破壊するものを倒し、サラを救いだした後も、エレンはハリードとともに旅を続けていた。
もともとやっていたように、目的をもたずに。
エレンは、自分にとってそれが一番自然なことだと思っている。
ハリードは、口には出さないが故郷や行方不明の恋人のことをようやくふっきれたようだった。
そう思ったのは、見たこともないような優しい表情で愛の告白をしてきたからだ。
『知ってたよ。根拠はないけど。
でも、恋人だったお姫様の事を消化できなくて、言えなかったんでしょ。
まぁ、信じてあげる。受け入れてあげる。
私をちゃかそうと思ったら、そんな顔できないもんね。』
ハリードがわざわざ口にしたのは少し意外だったが、エレンは本当にうれしかったのだ。
そしてその晩、エレンは処女をハリードにささげようとした。
しかし、エレンの緊張が解けずに、挿入できなかったのである。
それまで性交渉についてほとんど知識はなく、自慰すらしたことのなかったエレンにとって、その夜は幸福でもあり、地獄でもあった。
何日かかけ慣らされていくうちに、ハリードに処女を捧げることができた。
しかし、ハリードとの触れ合いを愛しくは思ったが、絶頂を味わうことはなかった。その前に、どとらかの体力が尽きてしまう有様だった。
それから、1年ほどあったある日。場所は、ランスの宿屋。
「……はぁ…んっ」
エレンは、ベットの中でハリードの下敷きになっていた。
いつもより長い前戯に酔いしれていた。
すっかり、性行為に慣れたエレンだったが、相変わらずエクスタシーは未経験の事だった。
ハリードが、エレンの乳首を舌で転がす。
「っあ…」
つい、声を漏らしてしまう。
しばらく、手と口で胸を弄ばれた。
快感が次第に増していくのがわかり、エレンは足をすり合わせてしまう。
「はり…どぉ…」
先ほどからエレンの太ももにぶつかる堅い感触すらも、エレンに快楽を与えていた。
ハリードは、そんなエレンの表情を見て心底愉快そうだ。
「なによ…っ…」
「いや、お前ほんとに胸されるの好きだなと思ってな。」
「ばか…。」
恥ずかしくなって顔をそらそうとしたが、その前にハリードに深く口付けされた。
そのまま、エレンの下腹部をまさぐった。
「んふ…ん…」
ハリードは指を一本中に侵入させて液体をすくいとり、クリトリスにこすりつけた。
「あんっ」
ハリードはじれったいほどに優しく撫でる。エレンの体に電流が走った。
あっという間に、絶頂に上り詰める。しかし、上り切ることはなかった。
ハリードはもう片方の手をつかって、エレンの中をかき混ぜた。エレンは内部と外部を同時に犯されるのが一番好きだった。
エレンは、いつのまにか絶叫に近いあえぎ声をあげていた。
「あうっ…ハリードぉぉ…きもちぃよ…!!」
「中がか?外がか?」
「わ…わかんないよぅ…あん!」
じれったい動きも、いつしか激しいものになっていた。
エレンは、内部がものすごい勢いでかき回されていることを感じていた。
しかし、ハリードはいきなり動きをやめた。エレンは、じらされていると思いハリードを覗き込んだ。
ハリードはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「お前、潮ふいてるぜ」
「え!?」
起き上ってみると、びしゃびしゃに濡れたシーツとハリードの手が目に入った。まるでおもらしだ。
どうやら自分が潮をふいたのは本当らしかった。が、
「私、別に…。その…、いつもどうりだったわよ。」
そうなのだ、特に前兆を感じていたわけではなかった。ハリードと関係を持った後、色々と知識は増やしたので知ってはいたが、もっと前兆を強く感じる行為だと思っていた。
「へぇ、そんなもんなのか。いや、しかしな…」
「なによ。」
「お前今日、なんかエロいな。」
「!」
エレンは、恥ずかしくなった。大分慣れたとは言え、恥ずかしいものは恥ずかしい。しかも、今日は特に恥ずかしい姿を見せてしまったのだ。
思わずハリードに背を向けたが、そのまま抱きしめられてしまった。
「照れんなよ。褒めてんだぜ?」
「うそ…。そんな褒め言葉聞いたことないわ。」
「はは、たしかにな」
エレンは内心『私をからかっちゃって、もう今日はおしまいにしてやろうかしら』といじけていたが、背中にあたるハリードの堅くなったものがあたり、そんな考えもふきとんだ。
「…ねぇ…」
「ん?」
「……」
「入れるか?」
ハリードはそのまま、背後からエレンに侵入した。
「あぁ…ハリード…」
「…はぁ…エレン」
エレンは、この体位が好きだった。全身をリラックスできて、行為に没頭できる。さらに、この体位ならハリードもエレンに挿入しながらクリトリスを刺激してくれた。エレンにはたまらなく快感だった。
腹の底から、ぞわぞわとなにかがこみ上げる。これは快感だとは理解しているが、最後の壁を突き破って絶頂に持っていく方法はわからない。それでもエレンは、ハリードに抱かれるのは好きだった。
「ハリード…へんになっちゃうよ…」
「それはいいことだ。」
「アぁ…ハリードォォ…」
ハリードが動く度に、快感が壁にぶつかる。もう少しで、その壁を破れそうなのに…。
しかしハリードが言ったように、どうも今日は勝手が違う。
いつもは、深く入りすぎると痛みを伴うが、今日はもっと深くに来てほしいとさえ思った。
いつもは、肉のぶつかる音と互いの吐息やあえぎ声が聞こえる室内に、今日は水分を含んだ音がひびく。
「すげぇ濡れてるぞ。」
「うっ…あぁ…」
エレンは自覚していた。今日の自分はよく感じるのだ。体調やホルモンや、様々な要因があるのだろうが、そんなことを考える余裕はなかった。
なぜなら、快感が最後の壁を突破したのを感じたからだ。
「はり…いや、だっ、あ…あぁぁぁぁ!」
そこからはあっという間だった。
全身が勢いよく痙攣したかと思うと、全身の力が抜けた。それから、不思議な浮遊感に包まれた。
ハリードは、それを見て動きを止めてくれた。
私、いっちゃった…。
ぼんやりとそんなことを考えていた。
「お前、いっただろ。しかも盛大に。」
「!!」
「隠してもわかるぜ。俺は今、直接お前の中にいるんだぜ。」
「そ、そうね…。」
「ところで、このまま続けるか?俺はまだまだだぞ。」
「…むりかも…。」
「だろうな。」
事実、エレンはもうまともに立つこともできなかった。
その日は、ハリードに我慢してもらった。ハリードは、散々エレンの恥ずかしい姿を見たので満足ではあった。
行為の後、なんとなく二人は見つめあっていた。
そうしているうちに睡魔が襲ってきた。
「ハリード」
「なんだ?」
「すごく眠くなっちゃった。」
「寝ていいぞ。」
「うん。今日の分は、いつかサービスしてお返しするわ。」
「はは、楽しみだな。」
「おやすみ。」
エレンは、そういうとあっという間に寝息を立てた。
いつかハリードをうならせるようなテクニシャンになろうと思いながら、やすらかに眠った。
その後、エレンは毎回ではないが頻繁に絶頂を迎えるようになった。しかし、ハリードをうならせるようになるのはまだまだ先のようである。
終