「んっ……はっ……」
きつく噛み締めた唇の隙間から、エレンが切ない吐息を漏らす。
雪のように白くきめ細かな双丘の頂に触れられるたび、背筋がゾクゾクする。
「ユッ、ユリアン……んぁぁっ!」
名を呼ばれたユリアンが、豊かな胸の谷間からエレンの顔を見上げた。
「なに?」
ふと、温かく彼女を包んでいた重みが消えて、エレンは我に返った。
深く一息つくと、また身体の芯から熱い疼きが沸き起こってくる。
「いや。やめないで……」
ユリアンはそっと微笑んで、またエレンの胸に顔をうずめた。
頂点を交互についばむように、チュッ、チュッと音を立てて口に含む。
「ひっ……ああんっ!」
その刺激に敏感に反応して身体を硬直させるエレン。その背中に、ユリアンはそっと腕を回した。
鍛え抜かれた厚い筋肉に包まれる安心感に、全身が硬直から解き放たれた。
男の温もりに身を任せ、エレンは眼を閉じた。
「はぁっ……ねぇ、もう……」
「ああ」
おもむろにユリアンの腕が解かれ、その指先が下腹を伝い下りてゆく。
「そうよ……そこっ……」
彼の指が彼女の薄い茂みに触れる。
そうしてその先へ――とおもいきや、果たして温かく湿ったその場所をはるか通り過ぎて、太股をそっと撫でた。
「や……やぁっ!」
エレンの抗議の声には耳も貸さず、ユリアンは右手を太股に這わせたまま執拗に胸への口付けを繰り返した。
「……ねぇ、ねぇったら!」
何度も急かされて、ようやくユリアンはエレンの胸から口を離した。
そっと身体を起こして、エレンの両足の間に自分の足を割り込ませる。
しかし、その間も左手では胸への刺激を諦めない。
「んんっ……そんなに、おっぱい、好きなの……?」
ちょっと不安な沈黙。そうして、ユリアンはエレンにぐいと頬を寄せて耳元で囁く。
「……エレンのぜんぶ、大好きだよ」
最近また伸びてきた若草色の髪がエレンの顔に掛かった。
くすぐったいけど、ユリアンの匂いがする――ふふふっ。
「またそんなお世辞ばかり言って。……他の娘もそうやって口説いてるの?」
そういって、わざとユリアンをからかってみる。
「いや、まあ、な」
「……否定しないの?」
エレンの顔からサッと微笑が消える。翡翠の瞳がユリアンを見据えて鋭く輝いた。
「ごめん。嘘だ」
「……許さないわ。ほら、なに休んでるのよ!とっとと続きしなさいよっ!」
自分がユリアンをからかおうとしたことも忘れ、本気で怒ってしまう。私にはユリアンだけ――。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、ユリアンはヤレヤレというように肩をすくめて笑った。
「じゃあ、さ……してあげるから、もっと力を抜いて、ね?」
つい本気になっていたことが恥ずかしくて、エレンは赤面して顔を背けた。
「は、はやく……」
そっとエレンの足を割って、ユリアンの身体が滑り込んでくる。
逞しい太股の筋肉の感触に、エレンの奥底がかぁっと熱くなり、蜜が湧き出してくる。
エレンの膝を支えていたユリアンの手が太股を伝い降りて、そっと茂みを撫でた。
焦らすかのようにゆっくりと薄い茂みをかき分けて、じっとりと潤んだそこをくすぐる。
「あはっ……んっ……」
ふとユリアンが顔を上げて、エレンはハッとしてその顔を見詰めた。
――必死に声を出すまいと堪えていたのがバレたっ!?
