トーマスはサラを連れて、フルブライトが居るウィルミントンへとやってきた。  
故郷であるシノンかにある日突然一国の王女が訪れ、戦に巻き込まれて護衛をする事となり、  
ようやく開放された頃には、シノンへ戻る事も無く、ピドナへと向かう用事が出来てしまう。  
その時からずっと側に居たのは、同じくシノンから訪れた幼馴染のサラだった。  
ウィルミントンの街中を歩く二人はまるでカップルみたいだ。  
特にサラが、何故か心弾むようにウキウキをしていからである。  
街を歩く際に突然トーマスが止まりだす。  
「どうしたの?」  
サラは不思議そうに後ろからトーマスを眺める。  
「いや、少し宿で待機していてくれないか?これは宿代だ」  
と、言いながら、宿代にしては少し多い金額をサラに預ける。  
「???」  
少し混乱した。こういう形で切り離されるのは初めてだからだ。  
いつもは事情を話して指示する事があるから、何も理由を話さず急に別行動を申し出されたのには少々戸惑う訳である。  
とはいえ、詮索しても仕方が無いので、サラはすんなりと了承する。  
「わかったわ。じゃあ宿で待つ事にする」  
トーマスは礼を言う。  
「ありがとう」  
そしてサラは去り際に一言、こう言ってきた。  
「また、前みたいにならないようにね」  
にこやかにそう言って立ち去っていく。  
 
 
(……そう、それだよ……)  
 
トーマスは意識の中で、過去の出来事を蘇らせる。  
それはピドナに居た頃の記憶。  
トーマスはこれから会うフルブライトとはピドナで初めて出会っていたのだ。  
その時に彼からの話題に持ちかけられたのは、メッサーナの復興であった。  
まず、資本金を一億オーラムにする事を条件とした商人への道の門構えの手解きを受けた。  
これをトーマスは巧みに業績を上げてゆき、とうとう一億オーラムへ達した時、  
フルブライトは感謝の気持ちで1万オーラムをトーマスに渡した。  
それと同時に、フルブライトとこの先の事を語り明かす為に晩酌を交わし、  
トーマスはお酒の加減を忘れて(!?)意識が飛んでしまうまで飲んでしまったらしい。  
夜遅くに家に帰ってきた際、サラが手助けをしてくれたらしく、それだけならまだしも、  
翌日の朝に目が覚め、気がついた時にはサラが寄り添って寝ていたという事実を……  
 
「………」  
 
後悔は後からしても仕方が無い。だが、現実は少し眩暈がする程に後悔する事はある。  
どれくらいの罪かは、当人と相手の接点と都合によりけりだが。  
しかし、トーマスの心の裏側には、何故かそうでもない予感のようなものを抱いていた。  
微量の自信。これは何に関するのかは、まだ解らない。  
とにかく過去の回想はそれくらいに留めておき、トーマスはフルブライト家に足を速めた。  
行き着く先にフルブライトは居り、今回のドフォーレ商会を見事叩き潰し、  
感謝の意を込めた1万オーラムを受け取る為に訪れたのであった。  
「やあ、よく来てくれた」  
フルブライトはトーマスを快く歓迎し、秘書に紅茶を出させる。  
「お気遣い無く」  
トーマスはそう言い、話を本題へと切り替えた。  
 
*  
*  
*  
 
一方、深い溜息を吐きながら、宿泊先のベッドに横たわるサラが居た。  
両手を広げて天井を見上げる。  
「……トム、私も一緒に着いて行っても良いと思うのに、子ども扱いする」  
愚痴をぼやく。  
別行動を切り出したのは、もしかしたら子供が来る場所じゃないと言いたいからかも知れない。  
そんな風にサラは思っていた。  
モニカ姫をロアーヌへと還し、今まで一緒に居たメンバーが別々の行動をする事となり、  
サラはサラで姉の過保護から抜け出したくてトーマスが向かう先を同行させて貰っていた。  
初めての大きな街。今まで知らない世界が広がりだしたようで期待と不安で胸を躍らせた。  
けれど行動はそれに共合わず、途方にくれる。  
トーマスが度々家を出て行っては隠れ潜むようにある場所へ向かう様をこっそりを着けてみた。  
トーマスの用事の内容を知り、自由がきくようになった足は他所へと足を運ぶ。  
それから今までトーマスと共に色々な場所へ赴くようになったが、それでもトーマスの扱いは  
自分がまだ幼いように感じさせる態度ばかりのような気がする。  
いつもの癖なのか、何か悲しい場面があると頭を撫でてくれたり、危険な場所へは向わせないし、  
戦いを後ろから眺めている事も多くあるかもしれない。  
そんなトーマスの対応に、サラは少々疑問を抱かざるをえなかった。  
 
