激しい砂嵐はもう、今夜は止みそうもない。ロアンは一人ベッドに身を横たえると、  
カタカタと鳴る窓の外へ目を凝らした。砂塵の舞う闇夜は薄暗く、隣の酒場や武器屋の  
明かりさえ霞む。  
 灼熱と極寒、二つの顔を持つ砂漠の町。その奥にあるという、アシュラの塔。それも  
今は見えず、本当に近付いているのかどうかも妖しい。サボテンを追えとの情報を元に、  
ロアンは仲間達と丸一日、砂漠を彷徨い……このアシュラの町に辿り着いたのだった。  
 無論、打倒アシュラの決意は胸にだけ秘めて。  
「この嵐の向こうに、アシュラの塔が……乙姫さんもそこに? なあ、J+……J+?」  
 ぼんやりとロアンは呟き、いつもの小うるさいメイドの返事を待った。だが、J+の声は  
返ってはこない。ゆっくり首を巡らせると、ロアンの世話を焼く黄色いメカは今、じっと  
壁に向かって突っ立っていた。  
「J+、何してんだよ。おかしな奴だな、おーい」  
「今夜も激しいデスネ。あわわ、あんなにベトベトにシテ」  
「J+ってば、返事くらいしろよ……このっ、ネコミミメイドロボッ!」  
「こ、これはネコミミじゃないデス! スタビライザー、いわばハネで……坊チャン!?」  
 足音をひそめて背後に近寄り、ロアンはJ+の耳元……もとい、羽根元で囁いた。J+は  
すぐさまいつもの反応を示したが、ロアンの近さに驚きその場で超信地旋回を繰り返す。  
 何をうろたえているのかと、ロアンは奇妙なメイドロボに苦笑を零した。やがてふと、  
ロアンは思い出す。あまりに身近で忘れていたことを。  
「そうだ、J+も女の子だもんな。アーニャ達の部屋、行っておいでよ」  
「! ソソ、ソレは駄目デス!」  
「やっぱ女の子同士さ、色々と積もる話もあるのかな、って。それで隣の部屋を……」  
「いいのデス! アタシはここに……坊チャンの側に居マス! ……居たいデス」  
 キュインキュインと手をばたつかせて、丸っこい胴体をジタバタさせるJ+。良く見れば  
そのボディは、砂漠の強行軍でかなり汚れていた。眩い黄色も今は、少しくすんでいる。  
「ふふ、ありがと。そうだ、ちょっと待ってて……折角可愛いのに、それじゃ台無しだよ」  
「カッ、カワイイ!? 坊チャン、それは&%¥*!?」  
 挙動不審になるJ+を背後に、ロアンはバスルームにタオルを取りに歩いた。  
 
「アタシは坊チャンのお世話をするメイドロボ。これでは逆デス」  
「いや、いつも世話になってるしさ。特に母さんが。ほら、綺麗になった」  
 床にあぐらをかいて、小さなJ+の機体を足の上に抱く。ズシリと金属特有の質量だが、  
生憎とロアンはもう、その程度は何でもない逞しさを得ていた。そうしてJ+を、日頃の  
感謝も込めて丹念に磨いた。新品同様の輝きを取り戻した機体はしかし、所々に細かな  
傷がある。その幾つかは、幼少期のロアンの思い出だった。  
 しかし多くは、この旅をはじめてついた傷。J+は防御力を生かして、常にパーティの  
最前線で戦ってくれたから。宿屋で自己修理を行っても、細かな傷は消えはしない。  
「……そういえばJ+、テムジンさんとは上手くいってる? 母さんがワクワクしてたよ」  
「アタシはメイドで、あの方は執事なのデス! 共にお屋敷に仕える身デ……」  
 やはり耳にしか見えないスタビライザーが、ぺたりと垂れ下がった。  
 J+は今までずっと長い間、同じお屋敷に仕える、古い同族の執事ロボを好いていた。  
自分のベースになった機体でもあり、お屋敷の先輩でもある執事。発声機能すらない、  
旧型のそのメカを、J+は敬愛してやまないのだ。  
「やはり、今日助けたミューズさんみたいナ、美人ロボがお好きなのでショウカ?」  
