部屋の中には甘酸っぱいカモミールの香りが満ちる。  
術の研究や後進の指導に追われ慌しい日々を過ごすウンディーネは、ともすれば生活が不規則になりがち。  
それでも午後のティータイムだけは、一旦術のことを忘れてくつろぐと決めているのだった。  
 
最後の一口を飲み終える頃、部屋のドアをノックする音が聞こえた。  
弟子にはいつも「ティータイムは邪魔をするな」と言い聞かせてあるので、来訪者ならきっと外部の者だ。  
自分の時間を邪魔されたことに若干のいらつきを覚えながらも、ウンディーネはカップを置いてドアへと歩み寄る。  
「あら」  
しかしドアの覗き穴から相手の顔が見えた途端、そんないらつきなどすぐに吹っ飛んでしまった。  
美しいハニーブロンドの長髪。すらりと背が高く、均整の取れた体。上品で整った顔立ち。  
相手の名を問う暇さえ惜しく、ウンディーネはすぐにドアを開け、彼を部屋へ招き入れた。  
 
来訪者の名はミカエル。はるか東の小国・ロアーヌの若き侯爵である。  
「麗しいロアーヌの君。今日は何の御用かしら?」  
侯爵を椅子に着席させると自らはベッドの上に腰掛け、柔らかな笑顔で問いかける。  
確か彼にはお供が何人かいたはずが、今日はどうやら一人らしい。  
―――つい先日は敵として争った者の館にたった一人で赴くなんて、どれほどの用事なのか。  
「単刀直入に言おう……バンガードを動かしたい。協力を乞う」  
ウンディーネの顔から一瞬、笑顔が消える。  
冗談を、と思ったものの、彼の瞳は相変わらず一片の曇りもない。本人は大真面目なようだ。  
黙ったままのウンディーネを尻目に、ミカエルは続けた。  
「先日あった、バンガードでの殺人事件は御存知だろう。犯人は魔海侯フォルネウスの手下だ。  
 奴らを野放しにしておけば、いずれ海はおろか陸地でも多くの命が失われることになる。  
 海底宮のゲートを閉じるにはバンガードを動かすしかない。そのためには優秀な玄武術士の力が必要なのだ」  
にわかには理解しがたいものがあった。バンガードが動くなんてただの御伽噺―――と笑い飛ばすつもりはないが、  
なぜそれを今、フォルネウスと直接関係のない小国の主が命を懸けて成そうとしているのか。  
不可解ながらも、そんな馬鹿げた話を淡々と紡ぐミカエルの姿は、ウンディーネにちょっとした悪戯心を芽生えさせた。  
 
少々の沈黙の後、意味ありげにクスクスと笑ってみせる。  
「……あなた、自分が何をやったのか覚えてる?」  
ベッドから立ち上がり、ゆっくりとテーブルへ詰め寄る。  
「そうやって正義ぶってるけど、ちゃっかり持ってるんでしょう?あの盾を。  
 私たちを裏切って盾を横取りしておいて、いきなりその態度はどうかしら」  
嫌味たっぷりに問いかけてやると、ミカエルの眉間にわずかに皺が寄った。  
ウンディーネが南の術士ボルカノと取り合っていた、死者の井戸の宝物―――魔王の盾。  
彼ら二人が争っている間に、ふらっと現れたこの侯爵らに騙され、横取りされてしまったのだ。  
ボルカノと共闘してまで奪い返そうとしたものの、一行は予想をはるかに上回る強さで、あっさり返り討ちに遭ったのだった。  
「……御希望ならば、あなたに差し上げる用意もあるが」  
「今更いらないわよ。手に入ったとしても、またボルカノがうるさくなるだろうしね。  
 あれは私たちが持つべきものじゃないって、よく分かったわ」  
まるで「要らないからやる」とでも言いたげなミカエルの言葉が癪に障り、柄にもなく口調が強くなってしまった。  
だが本当に、結果的にウンディーネはあれで良かったと思っているのだ。  
彼女もボルカノも無駄な争いで町民に迷惑を掛けたことを反省し、和解まではいかずとも大っぴらな争いは自重するようになった。  
侯爵一行のことは、二人とも別に恨んでなどいない。  
「では何が望みだ?金か?別の宝か?」  
痺れを切らしたようにミカエルは問う。思い通りの展開にウンディーネはほくそ笑んだ。  
 
