浮遊城の守りは厳重で計算されていた。だがそれも元フリーメイジの皇帝アルゴル  
の強大な術の数々によって破られ抜かれていった。そして皇帝たちは浮遊城の主人と  
対面したのであった。  
 天使とも精霊とも見える神々しい姿が舞い降りてくる。フリーファイターのハーキ  
ュリーは構えた。帝国猟兵のフリードリッヒは気合をためているようだ。武装商船団  
のマゼランは、相手にとって不足なしと言うように軽く笑い帽子をつまんだ。格闘家  
のベイダーは何も言わず相手をにらみつけている。そして皇帝は  
 「ありがたやありがたや。」  
 と拝みだした。全員がよろめいた。  
 「こんな時に何やってんすか。」  
 大声でフリードリッヒが叫ぶと皇帝がもじもじしながら答えた。  
 「いや、だって、あいつ、ごりやくありそうっしょ。ハゲたくないし、もしかした  
ら棚の裏から大き目の小銭が見つかるかもしれないし、まだモテたいし。」  
 皇帝の近衛兵は4人とも顔を赤らめてうなだれた。そして更に背後から敵の笑い声  
が聞こえてきた。  
 「はははまるで私は神様か何かにみえるようだね。褒めてくれて嬉しいよ皇帝。」  
 近衛兵達は敵意に満ちた目で振り向いた。しかし今度こそ4人の士気を完全に打ち  
砕く言葉が皇帝アルゴルの口から出た。  
 「ありり。わしって何でここにいるんだっけ。今日の朝なに食べたかは覚えとる。  
楽器やって綺麗な何かに運んでもらったのも覚えとる。皇帝に即位した時も覚えとる  
。山を登っていった時も覚えとる。皇帝になる前の事も前の皇帝の事も覚えとる。  
でも、何でわしここにおるんだっけかな。それだけよう思い出せんでかんわ。」  
 もう近衛兵の4人は風にそよぐ稲穂のように打ちのめされて辛うじて立っていた。  
そして浮遊城の主人が優しく問いかけた。  
 「君達の皇帝はどうやら私には少なくとも敵意はないようだ。皇帝の意思を重ん  
じて今日は帰ったらどうかな皆さん。」  
 ハーキュリーズはこぶしを握り締めて悔しさに震えたが今の状況ではとても戦え  
なかった。敵の言う通りにするのが賢明だったが、果たして信用できるのか。  
 「いや何、もしも私がだまし討ちをしようものなら、断末魔の記憶を継承した次  
の皇帝が私の友人達に言いふらせばいいだろう。友人たちの指導者である事を誇り  
に思っている私はきっと耐えられないだろう。だから安心して信用してくれ。」  
 
 かくして皇帝達は再び地を離れていった。惨憺たる思いであったが空からの眺め  
と飛んでいる感覚はそれを幾らか慰めてくれた。マゼランは目をつぶりまた軽く笑  
った。  
 次々に近衛兵達は地上に降り立って行った。気がつくと誰も彼も顔が晴れていて  
次に降り立つ者に楽しげに手を振ってさえいた。敵に情けをかけられて子供のよう  
に帰らされた事など忘れたか、思い切って帰りの飛行を楽しむために考えないよう  
にしていたのかはともかく、彼らは笑っていた。そして浮遊城に最後に残っていた  
皇帝が飛ぶ番になった。  
 「あ、わしもお願い。」  
 少し戸惑いながら言う皇帝に浮遊城の主人は微笑みながら?まるように促した。  
 「やっぱり空はええわ。うん、行きの時も良かった。下りてくのもええな。」  
 何だかんだと言って楽しんでいた近衛兵と同じく皇帝も飛行を楽しんでいた。遠  
くを眺めては感嘆の声を上げていた。そしてそれを浮遊城の主人は優しく聞いてい  
た。  
 (それにしても…。)  
 アルゴルは思いはじめた。  
 (男のはずなんじゃけんども…。)  
 次第に呼気が熱くなってきた。  
 (いい胸しとるわ。あちこちの着替えや風呂場覗いて来たがこんなのは色と言い  
形と言いまさに稀代の逸品ってもんだわ。)  
 アルゴルの手が汗ばみ始めた。だが?まれている方はまだそれに気がついては居  
なかった。  
 (触ってみたいのう。だが、男の胸触ったなんてバレたらどう言えばいいか。い  
や、旅の恥は書き捨てとも言うしな。ありり。何か違うような気がする。)  
 アルゴルは触りたい気持ちととがめる気持ちで葛藤していた。触ろうかやめるか  
考えられている相手はまだそうとは知らずに地上へ下り続けていた。アルゴルの苦  
悩が頂点に達した時、無意識のうちに手がワグナスの胸をつまんだ。  
 ワグナスは驚き大きく体制を崩した。  
 「皇帝いくらなんでも戯れが過ぎますよ!!」  
 ワグナスが声を荒げる。怒鳴られた方も驚いた。触る気などなかったのだから。  
 「いや、これは、わしもモウロクしたと言うか、体が勝手に動いたんじゃ。悪気  
はなかった!!すまん!!」  
 ワグナスは少し怒ったが気を取り直してまた下り続けた。アルゴルは恥ずかしい  
やら申し訳ないやらで縮こまっていた。しかしだんだんと、別の気持ちが浮かんで  
きた。  
 (見た目もすごかったが、手触りもよかった。)  
 アルゴルの「タガ」が外れ始めていた。二回目は最初よりもためらうことなく起  
きた。アルゴルの片手がまたワグナスの胸をつまんだ。  
 「ひゃっ!!」  
 ワグナスが甲高い声で叫んだ。普段の彼が出す声ではなかった。ワグナスは本気  
で怒鳴った。  
 「皇帝!!こんな事を続けるようなら次にした場所からそのまま落ちてもらいます  
よ!!」  
 アルゴルは目をつぶってワグナスの怒りを聞いていた。  
 「ひいぃいいいいいいええい!!もうどうにでもなれじゃ!!」  
 アルゴルは素早く回り込むとワグナスの腰にカニバサミをかけて両手で胸をいじ  
り始めた。  
 
