下弦の月が、東の空の中腹に浮かんでいる。
よく晴れた夜空の下、夜営の側を流れる小川で手を洗うエレン。
「はぁ…野宿のときの憚りはいつまでたっても慣れないわね…」
暗くて、危なくて。もし途中で野盗やモンスターに襲われたら…と思うと、いろいろな意味でぞっとする。
綺麗になった手をぷらぷらと振って水気を落としていると、微かな声が聞こえた。
「誰…?モンスター?」
それは後ろの森の中から聞こえてくるようだ。木々に反響して幾重にもエコーがかかり、不気味極まりない。
よく聞くとその声は、聞き慣れたモニカ姫の声。しかも悲鳴のような、言葉にならぬ声―――
「モニカ様の身に何か…!?大変!!」
夜着の端で乱暴に手を拭い、エレンは森の中へと一直線に駆け出した。
自分の耳を頼りに森を進んでいくと、程なくしてハリードの姿があった。
木の陰に隠れて気配を殺し、声のする方を一心に伺っている。
「ちょっとハリ…、!!」
呼びかけようとしたとたん、分身剣のような素早さで背後に回られ、手で口を塞がれた。
「静かにしろ…」
耳元で囁くハリードの低い声にエレンは一抹の恐怖を覚え、黙ってうなずいた。
ハリードはエレンの従順な態度を一瞥して口を解放すると、彼女の肩を強く抱いて茂みへと連れ込んだ。
一体何事かとエレンが困惑する中、ハリードは茂みの向こうの開けた空間を親指で示す。
そこをそっと覗き込み……エレンは脱力した。
「あんっ!あ、はあっ!うん、ユリア、ユリアンっ…!ああっ…」
真っ最中のモニカとプリンセスガードの乱れた姿。
エレンはハリードの肩を叩いて呼びかけ、振り向いた彼の額にデコピンを見舞った。
(なに真剣に覗いてるのよ馬鹿!!)
(そう怒るな。いいからお前も見ててみろ。結構面白いぜ?)
人のナニを鑑賞して何が面白いんだか…とげんなりするエレン。
できれば今すぐテントに戻りたかったが、肩をハリードにがっちり掴まれているため動けない。
仕方なく、目の前で繰り広げられている肉弾戦に目を向ける。
モニカはほぼ全裸にブーツだけという姿で、薄黄色のマントがシーツの役割を果たしている。
ユリアンは彼女の上に覆い被さり、口で胸を、片手で下をまさぐっていた。
エレンのルーブ山地に比べるとモニカの胸は控えめで、仰向けになるとさながらロアーヌ平原サイズだが
先端の紅いピドナジュエルはつんと尖り、ユリアンが舌でジェントルタッチするだけでも抜群の感度を示す。
「あっ!あん!いい、そこ、気持ちいい、ユリアン…」
「綺麗な顔して、なんてスケベな体だろうな。ホラ、ここがこんなにメイルシュトロームだ」
モニカのアビスゲートはビートルジュースが溢れ出して大津波状態となっており、
ユリアンが指でそこを失礼剣するたび、ぐちゅ、ぐちゅと卑猥な音が森中に響き渡る。
「さては、フォルネウスをも上回る魔貴族が棲んでいるな?よし、俺の七星剣で退治してあげるよ」
両脚をカエル戦士のように広げ、あられもない姿でエイミングを待ちわびるモニカ。
ジャングルに隠された火術要塞が丸見えとなり、さらに奥ではアビスゲートが大きく口を開けて蠢く。
普段はおしとやかな姫が、一皮剥けば何とも大胆なものである。
モニカの痴態にユリアンもすっかり準備完了で、スターバーストした七星剣がビクビクと脈打つ。
「ええ、ユリアン…きて…真のアビスの力を見て……!!」
ユリアンは七星剣の切っ先を何度か火術要塞全体に塗りつけると、一思いに刀身をゲートに突き刺した。
「あ、あ…あああっ!ユリアンの七星剣…入ってきますわぁ!!」
「くっ、モニカ…!なんて手強い魔貴族だ!」
剣の切っ先がゲートの最奥部を斬りつけるたびに、モニカは激しくバードソングする。
「あんっ!あんっ!ユリアン…すごいっ!もっと…もっとジンギスカンしてぇ!」
しばらく正常位でダンシングソードを繰り返していた二人だが、やがてユリアンのモラルが低下したようで
前列交代して今度はモニカが優勢となる。
拙い腰使いながらもユリアンを気持ち良くしようと必死に牙龍舞していたモニカは
やがて自らの生命の大もとにジャストミートする術を覚え、ただ快楽を貪りセルフバーニングする。
「あはぁっ…ああ、はあんっ!いい、いいのぉ…中でライジングフレームしてるのぉ…っ!」
「はぁ…はぁ…すごいよモニカ。下乳丸出しのリリスよりいやらしいよ…!」
自らの上で悶えるモニカの姿に煽られ、ユリアンのモラルは急速に回復していった。
「後ろ…後ろ向いて」
