この世界を創造したかみは、悪魔を打ち倒すヒーローの物語を楽しもうとして、
壮大な仕掛けを仕組んだ。多くの者がヒーローになれず、道半ばにして命を落と
していった。
無数の者達がもがき苦しむ中、4人は塔の最上階へと力強く突き進んでいった。
だが、その快進撃は、文字通り死体の階段を進むが如き凶行だった。
強盗、空き巣、その他誰かに大事にされている物を盗む事全てを至上の楽しみ
としている巨漢の肥え太った盗人。
金の為なら自分に惚れ込んだ女でも平気で売る、権力欲と物欲とそして自尊心
の塊のような卑怯なチンピラ。
無法を愛し乱世を楽しみ、正義の代行者を自認する者が敗れて死ぬのを笑うと
言うならず者。
とどまる所を知らない食欲であらゆるものを食べ、隙あらば仲間すら平気で食
べかねない餓鬼。
この4人は、かみの望むヒーローではなかった。4人の悪行は、かみすらも顔
をしかめる酷さだった。かみは途中から助言を一切与えないようにした。かみは
何度と無く、4人が竦み上がり、泣き叫んで助けを求め、その末に絶望して死ぬ
光景を待ち望んだが、ついにそれは無かった。4人はかみの助言を得ないまま塔
を進み、かみと対面した。
「まさかあなたがたがゲームを勝ち抜くとは思いませんでしたよ。」
「ゲーム?ゲフッ。」
「そうです。わたしの作った壮大なストーリーのゲームです。」
「てめえ説明しやがれ。どう言う事だ。」
「私は平和な世界に飽き飽きしていました。そこでアシュラを呼び出したので
す。」
「わからねえでもねえな。」
「アシュラは世界を乱し面白くしてくれました。だがそれもつかの間の事、彼
にも退屈してきました。」
「おまえ、うまぞう。ずげえうまぞう。ずんげえうまぞう。…ぐわぜろ。」
「おめえは黙ってろ。それでゲームってわけか。遊びが下手なかみさまだなあ。
グフッ。」
「そうです。私は悪魔を打ち倒すヒーローが欲しかったのです。しかし終わっ
てみれば数々の難関を突破してアシュラを倒したのはあなた方でした。失望しま
したよ。本当は、それらしい人が来るのを待ち望んでいたのですがね。」
「やいてめえ!!俺様はそれらしい人じゃねえってのか!?」
「そうです。あなた方創られた者には理解できないかもしれませんが、私にと
っては、あなた方は違いますね。」
「だがその俺は無理矢理にここまで来たぜ。あんたがどうしたかろうが関係な
いが、一応聞こうか。」
「最初から存在しなかった事にします。まずは、死んでもらいましょうか。」
しかし、4人は全く動じなかった。それどころか、かみを嘲笑していた。
「グフッ!生意気なかみさまだなあ。わかっちゃいねえなあグフッ!」
「ぐへへ…。」
「なあかみさま、俺はゲームを続けてえんだ。その前に朝飯前の簡単な作業を
させてもらうぜ。」
「ぐいでえ。ぐわぜろ。」
かみは4人の、文字通り神をも恐れぬ不敵な態度に怒りを覚えた。
「死ぬ前に神の力、とくと目に焼き付けておけ!」
そう言うとかみは、シルクハットにネクタイをしめたスーツの姿から、神々し
い姿へと変わった。
かみが4人を見ると、何かを相談している所のようだった。
「と言うわけだ。こりゃあおもしれえだろうが。」
「グフッ!おめえも来る所まで来たな。」
「その時の野郎の顔が見てみたくなってきた。」
「ぐわぜろ」
「お前達何を話している!!」
かみの声で、4人は相変わらずニタついたまま振り返った。手に持っているの
は、チェーンソーだった。
「グフッ!そんな怖い顔すんなよかみさま。命だきゃあ助けてやるよ。」
デブの言葉が癪にさわった。かみはいきなり右手を使おうとした。その瞬間、
チンピラが力任せにチェーンソーを叩きつけてきた。かみは、そんな物がきくは
ずは無いと思っていたが、つい避けた。
思いもよらない事が起きた。かみは、紙一重でかわしたのだが、チェーンソー
が、かみの衣を大きく切り裂いていた。決して、創られた者ごときに切られるはず
がないかみの衣が易々と切り裂かれた。
「というわけだ。お前さんは傷一つつかない無敵どころか、これの一振りで真
っ二つになる。まるで紙切れをハサミで切るようにな。たまたま奇妙な本を見つ
けてな、そいつにはこの世界の事が詳しく書かれていたが、あんたの知らないあ
んたの弱点まで書いてあった。」
かみが、たじろいだ。かみは、何かに気がついて腕で身を隠した。
「だからよ、命だきゃあ助けてやるって。その代わり…んん?どうしたんだ?」
4人がかみの仕草に興味を持った。かみは後退りしたが、体つきに似合わないす
ばやさでデブが後ろにまわりこんでいた。
「おお?てめえ何隠してやがる?この俺様に隠し事が通用するとでも思ったか!
