旅をし続けて半年も経過した頃、ハリードが言い出した。  
「そろそろ…シノンへ帰らないか?エレン」  
それはエレンが最も恐れていた、最も聞きたくない言葉だった。  
エレンはハリードの瞳を見つめる…黒い瞳…夜のように黒々とそして星のように炯々と光る。  
そこなんの感情が表れているのか、エレンには読み取ることが出来ない。  
妹のサラに反抗され、ユリアンはロアーヌへと旅立ち置いてけぼりをくって途方に暮れていた時  
「ついてこい」とこの男に言われて、そのまま成り行きで半年間が経った。  
始めは強引さに腹も立ち逆らってばかりいたけど、そのうちにこの男の途方もない強さと  
そして過去を背負う途方もない悲しさを知ることとなり、エレンの気持ちは急速に彼に近づいていった。  
彼の側で色々な仕事を手伝ったり戦ったりしたけど、“褐色のトルネード”のふたつ名まで持つ男に  
自分など戦力の足しにもならないしかえって足手まといであると痛切に感じていた。  
それは自分の方から言い出すべきだったのだろう…  
「そうね…そろそろ…潮時かも…」  
エレンは素直にハリードの申し出に答えた。  
「シノンまで送る。お前のお袋さんに連れ回したことあやまらんとな…」  
 
シノンの村は相変わらず開拓事業が盛況である。  
ここの実力者ベント家に言わせるともはや開拓も飽和状態で限界に来ているらしい。  
村特産の農作物をロアーヌの中心街へ持って行くだけでなく、そこで自家販売する農家も出てきている。  
それは村から町へと発展していく段階での過渡期の姿である。  
エレンが帰ってきて驚いたのは、自分の家もいつのまにかそういう農家になっていたことであった。  
「母さん…ただいま」  
「エレン?!この子ったらいきなり…!」  
母と娘は半年ぶりの再会に抱擁し合う。母親の目に娘の後ろに立つ褐色の大きな男が目に入った。  
「あなた…もしや、ハリードさん?」  
ハリードは黙って頭を下げた。  
 
エレンの半年ぶりの帰還に村の友達が大勢彼女の周りを取り巻いている。  
「で、あれがトルネードなわけね。かっこいいじゃない」  
「ねえねえ、やっぱり舞うが如く竜巻が如くの戦い方なの?」  
「女ってのは本当に有名人が好きだよな〜。…きゃぴきゃぴと」  
「何よ、あんたも口惜しかったら世界中に名をとどろかせるほど有名になってご覧なさいよ」  
主にハリードについての話が中心なのは仕方がない。エレンは黙って笑いながら見ている。  
「トムもユリアンもサラまでもがいっぺんにいなくなって、なんだか火の消えたようになってさ」  
「そういやエレンが一番最初に帰ってきたのは意外だったな。もう出て行かないんだよな?」  
エレンはそう言われて少し口ごもってから返事をする。  
「ええ…多分…多分ね」  
友人達との会話は楽しい。楽しいはずなのにここに自分がいることの実感がまるで希薄なのは  
やはり半年間も村から出て旅をしていたからなのか?  
「故郷に帰ってきてから気が緩んだせいか疲れが出てきたみたい…家へ帰って休んでいい?」  
「あ…ごめん…気づかなかったよ」  
「そうね。ごめんエレン疲れていたのに引っぱり出して来ちゃって」  
「いいのいいの。みんなに逢えてはしゃぎすぎたかも」  
エレンは笑ってその場を立ち去っていった。  
「なんだか…変わったわね彼女…」  
「きれいになったよ…なんちゅうか色気があるっていうか…」  
「口数も少なくなったし…もしや…トルネードのせいかな?」  
「まさか!……しかし…うーん…そうなのかな…だとしたら俺失恋」  
「ばーか。トルネードがいなくても始めっからあんたなんて相手にされないわよ」  
「ひどい…」  
大きな笑いが村を包む。エレンはしかし家に帰らずこの笑い声を聞いていなかった。  
 
