私はT260J、個体識別名テムジン――御嬢様をお守りする戦闘メカにして執事である。  
「っしゃぁ! 酒も女もっ、ガンッガンこーい! ローニンさんも飲みなって」  
「……いや、拙者には……おたま殿が。リッツ殿、その……御主にもエミリィ殿が」  
 この世界は独特な文化圏で、非常に古風な封建制度で成り立っていた。  
 私達はそこで、えちごやの悪を暴き、しょうぐんを操る黒幕のおおごしょを倒したのだ。  
 それも全て、ガーディアンの一人であり、旦那様の旧友でもあるローニン殿の協力の賜物。  
 秘宝も残すところあと十個、それにしても良く集めたものだ……集めさせられたのか?  
 私の中で、集まる秘法の数に比例して、あの神への疑念は高まってゆく。  
「ふーん、だ。リッツったら、ちょっとチヤホヤされてるからって……いこ、マルム」  
「まあまあ、エミリィ。リッツは昔からお調子者だしさ。煽てられると弱いんだよ」  
 エミリィ御嬢様は不機嫌だった……リッツのあの、緩みきった顔を見れば無理もない。  
 この世界の救世主となった私達の中でも、リッツはとりわけ女達から好意を寄せられた。  
 悪童として名高いリッツは、その顔は二枚目半だが味があり、言葉で表せぬ愛嬌が感じられる。  
 このよしわらなる遊郭街の花魁達にもてはやされるのも、無理もない話だった。  
 私は、ローニン殿を巻き込んで酒池肉林にふけるリッツを尻目に御嬢様に続いた。  
「そりゃ、リッツはかっこいーけどさ。それに、やさしいし……」  
 マルムを引きつれ、俯き独り言を零しながら歩く御嬢様を追う。  
 見た目の成熟した麗しさに反して、御嬢様は精神的には多分に子供に過ぎた。  
「まあ、今夜くらい大目に見てあげてよ。エミリィ、しゃちほこの件で助けて貰ったじゃない」  
「だってー、あれはー……うん。リッツ、わたしのこと助けてくれた。けがまでして」  
 マルムの言葉に足を止め、御嬢様はつい先程の決戦を思い返した。  
 それは異国の城を登り詰め、その屋根でおおごしょとの決着を控えた時のことだった。  
 好奇心旺盛な御嬢様は、城の屋根に飾られた黄金のしゃちほこへと、興味本位で手を伸ばした。  
 それは、城を守る守護獣にして凶悪なトラップだった。  
 突如あらぶる闘魚と化したしゃちほこが牙を剥き、無防備な御嬢様を襲ったのだ。  
 身を挺して助け、さんごのつるぎでしゃちほこへ鬼気迫る一撃を放ったのは……リッツだった。  
「リッツはいつでも、エミリィのことを一番に考えてるよ。それは僕が保障する」  
「うん……だからうれしいけど、むねがワサワサするの。それにね、マルム」  
 ――いちばんに考えてくれるの、リッツだけじゃないよね?  
 そう言って御嬢様はマルムを伴い、寝室の戸を引いて明かりを付けた。  
 リッツがこの世界の女達と騒いで酒に酔う、その喧騒が遠くより聞こえる。  
 御嬢様はマルムを招き入れ、私が続くのを待って、楽しげに響く声を遮るように戸を閉めた。  
 
