沈んだ塔をロックブーケは進み、そして目の前に探していた物が現れた。  
記録した映像を再生する機械。何も知らない者には変わった姿見に見える。  
 「お兄様、今こそ秘密が…。」  
 その時ガヤガヤ騒がしい物音が近づいてきた。ロックブーケは嫌な予感がした。  
初めて会った時からいつもこっちの調子が狂わされる。とにかくイライラさせられる。  
必ず何か上手くいかなくさせる奴がちかづいてきているのではないか。  
 ロックブーケの予感は的中した。あの皇帝陛下ご一行だ。3児の母の落ち着いたジェシカは  
まだいい。だが皇帝アメジストとアンとメディアの若い娘三人はまさに  
人間台風のような迷惑な存在だった。  
 「あ、女王さんお久しぶりです。」  
 アメジストの挨拶は丁寧だ。しかしこの後いつもロックブーケは大弱りしてきた。  
 (まさかこんな所で…今日はいったい何が…。)  
 とにかく、こんな危険人物はこの大切な場所から一刻も早く遠ざけねばならないと  
ロックブーケは考えた。  
 (少なくとも調べ終わるまでは遠ざけておきたい。)  
 ロックブーケは腰に手を当て嘆息しながら言った  
 「こちらこそお久しぶりです。でも私ただいまここでやらないといけないことがあって…。」  
 ロックブーケがそこまで言った所でアメジストは 相手が話してるのもかまわず口を開いた。  
 「じゃあ、お手伝いしましょう。」  
 ロックブーケは困った。やはりこの娘達は一等級の悩みの種だった。  
 「で、出来れば一人にさせてほしいの。一人の方がはかどる事だから。」  
 しかしやはりアメジスト達はそれくらいではなんとかできなかった。だからこそ彼女達は  
一等級の悩みの種なのだ。アンが言った。  
 「一人で何をなさるんですか?女王様私達にも教えて」  
 
 ロックブーケのイライラが高まってきた。だがこの邪魔者達を、少なくとも  
アメジストとアンとメディアをここから調べ物が終わるまで遠ざけねばならない。  
ロックブーケは言葉を選んだ。しかし言う前にメディアが周りを見回して言った。  
 「ここに限った事じゃないけど変わった物いっぱいあるね。ああっ、もしかして女王様…。」  
 ロックブーケは静かに動揺した。まさかもう見抜かれたのだろうか。  
 「女王様、遺跡泥棒?」  
 ロックブーケは一息吸って強めの口調で言った。  
 「いい?この塔の秘密はね!!あなた達にはなあんにもね!!役に立たないことなの!!  
だから!!早く!!帰りなさい!!」  
 「秘密!?秘密って何ですか!?教えて教えて!!女王さん教えて!!」  
 ロックブーケの声よりも大きな声でアメジストがワクワクして聞いて来た。熱くなって  
うっかり言ってはならないことを言ってしまった。ここまできてはもう殺してでも力づくでも  
しないとこの皇帝は帰らないだろう。  
 「本当に…本っ当にうるさい!!やかましい!!騒々しい!!ハエみたいに!!いい加減に消えなさい!!」  
 と、激昂しているロックブーケの脇をスッとアメジストとアンとメディアが通り抜けた。そして、  
なんとあの映像再生機械の前に立った。  
 「秘密ってきっとコレだね。コレどうやるんだっけ」「私も忘れちゃいました」  
「ジェシカさんなら多分覚えてるよね。ジェシカさんこれどうやって動かすんだっけ」  
 「え?それはね…それはね…考え中です。」  
 アメジストが機械の周りのでっぱりを見ているのを見てロックブーケが慌てた。  
たぶん適当に、手荒に、やっちゃいけない順番や組み合わせや押し方で押すんだ、  
そうロックブーケは思った。  
 「待ちなさい!!触るとみんなの知りたがってる秘密が全部壊れてパーになるわよ!!  
…。しかたがないから…、私がやるから後ろで静かに見てなさい。静かにね。」  
 
 機械の状態は多分いい。ロックブーケが使えるが常日頃使っているようではない手つきで  
機械の準備をする。と、後ろから声がかかる。  
 「女王さんはチップ?クッキー?なんにしますか?」  
 どうやらアメジスト達はお菓子やら何やら取り出してるらしい。ロックブーケは  
ひきつった笑いを浮かべた。  
 「い、いや要らない…。いやそうじゃなくて!!静かにするだけじゃなくて  
散らかさないようにもして!!」  
 叱ってから記録された映像を再生させた。  
 