?てめえら押えつけろ!!ぶった切られたくなけりゃ見せやがれ!!」
チンピラの命令も聞かずに4人はかみをチェーンソーで脅して押さえ込んだ。
「やめて!!ああっ駄目!!離して!!」
「…ほう、こりゃあ予想以上に面白くなってきたな。こりゃあ本にも書いてはなか
ったなあ。」
かみが隠していた物、それは、大きくはないが、乳房だった。
「グヒヒッ!!実はなあ、チェーンソーで脅してお前に男色専門の売春をさせて
やろうと思っていたんだ。それがまあ…こりゃあもっと大勢にかわいがって貰える
なあグフッ!」
「かーっこりゃあたまんねえぜ!それにしても中途半端な胸だな。なるほどこり
ゃ目立たなかったわけだ。」
「男が強姦されるのと、女が強姦されるのじゃ、どっちが惨めなんだろうな。」
「やっばり、ずんげえずんげえうまぞう。」
かみは体を無理矢理広げられ、恥辱に顔を伏せていた。傷一つ無い、整った体だ
った。確かに女性の体だったが、所々を無視すれば小柄で細めの男性にも見える体
だった。餓鬼が今にも噛み付きそうな目で凝視している。
「グヒヒッ!!お前もしかして、処女か?いや、まぐわった事ねえのか?」
「…。」
「答えやがれオトコ女!!これが目に入らねえか!?」
「まだありません!!」
「そうか…じゃあ、誰かがかみの処女を頂くって事になるな…。光栄だ。」
「俺だ!!かみの処女も俺の盗品記録の仲間入りだ!!グヒヒ!!」
「俺様に決まってるだろうが!!世界を手にする俺様以外が出来るわけがねえ!!」
3人が口論をしている隙に、餓鬼が大きな口を開けた。気がついたデブが手繰り
寄せた。
「畜生目を放した隙にこれだ!!早い者勝ちだ!!」
殴り合い押しのけあう3人が次々にかみにのしかかっては突き飛ばされた。かみ
の処女を奪った相手は、ついにわからなかった。かみは泣いた。初めて刺される痛
みよりも、物のように奪い合われる自分の境遇に泣いた。
「てめえら全員出て来い!!今日はてめえらにいいプレゼントがある…勿論有料
だがな!!出てきやがれド平民ども!!」
チンピラの怒鳴り声に大慌てで住人が飛び出して整列した。どの世界の住人も共
通して4人には皆酷い目に遭わされて来た。ここの住人もそうだった。隠れれば更
に容赦ない仕打ちが待っていた。恐怖の記憶が殆ど全ての住人を4人の前に並ばせ
た。
「へへ…てめえらこいつが誰だと思う?何とかみさまだ!!この世界創ったかみ
さまだよ!!そしてなあ、なんとアシュラに世界メチャクチャにさせたのもこいつ
だとよ!!」
住人の顔が引きつった。ある者はひれ伏して恐れた。別の者は隣にいた者とお互
いに、驚きで形の変わった顔を見合ってまた驚いた。またある者は夢か現実かどう
かわかりかねている。
「かみ!!こいつらにてめえがかみだって事証明しろ!!ほらアレ出せ!!」
チンピラの怒鳴り声にかみが飛び上がった。かみは大慌てで、グレートデモンを
何の前触れもなしに出した。半ば取り乱していた住人達は突然現れた悪魔に驚いて
完全に混乱し逃げ惑った。
「てめえら落ち着け!!全く…。」
グレートデモンは3人の容赦ない銃撃で一瞬のうちに倒された。倒れたグレート
デモンを、餓鬼が見る見るうちに食いつくした。
「ごぢぞうざまでぢだあ。」
冷静さを取り戻しかけた住人達は、久々に目の前で行われた餓鬼の食事でまた恐
怖に騒いで逃げ惑った。
「静かにしやがれ!てめえらまで殺されてえかっ!?これでわーっただろ?こい
つはまぎれもねえかみさまよ!!この世を無茶苦茶にしやがったかみさまよ!!て
めえら、こいつ犯してえだろ?いいぜただし!有料だ。文句言うんじゃねえ!!か
みさまだぞ!!高いモン払って当然だ!!」
チンピラが提示した価格は目が回るような物だった。しかし、一人の住人が、恐
る恐る進み出た。
「おお?確かにあるな。ようし、やれい!他のやつらも用意しろ!高利貸しに借
りてでも用意しろ!!損はしねえぞ!なんてったって、かみさまと遊べるんだから
なあ!!」
「ひっ、ひぐっ!」
住人の指がゆっくりとだが、かみの中へと侵入して来た。
「あっ、痛い!!」
かみの洩らした悲鳴に、住人が憤った。
「痛いだと?俺たちはもっと痛い思いして来たんだ!これぐらいで泣くんじゃね
え!高い金払ったんだ。その分、今までこの世で苦労した分、お前のせいで苦しん
だ分、無茶させてもらうぞ!」
住人が乱暴に指でかき回した。かみが叫んで体をよじった。殆ど動かせる部分は
無い。両足と腰は固定され足を広げさせられている。両手も手錠がかけられ首輪と
