私はT260J、個体識別名テムジン――御嬢様をお守りする戦闘メカにして執事である。  
 そう、私は機械なのだ……悲しみという感情はないはずだが、これはどうしたことか?  
 旦那様の死は、ことのほか堪えた。  
 私を発掘、修復してくれたばかりか、屋敷に置いてくださった旦那様。  
 その正体は、様々な世界の平和を守る、ガーディアンズのたいさだったのだ。  
 勇敢で探究心に富み、誰よりも懐深く優しかった旦那様は、もういない。  
 私は今、どうやら皆と同じ気持ちを共有しているようだった。  
 しかし、一番お辛いのは――間違いなくエミリィ御嬢様のはずだが。  
「ごめんなさい、エミリィさん。私のせいで、おじさまが」  
 少女の名はリン、この家で病を患った母親と二人暮らしをしている。  
 旦那様は世界を股にかけて冒険する傍ら、友の忘れ形見の面倒もみていたのだ。  
 それは御嬢様との間に些細な誤解を生じさせたが……それも今は解消された。  
「泣かないで、リン。わたしはへいきだよ。リンはなに悪くない、ね? テムジン」  
 私は頷く代わりに、いつも通りメインカメラを点滅させるしかない。  
 リッツとマルムは、健気にリンに微笑む御嬢様から目を逸らした。  
「わたしね、うれしいの。パパはママやわたしのこと、嫌いになったんじゃなかった」  
「エミリィさん……」  
「パパ、やさしいから。それにね、妹ができたみたいで……わたし、うれしいの」  
 御嬢様は、顔をクシャクシャにして泣き出したリンを抱きしめた。  
 まるで赤子の様に、声をあげて御嬢様の胸でリンは泣き叫ぶ。  
「ごめんなさい! ごめんなさい、エミリィさん! 私……ごめんなさいっ!」  
「いんだよ、リン……こわかったね。でも、もうだいじょうぶだよ」  
「私が敵に捕まったから! だからおじさまが……し、死んっ、死んじ……ワァッ!」  
「泣かないで、リン。いい子だから」  
 リンの背をポンポンと優しく叩いて、幼子をあやすように御嬢様は言葉を続ける。  
 奥のベットではリンの母親も、声を殺して泣いていた。  
「リン、パパがリンを守ったように、こんどはリンがママを守らなきゃ。ね?」  
「エミリィさん……はい。ごめんなさい、私ばっかり泣いて」  
「ふふ、いいの。リンはだって、わたしのかわいい妹だもの」  
 泣き腫らした目で見上げるリンの頭を、御嬢様は優しく撫でて……そっと身を離した。  
「じゃあリン、わたしたちもう行くね……ママのこと、だいじにしてね?」  
「……はい」  
 リッツが、次いでマルムが部屋を出てゆく。  
 御嬢様は最後に、満面の笑みでリンを強く抱きしめると……元気良く夕日の街へと歩み出た。  
 