テーブルに片手を付き、もう片方の手で侯爵の頬を包み込む。  
「あなた、本当に綺麗ね……」  
頬からこめかみに手を滑らせ、絹糸のような美しい金髪を指で掬い取って耳に掛けてやる。  
ミカエルは一瞬目を見開いたものの、特別嫌がるわけでもなく彼女にされるがままだ。  
抵抗しないのを良いことに、ウンディーネは彼の固く閉ざされた唇に自分のそれを触れ合わせた。  
触れるだけの口付けを角度を変えて何度か交わす。  
しばらくそうして侯爵の唇を味見した後、妖しげな瞳で一言だけ告げた。  
「体を開くのよ」  
優しく、それでいて反抗は許されない強さを秘めた声。彼女が弟子に命令するときによく使う声色だった。  
ミカエルの表情は相変わらず固いままだが、やがて諦めたように軽く息を付いた。  
最初に出会ったときのウンディーネの物欲しそうな瞳、そして弟子は顔立ちの整った優男ばかりという異質な光景―――  
彼自身、こうなることは予想済みだった。だからこそ仲間を宿に残し、一人でここへ赴いたのだ。  
「……分かった。好きにするといい」  
 
ミカエルをベッドに移動させ、再び口付けを交わす。  
今度は挨拶程度じゃなく、「これからあなたを頂きます」という儀式にも近いものだ。  
口付けを重ねるごとに少しずつ開いてきた彼の口を柔らかく啄ばみ、ゆっくりと舌を差し入れる。  
こうしている間も、互いに目を合わせたまま。うっとりと蕩けてきたウンディーネに対し、ミカエルの瞳は別段平素と変わりない。  
侯爵は完全に割り切ってこの交わりを受けていることが丸分かりだった。  
気にせず耳たぶ、首筋、鎖骨へと唇を滑らせながら、彼の衣服を順番に取り去っていく。  
細身と見せかけて案外しっかりと筋肉の付いた上半身は、ウンディーネも感嘆のため息を漏らすほど美しい。  
「あなたの母君は平民の出らしいわね。でも、そんなこと微塵も感じさせない……美しくて、高貴だわ」  
母親の話をされると、ミカエルは露骨に眉間を寄せて怒りを表す。  
冷静沈着な侯爵でも私的に怒ることがあるのねと、ウンディーネは妙な感慨に耽った。  
同時に、涼しい態度で愛撫に耐える彼を何としてでも溺れさせてみたい、と。  
 
色素の薄い乳首の片方を舌で転がしながら、最後の砦であった下穿きさえも剥いていく。  
髪と同じ金色の茂みと、そこから聳える男根が顔を出す。  
涼しい顔をしていてもウンディーネのテクニックに多少は感じたらしく、ある程度の力を得ていた。  
艶やかに微笑みながら、ウンディーネは自らも衣服を脱ぐ。彼に見せつけながら、扇情的に。  
そして一糸纏わぬ姿になると、ベッドに座るミカエルの膝の間に跪く。  
ストリップ鑑賞後も勃ち具合が全く変わらないそこを見て、ウンディーネはため息を付いた。  
「もう……本当につれないわね。良いわ、ここからが本番だものね」  
ウンディーネは膝立ちになり、半勃ちのそこを両胸で挟み込んだ。  
張りの衰え始めた乳房は蕩けるように柔らかく、弾力豊かな処女の肌とはまた違った気持ちよさがある。  
乳房で男根を擦り上げながら、谷間からぴょこんと飛び出した先端を咥え込んで、舌と唇で愛撫する。  
これが彼女の得意技だった。お気に入りの弟子にやってやると、大抵は数分も経たずに果ててしまうのだ。  
「んっ、ふ……んむ……」  
愛撫を続けているうちに、先端からぬるぬるした液体が浸み出してきた。  
相手の蕩けた顔が見たくて、ちらりと上に目をやる。  
が、ミカエルは蕩けるどころか、まるでこちらを見下すように冷めた目で成り行きを観察している。  
体はしっかり反応しているのに、どれだけ淡白なのか―――もしかしたら、アブノーマルな性癖持ちか?  
自分は、相当困難な相手に挑んだのかも知れない。さすがのウンディーネも次第に不安になってきた。  
 
