普通の女の子になりたい。
普通に恋をして、数多の障害を乗り越え結ばれて……ハッピーエンドになりたい。
カイは、自分の体内から出てきた冒険者達の手に、秘宝が握られているのをみた時、
もしやと淡い希望を抱いた。異能の力などいらない……奇跡の技など欲しくない。
ただ、秘宝のもたらす癒しの力を失い、これで普通の女の子になれると思っていた。
それが幻想だと解ったのは、若き冒険者が次なる世界へ旅立ってからだった。
「少し、休みます」
それだけ従者の妖精に言うと、カイは場を辞して自室に引篭もった。
自分の魔力が、秘宝の力によるものだったと知り、それが失われても……カイは未だ、
神殿に仕える神官として、日々救いを求める者達の支えとなっていた。民は皆、カイの
力と同時に、その人柄を、温もりを求めていたのだ。
それに応えることに責任を感じる一方で、自由への思いは募る。
「あの子、目元が似てた……あの方に」
ベッドに腰掛け、ふと思い出す面影。自分をアシュラの手下から守り、我が身に入って
秘宝を取り除いてくれた冒険者達。その中心で恥ずかしげにはにかむ、若い少年が鮮明に
思い出された。そこに一人の男の姿が重なる。
自然とカイは身をシーツに投げ出し、手は彷徨うように衣服の下へもぐりこむ。
「もう、力なんてないのに……私、必要とされてる。それは嬉しいのに、でも……」
女として満たされることはもう、永遠にない。そんな気がして、カイは切ない。
溜息を零しつつ、背徳感に身を焦がしながら……カイは下着を両手でそっと下ろすと、
右足を、次いで左足を抜いて、目の前に広げる。薄布は今、大事な場所が触れる部分が
かすかに濡れている。
「ああ、あの方に抱かれたい……女に、してもらいたい」
それが不義だと知っていても、望まずには居られない。自分に初めて男を教えてくれた、
ガーディアンズの大佐……妻子ある身と解っていても、その子と実際に触れ合い救われて
いても。一方的な憧憬は募り、想いを巡らすだけで蜜に濡れる。
カイは一人、半開きの口から舌を伸ばすと、己の下着に出来た淫らな染みを舐めた。
「ふああ、やだ……こんなに。日もまだ高いのに……ん、んっ、はぁ」
自分の体臭と汗の匂いに、浅ましい牝の香りが入り混じる。
カイは気付けば、自分の下着を口にくわえたまま、両の手で胸の膨らみを揉んでいた。
豊かな乳房全体を揺さ振るように揉み上げ、その先端で固くしこる乳首を摘んでみる。
その一挙手一投足に、カイは痺れるような快楽を感じて呻いた。
「見て、欲しい……本当の、私……いやらしい、私を……あの方に」
しっとりと肌が汗ばんで、清められた神官の着衣が吸い付いてくる。それにも構わず、
カイは夢中で自らの熟れた肉体を慰めた。既にカイは心身共に、女として成熟していた。
ただ、神官ゆえに女の悦びを知らず、知らぬ故に餓え、飢えが渇きをもたらす。
カイは火照る我が身を激しく両手で、掻きむしるように愛撫してゆく。ぶるんと服の
中で、たわわな胸の双丘を揺らしながら……その手はくびれた腰を撫でつつ、下腹部へ。
股間の茂みに分け入ればもう、溢れる愛液で濡れそぼっていた。
クチュリ――僅かな指の動きに、透明な粘液が音を立てる。そのねばりけが細い指へと
絡み付いてくる。その響きは連なり、次第にリズムを刻んでいった。
気付けばカイは夢中で、己の秘所をまさぐっていた。
「あ、はぁ……駄目、こんなに濡らして。はしたな……でっ、でも、止まらな、いっ」
ここ最近でカイは、随分と一人上手になったもので。この数日と言うものは、昼間から
躯を持余し、こうして自室にとって返しては、自慰に耽ってしまう。
汚れなき乙女でありながら、カイはまだ知らぬ快楽の虜だった。
「ほらカイ、見なさい……これが、本当の貴女……皆が憧れ縋る、神官の姿……」
口から下着が零れ落ちるが、構わずカイは自分に言い聞かせるように呟く。そうして、
目の前にびっしょりと濡れた指を遊ばせた。クチュクチュと濡れて光る指は妖しく蠢き、
唇をなぞった後に……口の中へと導かれる。
「ふあ……ああ、おじ様……私、貴方を想ってこんなに、乱れ、て……」
「ああっ、あの、お待ち下さい! 今、カイ様はお休みなって――」