いつの間にか時は夜を刻み、 サラが待ちくたびれた辺りにトーマスが現れる。  
コンコンッと、ドアのノックから始まり、誰かと尋ねたらそこにはトーマスが立ちはだかっていた。  
「お帰りなさい」  
あまり待ち疲れたような態度にならないよう気を配りつつ、トーマスを部屋に入れる。  
「ごめんな、待たせて……」  
「大丈夫よ。慣れているから」  
 
サラは颯爽と返事を返し、にこやかに微笑む。  
だが、トーマスは帰ってきて早々に真剣な眼差しでサラを見つめ、  
その場の空気は一気に張り詰めていく。  
「……サラ。早急な気持ちを伝えて申し訳なく思うが、この旅が終わったら  
結婚をして欲しい……」  
思いがけぬ言葉にサラは口を開けて驚く。  
「……トム?」  
それ以上の言葉が思い浮かばず、サラの頭の中は真っ白だ。  
トーマスは話を続け、淡々と冷静にサラに気持ちを伝える。  
「本当はこの場で指輪を用意した方が良いかと悩んでいた。だからサラと  
別行動を取ったのだが、サラの気持ちも大切だと思い、指輪を選択出来なかった」  
告白がプロポーズで、しかも手早い段取りを要求されサラは益々驚く。  
だけどそれに至るキッカケがあるのでは?と、思い当たる節があったので慌てて問質した。  
「トム、ちょっと待って…。だって私……心の準備が……」  
そして気恥ずかしそうにサラは俯き加減に、自責の念を込めて話した。  
「あの時の事は……、本当に何も無かったのよ?トムと私は確かに同じベッドで  
寝ていたけれど、それ以上は何も無かったの。私が貴方を払いのけられなかっただけ」  
その言葉に偽りは無く、サラは真っ直ぐな目でトーマスを見つめる。  
「そうかもしれない。だけど俺は……本気なんだ」  
決意が揺らぐ事は無く、後はサラの言葉次第となる。  
「………トム」  
嬉しそうな、そして複雑な笑みを溢し……サラは返答に悩む。  
深く悩み、サラは一つの決心を心に刻んでいた。それがある為、サラは少々上ずった声で返事する。  
 
「トム、私は今は指輪なんて要らないわ。それよりも、私がトムにとって、  
大人の女性として認められた証が欲しいの……。そういうのは、駄目?」  
この台詞を言う事により、サラは内心胸の高鳴りを止められなかった。  
なんて羞恥な言葉なのだろうとさえ思う。トーマスはその意味を理解出来ているだろうか?  
「………」  
トーマスは少し困惑した表情をする。  
とはいえ、冷静に表情を不安に感じさせないようにしてはいるが。  
「サラ……君がそれで良いのなら」  
瞬間、トーマスはサラの顔を覆うように手で隠した。  
見つめ合った瞳のまま、唇と唇が重なる。  
「……んっ」と  
最初はほんのり甘いキス。さわやかな風のように一瞬で終える口づけ。  
次に唇と唇が重なり合った時には、激しいものへと変化していた。  
サラの小さな口を開けさせ、舌と舌を絡めさせあう行為。キスをする事自体が  
初めてのサラにしてみれば、それは壮絶な出来事のようである。  
「サラ……愛している。気持ちを上手く伝えられなくて、すまない」  
微かに沈んだ声でトーマスがサラの耳元に呟く。  
サラはその言葉に反応し、身体は疼くのだが、必死で慰める。  
「そんなこと無いわ……私は、嬉しいの……。トム、好きよ……愛してる」  
嬉しくて涙が出てしまう。  
とにかく二人の心は繋がったのだからと、幸福の気分でいっぱいなのだ。  
積極的にサラからも、トーマスへキスをする。  
キスをし終え、トーマスの手は次第に衣服を脱がせるように手解きをし、  
サラの露になった肌に手を添える。鎖骨、そして両胸を手の平で両方撫でるように  
回し、ゆっくりと掠めるように揉む。  
「んぁ……」  
ついにはサラの甘い声が響き、トーマスも意識をそちらの方へ集中させる。  
サラの鎖骨にキスを落とし、乳首を摘みつつ乳房を揉んでいく。  
 