ところが彼女の不安を一瞬で消し去ってしまう出来事が起こる。  
「ミカエル様?失礼しま……、!!」  
「カタリナ!?」  
突然の乱入者。見覚えのある女だった。  
あの仲間の中では一番の側近だろう。素早い身のこなしと、常に彼の三歩後ろを行く忠実ぶりが印象に残っている。  
一人で出掛けたまま帰ってこない侯爵を心配して追いかけてきたのだと思われる。  
部屋の中の痴態を見るなり彼女の顔はみるみる青ざめ、次の瞬間にはウンディーネの喉元に剣の切っ先を突きつけていた。  
「我が主から離れなさい」  
「いいところを邪魔しておいてそれはないんじゃない」  
「黙れ!!この女狐!!」  
「やだ、怖いわね」  
今、主君が一言「殺れ」と命ずるだけで、女は容易くこの首を斬り落としてしまうのだろう。  
でも彼がそれを言わないことは分かっている。  
「カタリナ……剣をしまえ」  
彼女にとって侯爵の言いつけは絶対。不服そうな顔をしているものの、仕方なく剣を鞘にしまった。  
「これは取引の一環だ。何も心配することはない」  
目的のためなら手段を選ばない侯爵と違い、カタリナは怒りと嫌悪感を隠そうともしない。  
唇を強く噛み締め、踵を返してドアへと走っていく―――だが。  
「……開かない!」  
おかしい。つい先程まで開けっ放しだったドアが閉まっている。  
カタリナは焦り、必死にドアノブをガチャガチャと動かしたり鍵の在り処を探したりするが、ドアは一行に開く気配がない。  
それもそのはず。たった今、ウンディーネが術を掛けてドアを閉めたのだ。  
術の力で閉ざされたこのドアは、彼女が術を解くまでたとえ猛牛が体当たりしても開くことはない。  
なぜそんなことをしたかと言うと―――  
「カタリナさん。せっかくだから、三人で愉しみましょうよ」  
女神のような笑顔。振り向いたカタリナの表情は恐怖に凍り付いている。  
ウンディーネは見逃さなかったのだ。  
あれほど冷めた表情で自分の責めを受けていたミカエルの瞳が、彼女の顔を見た瞬間動揺に泳いだことを。  
これは面白い。  
ウンディーネは立ち上がり、裸のままじりじりとカタリナに歩み寄る。  
「いや……来ないで」  
ドアに背中を張り付け、蛇に睨まれたカエルのように固まって怯えるカタリナ。先程の威勢はどこへ消えたのやら。  
「二十代半ば……いいわね。女が一番輝く年頃だわ。若い体に、ほんのり色気が備わって……」  
頬に両手を伸ばして滑らかな肌を撫で、ふっくらと形の良い唇を親指でなぞる。  
首筋に顔を近づけると、ほんのりと甘い香の香りが鼻をくすぐる。戦士と言えど、女としての身嗜みは手を抜いていないようだ。  
「っ、くぅ……っ」  
耳たぶを舌で突くたびにピクン、ピクンと反応する姿が可愛らしい。  
カタリナの顔は真っ赤に紅潮し、端正な目鼻立ちが恥辱に歪む。色事に慣れていないのは明らかだ。  
ブルーグレイの瞳は潤み、遥か向こうにいる主君へと助けを求め続けている。  
ウンディーネはまた艶やかにほくそ笑む。この純情な女の乱れる姿が見たい―――楽しみがひとつ増えた。  
「案外ウブね。もしかして、まだ生娘のままなの?」  
「ウンディーネ殿」  
言葉で責めてやると案の定、背中から聞こえた刺すような低音。  
やはり違う。自分が何をしても全く動じなかった侯爵は今、確実に心を揺さぶられている。  
「……分かったわ。もう、妬けちゃうわね」  
ウンディーネはカタリナへの愛撫を止めると、その肩を抱いてベッドへ誘導する。全裸の主君が待つベッドへ。  
カタリナは彼女の思惑を察したのか、心拍数が急増しているのが抱いた肩から伝わってくる。  
 