「ん…あん…あ、ああっ」
モニカはユリアンに従い、繋がったままぐるりと腰を大回転させた。剣とゲート、両方にスクリュードライバーの快感が沸き起こる。
後ろ向きになったモニカをユリアンは押し倒して速攻交代し、再びマルチカウンターを仕掛ける。
「あっ、あっ!あんっ!いやあ…私…なんていやらしいの!こんな格好で男の人を求めてっ…まるでバーゲストみたい!!」
「そうだ!何がロアーヌ王女だ、このメスバーゲスト!!お前なんていのしし武者の下でブーブー鳴いてるのがお似合いじゃないかっ!!」
「ああぁユリアン!モニカはあなたのビューネイドッグですぅ!!一生あなたに従いますぅ!!」
快楽で頭がイドブレイクし始めたのか、互いの言動はもはや支離滅裂だ。
ユリアンは猛烈なファイアクラッカーでモニカを攻め立て、モニカもまたゲート内で超重力をかけユリアンの七星剣をきゅうきゅうと締め付ける。
「ああっ、はっ!…だめぇ!いく、いっちゃうっ!!」
「いけよ…俺のスターストリーム、そのアビスゲートで受け止めるんだっ!!」
「ひいぃっ!やあん、イクうっ!!あっ…あああああああああんっ!!」
全身をエアロビートさせながらスケアーボイスを上げ、モニカとユリアンは同時にギャラクシィした。
アビスゲート攻略。しかし祝福マーチが流れる余裕もなく、彼らは気絶するように眠りについた。
「あー、中に出しちゃって…知らない。あたし、知ーらない」
一部始終を見学させられていたエレンが、憔悴しきった顔で言った。
片やハリードは目を細め、息子を見守る父親の如く彼らのバトルを見届けていた。
「ねぇ、あんなとこであんな格好で寝たら、風邪引くどころの騒ぎじゃないわよ」
「そうだな…よしエレン、テントに戻って毛布を持ってきてやれ」
自分で行けばいいのに…という意見は押し込め、エレンは駆け足でテントへ向かい、数分経って一番厚い毛布を持ってきた。
「でもさ、普通に持っていったら気配で起きちゃうんじゃない」
「チッチッ。ここがトルネードの腕の見せ所だぜ」
そう言うとハリードは両手で毛布を広げ、一瞬で褐色の風と化した。
次の瞬間には彼は眠る二人の横に居り、乱雑に毛布を掛けてやると、また竜巻のように素早く立ち去る。
「バックスタッブの応用だ」
「これぞ技術の無駄遣いね」
見世物はもうおしまい。長く居残ってソウルサッカーにでも襲われたら大変なので、観客はさっさと帰ることにした。
(やばいわ…もしかして、染みてるかも)
さっき毛布を取りに行く途中に気づき、自分でも驚いた。
仲間の痴態を目の当たりにして知らず知らずの間に興奮し、中心がひどくぬかるんでいたことに。
「あっあのさぁ…」
「ん?」
「いや…やっぱり、あ、あれくらいの方が、いいの?」
普段あまりこういう話をしないエレンが、珍しく自分から話を振る。
ハリードはニヤリと笑い、背後からエレンを抱き締めた。
「何がだ?」
「え、だからっ!……あのくらい大げさに、その、よがった方が、いい?」
エレンが顔を赤らめて問う。体温の上がり始めた彼女の体を、ハリードは服の上からそっとまさぐり始めた。
骨ばった大きな手が腰元を撫で、脇腹をなぞり、豊かなルーブ山地の頂を指先でコリコリと転がす。
剥き出しの首筋には唇を這わせ、耳の裏側を舐める。
ボリューム満点の尻には、ブルクラッシュにベルセルクしたカムシーンが宛がわれる。
「んっ…やぁ……」
固く目を閉じていやいやと首を振り、エレンはため息交じりの喘ぎを漏らす。
欲望のままに感じてくれるのも良いが、こうして懸命に堪えながらも漏れる声というのもなかなか乙なもの。
「お前の恥らい方…可愛くて好きだぜ」
顔を真っ赤にしているエレンの頬に、ハリードはキスを落とした。
「それとも…あんな風に乱れ雪月花してくれるのか?今から…」
ハリードの手が下腹部を伝って茂みへ伸びようとしたが、エレンはそれをパリィする。
体を反転させてハリードと向き合い、膝を曲げ、猛ったカムシーンに自ら太腿を当てた。そして一言。
「短勁食らわせていい?」
比喩ではなく、本当に。ハリードがソウルフリーズしたのは言うまでもない。
そこで短勁など発動されたら、カムシーンが、そして生命の素が致命的なダメージを……
「わ、分かった…次の町まで待とう」
「よろしい」
共に旅をしながら、今宵全く違う結末を迎えた二組のカップル。
真南から照らす下弦の月だけが、その全てを知っているのだった。
おわり