 ……私はこの時、まさか現状のマルムにあんなことが出来るとは思いもしなかった。  
 
「ねね、マルム。今日はいっしょにねようよー?」  
「いや、この体だと布団をベットベトに汚しちゃうから……って、エミリィ!?」  
「ふふっ、マルムの体、ひんやりしててきもちいいー! スライムみたいー!」  
「スライムなんだよ、もう……溶かしちゃうよ? そんなこと言ってると」  
 エミリィ御嬢様は胸の内の想いを振り払うように、身に付ける薄布を瞬時に脱ぎ捨てる。  
 そうしてあられもない全裸になると、無邪気にマルムの体へと身を預けた。  
 肉を食べるたびに進化、変化を続けるマルムは、この世界ではあおとろろになっていた。  
 スライム系のその体は粘液質で構成され、不純物の微妙な配合が怪しい青色に輝いている。  
「ふー、ごくらく、ごくらく……なんか、ウォーターベッドに寝てるみたい」  
「あのね、エミリィ。その、こんな体でも僕は一応、男なんだからね?」  
 私がスキャンした限りでは、スライム系のモンスターには性別がなかった。  
 例えば故郷のせんせいがそう……スライムは個で繁殖する故に、性別は存在しない。  
 それでもマルムが男を主張するのは、彼自身が生まれた時の形態がオスのモンスターだったから。  
 巨大な弾力をもつ粘液の塊が、中央に光る一つ目を光らせて、覆い被さる御嬢様に抗議の声を上げる。  
「ふーん、おとこのこなんだ。まえの体はちっちゃいけど、おちんちんついてたよね」  
「ちっ、ちっちゃいって言わないでよね、エミリィ……まあでも、この体はこの体で、ね」  
 不敵にマルムが笑うや、その体の中へと御嬢様の痩身が沈み込む。  
 表面張力で形を象っている、液体ゼリーのようなマルムの全身が御嬢様の下半身を包んだ。  
 それは私には、マルムという浴槽に御嬢様が半身浴の形で浸かっているようにも見える。  
「わ、わっ!? な、何!? びっくりしたー、わたしマルムの中に入っちゃった」  
「エミリィ、太った? 村で暮らしてた時より、お尻がや太股が……」  
「ふとってないもん! ちがうもん、ちょっとグラマーでセクシーになっただけだもん!」  
「うーん、まぁそゆことにしておこうか」  
 確かに私が計測した限りでは、御嬢様のバストやヒップ、露な太物は最近サイズアップしていた。  
 それは太ったというよりも、毎夜毎晩の夜伽と長い旅時で、自然と実った豊かな膨らみ。  
 より女性らしさを増し、少女の未成熟な体から進化を続ける御嬢様は美しかった。  
「とくにこう、足なんかムッチリしちゃってさ。肉感に溢れつつしなやかに、っての?」  
「あっ、や、やぁ……もうっ、マルム! やめ……ん、んんっ、ずるいよぉ……これ、いい……」  
 すっぽりと御嬢様の下半身を飲み込むマルムが震えて、その体の中で御嬢様が身悶える。  
 マルムはゼリー状の体を駆使して、普段では不可能な愛撫で御嬢様の火照りをあおった。  
「エミリィ、何か僕に不純物が混じってくるんだけど……汗と、あとこれは……濡れてる?」  
「ば、ばかぁ、ちがうもん……ちが、ひうっ! ん、はぁ……マルム、そこ、すごくいい……」  
 次第に御嬢様の頬に赤みがさし、忽ち息は荒くなって瞳が潤む。  
 御嬢様は大きな一つ目を手でプルンとすくうと、唇を寄せてキスをした。  
 
 ……私は今日も御嬢様のことを動画に記録していたが、フォルダ分けに困ってしまった。  
 
 マルムの軟体がピタリと御嬢様の肌に吸い付き、その肉体へと震える波長を伝えてゆく。  
 普通ならば味わえぬ、ヒヤリと冷たいスライムの感覚に下半身を浸してエミリィ御嬢様は喘いだ。  
「ふぁ……マルム、なんかへんだよぉ。なんかね、マルムがね、染込んでくる感じ……んくぅ!」  
「今、エミリィの肌を直接犯してるんだ。ほら、僕が浸透してゆくのを感じる?」  
「なんか、肌がピリピリして、ホワホワして……きもち、いいの……」  
「ふふ、溶かしちゃわないよう気をつけないとね。それにしてもエミリィ、ここ、ほら」  
 ビクン! と御嬢様が身を仰け反らして天井を仰いだ。  
 マルムの浸透が、濡れそぼる秘裂の奥へと達して粘膜に触れたのだ。  
 未知の感触に驚き震えながらも、押し寄せる快感に自らの頬を両手で覆う御嬢様。  
「こんなに濡れて、僕に不純物を混ぜてくる……ほら、こんなに広がっちゃうよ」  
「ふあぁぁぁ……マルムッ、すごい……こんなのはじめて、すご……い、いいっ」  
「ここ、どうかな? ねえエミリィ、ここ……ほら、僕が入ってくよ」  
「んくっ! そ、そこだめぇ……マルム、そこはオシッコの穴、んっ! ……はぁん」  
 マルムは御嬢様の下半身にある、あらゆる穴を犯し始めた。  
 毛穴の隅々まで浸透する一方で、普段は尿道口をくすぐる程度で終えてる、その奥へと……  
 マルムは自分の自由自在な体の一部を、御嬢様の尿道へと容易く送り込んだ。  
「エミリィ、力抜いて……ほら、弛緩してきた。このまま奥まで僕で満たしてあげる」  
「だっ、だめっ! そこ、広げちゃ……も、もれちゃうよぉぉぉ」  
 その瞬間、マルムの青色に輝く粘体に、黄色いもやが拡散した。  
 優しく尿道を愛撫していたマルムの先端は、膀胱へと到達してその門を開いたのだ。  
 御嬢様の中に溜まっていた小水が、残さずマルムの中へと放たれ混じる。  
「ふふふ、随分溜まってたみたいだよ、エミリィ。ほら、こんなに僕の中に出して」  
「だ、だってぇ……マルムがオシッコの穴に入って、うちがわからあけちゃうんだもん」  
 ブルブルと身を震わせて、御嬢様は放尿の愉悦に浸って呆ける。  
 しかしマルムの責めは終わらず、その体は御嬢様の下半身をスッポリ覆ったまま蠢いた。  
「ひあっ! マ、マルム、そっちは……今日はだめだよぅ。だ、だって、さいきんわたし」  
「ほうら、僕が染み渡るよ。エミリィ、お通じが最近御無沙汰だね? 僕が解してあげる」  
 マルムは御嬢様の後の穴へも、容赦なく浸透を開始した。  
 普段から第二の性器として開発し尽くされた菊門は、容易くマルムの侵入を許す。  
 最近便秘気味の御嬢様は、マルムの形無き手で宿便を揉み解され、羞恥に声を噛み殺した。  
「ふふ、前も後も僕と混ざっちゃったね……エミリィ、もっと内側を隅々まで……」  
「あ、あうぅ……これいじょう、らっ、らめぇぇぇ! こ、こわれちゃうよぉ」  
 前後の穴から侵食され、内蔵の隅々まで犯されて御嬢様は絶叫に喘いだ。  
 