 ロックブーケは真剣に映像を見つつ音にも注意を払っている。アメジスト達もそれを見て  
眉間にしわをよせて前に顔を近づけた。ロックブーケと違って何が何やら5人にはよくわからないので  
映像をできるだけスケッチして聞こえた音や声は擬音で記録した。帰ってから考古学者を集めて  
見せるのだろう。  
 
 何度も何度も映像を停止させて細部を見つめたり同じところを繰り返して正確な音声を確かめた。  
そして完全に内容を知ったのかロックブーケは手紙を書き始めた。  
 「これでもうおしまいなのかな。」  
 アメジスト達も記録できる分は全て書いてしまったと思って映像が終わった後の黒い画面を  
なんとなく見つめていた。  
 ロックブーケの手紙が半分まで字で埋まった時、それまで退屈な黒い画面しか映していなかった画面に  
急に大きな、衝撃的な変化があらわれた。  
 
 画面はそれまで黒一色だったのが一転して明るくなり、そして、その明るい画面の中で  
裸の男女が抱き合っていた。  
 
 「うおあ!!」  
 目の前で繰り広げられる予想をはるかに超えた予想外の光景に思わずアメジストは  
声を出してあとずさった。アンもメディアもジェシカも後ろにのけぞった。  
音のない黒一色から突然明るい場所で抱き合う裸の男女の光景。全くの不意打ちであった。  
 機械からは荒い息遣いや叫び声が聞こえる。ロックブーケもアメジストの驚きの声で  
後ろを振り返り、同じ位驚いた。  
 皇帝陛下ご一行は唖然としていたがロックブーケはもう少し正気に戻るのが早かった。  
そして言った。  
 「何も、何もこんな物に上書きしなくたって!!他にもなにかあっただろうに!!」  
 その声で皇帝以下5人も我にかえったが「上書き」と言う言葉がよくわからなかった。  
多分この機械で使う映像を記録させておく道具の、古い記録を消して新しい記録  
を入れる事なのだろうと、アメジストはよくわからんなりに納得した。  
 それにしても、この気まずい映像をどうするか。アメジストは  
 「これ、よくわからないけど、楽しそう。でもいじめてるみたい。でもなかよさそう。でも…」  
 と思った。アンは声も出さずただ画面を見ている。メディアは何か考えているようだ。  
ジェシカは男が映る度に「ふぅ」と言っていた。彼女の旦那に比べると余程魅力が無いのだろう。  
 そして、今まで誰からも存在を気にされていなかった宮廷魔術師のライブラは  
突然上半身裸になって貧相なモヤシぶりを披露しつつポーズを決めた。  
 「俺が、一番、セクシ〜ん」  
 どうやら映像の男に対抗しているつもりらしいが女性陣は誰も映像の男に魅力を感じず  
そしてライブラには今まで通り無関心だった。  
 
 ロックブーケは考えた。この卑猥な映像をどうするか。この映像が終わった後に  
また重要な映像が始まるかもしれない。だがこれをのんびりみていると時間の無駄だ。  
早回ししよう、そう思った。  
 「これから早回しするから、画面が何か急に変わったら言って。」  
 急に映像の中の動きが速くなった。そして画面が急に変わったと思ったのでアメジストは止めさせた。  
 「何だ、場所が変わっただけじゃない。また早回しするよ」  
 その後も視点が急に変わった時やいつの間にか人が違う人に代わっていたりする度に止めて  
ロックブーケは説明して早回しした。  
 
 その内、ロックブーケの息が荒くなってきた。アンもメディアもとっくにそうなっていた。  
ジェシカはニヤニヤと笑っていた。アメジストは顔が赤くなっていた。  
 そして映像が終わって画面はまた黒一色に戻った。ロックブーケが確かめてみると残りは  
本当に無いようだ。  
 一同は沈黙した。ただ一人女性達にアピールを続けるライブラを除いて。しばらくして  
ロックブーケが沈黙を破った。  
 「あ、あの、もう一度初めから、観ない?」  
 若い三人娘は「い、いいよ。」と顔を赤らめて答え、ジェシカは何も言わずクスクス笑い。  
ライブラは「君が、言うならね。」と聞かれてないのも構わず精一杯のカッコイイ声で言った。  
 
