〜プロローグ〜
男に二言はねぇ!
…とんでもない仕事を引き受けてしまったウォードは、こう言って自分に言い聞かせた。
別にサラが嫌いだとかそう言うのではないのだが、やはり年齢は気になる所ではあった。
とは言え男に二言は無いので約束通り、彼女を幸せにすることにしようと決意する彼であった。
_結婚式でのこと_
結婚式は貴族顔負け、いや陵駕しているほど豪勢なものであった。
ランス輸送隊が総出でパレードをしたり、グルメロア−ヌをはじめとする一流の食品業界が
合同で食事のメニューを考案したり、誰もが最強だろう、と思う結婚式となった。
まぁ、なんだかんだで世界の救世主カップルの結婚式であるので誰も後ろ向きには捉えなかったが。
この時にトーマスがかなり力を貸していた(勝手に手を出していたとも言う)のは言うまでもない。
そんな盛大すぎる式に辟易していたウォードにブラックが話しかけた所からそれは始まった…
「よう、幸せモン。どうよ?」
この式にはそれ相応の身分の人間も居るが、ブラックはいつもの調子だ。
「ああ…アンタか。スマン、正直もうウンザリだ…」
そう言うとウォードはかなり疲れた様子でふぅ、と息をついた。
そんな彼には構わずブラックは立て続けに聞く。
「ところで、花嫁の姿が見えないが何処行った?」
「…ん。ああ、姉貴の所に行ったよ。なだめてくるってよ…」
「そうか…」
サラが結婚する、と言い出した時は文字通りエレンは心臓が飛び出るほど驚いた。
エレンは猛烈に反対したが、旅によって相当タフになったサラには敵わなくなってしまった。
今では嫁入りする娘の父親の心境なのか、式の間ずっと泣きじゃくっていた。そんな彼女を見かねてサラは少しなだめてくるね、と席をはずしたのであった。
「しかし、お前もある意味犯罪だよなぁ」
「…ンナこたぁ、分かっているぜ。幾らなんでも16ってのぁ…」
「そうそう。若すぎだろ。正直」
「うるせぇ。約束しちまったんだ。何もやましい事はないぜ」
「はぁ?何勘違いしてんだ?」
「???」
「お前の嫁さん、今16だよなぁ。5年経っても21だし、10年でも26、15年でも31だしなぁ
今から 色 々 楽 し め る よ な 」
な
る
ほ
ど
〜それから〜
ハネムーンは豪華世界一週旅行であった。(出資はもちろんトーマス)
式から旅行までは至れり尽せりの日々であったが、今では普通の生活に戻っている。
そんなこの新婚さんのある日常を覗いて見る事にしよう。
〜とある夏の日の夜中〜
「フー、今帰ったぜ」
「お帰りなさい」
結婚してから、ウォードは夏季の仕事をするようになった。これからは自分だけではなく
妻となっている女性も養わなければいけない。何より彼女が「子供は一杯欲しいな」と言っているのも
その理由の一つである。なので、独り身であった時のような冬に狩りをして一回で大きい収入で次の時期まで
食いつなぐ…なんて事は言ってられなくなった。
夏の時期の仕事は、彼の性格からすると地味で性に合わないものではあったが
彼は自分なりの責任と義務はわきまえている人間なので、それは苦痛にはならなかった。
そんなこんなで今日も地味な仕事を少し残業して帰ってきたわけである。
___あー…今日も疲れたな…ちょいと一杯やるかな…
ソファにどかっと腰掛け彼は一人呟く。
「今すぐお食事を作るね。ちょっと待ってて」
「ん、ああ。頼むわ」
___…?今サラはなんつったよ?食事って言ったのか?
思わず返事しちまったが、今日は仕事仲間と飯食ってくるって言ったはずだが????
全くしょうがねぇな、と思いつつキッチンの方へと歩む。
「あっ…どうしよう…買い置きの食材が切れちゃってる…」
「おいおい、確か今日は飯は良いって言ったよ…な。…」
彼は食材がなくてどうしましょう、という様子のサラの格好を見て絶句と言うか思わず少し顔を引きつらせた。
___ああ、エプロンはつけてる。エプロンは。
で も 何 で 下 は 裸 な ん だ 。
正確に言うと完全に裸ではない。下着はしっかりと身に着けていた。
白で可愛らしいレースがついてる如何にもサラらしい下着が。
___これがウワサの裸にエプロンってやつか…
ウォードもウワサには聞いていた。こんな高度な女遊び?があると言う事は。
でもまさか自分の嫁さんがやるとは…と思った。
とはいえ、こんな状況は実は今に始まったことではなかったりするのである。
だからこんな時はいつも彼と彼女はこんなやりとりをする。
「ごめんなさい…今日はお買い物もしなかったし、食べる物が無いわ…」
「おいおい、こっちは滅茶苦茶に腹減っちまってるんだがよ」
「どうしましょう。困ったわ…」
「ったく…しょうがねぇなあ。お 前 さ ん を 食 べ る 事 に す る か」
「ええ!?そんなっ、きゃっ」
最後のサラの台詞を聞きつつ「いつも通り」彼は彼女を押し倒すのであった。