 ……気丈に振舞う御嬢様に、このとき私は旅での成長を感じていたが……やはり悲しかった。  
 
「ゴメン、リッツ……少し一人になりたいんだ。後で……天の柱で落ち合おう」  
「……解った。兄弟、後でな」  
 リンの家を辞して街を出るなり、マルムが一人呟いた。  
 がいこつせんしの骨が、カタカタと鳴る……まるで泣いているように。  
 その少しすすけた背中を、ポンと叩いて押し出すリッツ。  
 互いに長い付き合いなれば、男と男の不器用な気遣いがいきかう。  
「うん。少し一人で泣いてくる。この体で泣ければだけど。エミリィのこと」  
「ああ、任せろ。あのバカ、ガラにもなく強がりやがって」  
 そんな二人のずっと前を、エミリィ御嬢様は元気良く歩いていた。  
 私達は今、再び天の柱を目指して森を抜け――旦那様の意思を継ぎ、新たな世界へ。  
 マルムが一人姿を消すと、リッツは私を追い越し御嬢様に並んだ。  
 寄り添い歩く二人の姿は、どこか物悲しさを私に感じさせ、炉心が不安定になる。  
「あれ、マルムは? まいごかな? よーし、わたし探してくるね!」  
 振り向き駆け出そうとした御嬢様の、細い手首をリッツが掴んだ。  
 マルムがどれ程旦那様を尊敬していたか、私には解っているつもりだ。  
 利発的で賢いマルムに、書を貸し知識を与え……我が子の様に接したのも旦那様。  
 だから村一番の悪知恵小僧は、悪さはしても卑怯なことはしなかった。  
「……もういいぜ、エミリィ」  
「え、でもマルムが」  
「俺等にとってもオヤジみたいな人だったからよ……多分あの、リンってガキもそうだろ」  
「う、うん」  
 リッツは御嬢様の手を引き寄せ、しっかりと抱きしめた。  
「エミリィ、もう我慢すんな……偉かったな。ガキの前じゃ、泣くに泣けないもんな」  
「リッツ……ふ、ふぇぇ、リッツゥゥゥ!」  
 今までせき止められていた感情が溢れ出て、御嬢様の瞳に大粒の涙が浮かぶ。  
 リッツの胸の中で、御嬢様は顔をクシャクシャにして大声で泣き出した。  
 ずっと我慢しておられたのだ……本当は誰よりも真っ先に、泣きたかったのだ。  
 そして私は、泣きたいのを今も懸命に堪えているリッツに感謝した。  
「リッツ、リッツゥゥゥ! パパが、パパがぁ! ひっく、ひっく……」  
「……おっさんはよ、俺に剣や銃を教えてくれた……悪さが過ぎれば殴ってもくれた」  
 村のワルガキコンビにとって、旦那様は唯一にして絶対の存在だった。  
 時に師であり、時に目標であり……そしていつでも父親だった。  
「みんながね、パパのことね、死んで悲しいって……だからわたしね、がまんしよって……」  
「エミリィ、だから頭弱いって言われんだよ。泣けよ、泣いて少し忘れちまえ」  
 リッツにしがみ付いて、御嬢様は声を張り上げて泣きじゃくった。  
 静けさを湛えた森に、御嬢様の泣き声だけが響く。  
「リッツは……リッツは、泣かないの?」  
「俺ぁ泣かねぇ! 泣くかよ……クソッ! おっさんの代りに俺が、全ての秘宝を集めてやる」  
 決意も新たに、歯を喰いしばって涙を堪えると……リッツはそっと御嬢様の金髪を撫でた。  
 以前より少し逞しい胸に抱かれ、遠くへ視線を投ずるリッツを見上げて。  
 御嬢様は爪先立ちで背伸びをすると、震える唇に唇を重ねた。  
 
 ……私はこのとき、どちらからともなく茂みの奥へと互いを誘う、二人から少し距離を置いた。  
 
 エミリィ御嬢様もリッツも、まるで言葉を忘れたように押し黙っていた。  
 しかし互いにしっかりと手を結び、自然と巨大な古木の根元へと歩む。  
 御嬢様は樹齢ゆうに千年を超えるであろう幹に、背を預けて寄りかかった。  
「リッツ、少しだけ……今だけパパのこと、わすれさせて……おねがい」  
 搾り出すような、切なげな声をリッツがくちづけで遮る。  
 そのまま身を重ねて互いの背に手を回すと、二人は互いの唇を吸い合う。  
 舌を絡ませ唾液をすする、淫靡な湿った音が夕暮れの森に響いた。  
「今だけ忘れようぜ、エミリィ……これからずっと、おっさんのこと忘れないためにもよ」  
 光の糸を引いてふやけた唇が離れると、リッツの言葉に御嬢様は小さく頷く。  
 リッツの両手が御嬢様の細い腰を左右から包んで、そのまま白い肌を撫でながら下ってゆく。  
 僅か薄布一枚、下着同然のエスパーガールの戦衣に指を掛けて、リッツは屈みこんだ。  
「あっ、まってリッツ……んとね、泣くのだけ、がまんしてたんじゃなの……その、えと」  
 豊満な胸の前で両手を握って、もじもじと御嬢様は視線を逸らす。  
 それに構わず、リッツは御嬢様の唯一の着衣を膝まで下げた。  
 薄い茂みの股間が露になると、御嬢様は足を交互に上げて薄布を脱ぎ捨てる。  
「ん? どしたエミリィ」  
「ごめんリッツ……さっきまでね、ずっと悲しくてわすれてたの。あの……」  
 立ち上がるリッツの耳元に唇を寄せて、御嬢様が何かを囁く。  
 私は集音機能を最大にして、その恥ずかしげなつぶやきを拾った。  
 端的に言えば、御嬢様は小用をもよおしているらしかった……激しい尿意に内股気味で身を捩る。  
「なんだよエミリィ、ションベンかよ……はっ、はは。まあ、お前らしいや」  
「は、はずかしいよぅリッツ、言わないでぇ〜! ちょ、ちょっとまってて、すぐに……」  
 手近な草むらに駆け込もうとする御嬢様を、リッツは背後から捕縛して抱き上げた。  
 そのまま両の膝裏を撫でつつ、太股を抱えて持ち上げ足を開かせる。  
 それは幼児に用を足させるようなポーズとなり、御嬢様は羞恥で耳まで真っ赤になった。  
「や、やぁ……リッツ、はずかし……もれちゃうんだよ? もうがまんできな、ヒッ」  
「いいからして見せろよ、エミリィ。な?」  
 御嬢様のうなじへと舌を這わせながら、長く尖った耳を甘噛みしつつリッツがささやく。  
 息を荒げて僅かに抵抗しつつも、御嬢様は短い悲鳴と共に身を震わせた。  
「ふ、ふぁぁ……リッツのばかぁ、見ちゃだめぇぇぇ!」  
 勢い良く黄金の雫が迸り、それはとめどなくアーチを象りながら噴出し続けた。  
 御嬢様は親指を噛みながら顔を背けつつも、呆けた表情で開放感に酔いしれていた。  
「随分我慢してたみてぇだな、エミリィ。でもよ、これは……ションベンじゃねぇよな?」  
 ようやく放尿を終えた御嬢様を降ろし、足元の水溜りへと視線を落としながら。  
 リッツは背後から御嬢様の股間へ手を伸べ、その秘裂の中で遊ばせた指をゆっくり引き抜いた。  
 御嬢様の鼻先へと運ばれたその指は、尿とは別の粘度が高い液体に濡れていた。  
 