 二度目の上映が終わり、三度目の上映が始まった。しかし三度目の上映が  
記録映像の最初からではなく、裸の男女が抱き合っている場面の最初から始まった事を  
疑問に思う者は誰も居なかった。  
 「ああ、アメジスト様、そんなに乱れては」  
 ライブラは興奮し過ぎて映像の中の男女を自分と残りの5人に置き換えて頭の中で  
楽しんでいるらしい。  
 女性達は身体をかすかに揺らしたり震わせながら、荒い息を吐いていた。  
ただジェシカだけは原因が微妙に違うようだ。彼女とダンナは本当にいつまでたっても熱々らしい。  
 「そろそろ飽きましたね。……いや!!もうこの記録道具の中には大事な映像は無いみたいですね。」  
 アメジストがうっかり、誰もが隠している本当の気持ちに通じる物言いをしかけて言い直した。  
 「ええ、じゃあ抜いときます。」  
 ロックブーケはまだ息が上がったまま機械から記録道具を抜き取った。それは金属質で  
銀色の表面をしている「札」のような物で、よく見ると表と裏の間に細かい隙間があって  
そこに記録の仕組みがあるらしい。  
 それを見ていたアンが思い出した様に口を開いた。  
 「それ、見た事あります。それで、実はちょっと持ち出してきました。」  
 
 「実は別の小さな遺跡と言うか大昔の小さな小さな建物があったんだけど、そこに。  
はい、ベッドの下に」  
 ベッドの下と聞いてジェシカは何か思うことがあったらしい。3人子供を育て上げたからこそ  
わかることのようだ。  
 「女王様これです。」「女王さんこれ使えますか。」「機械が壊れたらもったいないなあ  
どうしよ。」  
 「大丈夫、状態はしっかりしてるみたい。じゃあ、再生するよ。」  
 皆息を荒げて画面を見守る。  
 
 映ったのは美しい森だった。しばらく森のあちこちが映った後次は  
・・・青く澄んだ泉  
が映った。だからと言ってどうと言うことはないが。  
 「きれい…でも見た事ないな…行ってみたい」  
 メディアがうっとりして言った。  
 「多分…それは…」  
 ロックブーケが複雑な顔でつぶやく。  
 と、突然画面が変わった。ジェシカだけは全く驚いていなかった。むしろ、  
最初に森が映った時点でニヤニヤと笑っていた。だがその変わった後の映像は少し  
ジェシカの想像とは異なっていた。  
 美しい女性が二人立っていた。  
 
 ベッドの下、冒頭に美しい自然風景、そこまでくれば現代人でもジェシカにはその先の  
想像が出来た。  
 (またエッチな映像が始まるんでしょ。)  
 だが現れたのは美しい二人の女性だった。しかしジェシカは隠すような場所にあった事と誤魔化す様な  
細工がしてあったことがまだ気になっている。  
 二人の女性は向き合って見つめ合うと、口付けをした。皆この映像が何の為に記録されたか  
わからなくなった。興奮冷めぬロックブーケと三人娘はいやらしい映像を密かに望んでいたのだが。  
 「仲がよさそうですね。」「そうですね陛下」  
 だがメディアはどこかがおかしく感じられた。  
 「でも、陛下、少しこの二人、ただの友達が仲良くしてるだけじゃないような…。」  
 ロックブーケは、映像を見る目的が最初と違っている事にようやく気がついて、少しでも価値ある物を  
見つけようと注意して画面に目をやった。とは言え、まださっきの余韻が残っていていやらしい映像を  
待っているのもまた事実であった。  
 二人の口付けは女友達どうしのただの口付けにしては長くで深く、メディアの言うとおり何かが  
変であった。更にお互いを抱きしめ合った。まるで、これでは、恋人であるかのようだ。しばらくして  
ただ抱きしめ合うだけではなく、お互いの身体をやさしく、しかしどこかいやらしい様な手つきで  
撫で回し始めた。 離れた唇から漏れる熱い吐息。  
 「私は人妻です。ふしだらな真似はできません。そうです。例えこんな塔の中でも。」  
 ジェシカが意味深長な言葉を口にした。ジェシカがそう言ってほんの少し後、映像の中の女性達は着ていた  
衣類を脱ぎ捨て再び抱き合い口付けをした。しかし唇は離れ、相手の体のあちこちにさまよっていく。  
前の映像の余韻もあってアンもメディアもロックブーケも恥や躊躇い、理性の役目が限界に近くなってきた。  
もう少しすればさりげなくそれぞれ自分の身体に手を当てる事になるだろう。頭の熱をはかるためでなく、  
怪我した所をいたわるためでもなく。  
 だがそれよりも過激な事が起きた。アメジストがアンに飛びつきその唇を奪ったのだ。突然の思いもよらぬ  
出来事にアンが何も出来ないで居ると、熱にうなされたような顔をしたアメジストが言った。  
 「アン、あの人達みたいにすると、気持ちよくなるんでしょうか…。」   
 
