撫した。
「んんっ、はぁ・・・はぁ・・・ クローディア・・・きて・・・」
アイシャはクローディアの頭を持ち、彼女のしなやかな髪の毛に指を通した。
彼女の吐息を肌で感じ、次第にアイシャの身体は敏感になり、身体が熱く火照っていった。
クローディアはアイシャの熱く湿っている陰部を、
下着の上から、人差し指で下から上へなぞった。
「あぁぁん・・・」
アイシャのいやらしい声が漏れ、クローディアをより喜ばせていた。
「アイシャ・・・可愛い・・・」
クローディアはアイシャの下着を脱がすと、
そこには小さな割目に薄っすらと見える花弁があった。
既にぐっしょりと濡れたその恥部は熱を発し、
微かにヒクヒクと動き、クローディアを愛を欲していた。
「いやあぁんっ」
クローディアにクリトリスをキスされると、
アイシャは子猫のような高い声で喘ぐと同時に腰を浮かした。
「んっ、んっ・・・ くちゅ・・・」
クローディアは大きく口を開け、陰部全体に吸いつき、
舌の先で突いてクリトリスを刺激した。
膣口から流れ出る愛液とクローディアの唾液が絡み合い、
口を離すたびに、いやらしい粘膜が糸を引いた。
「い、いやん、そんなとこ・・・汚い・・・ や、やだ・・・」
アイシャは今まで感じたことのない快感に酔いしれ、心とは裏腹にそう嫌がってみせた。
「ふふ、嫌ならやめてもいいのよ」
クローディアは陰部から口を離すと、意地悪そうにアイシャに促した。
「う、嘘・・・ 本当は・・・やめてほしくない・・・」
アイシャは首を小さく横に振ると、大きな瞳に涙を浮かべた。
「ふふ、そう・・・気持ちいいのね」
クローディアは落ち着いた口調でそう呟くと、
アイシャのクリトリスを一回舌の腹で舐め上げ、『くちゅくちゅ』と激しく何度も吸い付いた。
「あぁぁん、き、気持ち・・・いい・・・ んはぁっ・・・はぁ・・・」
アイシャはあまりの気持ちの良さに、体が宙に浮いているような感覚がした。
クローディアはそのままクリトリスを舐め続けると、
自分の指を舐め、アイシャのまだ開通していない狭い膣口に中指を、じわじわとめり込ませる様に入れた。
「んんぁ・・・あっ、ん・・・」
十分に濡れていて、さらに中指一本という事もあり、
とくに痛みも無く、寧ろ気持ち良いくらいだった。
アイシャの膣肉は、クローディアの中指を誘うそうに、いやらしく絡みついた。
ゆっくりと出し入れをし、中指が曲がるたび性感帯に触れると、
アイシャはその度に『ビクッ』と身体をくねらせた。
「どうかしら?えっちな所を同時に攻められる気分は」
クローディアは左手で髪の毛を耳にかけると、アイシャの表情を窺い、クリトリスと舌の先でチロチロ舐めた。
「あ、あんっ、あ、あ・・・ へ、変に・・・変になっちゃいそう・・・」
その快楽は我を忘れ、だらしなく涎を垂らしているのも気付かない程だった。
「我慢しないで・・・イってもいいのよ」
そう告げた後『ちゅくちゅく・・・ちゃぷ・・・くちゅ・・・』といやらしい音を立てながら、
クローディアはより一層激しくアイシャの二つの秘部を攻めた。
「あっ!だ、だめ・・・!いっ、イっちゃうーー!!!ああーっ!!!」
アイシャはこの、しんと静まり返った森の中で絶叫し、昇天した。
目の前が真っ白になり、広大な大空を飛んでいるような気分を体験したアイシャは、微かに幸せそうな顔をしていた。
太腿と下っ腹は小刻みに痙攣し、喘ぎ疲れたのか息を切らし、熱い吐息を漏らしていた。
「アイシャ・・・」
クローディアは汗を掻いているアイシャの額を手で優しく拭うと、頬にチュッとキスをした。
「恥ずかしい・・・」
アイシャは心細い様な声でそう呟き、頬を赤らめクローディアから瞳を背けた。
まだ『ヒクヒク』と動いているアイシャのいやらしい恥部からは、
愛液が滴り落ち、土に根を這う神聖な木の下に、小さな愛の水溜りを作っていた。
「私もあなたの愛が欲しいの・・・」
クローディアはアイシャに馬乗りになると、次には顔の上にまたがった。
「う、うん・・・」
アイシャは仰向けになりながらもコクッと頷いた。
クローディアの恥部はすでにびしょびしょに濡れていて、
まだ何もしていないアイシャの顔に『ピトッ ピトッ』と愛液が滴り落ちていた。
「アイシャ・・・舐めて・・・」
クローディアはアイシャの口元に目掛けて、ゆっくりと恥部を近づけた。
「これが・・・クローディアの・・・」
