剣を、手に入れた。  
名刀カムシーン。  
そして、世界を救った。  
宿命を断ち切り、世界は動き始めている。  
己の功績といっても過言ではないだろう。  
しかし今、足元には死体が転がっている。  
この現実は、どうだ。  
 
血にまみれ、精液にまみれ、汚された死体。  
「…姫、…ファティーマ姫!!」  
まだ温かい。  
あと数時間、いやあと数分でも早く、自分がここを訪れていたのなら。  
姫は死なずに済んだのか。  
久々に会う仲間がここへ行きたいと言わなければ、自分は姫の消息すら掴めないままだったのか。  
自分は何も知らずに生きていくつもりだったのか。  
 
怒りとも悲しみともつかぬ感情が、己を蝕む。  
その頬を、砂漠の乾いた風が逆撫でる。  
 
高く聳え立つ神王の塔。  
その、すぐ麓で。  
 
「ハリード…。」  
掠れたエレンの声。  
サラの誕生日前に、イスマイル宝石で買物しようと誘ってきたのが彼女だった。  
「あたしが誘ったりしなければ…!」  
男が振り向く。  
「…!?」  
エレンが顔を強張らせる。  
男の表情が、異常であった。  
目だけが鋭く光り、そこから感情を読み取ることはできない。  
「ねぇ、ハリード?」  
無防備に近づいた女の服が裂かれる。  
「な…!」  
張りのある大ぶりの胸がこぼれ、その衝撃に揺れた。  
糸が切れ、ネックレスのビーズが散らばる。  
強い力で押し倒され、エレンは砂に横たわるかたちとなった。  
声が出ない。  
乳首を噛むように吸われ、彼女は苦しみの声を息を漏らした。  
腰に腕を回され、スカートも裂かれる。  
上に乗る男に抱きすくめられ、女の部分が音をたてて潤う。  
「ん…!」  
エレンは眉根を寄せ、その感覚に酔う。  
 
脚を強引に持ち上げられると、濡れた処が露にされた。  
 
突然の挿入。  
痛いのはもちろんだが、それ以上に違う気持ちが湧き上がる。  
「あ…ッ!」  
強い男が好きだった。自分より弱い男になど、魅力を感じられない。  
ハリードは、それを満たす男だから。  
ずっと手に入れたいと思っていた。  
旅に出たあのときから。  
愛する女がいるのは知っていたけれど。  
 
男が動くたびに、痛みと悦びが女を襲う。  
「や…ッ、ん…!」  
男の動きが早まる。頂点が近いのであろう。  
エレンは身体に力を入れ、男を抱きしめようとする。  
しかし。  
ハリードは己を引き抜くと、隣に横たわる女に挿入した。  
達し、そして果てる。  
そしてほのかに残る体温を求めるかのように、女を抱きしめる。  
エレンは唇を噛み締め、それを見た。  
(私には、くれないってこと…?)  
けれど。  
エレンは女を見る。  
これから腐るしかない死体と、生きている自分。  
そのどちらが選ばれるか。  
決まっているようなものだ。  
男が死体を抱えて砂漠へ消える。  
しかしいずれ、エレンの元へ来るだろう。  
彼が無責任でないことを、旅の中で知っているから。  
口元が自然と緩む。  
 
男は愛する姫を汚し、殺害した犯人を知らない。  
今も、そしてこれからも…。  
 

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