夏の日に照らされ、白く輝く石造りの城。 
 建国以来、千年の歴史を誇るバレンヌ帝国の宮殿である。 
 かつてはバレンヌ地方全土を覆う勢いであったが、今では北方の一地方都市にまで成り下がっていた。 
 活発化したモンスターに人々は疲弊し、小さな争いでも傷つけあう。 
 そんな暗黒の時代にあって、時の皇帝レオンは、戦乱で千散れたバレンヌを統一せんと 
多くの兵員を首都アバロンに召集していた。 
 特に専門的な技能を持つ者は宮殿に個室を与えられ、広々とした宮殿の一階はすべて 
こうした戦士たちの個室となっていた。 
 
 剣、槍、弓…様々な分野の達人達がそろう中にあって、異彩を放ったのが術士である。 
 種々多様な薬品や薬つぼを持ち込み、時には異臭騒ぎや爆発を起こす。 
 この事から術士達の区画は他から離れたところにあり、それがより一層と得体の知れない存在 
という印象を増す事になっていた。  
 
「……んっ……んっ……んっ……」 
 宮殿東にある魔術師区の一角。 
 油ひとつ灯した薄暗い個室の中で、切ない声が断続的に響く。 
  ――ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ 
 換気が悪く、空気が澱んでいる上に、折からの暑さ。 
 アバロンの夏は涼しい方だが、ここだけは異常な蒸気を出していた。 
「はあっ……あ………んうう」 
 壁からは離れたベッドで、汗だくで横に丸くなっている赤服の女性。 
 火と風の術を使う、エメラルドという名の研究者である。 
  ――くちくちくちくちゅくちゅくちゅ 
 魔術師は世間一般では好かれていない。 
 多少器量がよくとも、一人で慰めて一生を過ごす事も普通であった。 
「はぁ…あん……じぇラーるぅ さまあ……」 
 皇帝レオンの第二子、ジェラールはその優しい性格で知られる。 
 術士に対しても理解があり、度々訪問にも来る事から、術士間での人気はとても高い。 
  ――ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷ 
 戦いは得意ではなく、柔和で繊細な顔と性格で、遠慮がちで素直。 
 そんなジェラールを不安視する声もあったが、彼女にとってはその全てが魅力だった。 
「はっ…あっ…あっ…あっ…あ…」 
 仰向けになり、着衣を乱して、背中を少し反らし、加速する。 
 蒸暑い部屋の中で、さらに熱されていく身体は火の玉のようであった。 
「じぇラー…!?」 
 その時、扉が動いた。 
 
 白く垢抜けない服、無造作ながら整った茶色の髪。 
 アバロン帝国第二皇子、ジェラールの姿がそこにあった。 
 慌ててベッドに座り、腕で体を覆うエメラルド。 
(どうして、こんなにお早く?) 
 討伐から帰ってきた時間を考えれば、まだしばらくは上階にいらっしゃるはず… 
 彼女はそう見ていたが、怪しげな女魔道士の訪問で切り上げられていたのだ。  
 
 沈黙の時が流れる。 
 頭の中では忙しく思考が巡らされるが、部屋の熱気が思考力を奪う。 
 腕で身を隠したまま、なぜか立ち上がってじっと顔を見つめてしまう。 
 大きく見開いた目…胸元を見ている…顔色が少し朱い… 
「ジェラール様、術は使っておいでですか?」 
 唐突に口が開いた。 
 術に興味のありそうなジェラール様を見て、前からお誘いしてみたかった事。 
「使わねば成長しませんよ。」 
 使っているわけがない。自分で教えるための口実。 
 でも本当は、それも口実。 
「エメラルド」 
 動揺しているのか、イントネーションがおかしい。 
 何をしていたのか知られている。でもそれがとてもエロティックに感じる。 
「あいにく術は学んでいないんだ」 
 場にそぐわない普通の会話。 
 しかし運びは彼女の計算どおりだった。 
「では、私がファイアーボールをお教えしましょう。」 
 奥へ促すべく、背中を軽く押すエメラルド。 
 しかしその何気ない所作も、正面から半ば抱きしめるような形になっていた。 
 いつもの彼女ではありえなかった。 
 
