コットンがパトロールに出かけたまま行方不明になってしばらくたった。けどパトロールが一人いなくなったからって、  
事件もその分減ってくれるかと言えば、そんなことはない。あまりの多忙さに人員補充を上申したら意外にもあっさり許可が出た。  
 ただし条件付きで…。  
@確保する補充人員は一名。種族は行方不明のコットン捜査官と同様のモンスターとする  
A任務は件のコットン捜査官の捜索  
B初めての任務となるためコンビでの捜査となる。コンビの相手はサイレンス捜査官とする  
Cヒューズ、ドール両捜査官を、新任がサイレンス捜査官の指示命令に従わせるための訓練教官と任ずる  
 以上がその内容だ……。  
 
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  
 
 自分の身長の三倍はあると思われる雷竜を前にして、ヒューズは高く口笛を吹いた。  
「スラちゃん、座れ」  
 元スライムは座らなかった。ヒューズは出力を調整したハンドブラスターを振った。丸みを帯びた銃口の先端から  
薄黄色の光線が放たれ、雷竜の頭上でバチッと弾けた。雷竜は威嚇するように、グルルとうなり声をあげる。  
 ドールは思わず、身を縮めた。  
 ヒューズはブラスターソードを振り下ろして、雷竜の足元を打つ。雷竜はうなり声をあげたまま、のろのろと腰を落した。  
ヒューズは低く、穏やかなトーンで口笛を吹いた。  
「よーし、いいぞ。スラちゃん、大したモンだ」  
 ヒューズが誉めるのに合わせて、すかさずドールがバイオ肉の餌を投げる。味はともかく素材が不明なため  
好き好んで食べようとする人はいないが、安価で調達しやすい。  
 それにしても…とヒューズは心の中で悪態をつく。もう少し知性のあるモンスターなら訓練の必要もなかったのだが、と。  
これも上層部が予算をケチったせいだ。  
 雷竜は羽を打ち鳴らすと、首をスイングさせてそれを捉え、あっという間に口に押し込んだ。  
「よくないと思うわ」  
 ドールはミントの香りのするまんまるドロップの包装フィルムを剥きながら言った。ヒューズは驚いたようにドールの方を振り返る。  
「何が?」  
 ドールはヒューズが持っているハンドブラスターを指し示した。ヒューズはトリガーに指をかけ、クルクルとガンスピンをやってみせる。  
「なぜ、良くない?俺はこう見えても、モンスターの扱いには手馴れてるんだ。掴まえるだけなんかじゃなく、  
訓練教官としても優秀でね。ロッキーにバーゲスト、ドラゴンパピーと、ワイバーン、マフラーザウルス、  
それにトリケプスその他もろもろ扱ったことがある」  
「それは千回聞いたわ」  
「それじゃあ、その他もろもろについて、詳しく説明しよう」  
「ヒューズ、あなたのおしゃべりに付き合ってる暇はないわ」  
 ヒューズは素直に頷いた。  
「では詳細略とする。とにかくパトロールにとってハンドブラスターほど役に立つものはないのさ。コットンだって、  
初めはこれでお手とお座りを覚えた。ついでに言えば、敏腕パトロールの俺に憧れて待てと伏せも覚えた。なぜよくないんだ」  
 ドールは、ヒューズの顔をじっと見つめてから、尋ねた。  
「ドロップ、食べる?」  
 ヒューズは半ば反射的に頷いた。  
 ドールは、まんまるドロップをポケットから出して、ヒューズに渡した。  
「サイレンスは?」  
 一言も口をきかずにヒューズの後ろに突っ立っていたサイレンスは一言も口をきかないまま頷いた。  
 ドールは、丁寧にドロップのフィルムを剥くと、そのままサイレンスの口に押し込んであげた。  
 ヒューズがくちを尖らせる。  
「サービスレベルが違いすぎる。サイレンスにはドロップの皮を剥いて食べさせてやるのに、敏腕で切れ者な  
パトロールに対しては皮も剥いてくれない。俺は嫉妬を感じるね」  
 ドールは両手を、スーツの腰に当てた。  
「嫉妬でも何でもお好きにどうぞ、ヒューズ。こうする理由もわからないようなら――」  
 ヒューズは嘆かわしげに首を振って、サイレンスを指差した。  
「そうする理由はわかってる。こいつが群れのボスだからだ。最終的にこういう形になる。スライムは君に従い、  
君は俺に従い、俺はサイレンスに従う。サイレンスがボス、スライムは下っ端だ。だからスライムは、  
サイレンスに従うことを覚える。わかっていても嫉妬を禁じえないだけだ。俺のプライドはズタズタだ。  
一つ相談なんだが、スライムの見ていないところでドロップの皮を剥いてくれないか」  
 