 アメジストは側近にも答えづらい事を聞く事があるそして今は答えること自体が難しかった。  
黙っているとアメジストはアンに口付けをしたままアンを手でなで始めた。  
 (どうしよう。相手は皇帝…、いやそもそも女の子…、でも気持ちよくしてもらいたい…、でも)  
 アメジストの手つきは更にいやらしくいやらしくなっていき、口付けも濃厚であった。女同士で  
やってる。それも、皇帝に、されている。普通じゃない事である。アンはその普通じゃない事の  
もたらす快楽に抵抗しつつだんだんと浸って行く。と、突然アメジストが唇を離し、言った。  
 「アン、こうやって気持ちよくなるかまだわからないけど、私にも…してください…。」  
 アンの躊躇いが消えた。相手は皇帝で、自分と同じ女である。だがアンはその唇に己の唇を合わせ、  
服を脱いだ。見ていたアメジストも服を脱いでまたアンに飛びついた。そのまま二人は快感に酔い痴れた。  
 見ていたロックブーケは一瞬うっとりしてすぐ我にかえった。  
 (このままでは危ない。ここが頃合ださあ塔を出よう。)  
 と。だが足を踏み出した瞬間肩をつかまれた。メディアだった。  
 「こんな事するのって絶対おかしいと思う。でも、今すごくしたくてたまらないんです女王様。許して。」  
 ロックブーケは慌てて手紙の続きを書き始めた。メディアに嬲られながら書き続けた。やがて  
たまらなくなって服を脱ぎだしロックブーケの方からメディアに抱きついて行った。  
 ジェシカは、不義密通をしていないだけで淫らになっていたことは同じだった。旦那を思って  
そのスレンダーボディに手を這わせていた。ライブラは  
 「君達、いくら僕が恋しいからって相手を僕に見立てて女の子を抱くなんて…」  
 と片目をつぶってやれやれといった風にしていた。  
 
 三人娘はぐっすりと眠っていた。彼女達に布団をかけてやったジェシカも眠っている。ライブラは  
別の部屋で寝ているらしい。ロックブーケは手紙の仕上げにかかっていた。不意に手がロックブーケに触れた。  
3つも右手が。手紙を書いてる間にいつの間にか三人娘は起きていたらしい。  
 「女王さん…かわいい…」「陛下もかわいいですよ。女王様また遊びましょうよ」  
「悪いけど、ええと、ええと、もう一回してくださりませんか」  
 ロックブーケは三人娘に抱かれながら、快楽の渦に巻き込まれながら手紙を書き終え、  
快楽の渦に完全に巻き込まれた。  
 「お兄様、秘密はここに…。そして私の秘密もここに…。」  
 
 ロックブーケの兄のノエルは緑のタイツの半魚人から手紙を受け取った。  
 半魚人は薄くなって来た頭を気にしながら「私を野球場につれてって」を口ずさんで  
トウモロコシ畑に消えていった。ノエルはおや?と思ったがケネディ暗殺事件の犯人が単独だろうが  
複数だろうが気にしていないしボディガードなんて必要ないので特に後を追って夢の球場を作ったりなんて  
しなかった。代理父は…、多分短命種相手ではなろうとしないと思う。  
 ノエルは妹からの手紙を読み始めた。そこには妹の見つけた彼らの仲間達にとって重要な事が書かれてあった。  
ノエルは大切な情報がみつかった事、そしてそれを見つけたのが妹である事の両方に満足していた。  
 手紙の半分より少し詠んだ所でノエルは字がところどころ乱れて読みにくくなっていた事に気がついた。  
 (地震でもあったのかな。それとも夜なべして書いてフラフラになってたのかな)  
 などと思いながら手紙に顔を近づけた。すると、妹の香りがした。今まで気がつかなかったがほかの手紙も  
そうなのだろうか。ファイルを取り出して以前の手紙を取り出してみる。かすかにだが、香りがした、様な気がする。  
ふと気がついた。今日来た手紙の香りは少し違う。妹の香りもするが、他のにおいもする。これはいったい何なんだろう。  
 (きっと変な組み合わせの香水でも使ったんだろうな。やれやれ。)  
 ノエルはそう思った。まさか手紙を書いている間に3人の女に嬲られていたなんて夢にも思わないだろう。  
 