「ああ、テムジン? さあ、母さんしか意思疎通できないからなぁ……」  
 帰ったら直接ケーブルで繋がって、互いに話し合ってみることをロアンは提案するが。  
ケーブルによる直結はメカにとって特別な、それこそ愛の営みに近いものらしかった。  
J+は、メインカメラを不規則に点滅させながら頭部をグルグル回す。  
「アア、アタシのことより坊チャン! 折角の旅ナノニ、アーニャサンと少しハ……」  
「ん、そうなんだけど。アーニャも僕も、今は乙姫さんが心配だな」  
 勿論、サーシャもJ+もそれは同じ筈。ロアンはJ+の頭に形良い顎を乗せ、身を預けて  
じっと見詰める。視線を吸い込む壁の向こう側に、双子の美少女姉妹が休んでいた。  
 まだロアンは秘密に気付かず、姉に恋して……妹とは友達だと思っていた。妹だと。  
「アーニャの親友だもの。それに、まあ、俺の……俺にも、大事な人、だし――!?」  
 ロアンの呟きが口ごもった瞬間、不意に部屋の窓が開け放たれた。  
 
 吹き荒れる暴風がカーテンを千切れんばかりにあおり、大きく開いた窓から冷たい風が  
雪崩れ込んでくる。すぐさまロアンの膝から飛び立ったJ+が、華麗な空中ダッシュを見せ、  
窓を閉める。危く部屋中、砂だらけになるところだったと、胸を撫で下ろすロアン。  
 そんな彼が改めてJ+に礼を述べた、その瞬間――捜し求めていた声が耳朶を打つ。  
「お久しぶりです、ロアンさん。わたくし、ずっとお逢いしたかった」  
 ロアンの目の前に今、燐光の四枚羽根を震わせる妖精が浮いていた。身長僅かに15p程。  
その小さな小さな、人形のような妖精が、乙姫の声で微笑んでいた。  
「おっ、乙姫さ――」  
 思わずその名を叫びそうになる、ロアンの唇は塞がれた。顔を全身で、乙姫が抱いて  
きたから。鼻先に頬擦りを寄せる、乙姫の細い細い両足が、丁度口を塞ぐ形になった。  
「心配をおかけしてごめんなさい。ロアンさん、わたくしはどうしても……」  
 それだけ言って言葉に詰まると、乙姫は照れ臭そうにロアンの顔から離れる。  
 見るも可憐な、乙姫に似つかわしい姿だった。呆気に取られつつデータをJ+が照会し、  
その姿が妖精族のスプライトだと知るロアン。いつもの見慣れたスライムの面影はもう、  
どこにもない。それでも確かに、目の前に浮かぶのは、乙姫その人だった。  
「乙姫さん……良かった、本当に良かった。無事で」  
 先ずは本音が、本心が言葉になった。何故? どうして? ずっと心を渦巻いていた  
疑問は、綺麗に消えてしまった。ただ乙姫の無事が嬉しかった。  
「あっ、じゃあ、アーニャ達にも伝えてきますよ。きっと眠気も覚め――」  
「アッー! それは駄目デス! 坊チャン、隣に行っちゃ駄目デス!」  
 嬉しそうに部屋のドアに踵を返す、ロアンの手にJ+が縋りついた。彼女は知っていた。  
今、隣の部屋で双子が何をしているか……その秘密まで仔細に。  
「いやでも、アーニャもサーシャも心配してたし、きっと安心すると……」  
「明日! 明日にしまショウ! 今夜は夜も遅いデス! 女の子は色々あるんデス!」  
「う、うん。J+が言うなら。そうだ、それより……」  
「そそそ、それより乙姫サン! どうして突然、村を飛び出したんデスカ!?」  
 ロアンもそれは気になった。J+とドタバタを演じるロアンを、静かに見守っていた乙姫。  
彼女はその疑問が当然の様に、静かにゆっくりと語り出した。同じ言葉をもう一度。  
「ずっと、お逢いしたかった……あの日から、ずっと」  
 あの日……互いに純潔を捧げあった、黄昏の教室。  
 ロアンはあの日の興奮が身の内に蘇り、身体が火照るのを感じながら……傍らで喚く、  
J+を黙って見下ろす。長年一緒に暮らしてきたメイドロボは、何かを察したように頷き、  