 「上手い身のこなしだ…あの年にしては…組み技を磨かせたら面白くなりそうだ  
…。」  
 アルゴルが見せた一瞬の蛇のような動作にベイダーが感心していた。空中の様子  
は今や地上組からも見えていた。  
 「何やってるんだうちの皇帝は!!これが地元じゃなくてよかったぜ…もし…そう  
だったらもう家に帰れねえよ。」  
 フリードリッヒがあきれ果てて腰を下ろして言った。空中ではまだ「取っ組み合  
い」が続いていた。  
 「やわらかさと言い、張りと言い、お前さんのは国宝級じゃ!!ええいこれがわし  
の馬鹿弟子どもについておったら…。こら!!男が胸揉まれて変な声出すな!!根性が  
足りんぞ根性が!!それともお前変態か!?」  
 ワグナスは必死に振りほどこうとするがアルゴルのカニバサミはしっかりと極ま  
っていてほどけそうになかった。  
 「変態!?そりゃ男の胸を両手でつかんでるあなたでしょう!!大体馬鹿弟子につい  
てたらだって!?あんたまさか弟子に手を出してるのか!?」  
 「手を出しただと!?口利きの悪い…師と弟子が親交を深める微笑ましい一場面じ  
ゃ!!どいつもこいつもかわいげはあるが少し心音を聞こうとするだけでこの玉体に  
張り手をくらわしおって…っていやその…。」  
 「お師匠さん!!もしかして嫌われてるんじゃないですか!?お弟子さんの胸が私の  
様であろうなかろうと、きっとあなたは相手が許すままに吟味しつつゆっくりしっ  
かり感触を楽しむ事なんて出来ませんね!!」  
 「このオカマ野郎が!!こうしてくれるわ!!」  
 そう言うとアルゴルは両腕でワグナスの腹をしっかりと締め付け、左胸の乳首に  
吸い付いた。  
 「もう我慢できん。つぶれてしまえ!!」  
 ワグナスは腹にアルゴルをつけたまま急降下し始めた。見る見る地上が近づく。  
寸前でワグナスは急ブレーキをかけ、アルゴルだけを大地に叩きつけるつもりだ  
った。しかしその時になって  
 「くはっ」  
 アルゴルの一噛みでワグナスはタイミングを失い、仲良くそろって地上に激突  
した。  
 横たわる二人をしばらく無言で近衛兵達は見守っていたが、ベイダーが仰向け  
になっているワグナスに覆いかぶさってその両肩を押さえた。  
 「わーん、つーーーーーーーーー、すりー!!獲得!!」  
 何を獲得したかはベイダーも深くは考えていない。皆月光なりなんなり皇帝を  
回復する手段は持っていたはずだがなぜか誰も使っていなかった。  
 月光を使ったわけでもないのに光がさしてきた。そしてフリードリッヒが叫ん  
だ。  
 「やるぞ!」  
 「え?少し違うんじゃない?」  
 ハーキュリーが不自然に思った。マゼランが帽子を直してため息をついた。  
 「やれやれだぜ。」  
(完)  
 

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