神殿の奥にある、カイが寝起きする簡素な一室。その密室で今、眼前の少女が秘密を  
曝け出していた。恥ずかしそうにホットパンツを膝まで降ろし、次いで精緻なレースの  
下着を追わせる。現れたのは、男女一対の性器だった。  
 カイは生まれて二度目に見る男性器を前に、思わず息を飲んだ。  
「カイ様の魔力で、私の身体は治らないでしょうか?」  
「……触れてみてもいいですか?」  
 アーニャと名乗った少女は、耳まで赤くなりながら小さく頷く。  
 カイには幼少の頃より、人の病を治し傷を癒す不思議な力があった。故にこの地方の  
古き土地神の神官として、神殿に仕えるようになった。彼女は、訪れる者達を分け隔て  
なく、無償で治療してきたが……このような異形を見るのは初めてだった。  
 屈んで顔を近づけ、そっと触れてみる。それは包皮が綺麗に剥かれ、爛れたピンク色の  
先端が完全に露出している。軽く握れば、手の中に脈打つ熱を感じた。  
「これは生まれた時からですか? 呪いの類なのかしら……いいえ、違うわね」  
「あっ、あの、カイ様……あまり、その、御手を……や、やだ、駄目っ」  
 見たところアーニャには病の気配はなく、呪詛による変化も見られない。そう分析して、  
カイが思案に暮れていると……アーニャは身を捩って、慌ててカイから離れようとする。  
 気付けば真剣さのあまり、カイの手はずっとアーニャ自身を握り続けていたのだ。  
 それは驚くべき膨張率だった。じんわりと熱を持つペニスにグロテスクな血管が走って  
浮かび上がり、硬く充血した劣情の塊が身をもたげる。あっというまにアーニャは勃起し、  
その立派な屹立が反り返る。その大きさにカイは、再度驚きに呼吸を忘れた。  
「もっ、申し訳ありません、カイ様。御手が……やだ、私、どうしよう……」  
 アーニャは顔を両手で覆いながら、恐れ多いと戦慄きうろたえた。冒険者特有のラフな  
服装を着て尚、アーニャには清冽なまでの気品があったが……それがかえって、隆々たる  
股間の怒張とのギャップをカイに刻み付ける。  
「構いませんよ、アーニャさん。そんな、悲しそうな顔をしないで」  
「でも私、ダメなんです……毎日、こうなんです。それでいつも、苦しくて、切なくて」  
「お辛いでしょうね……でもごめんなさい。私の力では、身体の作りそのものは……」  
「い、いえっ、カイ様が謝ることなんて」  
 弱々しく礼を言って、アーニャは下着を両手で引っ張り上げる。しかし、一度カイの  
温もりに触れた滾りは、小さな薄布に大人しく納まりはしなかった。通常時でさえ大きく、  
股間の膨らみが目立たぬように気を使うのだから。こうして主の意に反して勃起すれば、  
それは漲る性欲が発散されるまで、無言で先端から透明な粘液をたらすだけだった。  
「カイ様、おと――妹を呼んで、二人にしてくださ……カイ様?」  
「楽にしてください、アーニャさん。私に全てを委ねて」  
 カイはアーニャの手を取り股間を握らせて。その上から自らの手で包んで、上目遣いで  
優しく微笑んだ。  
「大丈夫です、アーニャさん。どうすればよいか、神官の私でもそれくらいは」  
「でもカイ様、そんな……カイ様にそんなこと、させる訳には」  
「私は神に……この地に仕える身。純潔は守らねばなりませんが、少しの心得はあります」  
 そう、ほんの少しの。つい先日得られた、官能的な体験を反芻しながら、カイはそっと  
アーニャの手にする肉柱にくちづけた。強い雄の匂いが、自然と一人の男を思い出させる。  
「だっ、駄目ですカイ様。そのような……」  
 いやいやと首を振りながら、今にも泣き出しそうな声をアーニャが搾り出す。それでも  