だが、すぐに彼はまたエレンの胸に口づけた。と同時に、彼女の下半身に痺れが走った。
「んぁっ!」
つぷっ、と水音がした。エレンは眼を閉じて強烈な刺激に耐えた。
彼女の中に異物が侵入してくる…そうして、それを強く締め上げて形を変える。
ずいとその――おそらくはユリアンの指が、沈められた。
「……っ!」
必死に声を出すまいと唇をかみ締めるエレンを知ってか知らずか、ユリアンは無言のまま2本、3本と指を増やしていく。
膣が押し広げられる感触に、きゅっと下半身が緊張して締まる。
激しく中を掻き回しながら、ユリアンはエレンに顔を寄せて、耳元でそっと囁いた。
「エレンの中……凄く、熱いよ」
「やっ……そんなことっ!」
ニヤッと笑うと、エレンの秘処に左手も添えて、そっと開いた。
「すごい、溢れてるよ? あのエレンがこんなにしてるなんて……」
「ばっ、馬鹿ぁ!」
それには応えず、ぱっくりと開いたそこに舌を這わせる。――熱い。
じんじんと舌が痺れる。
「あんっ……も、もぅ……んはぁぁ! や、やめ……」
途端に、ユリアンは頭を上げ、へその辺りをくすぐるように嘗め回す。
そうして、時折ぎゅっと口づけてキスマークをつけたりもしてみる。
散々焦らされて、エレンは疼いていた。
いつもの勝気な性格もなりを潜め、ただただ下半身から全身に伝わる甘い痺れに身を委ねていた。
正直なところ、こんなに自分が淫乱な女だなんて思ってもいなかった。
初めてのときは痛くて怖くて、つい本気でユリアンにナイアガラバスターを食らわせちゃったのに。
(なんでこんなにユリアンが欲しくてたまらないの……?)
下腹部を這い回るざらついた舌の感触に、背筋がゾクゾクして肩を聳やかした。
「ねえ……早く……」
「何? だって、エレンがさっき、やめてって……」
こんなときにもまだくそ真面目に言うことを聞いているユリアンが少し憎たらしいと思った。
もしかしたら自分は彼に踊らされてるのかも、とも思ったが、さすがにそれは認めたくなかった。
「馬鹿……また、その……さっきのを、ね」
ユリアンの熱い吐息が秘所にかかる。それだけで敏感に反応してしまい、呼吸が乱れた。
「ねえ……お願い……」
まさか私がこんなこと言うなんて。まともにユリアンの顔を見ることができなかった。
恥ずかしさともどかしさに、思わずぎゅっと目を閉じていた。
「じゃあ、いくよ……」
再びエレンの身体に、ユリアンの身体の温かい重みがかかる。
ぐっと突き上げられて、するりとそれを受け容れながらもその形に合わせて襞が蠢き、きゅっと締め上げる。
「くっ……はぁぁ、いいよ、奥まで……」
そっと目を開けると、目を瞑って必死に耐えているようなユリアンの顔が見えた。
身体の芯の疼きがユリアンの熱と溶け合い、熱く煮えたぎって2人を繋ぐ。
なんだかとても優しい気持ちが胸に広がって、エレンはぐいっと彼の背中を抱き寄せた。
「ねえ、しばらく、このままでいて……」
「んっ……ご、ごめん、俺、もう――」
「えっ、な、何よっ!?」
最高に幸せな空気を破られて、エレンは素っ頓狂な声を上げた。
が、その間もなく、ユリアンは身体を硬直させ、劣情の液体を注ぎこむ。
「な、ななななななによ!ちょっと――んはぁっ!」
ユリアンの身体の震えが伝わり、擦り合わされた互いの秘所がこすれて軽く達しそうになる。
こんなときにも、エレンは大慌てて今日が大丈夫だったかどうか考えていた……。
ようやくユリアンが一息ついて、そっとエレンを抱き寄せようとした。しかし――。
「……早っ」
冷たく背を向けて布団を引っかぶったエレンに、ユリアンは溜息をついて肩を落とした。
「やっと……見つけましたわ、ユリアン……」
窓のわずかに開いた隙間から覗きながら、モニカは微笑みを浮かべた。
その手に持ったシルバーフルーレは月の光を受けて冷たく輝いている。
先客だった…フォルネウス兵の血を滴らせながら――。
― 完 ―