「ベッドにお座りください」 
 状況が飲み込めないまま、大人しく座るジェラール。 
 部屋に立ち込める淫臭がより一層強く感じられる。体熱と湿りがベッド越しに伝わってくる。 
「大人しくしてて下さいね、失敗すると危ないですから」 
 そう言うと彼女もベッドにあがり、ジェラールを後ろから抱きしめるような形で 
ゆっくりと服を脱がしていく。 
 遠征の汗がもわっと立ち昇る。 
「素肌に印をつける必要がございます」 
 そう首筋でささやき、ほとんど愛撫のような手つきでまさぐっていたシャツを脱がせると 
半裸の体を密着させる。 
「…ジェラールさま」 
 彼女の目線は、もう完全に勃ちきっているジェラールの股間に向けられていた。 
「ジェラールさま…この状態では魔力の流れが正常でなく、術使用に障害が出る可能性が 
 ございます。私でよければ正常にするお手伝いをさせていただきますが…」 
 そう言った彼女の手は、もはや完全に性欲を刺激する為に動いていた。 
 ジェラールは、小さく"任せる"とだけ言った。  
 
「お任せください」 
 元より脱ぎかけだった服をその場で取り払ったエメラルドは、続いてジェラールの股間に 
手を当てて、ズボンの上からゆっくりと形を確かめるように動かした。 
「大きくてびくびくしていて…すごいですジェラールさま」 
 熱に浮かされたようにつぶやく彼女の身体も、手の動きと同期してジェラールの背中に 
擦り付いていた。二人の汗が密着感を高め、勃起した乳首がこりこり動いた。 
 夕闇も迫る薄明かりの中、二人の荒い息と、摩擦音だけが響く。 
「ズボンも脱がしますね」 
 しばらくしてそう言いながらズボンも脱がした彼女は、下着に染みができている事を 
目ざとく見つける。 
「はあ…こんなに興奮しちゃってる」 
 直接触れずに下着だけを摘み、陽根を動かすエメラルド。 
「どうしてこんなに興奮しちゃったのかしら?胸?におい?…私は、におい」 
 首筋や肩を後ろから舐め、息を荒くしている彼女には偏執的なものがあった。 
「ごめんなさい、このままじゃ苦しいですよね」 
 そう言うと下着にも手をかける。ジェラールの剛直が露になった。 
「はあっ…これがジェラールさまの……ああ」 
 手を伸ばしかけたエメラルドだったが、思わず手前で躊躇してしまう。 
「ジェラールさまのファイアーボール…」 
 代わりに玉を弄ってかかる。頭の悪い事を言いながら。 
「うっ…もう……頼むよエメラルド」 
「ごっごめんなさい」 
 焦らされたジェラールに懇願され、ようやく肉茎に手を出すエメラルド。 
「はっ…あっ……熱い………すごぉい……」 
 やわらかく竿を握って緩やかに動かしながら、独り言のように言葉を紡ぐ。 
 白くしなやかな手は確実に快感を送り込んでいたが、しかし刺激不足でもあった。 
「ごめんエメラルド…もう我慢できない」 
「え!?」 
 我慢の限界に達したジェラールは、エメラルドの手の上から陰茎を握ると 
そのまま猛烈な勢いでしごきはじめた。 
「あっ…あっ…ああっ…じぇラー、ルっ、さまっ…」 
 予想していなかった展開に惑乱しつつも、手に意識を集中させてしまうエメラルド。 
手姦とでも言うべきそれに、しかし彼女も確実に感化されていた。 
 血潮が、脈動が、興奮が、伝播していく。 
 元より限界に近かったジェラールはあっという間に昇り詰めた。 
  ――ドクドクびゅビューッビュッびゅっ 
 派手に噴出した精子が、部屋を、手を汚す。 
 汗、愛液、精液…濃密な臭いで包まれる部屋。  
 