カイは、幼子をあやすように優しく、そっとアーニャを口に含んだ。先走りに濡れそぼる  
先端を、丹念に舌でねぶりながら……大き過ぎるその全長を喉の奥まで飲み込む。  
 全て、あの人に教えて貰った通りに。  
 カイは気付けば、息を荒げるアーニャへ熱心に吸い付いていた。内股気味に何とか立つ  
アーニャは、膝をガクガクと震わせながら喘いだ。カイが息継ぎに口を離せば、切なげに  
自分でしごきだす。そうしてどんどん硬く充血してゆくペニスを、何度もカイは口と手で  
愛撫した。  
「アーニャさん、気持ちいいですか? 私、まだ二度目ですから……」  
「カイ様、そん、なぅ! ん、くぅ……き、気持ち、いいれふ、ふっ、はぁ……んんっ!」  
 半開きの口から、だらしなく舌を垂らしながら。アーニャは細い首筋を晒して天を仰ぎ、  
同時に絶頂に達した。初めて彼女は、サーシャ以外に射精した。  
 溢れる大量の白濁が、カイの美貌を汚した。  
 
「坊チャン、先ずは落ち着きマショウ。ほら、アーニャさんが戻って来まシタヨ」  
「まあでも、遺跡でポリニアを助けたのってやっぱり」  
 何度も大量に射精した後、やっと萎えたアーニャと沐浴を済ませて。カイは、先程から  
ずっと神殿の祭壇前で待っていた、アーニャの仲間達の元へ戻って来た。重い足取りで  
俯き歩くアーニャを連れて。  
「落ち着いてなんかいられないっ! だって乙姫さんが――」  
「だから坊チャン、落ち着いテ。乙女さんの話では、村を出たとシカ」  
「アシュラの基地に向かった、ってポリニアも言ってたし……お姉ちゃんも心配してる」  
 カイは、アーニャの三人の仲間を一人一人、改めて眺めた。  
 色以外ほぼ一緒の、スレンダーな双子の妹と、黄色い耳を揺らす機敏そうなメカ。その  
二人の間で、一人の少年が焦燥感を募らせていた。大きな瞳に今、決意の色が灯っている。  
 あの人に似ていると、カイは感じた。  
「……ロアン君、行きましょう。私はもう、大丈夫。乙姫を追わなきゃ」  
「そうですネ。天の柱まで行けなければ、この世界を出ることはできないデスシ」  
 古き神々の遺跡で、僅かばかりの秘宝を得た冒険者達。その中心で、ロアンと呼ばれた  
少年は大きく頷いて。アーニャを気遣う視線で、しかし何故にカイと二人っきりの治療を  
望んだかは解らぬ様子で。ただ、颯爽と踵を返した。  
 アーニャ達三人の仲間と、あのアシュラの前線基地へ向かうつもりだ。  
 カイはその背中に何故か、先日の面影を見て追憶へ思惟を巡らせた。  
 
「ですからカイさん、先程も説明したように……現在、世界は非常に危険な状態なんです」  
 炎の翼をたたんで静かに、しかし確かに人の言葉で喋る鳥。その優雅な姿を見てカイは、  
眼前のモンスターがかなりの高レベルであることを悟った。それを裏付ける、さとい言葉。  
「カイさんの力は、体内にある秘宝によるものです。このままではアシュラの……」  
「しかし、私はこの土地を離れる訳にはいきません」  
「それでは、我々ガーディアンの本部で保護を受ける気はないと」  
「申し出はありがたく思います。しかし……この地の民は、私を必要としているのです」  
 ――ガーディアン。  
 突然現れた二人組みは、カイにそう名乗った。秘宝を集めて保管し、新しき神々を監視  
しながら世界を守る組織。その言葉に嘘がないと、カイはすぐに信じることができたが。  
 同時に、神官としてこの地を離れることは出来ないとも悟った。否、解っていた。  
 カイは生まれながらに治癒の魔力を持ち、長らくこの土地の民を癒し続けていた。毎日、  
彼女を頼って大勢の旅人が足を止め、大勢の民が定期的に通ってくる。カイの力で生命を、  