 ……ニチュニチュとリッツの指の中で、御嬢様の秘蜜が淫靡な音を奏でるのを私は聞いた。  
 
「エミリィ、お前ションベンして感じちまったのか? 普段より濡れてんぞ、これ」  
「そ、そんなことないもん! そんなこと……ないもん」  
 真っ赤になって俯くエミリィ御嬢様を、リッツは抱きしめ頬に唇を寄せた。  
 その優しいキスに御嬢様も、振り向き見上げてキスで応える。  
「ほんとかぁ? こんなに濡れて、糸引いてんだぜ?」  
「それはリッツが、ん、ふっ……んんっ」  
 リッツは愛液の滴る二本の指で、御嬢様の唇に触れ……その蕾の奥へと差し入れる。  
 御嬢様は夢中でリッツの指にしゃぶりついて、丹念にその汚れを舐めとった。  
 そうしている間も、リッツのもう片方の手がたわわに実った乳房を揉みしだく。  
 たしかな重みと弾力、その張りと艶を楽しみながら、リッツはその頂点のしこりを指でしごいた。  
「おら、乳首勃ってんじゃねぇか。やっぱいつもより感じてるだろ、どうみても」  
「ひょ、ひょんらほと……ふ、はっ……ひゃんっ!」  
 御嬢様の舌を指でもてあそびながら、キュムと乳首をつねりあげるリッツ。  
 僅かに身を痙攣させて、御嬢様は軽く絶頂に達してしまった。  
 リッツの腕の中で天を仰ぐ御嬢様の耳に、リッツは卑猥な言葉をささやき続ける。  
「う、うん……こう? リッツ、なんかいつもよりはずかし……」  
「そうそう、もっと尻を突き出せよ」  
 御嬢様はリッツに言われるままに、古木の幹に手をつき腰を突き出した。  
 白い尻を撫でながら、その前にリッツが屈みこむ。  
「だめだよぉ……リッツ、きたな……きょうはたくさん汗かいたし、それに、おしっ――」  
「だから綺麗にしてやるって」  
 ピチャリと湿った音が響くや、御嬢様が身を仰け反らせて身悶える。  
 それに構わずリッツは、御嬢様の濡れそぼる秘所へと顔を埋めて舌を差し入れた。  
 わざと音をたてて舐め、その雫をすくいとるように吸う。  
 とめどなく溢れる淫液に汗と尿の残滓が入り混じり、リッツの劣情を激しくかきたてた。  
 私の場所からでも、屈んで片膝をつくリッツの股間の膨らみが確認できた。  
「そろそろいいか……エミリィ、こいつが欲しいだろ?」  
 唇を舐めながら立ち上がったリッツが、おもむろに股間のジッパーを引き下げた。  
 隆々と漲る屹立が、充血した血管が浮かぶ姿を現した。  
 それで尻を何度か叩かれ、さらに谷間に竿をこすり付けられると……御嬢様はたまらず喘ぐ。  
「リッツ、じらさないでよぅ……はやく、入れ、んはぅ!」  
 肩越しに振り返り、汗で背中に張り付く金髪を揺らして御嬢様がねだった瞬間。  
 リッツは剛直で一気に御嬢様を貫いた。  
 そのまま細い腰を両手で固定すると、ゆっくり引き抜き……再度奥の奥まで深々と挿入する。  
 挿抜は次第に間隔を縮めてゆき、次第に肉と肉のぶつかる瑞々しい音が響き渡った。  
 リッツの荒い息遣いと、御嬢様の嬌声と、汗の弾ける肉の音と、粘膜の奏でる淫らな音。  
 やがてリッツは絶頂に達して僅かに身震いすると、長い時間断続的に御嬢様の中へ精を放った。  
「あは、おなかの中でビクビクいってる……いっぱい出たね、リッツ。リッツ?」  
 
 ……私はリッツが御嬢様の金髪に顔を埋めて、涙も流さず泣いているのを見た。  
 

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