「ホラ、侯爵さん。未来のお后を可愛がってあげなさいな」  
侯爵にカタリナを差し出すと自分はさっさとテーブルに戻り、足を組んで座る。彼らの絡みをじっくり眺めてやろうという魂胆だ。  
ミカエルはしばらくこちらを睨んでいたようだが、やがて無言でベッドに横たわり、家臣の女に命じた。  
「カタリナ。服を脱いで、私の顔に座ってみろ」  
「いけませんミカエル様!!そんな無礼なこと、とても……」  
「裸に抵抗があるなら、下着を着けたままでもいい」  
ウンディーネは感心した。さすが、この侯爵はかなりの切れ者。  
一刻も早くこの場を切り抜け、尚且つカタリナの負担を最小限に抑える手段を考えたらしい。  
首を振って拒んでいたカタリナもついに折れ、いそいそと服を脱ぎ始めた。  
この部屋から解放される手段はただひとつ、主君の命に従うこと―――カタリナも理解したようだった。  
 
純白のブラジャーとパンティのみの姿となった彼女は、恐れ多そうにミカエルの顔を跨ぐ。  
「し、失礼致します……」  
主君が苦しくないようにとしばし腰を置く位置を探っていたが、胸板の上方に落ち着いた。  
ミカエルの目の前には布切れ一枚を隔てたカタリナの股間。  
そこにはすぐに手を出さず、尻を撫でたり、内腿に唇を這わせたりして彼女の緊張を解きほぐしていく。  
せわしない呼吸を繰り返していたカタリナだが、主君の愛撫で徐々に感じてきたのか、その吐息に甘さが混じってくる。  
純白の真ん中に小さい染みを確認したミカエルは、布の上から彼女の割れ目を人差し指でつう、となぞる。  
それに呼応してビクッ、と体をのけ反らせるカタリナ。  
指と舌で、クリトリスがある箇所をくりくりと弄る。溢れる愛液はますます染みを広げ、むわっとした雌が匂い立つ。  
頃合を見計らって、ミカエルは邪魔な布を指で横にどけた。真紅に充血したカタリナの秘所が露わになる。  
十分すぎるほどに潤ったそこにミカエルはむしゃぶりついた。  
「あ、はぁっ……、ミカエル様っ!恥ずかし……っ」  
カタリナの体が弓なりにのけ反る。その双眸から涙が一筋零れるのが伺えた。  
片手で顔を覆い隠し、もう片手で体を支えながら快感と恥ずかしさに必死に耐えている。  
次から次へと溢れ出す愛液をミカエルが舐め取るたびに、クチャ、クチャ、と卑猥な音を奏で彼らの耳をも犯す。  
 
