リガウ島中腹にある広大な草原。
クローディア、シルベン、ブラウ、ジャミルの一行は財宝目当てでここを訪れた。
その目的は無事果たされたのだが、ついでだからと薬草を少し採取して行くことになった。
「なぁ、コレは食える草か?」
ジャミルは右手に掴んだ草をクローディアの方へずいと差し出した。クローディアはチラッとその草を見てすぐ答えた。
「それはただの雑草よ。くるくる回せば音がするわ。」
「ちっ!なんだよ。じゃあコッチはどうだ?」
残る左手の草を差し出すと、クローディアはジャミルを見つめ、
「それは触るとかぶれる草よ。」と短く答えた。
「げっ?!マジかよ早く言ってくれよ!」
ジャミルは慌てて左手の草を放すと、プルプルと手首を振って、更に上着で手のひらを拭った。
さっきから続く、薬草っぽい草を見繕って摘んではクローディアの所へ行くという往復の繰り返しに、
いい加減うんざりしたジャミルは作業を止め、クローディアのそばにしゃがみこんだ。
さすがに森で育ったとあって、選別の手は迷う事無く目的の薬草を摘んでいく。
薬草を入れる麻袋はすでにほとんど満杯になっていた。
それを見てジャミルは「あんた一人でやったほうが早いんじゃねーか?」と一人ごちたが、
クローディアは笑みを少しこぼしただけで淡々と薬草を選別しつづける。
「あ〜腹減った!」
もはや完全にやる気を失ったジャミルはついにドスンと座り込んだ。
クローディアはその様子を見、黙って革鞄の中を探ると、小袋に分けた木の実を3、4つ取り出しジャミルに渡した。
「何だこれ、食べれんのか?」
「もうすぐ終わるからそれで我慢して」
片手のひらに乗るだけのささやかな間食。それを寂しげに見つめるジャミルの頭を、
クローディアは、ポンポンと叩いて作業に戻った。
「……」
小馬鹿にしているという訳ではないのだろう。
あまりに自然なその行動に、ジャミルはむず痒い思いを抱きながら
「…あんた、俺のこと何かの小動物だと思ってんだろ。」と拗ねたように言った。
クローディアは顔をあげると「まさか。」と言い麻袋の紐を絞め立ち上がった。
「さぁ、終わったわ。行きましょう。シルベン、ブラウ、ジャミル。」
やっぱり一緒くたじゃねーか!!
行き場のない憤りに、ジャミルは立ち上がると木の実を口に投げ込みガリボリと噛み砕き、ジェルトンの方へ一目散に駆け出した。
クローディアといえばジャミルの後ろ姿をほほえましげに見つめながら、
「ブラウの小さい頃も、あんな風に元気だったわね。」と、傍らの熊と狼にやさしく語りかけたとさ。