 妹の手紙で妹の香りをかぐと言う行為の変態らしさに気がついて恥じる事無く、ノエルは妹が年頃の  
娘だという事を思い出した。それも、今現在独身の。  
 (あいつ、相手いるのかな。)  
 ワグナスは、耽美っぷりに妹も妖しい世界に行きそうだ。スービエは、放ったらかしにして  
海に出そうだ。ダンターグも同じような意味でダメ。ボクオーンは、絶対上手くいかない。  
クジンシーは、実験に巻き込まれて次に会った時はゾンビになってたりしたら嫌だから無理だ。  
 (あれ?どうして仲間内だけで相手を探してるんだろう)  
 その理由に気がついてノエルの気が重くなった。もう同類はこの世界には居ないんだった。  
自分達は追い出されてそして戻ってき。いるのは姿こそ近いがはるかに短命な奴らばかり。  
生涯の伴侶になりえるはずがない。  
 暗い事を考えるのを中断してまた妹の婿殿候補の事を考え始めた。まあもしも同類たちが  
大勢残っていても、戦いに加わって英雄と呼ばれるほどの働きをした女とは付き合い難いと  
思う者も多いだろう。妹はダメな女ではない。凄過ぎても相手は見つからない。自分達に近くて、  
自分達の同類で、妹の強さを受け入れてくれるような理解者はいないか。  
 そこまで考えてノエルははっとした。それから震え始め、震えが大きくなり大声で笑い始めた  
。そして叫んだ。  
 「いやあやっぱり持つものは友達だなあ。サグザー、妹を幸せにしてくれよ。」  
 それから立ち上がった。自分も沈んだ塔に行ってみよう。  
 
 ノエルは沈んだ塔をどんどん進んでいった。そして妹ロックブーケの手紙にあった、  
記録映像再生機械の部屋にまで来た。そしてその部屋に来た時、ノエルが目にした物は、  
あちこちの遺跡からかき集めた記録道具、記録映像再生機械が映し出す淫らな映像、  
そして、愛の嵐にに荒れ狂う愛すべき妹とそれを取り巻く女達だった。  
 三人の若い女性が妹を「女王」と呼び、体の限りを尽くして妹にいやらしく仕えている。  
そして妹がそれを受けてうめき、あえぎ、吼えている。  
 ふと妹がこちらに気がつき、兄が何を見てるか何を思ってるかも考えずに能天気に大きな  
甘い甘い甘ったるい声で叫んだ。  
 「ノエルお兄様あああああん!!」  
 ロックブーケは叫んだ後も相変わらず三人娘との愛の嵐に燃えていたが、ついさっき自分が  
言った言葉を思い出し、誰に向かって言ったかを思い出し、誰が来てるか気がついた。  
 ロックブーケは大慌てで衣類を身につけ、三人娘もジェシカに手伝ってもらってすぐ服を来た。  
 妹の醜態、そして自分に向かって放ったあの言葉とその様で呆然としていたノエルは我にかえると  
空かさず妹をしかりつけた。竜だろうがシロアリだろうが驚くくらいの声で。  
 「コラッ!!ロックブーケ何をしている!!そんなエッチな遊び、私は教えた覚えはないぞ!!  
おまけに一人で遊んでいるだけならまだしも人をさらってそんな事をさせるとは!!ただでは許さないぞ!!」  
 ノエルの怒りの迫力に6人は全員震え上がって身動きが取れなくなった。実際には皇帝達の方が  
ロックブーケにしかけていたのだが。  
 「お、おに、おに、お兄様、違うんです!!この皇帝どもが…」  
 「言い訳をするな!!さあ早くこの子達を家に帰してやりなさい!!」  
 しかしジェシカが丁寧に断る。  
 「いえ大丈夫です。この子達は私が連れて帰りますので。それに、こう見えてもすごく強いですから。」  
 そうですかそれはどうもとノエルが礼をし、ロックブーケの手を引いて出口に向かっていった。あまりにも  
衝撃的な光景を見て、自分で妹が書いていた記録映像を見ようとしていた事などすっかり忘れていた。  
 