エレンの母親、ルキア・カーソンは客人のためにコーヒーを入れる。  
「どうぞ。ナジュ産のものではないのですけど」  
「ありがとう。ルキア」  
ルキアはまだ40になったばかりのエレンによく似た美しい女性である。  
「まず、娘さんを半年もの間引きずり回したことをお詫びしたい」  
ハリードはそう言って深々と頭を下げた。  
「あらまあ…あの子が望んだことですから。手紙も定期的にくれていたし。もう20の大人ですもの  
 親には子供を引き留める権利はありませんわ。…寂しいことですけど…」  
「ご主人は?…早くに亡くされ苦労したとか。エレンにそう聞きましたが」  
「サラを生んでからすぐに…頑健な人でしたけど…」  
ルキアの話し方は農婦とは思えないほどの品格がある。以前にエレンが語っていたところによると  
彼女はロアーヌの落ちぶれた貧乏貴族の娘で、無理矢理結婚させられるところをエレンの父親と  
駆け落ちをしてシノンにやってきたのだという。  
「苦労と言えば苦労ですけど、私には楽しかったですよ。ふたりも娘がいたんだし」  
ルキアはそう言って微笑む。強い人だとハリードは思った。  
「今日はここに泊まってくださいな、ハリードさん。あなたがお好きだというトマトの料理も出させていただきますわ」  
「あいつ……そんなことまで手紙に書いていたんですか?」  
「と言うか…あなたのことが中心でしたよ」  
ルキアは笑う。ハリードは照れ笑いになるしかなかった。  
ふと彼はエレンの勝ち気な瞳を思い出した。その瞳に寂しげな色が混じるようになったのはいつ頃だろう。  
窓の外を見るとあたりは暮色が色濃い。  
「遅いな…エレン探してきます」  
なぜかその場にいたたまれない気がして、ハリードは口実を見つけて外に出て行く。  
ルキアはその後ろ姿にこれまでにない真摯なまなざしを向けていた。  
 
村としては規模の大きいシノンのどこにエレンがいるのか、新参者のナジュ人には見当もつかない。  
しかし彼の目立つ外見とこの村では有名人のエレンのために、村の子供が居場所を教えてくれた。  
そこは村の西端…辺り一面オレンジ色に染めて今まさに太陽が揺らめいて沈もうとしている。  
その崖にエレンはぼんやりとしていた。  
「もうちょっと見ているのか?」  
ハリードの声にエレンは驚いて振り向いた。  
彼は腕組みをして笑っている。旅している間によく見ていたハリードの姿である。  
これがもうじき…  
エレンは再び前を向き無言で太陽の方角をむき直す。  
「エレン?」  
「だめ……こないで…」  
彼女の肩が震えている…ハリードがエレンの側まで行くと悲しげな嗚咽が聞こえる。  
彼の体に言い難いものが走りエレンの細い体をその強い腕の中に抱きしめた。  
女としては上背のあるエレンだが、ハリードの大柄な物量のある体の前ではまるで子供のようである。  
その体で痛いほど強く抱きしめられながらエレンは泣き続けていた。  
「…元気でな…無茶するなよ…体だけには気をつけろ…」  
感情を抑えてあまりにも一般的な言葉でエレンに話しかけなければいけない自分に  
ハリードは自己嫌悪に陥る。  
「…うん……わかっ……た」  
喉から絞り出すように涙を流しながらエレンは言う。  
彼にはファティーマ姫という最愛の女性がいる。リブロフでの元家臣と彼の会話を聞きながら  
エレンは足下が崩れるような気持ちになったのを生々しく思い出す。  
しかも彼自身が王家の血を受け継ぐものだと聞かされてから、エレンはその重大さに気づき始めていた。  
(復讐を…そして王家の再興を…)  
ハリード自身はそのことについてはっきり口に出したことはない。  
しかし無頼に身をやつしながら大金を稼ぎ続けるのは容易に頷かれることだ。  
その時からエレンは自身の存在が彼の足枷になっているのではないかと思い始めていた。  
だのに今日まで自分から言えなかったのは、ひとえに自分の感情の整理がつかなかったからである。  
始めて彼に抱きしめられながら、エレンはもうこれで十分だと思った。  
もう自分はハリードの邪魔をしてはいけない…  
 
久しぶりの母親の手料理(トマトばかり)にエレンは気恥ずかしくなる。  
それを誤魔化そうとエレンは必要以上にはしゃいでみせる。  
ロアーヌワインを飲みながらそんな彼女を見続けるハリード。  
そんなふたりを複雑な思いで見守る母、ルキア・カーソン…  
 