辛うじて繋ぎ止めている者も少なくない。  
 それらは全て、自分の命や世界の平和と比べるには……余りにもカイには重すぎた。  
「たしかに、カイさんのような力を持つ者は稀です。しかし――」  
「いいじゃねぇか、兄弟。お嬢ちゃんの言ってることぁ、間違っちゃいねぇ」  
 不意に、今まで黙っていた男が声をあげた。手にもてあそぶ鞭を腰に納めて、ゆっくり  
カイへ歩み寄ってくる。鳳凰を思わせる羽ばたきで、大きな火の鳥が道を譲った。  
「わがままなのは百も承知です……新しき神々の野望も、聞き及んでおります。でも……」  
 苦しい心の内が、押し込めていた感情が何故かカイの身に滲み出た。自然と潤む目を、  
火照る顔を両手で覆って俯く。気付けば指と指の間を、一滴の涙が零れた。  
「俺達ガーディアンズが……俺が、守ってやる。だからお嬢ちゃん、そんな面すんなよ」  
 ポン、と頭を大きな手が包んだ。それは優しく髪を撫でて、広く逞しい胸へカイを抱く。  
初めて異性に身体を預けて、カイは鼓動が高鳴るときめきに息を詰まらせた。  
 手を当て頬を寄せる男からは、生涯見る事の無いであろう、外の匂いがした。  
 草と土と、花と埃と……太陽の匂い。  
「おじ様、でも私は……卑怯なのかもしれません。この力を使えば、アシュラの――」  
「それぁ俺達の仕事さ。お嬢ちゃんを必要とする人がいる……守ってやんな。な?」  
 小さくコクンと、カイは涙を拭いて頷いた。  
 同時により身を寄せて密着し、手を回して男を抱きしめる。今の今まで、神官として  
崇められることばかりで……カイは、こんなにも率直に親身な異性を知らなかった。  
「どうしてこんなに、親切に……私が秘宝をこの身に宿しているからですか?」  
「ハッ、聞くまでもなかろうよ。俺ぁ女の涙に弱くてね……もう誰も泣かせねぇ」  
 カイは瞼を伏せて身を預け、ため息の様に一声鳴く朱雀の声を聞いた。  
 
「そ、それはそうと、だな……お嬢ちゃん。そ、そろそろ、その、なんだ……」  
「? ……あの、御迷惑でしたか?」  
「いっ、いや! いやいやいや……まあ、一応俺も妻子のある身だしよ……それに」  
 僅かに顔を離して、カイは男の顔を見上げた。しきりに照れたような、どこか居心地が  
悪そうに、男は頭を片手で掻き毟っている。肉食獣のように野性味あふれる、精悍な顔。  
そこには確かに、鋭い知性と柔らかな温もりが秘められているとカイは感じた。  
 同時に、密着する腹部に、硬く熱いモノが布越しに存在感を訴えている。  
「俺もこう、忙しくてよ……お嬢ちゃんみたいな、若い娘も、久しぶりというか」  
「まあ……ごっ、ごめんなさいおじ様っ! わ、私ったらはしたない」  
 慌ててカイは、弾かれたように男から離れた。  
 神官は清らかにして聖なる存在……その純潔を生涯守るべし。そうして育てられた故に、  
カイは今まで異性を知らなかった。うぶゆえの無防備と無遠慮が、男をあおってしまった。  
「きょ、兄弟っ! な、何か肉食ってこないか? 牝なら何でもいいからよ」  
「そゆ言い方、やだなもう……近くまで来たんだし、たまに故郷へ顔を出せばいいのに」  
「私が悪いんです、本当に……私、男の人って初めてで、優しくされるのも、初めてで」  
 男は着衣の上からハッキリ解る股間のふくらみを、豪快に笑い飛ばした。  
「いやぁ、いい匂いするしよ。柔らけぇし温けぇしで……まあでもよ、お嬢ちゃん」  
「は、はい」  
「女の子は、操を守って大事な人に捧げな。俺はまぁ、そう教えて育てたんだけどよ」  
 そう言うと男は、無精髭の浮かぶ顎に手を当てウンウンと頷く。その傍らで大きな鳥が、  
喉を鳴らしながら「リンはでも、ちょっと真面目過ぎるから勘違いしてそうだよ」と笑う。  