アイシャは一瞬見惚れた後、先ほど自分がしてもらった様に彼女のクリトリスを一舐めした。
「あぁん・・・」
クローディアのいやらしい喘ぎ声が辺りを響かせた。
アイシャは『ずず・・・』とクローディアの愛液を啜り飲むと、
割目からひっそりと出ている陰唇を甘噛みした。
「クローディアの・・・えっちなここ・・・すごく良い匂い・・・」
アイシャはほんのり香るその甘い匂いを感じると、改めてもう一回嗅いだ。
一呼吸入れて、口を大きく開け、全体を包み込むように舐めた。
「あふ・・・んんっ・・・ あぁ・・・気持ち・・・いい・・・」
クローディアは、自分の乳房を下から支える様に揉みしだくと
腰を僅かに小さく動かしながら、アイシャの口に擦り付けた。
「(クローディアにもっと感じて欲しい)」
アイシャはそう思いながら、自分が気持ち良かった部分を徹底的に攻めた。
『くちゅくちゅ・・・』といやらしい音を立てながら、
彼女のクリトリスを舌と上唇で挟み、小刻みに押すように何度も愛撫した。
「んあぁ!アイシャ・・・いい・・・いいわ・・・ はぁ、はぁ・・・」
クローディアの顔は次第に紅く染まり、息もあがっていた。
敏感な恥部は、アイシャに一舐めされる度に秘部から愛液が溢れ出た。
「クロー・・・ディア・・・ んっ、んは・・・ちゅっ、ちゅぱ・・・」
アイシャは舌を尖らせると、クローディアの膣口に深く入れた。
アイシャの小さな舌はヌルヌル入って行き、中を掻き回すように刺激した。
「あぁああんっ・・・!」
クローディアはアイシャの想わぬテクニックに、
『ピュッピュッ』とおしっこを漏らしてしまった。
「ごめんなさい・・・」
クローディアは彼女の口から陰部を離すと、
仰向けになっているアイシャの横に足を崩し座った。
「へへっ、クローディアも気持ちよかったんだね」
アイシャは特に驚いた表情を見せずに、嬉しそうにクローディアに微笑んだ。
クローディアはアイシャの背中に手を回すと、身体を起こしてあげ、
『ぺろ・・・ぺろ・・・』とアイシャの顔にかかった尿を舐めた。
「アイシャ・・・そのまま足を広げて・・・」
「う、うん」
アイシャは言われるままに足を広げると、クローディアが向かい側に座り出した。
クローディアが腰を前に出すと『ぷちゅっ』という音を立て、お互いの性器をくっ付けた。
「「ああぁぁん!」」
二人は未知の刺激に、同時に喘ぎ声が漏れた。
自然と互いに腰を動かし合い、何度もぐちゅぐちゅ擦り合った。
「あぁん・・・クローディア・・・気持ちいいよぅ・・・」
アイシャはあまりの気持ちよさに腕が震え、身体を支えるのがやっとだった。
互いのクリトリスが擦れ合う度に、全身を稲妻が駆け巡るような快楽が生まれ、
二人のぐちゃぐちゃになった恥部の感度は最高潮に達していた。
「はぁ、はぁ・・・ いい・・・気持ちいい・・・あぁん・・・んふぅ・・・」
クローディアは腰を浮かし、もっと来てと言わんばかりに、いやらしい部分を激しく押し付けた。
「あんっ、あんっ、んんっ・・・クローディア・・・も、もう私・・・」
アイシャもクローディアに負けじと『じゅぷ、じゅぷ』と音を立て、一生懸命腰を動かした。
「アイシャ・・・!い、一緒に、一緒にイきましょう・・・!」
クローディアは今にも倒れてしまいそうな程、激しく息を切らし、アイシャに呼びかけた。
「んっ、んはぁ・・・!う、うん・・・もうイっちゃうよぅ・・・」
アイシャは激しく腰を動かしながらも、うんうんと何度も頷いた。
まるで身体が弾けるような快感の限界が二人を襲った。
「「ああああああぁぁぁぁーーー・・・!!!」」
絶叫と共に二人は昇天した。
二人はぐったりとし、肘を地面に着き、激しくあがった息を整えた。
少し落ち着きを取り戻し、
アイシャとクローディアはシリルの木に背中をつけ、肩を寄り添うように座った。
二人は何も言わず、お互いの手を握り、幸せそうな顔を浮かべ、ぴったり頭部をつけていた。
髪の毛もびっしょり濡れ、体中に掻いた汗は、そよ風が吹くと非常に心地良かった。
「ねえ、クローディア・・・」
「なあに・・・アイシャ・・・」
「大好きだよ・・・」
少し照れたように呟くと、アイシャはクローディアの頬にそっとキスをした。
すると、夜明けの微かな光が、辺り一面をゆっくりと照らし始めた。
小鳥の優しいさえずりが聴こえる頃、
二人は幸せそうに、小さな寝息を立て静かに眠りについた・・・
森の神、シリルに見守られながら・・・