「とどめ、サンダークラップ!」
「ぐおおおおおお!?」
ウンディーネの術の力により発生した電気の塊が直撃し、ボルカノは壁に叩きつけられた。
ここはモウゼス南、ボルカノの屋敷の地下に建造された試合場。
その中央にて、この街を南北に分かち対立していた二人の術師が、その長い対決の日々に終止符を打とうとしていた。
ある日モウゼスを訪れた冒険者は、街の中央の井戸に眠る伝説の魔王の盾を見つけ、これが対立の元だとして
南の支配者と北の支配者を完膚なきまでに叩きのめした後に魔王の盾を没収し、以降の不毛な争いを禁止した。
これによりモウゼスは表向きは統一され、行き来すら不自由だった頃とは比べ物にならない程街は活気を取り戻したが……
彼らの戦いはまだ終わっていなかった。
朱鳥術の達人南の術師ボルカノと、玄武術を得意とする北の術師ウンディーネである。
元々お互いの流派が気に入らなくて大喧嘩をおっぱじめて、その延長……すなわち「お前にだきゃやらねー」という
極めて幼稚としか言いようがない理由から、魔王の盾争奪戦始まったのだ。今更それを取り上げられたところで
限界まで高まった敵意が収まる筈がない。
しかし、これでも二人とも一応は弟子を取れる程の見識は持った人間である。
ダラダラと水面下で争っていては埒が開かない、お互いを出し抜いてまで手に入れようとした魔王の盾はもうないのだし、
直接対決で白黒ハッキリさせよう。
ウンディーネからもたらされたこの提案を、ボルカノは快諾した。彼には勝算があったのだ。
そして、今。試合場の壁に叩きつけられたボルカノが無残な屍を晒し、こちらも全ての力を使い果たしたウンディーネが
はあはあと息を荒げながらも、己の信ずる玄武術の方が優れていたと実証できた事による絶頂にも似た恍惚に浸っている。
「う、うふふ……玄武術サイコー……うふふ、うふふふふ」
百人に見せたら百人が病院に搬送するであろう空虚な笑みを浮かべるウンディーネ。
だが、その時。
「な……!?」
ウンディーネは驚愕した。
ボルカノの体がいきなり巨大な炎を吹き上げたかと思うと、炎の中から完全に生気を取り戻したボルカノが現れたのである。
「何故っ!?」
慌てて立ち上がろうとするが、精神力がカラの状態では運動力にまで影響が出てしまう。体力のない術師ならば尚更だ。
「エアスラッシュ!」
ボルカノの放った魔力の刃が、ウンディーネに突き刺さった。
「お目覚めかな、ウンディーネ」
ウンディーネが目を開けると、真っ先にボルカノのにやけ面が視界に入って来た。
もう一度術を食らわしてやる、と反射的に手を掲げようとするが、その動きはギッと言う縄の軋む音と共に阻害された。
「こ、これは……」
聡明な彼女には、きょろきょろと首を回して周囲を確認せずとも己の置かれた状況が理解できた。
彼女は着ていたローブを剥ぎ取られ、その熟れた肉体を露にされたまま、ベッドに磔にされているのである。
「さっきのアレは何なの、答えなさい!」
「そっちの質問が先か……あれはリヴァイヴァと言う術だ。倒された瞬間、完全回復する。その前に術力が尽きていては効かんがね」
「そんな反則……」
ウンディーネが軽蔑の眼差しを向けると、ボルカノは心外だとでも言わんばかりに熱弁を振るう。
「何が反則だ。あれは四魔貴族によるアビスゲートの封印が解かれ、初めて使用可能になった正真正銘の朱鳥術だぞ」
「それは屁理屈って言うのよ! 大体この仕打ちは何、早く解きなさい!」
縄をギシギシと軋ませて暴れるウンディーネ。その度にたぷたぷと揺れる乳房を見てボルカノはやれやれと肩をすくめると、
懐から小さな布袋を取り出した。
「そう暴れるんじゃない」
言いながら、袋の中から白い粉をひとつまみ取り出し、彼女のたわわな乳房の上に振りかけていく。
「な……何、それ、あんっ」
ボルカノは彼女の問いを無視して、乳首に重点的に粉をすり込む。
それが終わると今度はウンディーネの下半身に移動し、そのぽってりとした陰裂にも粉を擦り付け始めた。
「や……やめなさ、ぁっ、スパークリングミストォ!」
いいように女の急所を弄られる事に恐怖を覚えたウンディーネは、たまらず霧で身を隠す術を唱える。
四肢を縛られているのだから問題の解決にはならないが、少なくとも手出しはしづらくなろう。
だが、いつまで経っても霧は現れなかった。
「言い忘れたが、この部屋には極小のバードソングを永久反響させてあるから私でも術は使えないぞ。
研究中に思わず激昂して火薬に火をつけた事があるからな、危ないのだ」
「け……研究?」
「君も玄武術を鍛錬する傍ら、術師同士の連携を研究しているだろう。それと同じように、
私は魔法のアイテムの研究をしているのだ。これも研究成果のひとつだよ」
ボルカノがウンディーネの体から離れると、ウンディーネはある事に気付いた。
体が汗まみれになっている……
戦いのせいではない。先程まではボルカノが汗を拭いてくれたのか、濡れた不快感は一切なかった。
「まさか、この砂っ……うあっ、あああっ!」
自覚した途端、乳首に激しい熱を感じ始めた。
無意識に仰け反る頭を無理に下へ向けて見ると、異常なまでに充血した乳首がはち切れそうな程に隆起しているのが見える。
その瞬間、ウンディーネの脳からは、傍で見ているボルカノの存在も、己の全てとも言える玄武術も消え去っていた。
今すぐこの疼く乳首を弄り回したい。
しかし彼女の腕は縄でしっかりと固定され、まったく動かす事ができない。
せめてうつ伏せであれば、ベッドシーツに激しく擦り付けて快感をむさぼる事ができるのに……
ガチャリ。
ドアノブの回る音に気付いてドアの方を見ると、ボルカノが部屋を出て行くのが見えた。
「負けたショックで情緒不安定になっているな。小一時間程ひとりにしてやるから、落ち着いたら帰るといい」
言葉を返す暇もなく、ドアが閉じた。
そしてウンディーネは、粉を丹念にすり込まれたのが乳首だけでない事を思い出し、絶望に体を震わせるのだった。