 塔の部屋には皇帝達5人だけが残った。まだノエルの怒りの気が残留しているように彼女達は思った。  
少し経って皇帝が口を開いた。  
 「かっこいいおにいさんでしたね」「そうですねえ」「追いかけませんか陛下」「追いかけたいですねえ」  
「じゃあ追いかけましょう」「それがいいそうしましょう」「そうしましょうそうしましょう」  
 ジェシカはやれやれと苦笑している。ライブラは「かわいそうにあんな男に引きずり回されて…、  
どれ、僕が解放してあげようか。」と着替えなおして言った。彼の解釈ではついさっきの一件のせいで  
両足の間にたっぷり汗をかいてしまったからだ。  
 塔の外に出てから兄と妹はさっきの剣幕が嘘の様に仲良く歩いている。いや、イチャついている。  
しっかり手と手を握って歩いている。まるで恋人である。  
 イチャイチャしながらゆっくりゆっくり歩いていると、二人の目の前に奇妙な物が飛び込んできた。  
それは、言うなれば黒い塔のような物体であった。黒いマントをとても背の高い者が全身に巻きつけたら  
そうなりそうな物体であった。ノエルが身構えた。  
 「一体何者ですか。妹に手は出させませんよ。」  
 すると黒いマントからくぐもった声が出た。  
 「…違う…。…お前…お前の…。」  
 「では、まさか私の命が狙いですか」  
 「…違う…」  
 「一体、一体あなたの望みは何ですか!?」  
 その時黒いマントが裂け、三つの人影が飛び出した。  
 「あなた全てっっ!!」  
 ノエルが行動に出るよりも早く三人はノエルに組み付いてノエルは倒れこんだ。  
 アメジストはノエルの胸にまたがってノエルの顔中にキスをしていた。  
アンとメディアはノエルの腕をそれぞれ自分に巻きつけている。  
 「一番の獲物の一番いいとこはまず皇帝の物です!!たった今、限時の特別法でそうなりました!!」  
 「ああっ たまらないワッ あいしてるワッ! だいてッ だきしめてェーーーーーッ!!」  
 アンは初めて見る極上のいい男に火の鳥のように燃え盛っていた。  
 「ごめんなさい!!今日今この瞬間だけ浮気を許して!!」  
 浮気した事を一人で謝っているメディアを見てジェシカはやっぱり自分は幸せ者だと思っていた。  
ノエルの様ないい男をみてもジェシカは旦那一筋の女だった。あんないい男を婿にできた自分のような  
運がいい女はどれだけいるのだろうかなどと自惚れていた。  
   
 全てが終わった後には、全身にキスマークをつけ放心しきったノエルがうつぶせになってな何故か尻に  
意味もなくティッシュを挟んで倒れていた。皇帝達の処女は守られていた。皇帝達はそんな事はやりたく  
なかったしノエルは何もまったくやりたくなかったし、そもそもノエルは全く身動きが取れなかった。  
 それでもやっぱり男と女と言う事で、あんな三人に性的興味なんてなかったはずなのに気が付けばノエルの  
アレは立っていて、今発射した。  
 ノエルの酷い有様を見てシクシク泣いていたロックブーケの手をとろうとしたライブラはロックブーケに  
その手をつかまれブンブン振り回された後、皇帝達がノエルの事を顔を赤らめて話しながら去っていった方角へ  
投げ飛ばされた。  
 「あの人よりもいい男なんてこの世界に居るのか知ら」「きっとこの世界ではいませんよ陛下。」「ごめん。  
でも、本当にいい男だったんだもん。」そう言い合っている三人と引率してるジェシカの前にライブラが突き刺さった。  
 「これは愛情表現の一つ。そしてこんなに力を振り絞ってすると言う事はそれだけ僕への愛が深いということか。  
ありがとうレディー。」  
 地面に突き刺さった身体を引き抜いてライブラは4人の後を追った。  
(完)  
 

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