夢中で己の愛蜜をすすり、同時に股間の肉芽をカイは激しくしごいていた。
突如、従者の悲鳴と同時にドアが開かれたのは、そんな時だった。
カイはその時、幻想が飛び出してきた驚きに、あられもない姿のまま硬直した。
「カイッ! 無事だったか!」
「ですからっ、もうっ! カイ様、申し訳ありませ……カイ様?」
呆けた顔でカイは、突然想い人との再会を果した。
ワイルドないでたちの紳士は、荒野の匂いと共に現れた……その表情が凍り付いている。
従者の妖精も同様で、二人は見てはいけない物を見たと、互いの顔に書きあっていた。
「ん……ゴホン! と、とりあえず、この方は私のお客様です。お下がりなさい」
「あ、はい。で、でもカイ様。あの、今……」
「お下がりなさい」
やや語気を強めると、妖精は気まずそうに、しかし一瞬だけ男を睨むと、出て行った。
カイは艶姿のままで、男と自室に二人きりになった。
沈黙が二人の間を漂う。
「ま、まあ、あれだ、その、突然すまん。すまん……すまねぇ、あやまりにきた」
沈黙を破ったのは、男だった。
「俺は、約束した。お前を守る、って……それが、あんなことになっちまって」
「おじ様……」
「アシュラの塔の後始末に、思いのほか手間取っちまってよ……俺は、約束を破った」
男は苦々しく、痛恨の一言に唇を噛み締めた。その拳が固く握り締められている。
思わずカイは立ち上がり、駆け寄るとその手を手にとる。爪が食い込む程に握られた、
大きな拳に血が滲んでいた。
「いいえ、おじ様は約束通り……私を守ってくださいましたわ」
「カイ? 俺は、お前の体内にアシュラの手下が入り込んだって聞いて、でも任務が」
「おじ様の息子さんが、私の中に入って助けてくれたのです」
「ロアンが!? あのチビが……そりゃ、驚いた。そうか、あのチビがな……ははっ」
「おじ様と同じ目をしてました。強くて優しくて、そして温かい……」
カイは大きな男の手を頬に寄せ、固く握られた手を解かせる。
「おじ様が助けてくれたも同然です。私は、そう思います」
「……本当は、俺が直接来たかった。それがよ」
「もう何も仰らないでください。私は無事に、生きてます。生きてるんです……」
それ以上、言葉はいらなかった。ただ黙ってカイは、硬くて大きな手の平に頬を埋めて、
その手に握られた世界の神秘の、その残滓が鼻腔をくすぐるに任せた。タバコと日向と、
草原と風の匂い……まだ見ぬ、世界の広がりを掴む逞しい手だった。
「っと、そうだ。こいつを……お嬢ちゃん、ほんの気持ちだがよ。詫びの品というか……」
男は優しくカイの頬を撫でながら、もう片方の手でポケットをまさぐった。そうして、
カイの目の前に輝く宝石が差し出される。それは琥珀色に透き通る、静かな輝きだった。
「これは……」
「ひだまりの結晶、さ。まあ、こんなもんでも手ぶらよりは、ってな」
「い、いただけるんですか? 私が?」
「ああ、お嬢ちゃんの神官の服は、少し飾りっ気がなくていけねぇ。若い娘が……」
「うっ、嬉しいです! ありがとうございます、おじ様。私、大切にします」
思わず身を乗り出して、カイは瞳を輝かせた。
初めて、殿方から贈り物を貰った。しかも、初めて好きになった人から。
気付けばカイは、興奮に顔を上気させ、頬を赤らめながら男に抱きついていた。
「おいおい、お嬢ちゃん……」
「ごめんなさい、おじ様。私もう、我慢できません……我慢、しませんっ」
突然のサプライズに、理性のタガが外れてしまう。カイは今、無邪気な一人の女として、
全身で喜びを表現し、それを相手に伝えようと身体を預けた。
口ごもりつつも、男はしっかりとカイを抱きとめる。
「そいつで少し自分を飾ってよ、いい男を見つけて……幸せになれや、お嬢ちゃん」
「……」
「いい若い娘が、真昼間から一人でなんて……少し寂しいじゃねぇか。な?」
「…………」
「お嬢ちゃんはもう、秘宝から解放されたんだ。この神殿を出て、一人の女として」
「それは駄目っ! 駄目、なんです……私、まだ必要とされてます。それに……」
不意に溢れる涙を散らしながら、潤んだ瞳でカイは男を見上げた。
その視線を吸い込む男の目は、どこまでも澄んで静かな光を湛えていた。