 カイもつられて笑い、目尻の涙を細い指で拭った。  
 同時に、目はついつい……男の股間へと視線を注いでしまう。生まれて初めて、カイは  
異性を意識し、強く惹かれていた。包容力と野性味に満ちた、しかし妻子ある男に。  
 ガーディアンを名乗る一人と一匹の為に、人払いはしてある……今、この広い神殿には、  
治療を待ってあちこちで歓談する者達は一人もいない。  
 カイはごくりと、気付けば生唾を飲み下していた。  
「あっ、あの……おじ様。私、その……少し、責任を」  
「あ? ああ、いやっ! それは駄目だっ! 神官が純潔を……それ以前に俺ぁ」  
「……はしたないですよね、私。でも、これから先も、ずっと男の人を知らずに……」  
「あーっ、泣くな! 泣くなよ……そんな切ない顔すんな。っちゃー、参ったなこりゃ」  
 カイは迷わず、困惑する男の胸に再度飛び込んだ。拒絶はされなかった。包まれた。  
「まぁ、秘宝のせいでずっと……不憫っちゃー不憫だよな。なあ兄弟?」  
「僕はしばらく肉、食べないからね。全くもう……先に外で待ってるから」  
 翼を翻して、紅い鳥が出てゆく。その尾羽根を見送り、カイはうっとり目を細めた。  
「……あ、あの……ん」  
 勇気を出して背伸びし、瞳を閉じて唇を捧げる。しかし、吐息が擦れ違う気配と同時に、  
男の唇はカイの額に触れた。  
「ファーストキスも取っとくもんだ、お嬢ちゃん。いつか、いい恋がくるかもしんねぇ」  
「……そうでしょうか? 私はこのまま、神官としてずっと」  
「んー、ま、まぁそうだな……えっとー、どうすりゃいいん――ええい、ままよっ!」  
 男は僅かにカイから身を離すと、もどかしげにズボンのベルトを外した。次いでジッパー  
を下げるや、トランクスの前も開け放つ。カイは初めて見るそれが、男の性器だと最初は  
気付けず黙って見詰めた。  
「まあ、うぶ過ぎるのもいけねぇ……つーか神殿じゃ性教育とかどうし、お?」  
「これが……男の人の……」  
 気付けばカイは、潤んだ視線で男の滾りを見下ろし……まるで夢遊病のように手を伸べ、  
恐れることなく触れていた。熱く、硬く、そして何より生命力に満ち溢れた鼓動を感じる。  
「あの、おじ様……どうすれば、気持ちよくなるんですか? 私……」  
「いやまあ、その……どうすれば、てなあ。うーん、まあでも、無知過ぎるのもなあ」  
 夢中で男の劣情を握るカイは、優しく髪を撫でられながらとろけてゆく。  
「擦ったりとか、するんですよね……あ、何だか、濡れてきました」  
「お嬢ちゃんがあんまり可愛いからだな。男ってな、こーゆーイキモノなんだよ」  
「それと、あのっ……口でしたり、とかも、するんですよ……ね? 私、知ってます」  
 カイが聞いた事のある、精一杯の性に関する知識を、男は笑わなかった。  
 
 祭壇に腰掛ける男の股間に、カイは顔を埋めた。  
 深く深く息を吸う……神官の理性が雄の匂いに痺れていった。そのまま愛しげに頬擦り、  
すでに透明な粘液で光る竿を手でしごく。拙いその手に、男も短い声を噛み殺した。  
「おじ様、私……口で、してみても、いいですか?」  
「い、いや待っ……お嬢ちゃん、そんなにしなくてもいい! つーか、まずいっ!」  
「平気です……神殿の戒律に背いてはいませんし。私に、教えてください……男の人を」  
 制止も聞かずカイは、ぱくりと男の分身を頬張った。瞬間、淫臭に咽返るも、そのまま  
口にくわえて……しかしカイは、それからどうしていいかが解らなかった。  
「……お嬢ちゃん、とりあえず、な」  
「ふぁ、ふぁい……ん、ふぅ……おじ様、これは、私どうすれば。口で、って」  