 ドールはため息をついた。  
「わかった。剥いてあげる」  
「で、お口に入れてくれる?」  
 ドールは腕を組んだ。  
「どうしてあなたが言うと、何でもセクハラに聞こえるのかしらね、ヒューズ捜査官」  
「うーん、それは不思議だ。ひょっとして人徳かな」  
 ヒューズはまたブラスターを振った。今度は雷竜は座った。一瞬、全身のウロコが逆立つような気配を見せ、  
青い放電の光が不規則に点滅しているように見えた。機嫌がよくなさそうだ。  
「それはともかくどこが良くないんだ?」  
 ドールは首を振った。  
「怖れを利用して、強制しているわ」  
 しかし訓練とはそういうものじゃないか、と言ったふうにサイレンスが肩をすくめて見せる。無論黙ったまま。  
「サイレンスと同意見だな。訓練とはそういうものだ。モンスターにこっちを怖れさせる。君だってそうしてきたろう?  
噂は聞いたぞ。君は獣系のモンスターの調教が上手いんだろう?」  
 一瞬ドールは、はっとした表情を見せたが、すぐにいつもどおりの澄ました表情に戻る。  
「でも、相手が知らないような科学兵器は使わなかったわ。相手の知っているコミュニケーション能力を利用しただけ」  
「科学兵器とは大げさな。だいたい、ドラゴン系を仕込むのに、のんびり習性を利用しているなんてことは、危なっかしくてできないぞ」  
 それは言えるだろう。ドールは雷竜の方を窺った。雷竜は羽をたたみ大人しく座ったまま、ブラスターの動きを追っている。  
とにかくドールにはそう感じられた。  
「でも、この子は馴れたわけじゃないわ。怖いから嫌々従っているだけよ」  
 雷竜は同意するような唸り声をあげた。  
「嫌々ながらだって?そんなことはない。うまくできたら褒めてもらえるし、食べ物ももらえる。こいつはそれが嬉しいんだ。  
ハンドブラスターはそれを手助けしてやっているだけだ。そうだろ、スラちゃん?」  
 雷竜が、フィーッと言う声を出して、太い尻尾を持ち上げた。今度はその尾の先端から青い火花が散って、空中で弧を描いた。  
「え?」  
 ブラスターの先端から、ぽっと白い煙が吹き上がった。綺麗に残った銃把の先から銃身の一部だったものがだらんと垂れ下がる。  
「ほら、ヒューズ。あなたのサオ、反撃を受けて萎えちゃったみたいね」  
 ヒューズは壊れたハンドブラスターを握り締め、唖然としていた。  
「何てことだ。ショックだ」  
 ヒューズは頭を振った。サイレンスも驚いた表情で、ブラスターの先端を凝視している。  
 ドールが事態を説明した。  
「つまるところあの子はやはり、嫌々従っていたというわけね、ヒューズ。尊敬や愛情からくる服従じゃないわ。  
だからうるさい邪魔者を始末した。ショックを受けなくてもいいんじゃないの?放電機構は雷竜の数ある……」  
 ヒューズは途中でさえぎった。  
「そんなことにショックを受けたわけじゃない。君の言葉にショックを受けた。今のはセクハラだよな、ドール捜査官?」  
「さあ――人徳ってやつじゃないかしら」  
 
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  
 
 ――その日の夜。  
「サ…サンダー…今はだめよ…何も穿いていないし…だめだったら…もう」  
 自室へ戻り、シャワーを浴びるドール。シャンプーを取ろうと腰をかがめ、手を伸ばす。そのとき、調教中のオーガ、  
サンダーがドールへ甘えてきた。  
 無防備な状態でサンダーの前に性器を曝け出してしまったドールはサンダーを嗜める。  
「うう……お、俺……が、我慢できない……」  
 言う事を聞かないサンダーは腰を振り、怒張させたペニスをドールの尻に何度もぶつけながら埋めるべき場所を  
探りあてようとしていた。  
「もう、サンダーったら…後で…今はだめなのよ…お願い…あぁンッ」  
 ドールは体をよじって逃げるふりをしながら、一瞬尻をささっと上下させ、いきりたったサンダーのペニスに刺激を与えてやる。  
興奮したサンダーのペニスは目もくらみそうな熱を帯びている。  
 次第にサンダーのペニスはドールの肉裂に何回か当たっていた。  
「いけないわ、サンダー…ご褒美はあとであげるからぁ…」  
 ドールはご褒美の内容を色々思い浮かべていた。そしてドールは不意に声を漏らした。  
「うっ…!…ううっ!!…き…きたわぁぁぁ…」  
 サンダーのペニスがドールの膣腔を探り当て、肉壁を広げながら侵入してきたのだった。  
 侵入してきたペニスはドールの膣内で膨らみをましながら膣奥深くまで進んでいった。  
「い…いやぁん…サンダー…サンダー…ま、まだダメだってばぁ…」  
 サンダーが激しく腰を動かし出したドールの肉壁を激しく摩擦した。  
 
「ああっ…サン…ダー…お…願…い…」  
 ドールは体を動かせずにオーガの怒張を受け容れていた。  
「あっ…あっ…や…め…て…あんっ…あんっ」  
 ドールの言葉とは裏腹にサンダーのペニスを咥えこんだ肉壷からはおびただしい愛液が流れていた。  
興奮したサンダーの腰の動きは一層激しさを増していった……。  
 
 やっぱり調教には愛がないといけないわ、と蕩けていく感覚に身を委ねながら、ドールは満足げな微笑を浮かべていた……。  
 
 
                                                                          終わり  
 
 

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