玄関の方で物音がしたのでルキアは目が覚めた。  
夜明けにはまだ時間がある…階段を下りて1階に降りるとそこには身支度を調えたハリードがいた。  
「ハリードさん?」  
「起こしましたか…申し訳ない。時間が早いですが、俺はもう発ちます」  
「待ってください。ミュルスの港の船が出るのはまだあと2日ありますよ?もうしばらく滞在…」  
「いや、…俺は…もう…」  
うつむき言葉尻を言いごもる彼は“褐色のトルネード”を知るものなら考えもつかない姿に映るだろう。  
「本当に今までエレンを引っ張り回していて申し訳なかった。全部俺の意志の弱さです。あの娘には責任がありません」  
ハリードは自嘲的な笑いを浮かべた。  
「待って。エレンを呼んで」  
「それはやめてください。……どうか…」  
ハリードはそのまま頭を下げた。  
ルキアは溜息をつく。  
「……あなたが出て行くというのに…黙っていたら…あの子に恨まれるでしょうね…」  
「そういう無責任な男だとエレンには言っておいてください。馬鹿な流れ者のことなんか早く忘れろと」  
そう言いながらハリードは床の荷物を取り肩にかける。  
決心は固いようだ…ルキアには最早止める手だてが思いつかなかった。  
「それじゃあこれで。…世話になりましたルキア。お体に気をつけて」  
ルキアはハリードの黒い瞳を見ながら言い出す。  
「忘れ物はない?ハリードさん」  
「ええ、荷物はこれだけ…」  
しかし彼女の瞳はハリードの瞳を見つめながら動かない。  
「本当に?」  
ハリードはその意味を知る。だが、だからといって彼にはどうしても出来ないこともある。  
ハリードは疲れた笑いを浮かべながらそれでも最後にこう言った。  
「一番の忘れ物はここに置いていきます。俺はこれからその夢を何度も見ることになるでしょう」  
蒼くなり始めた空の中、ハリードはカーソン家から出て行った…  
 
ルキアがしばらくそうしていると2階からあわただしい足音が響いてきた。  
「母さん、ハリードは!」  
「…いましがた出て行かれたわ…」  
エレンは裸足のまま1階に降りてくる。  
「そんな!私に何も言わずに?なぜ…なんで!!……ひどい……馬鹿…」  
涙が溢れる…膝から力が抜けていき、エレンはその場に泣き崩れてしまった。  
その娘の姿を見ながら母親は再びあの言葉を繰り返す。  
「エレン、お前は忘れ物はないの?」  
「え……」  
彼女も母親の言葉の意味が飲み込めない…しかししばらくすると母親の意図が天恵のように閃く。  
エレンは母親の首にしがみついた。  
「ごめん…ごめんね母さん。私…」  
「いいから早く支度なさい。今なら追いつくから!」  
娘を叱咤しせかしながら、出て行った男がどんな顔をするのか見てみたいものだと思う。  
何度か娘からの手紙を受け取りながら、母親はその文面からエレンがどれほどハリードに  
惹かれているのか手に取るようにわかっていた。  
だからこそここにやってきたハリードを観察していたのだ。そして…  
物思いにふけっていると荷物を用意したエレンが走り寄ってきた。  
そうしてルキアに抱きついてその母親の頬にキスをした。  
「母さん…!…本当にごめんなさい」  
エレンは泣いていた。  
「急ぎなさい。…幸せに…私の愛しい娘…」  
エレンはそのまま暁色の中に飛び出していき母親の元から再び旅立っていった。  
「あなた…娘が一人…いっちゃいましたよ…」  
死んだ夫に語りかけながらルキアは泣き笑いの顔をまだ冷たい外の外気に晒し続けていた。  
 