部屋の隅へ引っ込むや、スリープモードで黙った。  
 
 乙姫の話は、普段の彼女を知るロアンには驚愕だった。  
 旅立ちの前日、ロアンは乙姫の想いを知り、それにただ一度だけ応えた。しかし乙姫は、  
それを最初で最後にできなかったのだ。募る想いは日々膨れ上がり、遂に彼女は行動する。  
病弱な身体で生死を賭けて、文字通り命懸けでロアン達を追いかけたのだ。  
「初めて、人を……モンスターを殺めました。そしてわたくしは、そのお肉を……」  
 ベッドに腰掛けるロアンの肩に座って、耳元へと恥ずかしげに囁く乙姫。  
「幾度となく、わたくしは姿を変えました。何度も死に掛けました。それでも」  
 それでも、乙姫は旅をやめなかった。弱々しい身体は変化を繰り返しながら、忘却した  
モンスター本来の逞しさを取り戻して……遂に、ロアンの前に姿を現せるだけの、美しい  
姿を得る事ができたのだ。  
 それは偶然にも、ロアンを追い越していたことに気付いた後だった。  
「わたくし、あれから毎日、ロアンさんを想って……自分で自分を慰めました」  
 頬を赤らめ、湿った吐息を耳へと吹き込んでくる乙姫。ロアンが僅かに顔を向ければ、  
小さな白い手が、腕を伸ばして頬を撫でてくる。  
「アシュラの前線基地を通過する時は、わたくし……でも、どうしてもと……」  
「乙姫さん……いいんです、そんなことは言わなくても。そんな、辛いこと」  
「辛くは、ありませんでした。ロアンさんに逢える……そう思えば、耐えられました」  
 乙姫は切々と語った。モンスターは食べた肉により、性別さえも変ってしまう種族……  
そして乙姫はまだ、雄に、男になったことはなかった。ただ、一匹の気高い雌の獣として。  
乙姫はアシュラの手下達に、ジャガーの姿で何度も何度も、繰り返し犯されたと語った。  
 それも全て知って欲しい……そう言う乙姫をロアンは、手の平にそっと招いた。  
 
「皮肉ですね……見た目がこんなに綺麗でも、わたくしは汚れています」  
 ロアンの目の前、手の平の上で。そっと身を横たえるや、乙姫は身に纏う薄布を脱いだ。  
 まるで精緻な人形のように、白く華奢な裸体が暗闇にはえる。  
「そうまでして……乙姫さん、俺はでも……」  
「解っています。ロアンさんはアーニャが……でも、わたくしはずるくなりました」  
 小さな肢体が手の平の上で、尻を高々と上げて四つん這いになる。肩幅に開かれた股に、  
光る蜜がとめどなく溢れていた。サイズこそ小さいものの、綺麗な色の秘所が露になる。  
 乙姫は淫らな自分をロアンに見せつけながら、自分を支える手の平の中指に抱き付いた。  
「わたくしは、醜く汚らわしい女です。でも、そうまでして、ロアンさん……あなたが」  
「いっ、いけませんよ! 駄目です、俺はアーニャが」  
「構わないのです。わたくしはただ、ロアンさんを愛したいだけ」  
 乙姫の内腿を伝う愛液が、ロアンの手の平に小さな水溜りを作ってゆく。同時に、指は  
小さな膨らみにはさまれながら……両腕で抱かれ、唇が触れるのを感じる。  
 ロアンは不覚にも、不義はいけないと己を律しながら……手の内にある乙姫の誘惑に、  
はからずも股間が熱くなる。目の前に今、美を凝縮したミニチュアが咲き乱れていた。  
「ロアンさんがわたくしを、愛してくださらなくてもいいんです」  
「そんな……それは、哀しいことです、乙姫さん。俺は……」  
「ふふ、ロアンさんを困らせて、わたくしは悪い女。さあ、ロアンさん」  
 羽根の輝く背中越しに、ただ静かに微笑を向けてくる乙姫。  
「わたくし達はもう、契りを交わした仲……それは、アーニャも許してくれました」  
「それは、だって、一度だけ……アーニャは、乙姫さんが、大切だから、だから……」  