「ああん、ずるいわ……二人で昂ぶっちゃって」  
傍から見守っていたウンディーネの瞳も情欲に潤み、片手はいつしか己の蜜壷へと伸びていた。  
驚くべきは、カタリナの喘ぎや濡れた音に紛れて聞こえてきた、侯爵の荒い吐息。  
加えてもっと分かりやすいのは、彼の股間に聳え立つ、はちきれんばかりに大きく猛った男根。  
この情事を鑑賞しながら自分を慰めるのも悪くはないだろうが、正直我慢の限界だった。  
欲しい―――ウンディーネは立ち上がり、椅子に付着した愛液も気にせず彼らの元へ歩み寄る。  
ベッドに上って侯爵の下半身に跨り、男根の先端を自身の入口に宛がう。  
「じゃあ私は、こっちを頂くわよ……」  
腰を沈めていく。急進せず、感触を味わうように徐々に、徐々に。  
「ああ…すごいわ!奥まできて……!」  
逞しい男根の先端が中でピクピクと動き、奥の悦いところを刺激しているのが分かる。  
ウンディーネが腰を動かし始める。カタリナの背中の向こうから、ミカエルの呻きが微かに聞こえた。  
 
「ねぇカタリナさん……こっちを向いて?」  
背中を向けられたままでは、何となく寂しいから。  
口淫の音が一時止む。そしてカタリナがゆっくりと体を反転させてきた。  
荒い息をつく彼女の瞳は蕩けきり、部屋に入ってきた際の勇ましさは見る影もない。  
主君の顔を座布団にしてしまわないよう、最初は四肢でしっかりと体を支えていたが―――  
「あっ…!」  
ミカエルが口淫を再開させたようだ。パンティをずり下ろし、尻肉を掴んで広げながら夢中になって秘所を貪っている。  
カタリナには四つん這いの姿勢さえも辛いらしく、崩れそうになる体にウンディーネは片手を添えてやる。  
カタリナの目の前にはたぷたぷと揺れるウンディーネの乳房。  
「や、あんっ」  
全く予想だにしなかったことが起こった。  
カタリナが片手を伸ばしてウンディーネの片方の乳房を揉み、もう片方を口に含み始めたのだ。  
時折乳首を指先で弾いたり、あるいは甘噛みをしたり、思いの外多彩な責めにウンディーネも甲高い喘ぎを上げてしまう。  
同じ女だからこそ、感じるポイントを本能的に分かっているのかも知れない。  
いやらしく女の乳房をねぶるカタリナの顔を主君が見たら、どう思うだろう―――  
 
ミカエルの腰が小刻みに上下し、激しく突き上げてくる。限界が近いらしい。  
その責めに応えてあげるようにウンディーネも腰を揺らしながら中を強く締め付ける。  
下の口には気高い侯爵を咥え込み、我を失った麗しい女戦士に乳房を翻弄され、  
ウンディーネは今まで感じ得なかった深い快楽に没頭していた。  
「あなたたち……最高よっ!私も、もう…はあぁっ……!!」  
「ふあっ、ああ……!!」  
「……、!!」  
果てたのは三人、ほぼ同時だった。  
 
心地良い疲労感に浸りながら、煙管をふかす。  
「ロアーヌの侯爵と、貴族ねぇ……」  
(それだけじゃない「何か」を感じるわ……彼らからは)  
もしかしたら彼らは将来、世界が驚くような大儀を成し遂げるかも知れない。  
もしもそんな大それた人物と関係を持った、なんてことになったら―――  
(きっと、一生自慢できるわね♪)  
ベッドに座り込んでいるのは、すっかり憔悴しきったカタリナ。  
その肩をミカエルはずっと抱いており、後悔と自己嫌悪に沈む彼女を慰めている。  
「して、ウンディーネ殿。バンガードの件を忘れたわけではあるまいな?」  
侯爵の強い問いかけにも答えずにウンディーネは立ち上がり、壁に掛けた内線機を手に取る。  
数回のコールの後応対に出たのは、弟子の中でも一番のお気に入りの者だった。  
『どうされました、ウンディーネ様』  
「至急、全員に召集をかけて広間に待機させなさい。『英雄』のお手伝いをするわよ」  
『……?分かりました』  
受話器を置き振り向いたウンディーネの笑顔は、山の湧水のように清らかだった。  
「喜んで協力させてもらうわ。さっそく、弟子の中から選りすぐってバンガードへ送るわ」  
 
end  
 
 

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