 
明け方の道を一人で歩き続けながらハリードはふとエレンの声が聞こえたような気がした。  
(女々しい……)  
やるせない気持ちを抱えながら舌打ちをする。だが再び聞こえたそれは気のせいなどではなかった。  
彼が振り向くと遠くの方から白い点が走り寄ってくる。  
それが間違いなくエレンだと確認できると、ハリードはその場に思わず荷物を落としてしまった。  
激しい息を付きながら側にエレンが到着してもハリードは何も言うことが出来ない。  
「はあ……ひどいじゃない…はあ……黙っていくなんて…」  
エレンの瞳に再び涙がにじんでくる。それでもハリードはその場を動けずものも言えない。  
「…私…あなたに…まだ剣とか体術とか中途半端に習っている途中だし…それに…」  
ハリードは沈黙したままだ。  
「黙って出て行かれるほど……私たちは……そんな仲……!」  
ついに張り詰めていた気が切れてエレンは激しく泣きじゃくり始めた。  
ハリードの中でも何かが切れた。  
彼はエレンを抱き寄せてその唇を激しく貪り始める。喘ぐエレンの唇の隙間から自分の舌を差し入れ  
柔らかい女の舌を絡め取り巻き付ける。  
その激しい口づけが終わると、エレンは口許を覆い後ろを向いてしまった。  
「エレン…?」  
「…た…入れ…」  
「はあ?」  
「舌……入れた…」  
始め何を抗議しているのかわからなかったハリードは意味に気づいて大笑いしてしまった。  
「始めてだったのか…こりゃ…悪い。てっきりユリアンあたりと一回ぐらい」  
「なによ。それどういう意味!初めてで悪うござんした。どーせ…ちょっといいかげん笑うの」  
ハリードは再びエレンの体を抱き寄せた。今度はエレンも自分から目を閉じる…  
再びハリードの舌が入ってきたときはエレンもゆっくりそれに合わせて応える。  
ハリードは彼女と口づけを交わしながら思う。  
遠くからエレンの姿が駆け寄るのを認めたときこれほど幸福なことはないと  
自分の都合のいい夢想ではなかったのだと…  
腕の中にいる娘の体の確かな実感をかみしめながらハリードは現実に感謝した。  
 
ミュルスの港町の宿でエレンは始めてハリードに抱かれた。  
褐色の圧倒的な体に巻き付くエレンの白い体は大木にひっそりと咲く白い花のようだ。  
「ファティーマ姫に…悪い…」  
「お前が気に病むことはない…責められるのは俺だ」  
エレンの唇を塞ぎながらもうひとり最愛の女を増やしてしまった事は自分に全て責任があると考える。  
彼女のともすれば奥へ逃げようとする舌を、容赦なく自分の舌で巻き上げて何度も濡れた口づけを交わす。  
はじめての男の攻勢にエレンは息も詰まりそうなほどあえぎ続けた。  
ハリードの手がエレンのふたつの乳房を掴みそのまま上に持ち上げるように揉み始める。  
「う…ん…あ…あ…」  
白いのどを反り返らしながらエレンはハリードを揺さぶるような淫猥なあえぎを漏らし始める。  
その反り返った喉にハリードは舌を這わせ首筋を強く何度も吸い続ける。  
「あ……ハリ……ド…ああ…」  
彼女に名を呼ばれると雄の本能が暴走しそうになる。ハリードはこらえ続け処女であるエレンの体に  
緩やかに愛撫を続けようとつとめる。  
首筋からそのままつかんでいる胸の乳首に舌をじわりと這わせ、小刻みに動かせたりする。  
「くっ……ああ……」  
少し痛みが走ったのだろうがすぐにエレンは熱いあえぎに声を変化させた。  
ハリードの変化に富んだ舌の動きに馴れていき感じ始めてきた頃、自分の中心に男の手が伸びてきた。  
「だめ…いや…」  
聞き分けないエレンの唇を塞ぎその耳元でハリードは語る。  
「濡れ方が十分でないと……痛くなるぞ…俺に何もかも任せろ」  
エレンは頷いた。その瞳に涙がにじんでいる…怖いのだろう。  
ハリードは安心させるために再びその唇を塞ぐ。それが彼の“大丈夫だ”の合図だとエレンもわかり始めている。  
手を彼女の中心に伸ばすと今度は緩やかにその両脚を開いてきた。  
その裂けた奥へ彼のタトゥを施した指が入っていく…ゆっくり動かすとじわりと彼女の愛液が湧き出す。  
「あっ……は……あ…」  
男の指にめくるめくような動きを生まれて初めて加えられて、エレンはその快感に酔い始めた。  
ハリードの指に沿って自分がしたたらせている蜜が降りていくのがわかる。  
自分にこういう感覚が備わっていたことすら信じられない…教えたのはこの褐色の男…  
 