「私はまだ、この神殿の神官。力なくとも、心で民を支えます。それに……」
再び男の分厚い胸に顔を埋める。着古した皮のジャンパーが、微かに硝煙に香る。
「それに、いい男ならもう……私、もう好きな人が――」
「そいつはいけねぇ! お嬢ちゃん、それは、それだけは」
不意に華奢なカイの両肩を、男の手が優しく包んで……ゆっくり自分から引き離す。
戸惑うカイの不安げな視線に、男は僅かに膝を曲げて目線を並べた。
「お嬢ちゃん、女の子はな……本当に好きな男の為に、操を守るんだ」
「前も聞きました。そうして娘さんを育てたって」
「んー、娘というかまぁ…ちょっと頑なで一途な、ダチの忘れ形見さ。それより」
「私はでもっ! おじ様の事が好きっ! 好きなんです……あの日から、ずっと」
初めて会った、あの日から。男を知った、その瞬間から。
「私に男を教えて下さったように……今度は、女にしてください」
「お嬢ちゃん……いや、カイ」
「はい」
「いいのかい? 俺ぁ妻子もいるし、いつ死ぬか解らねぇ身だ」
じっと見詰める男の瞳に、黙ってカイは頷いた。
瞬間、ふわりと両手で抱き上げられて、あっという間にベッドへと運ばれてしまう。
「……抱くぜ? カイ」
その言葉に全身が歓喜で震え、黙ってカイは瞳を閉じた。初めて交わす、くちづけ。
軽く触れた唇に、僅かにタバコの香りがした。それは離れるたびに再度、どちらから
ともなく触れ合う。そうして、触れている時間が長くなるほど、淫らな音を立て始めた。
男に誘われるようにカイは、恐る恐る舌に舌を絡めて唾液をすする。
「ん、んっ、ふあ……おじ様、凄い……やだ、私もう、さっきしたばかりなのに」
「これが大人のキスだ、カイ。いいから任せな……とびきりの女にしてやる」
言われるままに身を委ねて、カイは無心に男の唇を吸った。
まるで魔法の様に、そんなカイの細い腰を抱いたまま……男は片手でするすると器用に、
あっという間に神官の服を脱がしてしまう。カイはもう、下着をつけていなかった。
「綺麗だぜ、カイ……」
「恥ずかしいです、おじ様……私だけなんて」
男は唇を離すと、全裸のカイをまじまじと見下ろし、優しい言葉で撫でてゆく。
カイはただ、恥ずかしさに火がついたような顔を、手で覆いながらも……潤んだ瞳で
指の間から、服を脱ぎ出す男の姿に魅入った。
傷だらけの逞しい、筋肉の鎧を纏った肉体が露になる。
改めてカイは、生まれたままの姿で男の胸に飛び込んだ。
「私、悪い女……神官なのに、妻子あるおじ様に。でも、好きなんです。だから……」
「忘れちまえよ、カイ。何もかも忘れて、今はただの女に……俺がしてやる」
そういい強く抱き締められれば、カイは腹部に押し当てられる熱い肉柱を感じた。
そっと手を伸べ触れてみる……固く充血した強張りは、その先端が既に濡れていた。
「おじ様、私また……お口で、したいです。おじ様に、満たされたい」
あぐらをかいて腰を下ろす男の、その股間に隆々と雄の象徴が漲る。以前も見たが、
改めて男女の仲になろうとしている今……何よりも愛しく感じて、カイは顔を埋めた。
口いっぱいに頬張り、喉の奥まで飲み込み、戻しては舌を使って敏感な部分を攻める。
「うっ、上手くなった」
「ずっと、おじ様のことを思って……一人で。あと、とある縁で、女の子のを……」
以前に神殿を訪れた、両性具有の少女を思い出す。愛する男の、息子の仲間。彼女は
太く逞しい男根を、その可憐な姿に似合わぬ立派な逸物をぶら下げていたが。カイには
今頬張るものが、何よりも一番に思えた。野性的な味と匂いが、劣情を激しく煽る。
「おじ様、気持ちいいですか? はふっ、ん、んふぅ……はっ、はぁ……んくっ」
「ああ、いいぜ……最高にいい女だ、カイ。ん、そろそろ……」
「ふぁい、おじさま。今日も私に、たっぷり飲ませて、下さ――」
僅かに口を離しながらも、両手でしごいていたその瞬間。男は身震いと同時に、熱い
飛沫をカイの顔にぶちまけた。慌ててカイは口に含みなおして、最後の一滴まで遺さずに
吸い上げる。
口の中を愛しい苦味と臭気が満たした。
カイは射精が終るのを待って口を離すと、咥内の大量の白濁をうっとりと飲み下した。