「今度は、わたくしがアーニャの代りに、ロアンさんを愛するのです。なぜなら……」  
「えっ? 代りに、って……乙姫さん?」  
 それは、何か真実を知ったかのような……知ってしまったような憂いのある笑みだった。  
 身を返して浮かび上がると、乙姫はロアンの顔に全身をしどけなく預けてくる。そして、  
小さな小さな唇で、額や瞼、頬にくちづけて……最後に唇へとキス。ロアンは渇く自分の  
唇が、淫靡に濡れてゆくのを感じた。  
「アーニャは、ロアンさんと結ばれません……今は、まだ。秘宝が集まるまでは、だから」  
「おっ、俺は! アーニャの代わりなんて、乙姫さんを代りになんて……」  
 そうは言うものの、乙姫の愛撫は優しくロアンを解いてゆく。同時に滾る劣情は股間へ、  
全身から血液を吸い上げていった。激しく猛る己の愚息が、早く外に出せと訴えてくる。  
「ロアンさん、わたくしも秘宝集めをお手伝いします。一緒にはいられませんが……」  
「それって……でも、どうして、秘宝がないとアーニャは俺と、んっ、んーっ!」  
 突如、それ以上の問答を避けるように、乙姫が胸を唇に押し当ててきた。小さくても、  
確かにツンと上向きに硬い乳首を、ロアンは敏感に感じた。ますます、男が漲る。  
「今はまだ、話せません……ただ、アーニャに優しくしてください。そして……」  
「乙姫さん……」  
「そして、わたくしにもお情けを。忘れられないのです、ロアンさんのことが」  
「……俺は、俺はっ」  
 そっと震える両手で、触れれば折れそうな小さな身体を優しく包む。そうしてロアンは、  
枕の上に乙姫の身体を横たえた。それを見下ろし、そっと人差し指で上から下へと撫でる。  
繊細な指使いに、乙姫は身を捩って切なげに呻いた。  
「乙姫さんは、いつも気品に満ちて、清楚で、本当のお姉さんみたいで……」  
「今はでも、淫らで卑しく、愛欲に溺れ汚れた女……いいえ、わたくしは雌です」  
 ロアンは右手の指で乙姫の輪郭をなぞりながら、もどかしげに左手でベルトを外す。  
 下着ごとズボンを膝まで下ろせば、既に充血した男根が包皮を脱ぎ捨てていた。  
「ロアンさん、素敵です……こんどはロアンさんを受け入れられる身体が必要ですね」  
 どこか無邪気な、それでいて妖艶な。童女と毒婦が入り混じる乙姫の笑み。  
「乙姫さん、こんなに濡れて……くっ、ごめんアーニャ」  
 理性の糸が弾けて切れる、その前にロアンは自分から解いてしまった。自己嫌悪と共に、  
後ろめたさが全身を支配する。しかし、その背徳感に興奮は高まっていった。  
 気付けばロアンはだらしなく口を半開きにし、伸ばした舌で丹念に乙姫の身体全体を、  
頭の上からつま先まで舐めまわしていた。べっとりとロアンの唾液に濡れながら、乙姫も  
ロアンの舌を、両手で愛撫し、チロチロと舌を差し出してくるのだった。  
 
「ロアンさん、横になってください。わたくしに全てをゆだねて……さあ」  
 呆けた顔でロアンは、気付けば乙姫の全身に顔を埋め、夢中で舌を這わせていた。  
 乙姫が淫らな雫をポタポタたらし、べっとり濡れた身体で浮かび上がる。促されるまま、  
ロアンは上下を入れ替える形で、仰向けにベッドに横たわる。  
「ロアンさん、この旅の最中は、一人で自分を慰めてるのですか?」  
「え、えっ? ええと、それは……」  
「わたくしは一人旅、宿ではいつもロアンさんを想って…うふふ」  
 乙姫の一途さは既に、病的なまでに先鋭化していた。ロアンはそれに危惧を抱く前に、  
与えられる快楽に身を震わせ、深い深い息を吐き出す。  
 乙姫は先走りに濡れるロアン自身の先端に、ふわりと腰掛け足を組んだ。  
「あの日みたいに、ロアンさんに……これに、貫かれたい。結合したいのに」  