(十分か…)  
ハリードはそう考えながら指を引き抜いた。自分の中に充実していたものがなくなった感覚に  
エレンは少し震えたがそれもほんの束の間のこと、今度は指とは全然違う圧倒的な物量のものが入り口を割ってこようとする。  
「……い…!」  
エレンが極度に緊張したため侵入を果たそうとしても入り口から進むことが出来ない。  
(緊張するなと言う方が無理だな…)  
ハリードはエレンの唇を塞ぎながらその耳元で砂糖菓子ぐらい甘ったるい言葉を囁く。  
「愛しているぞ、エレン……なにもかも全て…俺のものにしたい…」  
エレンの瞳から涙がこぼれる。  
自分の緊張を解くための言葉とはわかっているが、それでも真実ではあるのだ。  
「私も…ハリード……来て…」  
エレンの中の緊張が緩んだ…それに合わせつつハリードはその中をゆっくりと進んでいく。  
進むにつれ中の縛りがだんだん緩んでくるのがわかり、ついには己のものが全て彼女の中に隠れたのを確認する。  
ハリードはエレンの涙を拭ってやりそのままゆっくりと下半身を動かし始めた。  
「!」  
ハリードのものと自分の内壁がこすれ合うのがわかる…しかし痛いとも言い切れないこの熱い感覚はなんだろうか。  
しだいにハリードの動きが激しく突き上げる形になってきてエレンは下肢を広げていく。  
その両脚を自分の脇に抱え直すと、ハリードはさらに激しくエレンの中へ自分のもので攻勢を加えていく。  
「あっ…あ……あっ…!」  
エレンの中に送り込まれるハリードの逞しい竿は内壁の隅々にまで激しい摩擦を送り新しい愛液を滲ませる。  
シーツを濡らすほど自分が感じているのがその冷たさでわかる。  
そうして新しい今までに感じたことのない快楽が結合部から全身に駆けめぐっていく…  
「あ……いい…ハリー……ド!」  
急激にエレンの内壁がきつく収縮し始める。彼女の白い体が蛇のようにしなって曲がる。  
ハリードはエレンがいった事を確認すると、自分自身も忍耐のたがを外して白い精を彼女の中に吐いた。  
あえぎが止まらないエレンをその腕の中に抱き取ってやり頭をなでてやる。  
「大丈夫か?」  
「ええ…」  
ハリードとエレンは再び深く口づけを交わし合った。  
 
 
小麦を家の前で売りながらルキア・カーソンは娘からの手紙を読んでいた。  
「エレンからの手紙だな。元気なのかねルキア」  
トーマス・ベントの祖父…村では“ベントの大旦那様”と言われている老人は彼女に笑いながら話しかける。  
「ええ。そのようですよ」  
エレンの母親はそう言ってその手紙を老人に見せた。  
 
 親愛なる母さんへ  
     
     今ミュルスの港町から書いています。  
     手紙が着く頃にはもう出航しているでしょうね。今度もイルカ見られるかな?  
     ハリードは相変わらず…この辺で彼のことは書くのやめるね。  
     あんまり書きすぎだと言われたから。  
     故郷に帰ったのにすぐにまた飛び出しちゃってごめんね。  
     私は自分の故郷…もうひとつの故郷を見つけたわ。  
     だから私たちのことは心配しなくて大丈夫。  
     サラが帰ったらそう言っておいて。  
     何を書いていいのか今混乱しているんでまた今度詳しく書くね。  
   
         あなたの娘エレン  
 
「えらい短い手紙だな」  
「ええ……でも…」  
ルキアは微笑みながら空に目を向ける。ベントの老人はそれを見つめながら溜息をつく。  
「トルネードを落としたか…エレンもたいしたもんだな」  
「はいありがとうございます。私の娘ですから」  
ルキアとベントの大旦那は声を出して笑い合う。  
 
白い鳥が南に向かって飛んでいく。  
シノンの村にもうじき冬がやってこようとする晩秋のことであった。  
 
 

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