ソフトに膨らみを揉みつつ、徐々に強弱をつけるようにやり方を変え、  
足で左右の太腿の間を割りながら股の間を摩擦させる。  
「あっ…トム、恥ずかしい……」  
顔を赤らめサラは顔を隠そうと両手で顔を覆う。  
トーマスはそんなサラを安心させようと優しく微笑む。  
「大丈夫さ……。サラのどんなところも、可愛いから」  
そしてトーマスはそろそろ自分の股間にいきり立つものを押さえつけられず、  
硬く硬直しているので外へ開放すべく、ズボンのジッパーを開けた。  
サラはその音がたまらなく恥ずかしいらしく、身体がじんわりと熱く燃え上がる  
ような気がしてしまう。  
しかしそんな余裕すらも無くなるくらいに、トーマスの手が加速し始めて、  
乳首を舌で突くのと同時進行でサラの太腿を手で弄り、声が反応を示しだしてから  
今度は手を股の方へやり、下着の上から指先で窪んだ部分をなぞる。  
「ひぅっ」  
びくんっとサラの身体の隅々に電流を走らせる。数回撫でていく内に、  
そこが湿っぽくなっていくのが解る。  
下着を剥がすと透明な蜜が溢れていて膣から流れてきていた。  
「やあっ……トム、これ以上……私の為に、しなくても………」  
必死で声を出し、トーマスの行為を静止させようとする。  
少しずつ身を捩じらせ、身体は無意識に逃げてしまう。  
「怖くない……と言ったら、嘘になるな。サラが好きだから、念入りにしたい」  
暖かい言葉にサラの心の奥底が、じんわりと暖かくなるのを感じて、  
サラは細い声でトーマスに話しかける。  
「……だけど、駄目なの……私が……いれて欲しい……の…」  
潤む瞳で懇願し、トーマスの心でも何かが弾けたようで、「いれる」と  
言ったか言わないかの間でサラの中にトーマスの熱い硬直したものが押込められた。  
 
「あうっ……!!」  
ぎゅっと目を瞑り、必死で痛くないと心の中で叫ぶサラ。だけど愛する人のモノ  
を受け止めた喜びも痛感している。  
両手で思い切りトーマスを抱き締め、唇を噛み締めた。  
「んぅぅぅ……っ……あぁっっ」  
ゆるりゆるりと、トーマスの逸物はサラの中へと入っていった。  
サラの中は悲鳴をあげていたが、中に全部押し込めて時間と共に痛みは消えていく。  
そして痛みが快楽に変わった瞬間、サラは今までにない声を出した。  
「あぁぁああっっ!!……やぁ、こわれちゃ…う。私の中……ヘンなのぉぉ…」  
気持ちがどっと出てきてしまい、隠そうと思っていた想いが溢れてしまった。  
自分の中の変化と、快楽とそれに酔ってしまうかしまわないかの恐怖。必死で  
それを悟られたくないが為に、思わず弁解をしてしまう。  
恥ずかしいサラの心を包むようにトーマスはサラの唇を奪う。  
息と息が混ざり合い、中の行為はより激しさを増す。  
中を掻き回し蜜を更に溢れさせ、出し入れをする事によってお互いの快楽を  
上昇させていった。  
「うううぅ……トム……、私……もぅ!!」  
サラの瞳が何処を向いているか解らないくらい、酔いしれているようだ。  
意識が恍惚になっていき、スピードが上がっていきついに果てようとしていた。  
頭の中で血圧が圧迫されるような気持ちで、気持ちが上り詰めていく。  
「サラ、俺もだ……っく……」  
息を荒くさせ、お互いの意識が真っ白になっていく。  
「あっ、あぁぁ……いやっ、ふぁぁあああんんっっ」  
サラの叫び声と同時に二人は意識を果てていく。  
上り詰めて弾けた先に、痺れる様な甘い刺激が待っていた。  
この瞬間を繋ぎ止めたくて、二人は離れる事無く繋がったまま抱き合い、  
そのまま気づかぬ内に眠りこけてしまっていた。  
 
*  
*  
*  
 
次の日、目が覚めた二人は裸で眠っていた事に驚き笑う。  
そこには今までと違った、新たな決意があるのと共に……。  
 

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