「ご、ごめんエメラルド」 
「ああ…じぇラーるさまの精子…」 
 しかし恍惚とした表情の彼女は意に介さず、既にジェラールの拘束から離れた手で 
リングを作り、陰茎についた精液をこそぎ取ろうとする。 
「わっ…ちょっそれ…」 
「すごい……また大きくなってきてるよぉ」 
 精液をローションにした絶妙な力加減のしごきとなったそれに、若いジェラールの 
肉茎はすぐに反応を示した。 
「じぇラーるさま…ごめんなさいじぇラーるさまあ!」 
「な、なにをするエメラルド!」 
 次に我慢の限界に達したのはエメラルドだった。 
 今までずっと後ろから抱きしめていた姿勢を変えて、急に前に出たと思った 
次の瞬間、ジェラールはベッドに押し倒されていた。 
「もう我慢できないの、お願い、お願い…」 
 既に軟らかく粘り、ひくつく秘裂を肉茎に押し当て、涙目ながらに訴える 
エメラルドだったが、しかしジェラールはあくまで皇子であった。 
「ダメだ、それだけはダメだ!」 
 押し返そうとするジェラール。 
「いや、いやぁ、絶対にいやあ!あっっ、あああアア…」 
 しかし押し返されるより早く、エメラルドはジェラールの剛直を呑み込んだ。 
溜まり溜まった欲求の肉壷が歓喜に震える。 
「ごめんなさいジェラールさま、ごめんなさいジェラールさまあ…愛してます」 
 しがみつくように抱き縋りつつも、膣内で強烈に肉茎をしごきあげるエメラルド。 
「好きなのジェラールさまが、好きでしょうがないの」 
 上体をあげて、真正面から顔を見て告白する。 
「許されるはずはないけど…せめて今だけでも、んんんっ!」 
 言い切らないうちにジェラールの腰が動き、壮絶な摩擦感に思わず声が上がる。 
「エメラルド……本当は僕も」 
「ジェラールさま…ジェラールさま!」 
 これが合図となった。 
 一気に腰を震わせて、激しく快楽を求め合う二人。 
「ジェラールさま、じぇラールさま、気持ちいいよぉ、ジェラールさま!」 
「にゅるにゅるでぎゅぎゅっとしてて…すごいよエメラルド」 
「ジェラールさま、お願い、キスして、キス」 
 胎内の如き湿温の中、熱い吐息が顔にかかり、舌で体内をも犯しあい、身体が溶融していく。 
 そのまま転がって、体位をジェラール上位に変更する。 
  ――じゅっぷじゅぷじゅぷじゅっぷじゅっぷ 
「ふああああ ああああー あーっ とまらなあああ いやあああ」 
 強すぎて電撃的に来る快楽に、脊髄反射で腰が動いて止まらなくなる二人。 
 本能のまま抱き合い、絡み付き、声を上げる痴態に、長くは持たなかった。 
「エメラルド…いく!」 
「きてきてきてきてきてきてきてえええーっ!」 
  ――びくビクビクどくドクンッ!ドクッ!どくん 
「あっあっあっあっあーーーーっ!あああ…」 
 全身でぎゅっと愛する者を抱きしめて絶頂に達する。 
 それは人生で最も幸福なひと時であった。  
 
[ファイアーボールを覚えた!] 
 ジャキィン! 
「ありがとうエメラルド、これで私も術の修行ができる」 
「セルフバーニングも覚えていらっしゃってはいかがですか?」 
「これからは不要だろ、僕もエメラルドも」 
「ば、お、おふざけはよしてください! 
 …でも本当、申し訳ありません。暑さでどうかしていたようです」 
「いいよ、いい経験になったし」 
「…ジェラール様ったら」 
「それに皇帝には、兄さんがなるだろうから、きっと私は平気だよ」 
 
――この後二ヶ月で彼が皇帝になるとは、誰も考えてもいないのであった。 
 
 
 
その後の話。 
 
1.純朴なジェラール様はエメラルドを嫁にして幸せに暮らす 
2.ドライなジェラール様はその場限りの関係で済ませる 
3.ヤリチンジェラール様は愛人枠でヤり続ける 
4.鬼畜皇帝ジェラール様は反逆罪でエメラルドを逮捕する 
 
アンカとかじゃないから好きに考えてくれ 
 
「エメラルド、修行するよ。」  
 

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