「いい子だ、カイ。全部飲んだな」
「はい、おじ様の、濃くて美味し……あっ」
恍惚の表情で呆けていたカイは、不意に両の膝を手で包まれ、促されるまま股を開いた。
露になるのは、やや毛深い茂みと……その奥で蜜に濡れる秘裂。未だ男を知らぬ綺麗な
クレパスが、新鉢を捧げる歓喜に震えていた。
「いいから後は楽にしてな……」
「は、はい……あっ! おじ様、駄目……私まだ、今日は沐浴も」
「風呂か? 俺だってもう何日も入っちゃいねぇよ。それによ」
石鹸臭ぇ女にゃ、牝を感じねぇ……それだけ呟くや、男はカイの股間へと顔を埋めた。
同時に痺れるような快楽がカイの背骨を貫く。
男は太くささくれ立った指に、繊細な技を宿らせカイの秘所を愛撫する。同時に舌が、
優しく開かれた隙間へと侵入してきた。ピチャピチャと音を立てられる度に、カイは身を
ビクビクと震わせ指を噛む。
「ふぁぁっ、おっ、おじ様っ、そこっ、や、あっ、らめぇ……きっ、きたな、ひっ!」
「随分敏感だな、カイ。一人でずいぶんいじったんだろ? ええ? ほら、ここがよ」
男の指が、キュムと陰核を摘んで、その包皮を脱がせ始める。カイは最近、熱心に一人
いじっていた肉芽を、憧れの男にもてあそばれて身悶えた。カイのクリトリスは今、固く
充血して勃起していた。
「そろそろいいか……カイ、痛かったら言えよ?」
「あ、は、はい……おじ様、その、優しく……して、ください」
その格好は正常位という、ごく一般的な男女の交わりの形だったが。そんな事はうぶな
カイには解らぬ知識だった。ただ、好きな人の前に全てを晒して、耳まで真っ赤にして
股を開く。
男は体重をかけぬようにベッドに左手をつき、ゆっくりと腰を沈めた。その猛る怒張を、
右手で握ってカイとの結合部へ導いていく。慣れた手つきに少しだけ、カイは嫉妬した。
愛する男に今、純潔を捧げる……しかし、その男には妻子がいる。
言い知れぬ背徳感に胸を焦がしていた瞬間、激痛にカイは身を仰け反らせた。
「っと、大丈夫か? カイ、まだ半分だけどよ……痛いか?」
「っ……かはっ、あ、ああ……う、うう、だっ、大丈夫、ですっ! こ、このまま」
「無理すんなよ、俺のはデケェ事で有名なんだ。良く言われる」
誰に有名なのか、誰に言われるのか……今日は居ないが、以前連れていたモンスターの
相棒だろうか? それともやはり、故郷の妻だろうか?
「おじ様……手を」
「ん?」
「手を、握ってて、下さい。私、最後まで、おじ様と……ちゃんと、繋がりたいから」
「おう。それじゃ、行くぜ……」
白磁のような細く小さな手に、逞しく日に焼けた手が重なる。そうしてカイは男と、
指と指を絡めあいながら、強く手を握り合う。こうして結び付きを強めれば、今だけでも
男を独占できそうな気がするから。
男にとってカイが多くの誰かでも、自分にとって男は特別な一人。
純潔を捧げて、生涯愛を胸に秘める、大事な大事な想い人。
ずず、と己の体が男自身の形に開かれてゆくのが感じられる。痺れるような激痛と共に、
下腹部の圧迫感が増す。息を荒げながら、カイは握る手に力を込めた。
「奥まで、入ったぜ……カイ、苦しくないか?」
「だい、じょう、ぶ……大丈夫、です。それより、おじ様……動いて、下さい」
「いんや、痛いだろ? 変な汗かいてるじゃねぇか……ほら」
そう言って男はカイの額に唇を寄せると、玉の汗を舐め取り、優しくキスをした。
「初めてなんてな、気持ちよくなんかねぇ……ただ痛いだけでよ」
「そっ、そんなことないです! 私、おじ様のこと、気持ちよく――」
「女の子は痛いだけさ。いいからもっとくっつけ……カイ。お前は今、俺の女だ」
「……はい」
腹の奥に熱く脈打つ、異物が今挿入されている。そこより吹き出る精を受け入れ、子を
孕めたらどれだけ幸せだろうか? ふとカイはそう思い、それが締め付けとなって男へと
快楽をもたらす。出して……中へ、子種を注いで……思わず念じて、痛みも忘れ抱き付く。
しかし男はただ、優しくカイを抱き締め……僅かに腰を浮かし抜くと、白く柔らかな
カイの腹部へと精をぶちまけた。鮮血に濡れた男根を見詰める、カイの視界が涙に滲んだ。