 ……私は美しくも淫靡な姿を記録しつつ……自分の中に『せんせい』というフォルダを見つけ驚いた。  
 
「ねえエミリィ、僕とリッツと、どっちが好き?」  
 エミリィ御嬢様の内側に入り込みながら、マルムが囁く。  
「ん、んっ……んんんー! はぁ、あぅ……そ、そんなの選べないよぉ」  
 御嬢様はボヨンボヨンとマルムの表面を叩きながら、身の内に侵食するマルムに身悶えた。  
「だって、わたしはマルムもリッツもすきだし、テムジンだってすきだし……選べないよぉ」  
「はは、そうだよね……ごめんエミリィ、困らせちゃったよね。ごめん、僕も好きだよ」  
 不意にマルムは、直腸を通り越してその奥まで浸透していた己の体を引っ込める。  
 同時に膣を満たして子宮の中まで犯していた手を……自在に形を変える手を引っ込める。  
 突如として自分から潮が引くように失われるマルムの感触に、御嬢様は呆然と驚いた。  
「僕がどれくらいエミリィのことを好きか、教えてあげる。ほら、僕を見て……」  
 マルムはズルズルとその身を御嬢様から引き剥がすと、一点に集まり蠢き弾けた。  
 不定形の粘体が不意に立ち上がり、その輪郭を徐々に整え人型へと変えてゆく。  
 驚き言葉を失う御嬢様の前で、マルムは青一色の五体を持つ、見慣れた姿へと変身した。  
「どう? エミリィ、君と寸分違わないよ……この顔以外は、僕が知るエミリィそのものだ」  
「う、うそ……マルム、そのかっこう……え、わたし? なの? すごい、そっくり……」  
 私は驚きの余りうろたえたが、落ち着いてマルムの体を全センサーでスキャンした。  
 スライム状の肉体で形成されたそれは、スリーサイズから何から全て御嬢様と同一。  
 唯一顔だけが、スライム系モンスター特有の一つ目を輝かせている。  
「僕、ずっとエミリィのこと見てきたから……エミリィのことで知らないことなんてないよ」  
「マルム……」  
「でもね、それはリッツも同じなんだ。リッツもね……僕と同じ位、エミリィのこと知ってる」  
「うん……だからわたし、選べないよ。ごめんねマルム、ごめん……でも、すきなの」  
 大きな一つ目から、大粒の涙が零れた。  
 それは御嬢様がマルムに混ぜた汗が集まったものだが、御嬢様は優しくキスして口で舐め取る。  
「ずるいな……僕、エミリィのこと好きだから。ずるいよエミリィ……僕もじゃあ、ずるしちゃうよ」  
 不意に、御嬢様に瓜二つのマルムがベタベタと歩を進め、御嬢様に抱き付いた。  
 同時に、表面張力で張りのある胸が、尻がプルルンと揺れる。  
「ほら、見て……僕の大好きなエミリィから、こんなのが生えちゃうよ。これでエミリィを」  
 御嬢様に身を重ねるマルムの股間が競りあがり、そこへと粘体が集束して男根を屹立させた。  
 私は御嬢様の体にペニスが生えたかのような錯覚に、しばし混乱してしまった。  
「ん、挿れて……マルム、どっちがいい? どっちでも、すきにしていいよ」  
 暫し迷って逡巡するマルムの複雑な心境が、私にははっきりと感じられた。  
 相棒に遠慮するかのように、背後にヌルリと回りこむや、マルムは冷たい強張りで御嬢様を肛虐した。  
 直腸の粘膜を擦り、抉り、まさぐって……その中に、先程御嬢様から搾り出した不純物を……  
 御嬢様の膀胱から自分の中に拡散させた小水を全て集めて、マルムは解き放った。  
 
 ……私は同時に、旦那様とせんせいの不適切な関係に気付いてしまい、激しく動揺していた。  
 

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