「うん、先ずな……歯をたてちゃ駄目だ。その、凄く痛ぇからよ」  
「ごっ、ごめんなさい! 私、夢中で……あのっ、しかたが解らなくて」  
 男は一瞬、真顔でカイを見詰めて。不意に笑い出した。  
 カイは何だか恥ずかしくて、込み上げる羞恥に顔を真っ赤にしたが。男はそんなカイの  
頭をなでながら、丁寧に教えてくれた。そのまま夢中で、カイは言葉を舌と指でなぞる。  
「そう、そこからすくように舌で……上手だ、お嬢ちゃん」  
 カイは今、淫らではしたないと自分を恥ながら。同時に、初めて思慕の情を募らせる  
相手への、耐え難い欲情を感じていた。その流れに身を任せ、男の言葉に身を委ねる。  
 両手でそっと竿を包み、その血管が浮き出た表面へと舌を這わせる。先走る粘液に  
自分の唾液が混じりあい、湿った音が静かな神殿に響いた。次第に二人の吐息は熱く、  
そして早く重なってゆく。  
「しっかし、キスも知らないような娘の口を……やべぇな、こりゃ……っと、いけねぇ!」  
 不意に男がカイの形良い顎に触れ、クイと顔を上げさせた。同時に、れるんと、巨大な  
逸物がカイの唇から零れ出る。何事かと、何か不手際がとカイが思った瞬間……目の前で  
突如、男のペニスが膨れて弾けた。  
 呆然とするカイの顔に、大量の白濁がぶちまけられた。  
「これが、男の人の……凄い臭い……おじ様、素敵です」  
 カイはそのまま、頬の一滴を指ですくって口に運ぶ。強烈な臭気と共に苦味が咥内へと  
広がっていった。それを味わい心に刻んで、ゴクリと喉を鳴らして飲み込む。  
 その後も時間をかけて幾度となく、カイは男を学んだ。  
 決して恋してはいけない自分、恋してはいけない相手……そう思えば思う程に、カイは  
熱心に男を、まるで貪るように吸い尽くしたのだった。  
 
「兎に角っ、アシュラの手先は……俺がっ、俺達が倒すっ!」  
 やはり目元が、その光が似ているとカイは思った。  
 少年は恐らくは、母親似……あの人の妻に似ているのだろう。中性的な、ともすれば  
頼りなく見えるその横顔。しかし、瞳に宿る決意は、あの人をカイに彷彿とさせた。  
「乙姫さんのこともあるし。何より、奪われた秘宝を取り戻さなきゃねっ!」  
「そうデス! ガーディアンの皆サンの無念、少しでも晴らしてあげたいデスネ」  
「いきましょう、ロアン君……カイ様、無理をいって申し訳ありませんでした」  
 ありがとうございました。そして、さようなら――  
 真紅の瞳で少年の背を追い、アーニャがカイへと別れを告げた。そうして振り向き待つ  
仲間達に並ぶ。眩しい夕日の差し込む神殿の出口へと、四人は揃って歩き出した。  
「待って……ロアンさん、と仰いましたね? 貴方は、どうして……」  
 思わずカイは引き止めた。振り向く少年の、薄い若草色の髪が揺れる。  
「――守りたいから」  
 迷いのない一言だった。  
「俺は秘宝を、父を追ってます。でも、それとは別に……親しい人や故郷は守りたい」  
 カイは直感的に、少年があの人の息子だと気付いた。そして、少年が父親の仕事の事を  
まだ知っていないことも。それでも少年は……ロアンは、同じ場所へと気持ちを向ける。  
「まあ、俺に出来ることって少ないですけど。少ないけど、確かにあるんです」  
 ロアンの笑顔が、夕焼けの最後の残滓に溶けてゆく。  
「――私にも、守れるかしら。守られるだけじゃなく……大事な人達を」  
 いいえ、守る……守ってみせる。  
 そう心に結んで、カイは初めて自分から一歩を踏み出し……ロアン達に同行を申し出た。  
 

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