 伏せ目がちに乙姫は、少し残念そうに呟いて。シーツを手繰り息を荒げるロアンへと、  
熱っぽい視線を送りながら、尻の下で脈打つ肉棒を撫でた。  
「もっと沢山のお肉を食べて、そう、もっといい身体を手に入れなければいけませんね」  
 ヘソまで反り返るロアンの怒張に、乙姫は跨り細い足を絡めてくる。  
「その為にも、もっと沢山のモンスターを倒さなければいけません」  
 乙姫が両足の腿で、ロアンを締め上げてくる。吸い付くようなきめ細かい肌の感触に、  
ロアンな歯を喰いしばって射精感を堪えた。たっぷりとロアンの唾液に濡れた乙姫は、  
ニュルニュルと自分の股間で、ロアン自身を擦りあげてゆく。  
「ふあっ、あ、ああ……乙姫さんっ、俺っ!」  
「いいお顔……愛してます、ロアンさん。もっと一緒に、もっと気持ちよく」  
 股にロアンを挟んでしごきながら、乙姫は小ぶりは自分の胸を揉みしだく。そうして、  
徐々に締め付けはロアンの男根を降りてゆき……丁度、乙姫の顔が亀頭に並ぶ高さで停止。  
同時に、ぎゅむと強く強くはさまれ、ロアンは射精不能の状態に小さく叫んだ。  
「こんなにお汁が……ロアンさん、ほら、ここです」  
「んんっ! だっ、駄目……乙姫さ、んんっ! はっ、はぁ……」  
 乙姫はロアンの濡れそぼる鈴口に舌を這わせ、その割れ目の中央に小さく開閉している  
尿道口を刺激する。敏感な粘膜をねぶられ、ロアンは絶頂に達しかけたが……込み上げる  
精液は中途で、乙姫の絡む両足が締め上げている。  
「もう少し我慢できますか、ロアンさん? 我慢、できますね?」  
「は、はい……」  
「いい子……本当にロアンさんはいい子。だからつい、いじわるしたくなるんです」  
「ひぎぃ! あ、あがが……ふぁ」  
 乙姫は全身でロアンの中心を抱き締めると、その先端へと指を走らせた。小さな小さな  
白い指が、僅かな抵抗をものともせずに尿道口へと埋まってゆく。  
 本来出口である場所が今、快楽をもたらす妖精の指を入口として受け入れていた。  
「だ、駄目です、乙姫さん……そこ、だめっ……痛っ! ぬ、抜いて……」  
「ああ、ロアンさん……ロアンさんを今、わたくしが、指で犯してる」  
 既に束縛は解けていたが、ロアンの性器は先端を乙姫の指で塞がれ、やはり射精不能で。  
ロアンはもう、髪を掻き毟りながら全身に汗をかいて、痛みが法悦へと連鎖してゆくのを  
全身で感じていた。  
「ロアンさんは勃起すると綺麗に剥けるんですね。でも臭います、きっと皮の内側に」  
 淫らな言葉が乙姫の口から零れる、それだけでもロアンの興奮は高まっていく。  
 乙姫は指と舌で交互に尿道口を塞ぎながら、空いた手を包皮の内側へと滑らせてゆく。  
ロアンは、普段はありえない場所へと空気が流入して、暖かな手がさわさわと蠢く度に  
はばからず絶叫した。  
「ほら、見えない場所にはこんなに恥垢が……今、綺麗にしてあげますね」  
 竿と皮の間を、乙姫の小さな手が掘り進んでゆく。それが抜かれた時、ロアンは潤む  
視界に、愉悦の表情で手の恥垢を舐め取る、乙姫の姿を見た。  
「あ、ああ、乙姫さん……俺、俺っ、もう! もうっ!」  
「ロアンさん、わたくしで沢山出してくださいね……ここが空になるまで」  
 両手を結んだ環で根元まで擦り降り、ツンとつま先で睾丸を軽く蹴る乙姫。そして再び、  
激しい肌と粘膜の擦過に、あっという間にロアンは昇天して果て、そのまま意識を失った。  
 次の日の朝、目覚めた時にはもう、乙姫の姿はなかった。  
 ただ、晴れた炎天下……砂漠の彼方にかすかに、巨大な塔だけが見えた。  
 

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