同じく鎖で動きが制限されている。その上、傍らにはチェーンソーを構えたならず
者が立っている。平気で誰の命でも断つ男だ。不快に反応する程度しか許されては
いないだろう。それすらも、気分によってはチェーンソーを振られる事になるかも
しれない。住人の指がようやく抜かれた。指と入れ替わりに男根が突入した。
「ああぅっ!」
「グフッ!一人目でそんな調子じゃもたねえぜゲフッ!」
デブはそう言うと美味そうに鳥の唐揚げに再びむしゃぶりついた。デブの声はか
みの耳に入っていない。住人の腰があわただしく動く。
「こりゃあいいぜ、オラッどうだ!今までの恨み晴らしてやる!」
「ああっ!はぁはぁ…ああっ!!」
住人が腰を叩きつけるごとに、かみを固定している器具が音を立てた。無論、ひ
ずみが出る気配はない。かみの爽やかな金髪が突かれる度に乱れた。
「ごめんなさいっ!ごめんなさい、あっああ…。」
住人は果てた。しかしたちまち硬度を取り戻した。
「せっかくのチャンスだ!!出来るところまでやってやるんだ!!」
前に劣らぬ激しさでかみは責め立てられた。股間から液体が時折はねた。住人の、
恨みがこもった劣情が再び吐き出された。ようやく交替となった。男根が糸を引い
て引き抜かれ、二人目の男根が空洞を埋めた。
「うおっ!たしかにいい具合だぜ。一生モンの思い出になるなあ。」
そう言って二人目が腰を打ちつける。衝撃にかみの首が揺れる。涙がまた一滴、また
一滴と、つやのある顎から滴り落ちた。かみは何も考えないように努めた。だが下半
身に伝わる衝撃がそれを邪魔している。目をつぶり、すすり泣きながら自然と言葉が出
る。出る言葉は前と同じだった。
「ごめんなさい!!ごめんなさいっ!!っぱ!!はぁはぁごめんなさいっ!!」
かみは涙を振りまいて叫びながら男に犯され続けた。
「ようし次の世界行くぞ。」
チンピラは上機嫌だった。集まった財産はとんでもない規模になっていた。4人
が撒き散らした災厄とアシュラ達による災厄のはけ口に、かみはされた。ぶつけら
れた白濁は全て合わせれば池を通り越して湖になるほどだろう。4人とかみはあち
こちの世界を回ってはかみを犯す者を募った。かみは犯されるたびに謝罪の言葉を
叫んで泣いた。4人の不興を避ける事を忘れなかった。餓鬼が間違いを犯さないよ
う、食事を大量に与えるのも忘れなかった。
かみは、大勢の創られた者達の死を見てきた。だが、自分が死ぬ事など思いもし
なかった。死の恐怖でかみは生きる為に気を抜かなかった。
「もう終わりにするぜ。そろそろまた町の襲撃をする。長い事やってないんでど
れだけ遊べるか楽しみだ。」
ならず者が不敵に言った。
「また、かみさまがいた所に行くぜ。あの扉の先まだ見てねえんだ。きっとお宝が
ウジャウジャあるぜグヒヒッ!!早く盗みに行こうぜグフッ!!」
デブが目を輝かせて舌なめずりをする。
「もうがまんでぎねえだあ!!ごのおなごぐわぜろおおお!!」
餓鬼が今までに無い大声で叫んだ。餓鬼はあの時から、かみを食べたくてたまらな
かったのを他の美味そうな食事でなんとか誤魔化されてきたが、限界だった。
「バカヤロウ!!まだ足りねえ!!俺は新しい神になるんだ!!この世の全てを
手に入れるまでやめはしねえぞ!!」
元々4人は、はみ出し者の一匹狼だった。それが今日まで殺し合いに発展する不
和にならなかったのは奇跡だった。
「グフゥ…てめえら…。」
「世界最強は俺様よ…。」
「死ねよ…。」
「ごろじでやるう…。」
この世で最も忌まわしい殺気が場を覆った。一瞬の沈黙の後、それぞれの一番の
得意技が荒れ狂った。それが終わった後、虫の息で4人はにらみ合い続けた。
突然、目を開けていられない光がその空間を支配した。4人は驚いた。何が起き
たか理解できなかった。虫の息のまま、手探りでのた打ち回った。のた打ち回るう
ちに理解した。かみは今、誰にも見張られていなかった。
チェーンソーを探すが見つからない。4人が4人とも、言葉にならない、命の限
りの悲鳴を上げた。かみは、無情な裁きを下した。
かみの体についた無数の痣や傷が消えていく。かみの衣が現れてかみを包んだ。
かみの目は怒りに光っていた。
「もう、要らない!!」
世界は一瞬で破壊された。同時に、新たな世界の基礎が創られた。世界がすばやく
仕上げられていった。ある程度進んだ所で、かみは作業を止めた。歯を食いしばっ
て、目を真っ赤にして泣いた。
にっくき世界は跡形も無く滅ぼした。傷も完全に癒えた。だが屈辱は容易には消
えそうにない。
(完)