それは突然のことだった。  
「ユリアン、ヤーマスへ行かない?」  
 ユリアンの部屋の中に不意に入ってきたエレンが話し掛けてきたのだ。だがそのエレンの一言にユリアンは驚く。普通なら別に驚くような事でない。  
 普段から仲の良い二人の事だ。気分転換や楽しむ為に二人きりでたびたび外出したり遊んだりという事はよくあった。だが、この時なぜ驚いたか。  
 それはエレンの妹のサラがアビスゲートに捕われ皆が悩んでいた時だったからだ。  
「何いってるんだよ!エレン。そんな事できるわけが無いだろう」  
 ユリアンが怒るのももっともだった。四魔族たちとの激戦、その後やっと全てが終わったかと思うと今度はサラがアビスの犠牲になりまた新たなる敵の存在も明らかになったのだ。メンバーはもとい、ユリアンも苦しんでいた時だった。  
 そんな時に、姉であるエレンが何も考えないようにあっけらかんと「遊びにいかないか?」と誘ったのである。  
 そんなユリアンの怒りを知ってか知らずかエレンはさらに手前勝手な言葉を続ける。  
「ね、いいじゃん!そうだ、あさっては空いてるんでしょう?」  
「そ、そりゃ空いてはいるけど…でも!」  
「よし!じゃあ、あさっての昼にヤーマスで遊ぼう!いろんな荷物や珍しいものが運ばれてるんだって。あとヤーマスの教会も見たいしね。じゃあ、あさってにまた。バイバイ」  
 それだけを矢継ぎ早に言ってしまうと、エレンはすぐに部屋から出て行ってしまった。ユリアンの反論など聞いていないようだ。昔からこうやって一方的に遊びだの買い物だの何だのを決められてきた。  
 ユリアンは、しばしの間じっとしていたがとうとう怒りが収まらなくなったのか壁に向かって振り上げた拳を思い切り突きたてた。大きな音が部屋全体に鳴り響く。その後、ユリアンは手を押さえうずくまったのだった。  
 当日はひどい天気だった。ユリアンがヤーマスについた時、空は灰色に染まり雲が全てを覆っているように見えた。どしゃぶりの雨は耐えることなく、延々と降り続いている。荷物を運んできた人たちもそうそうに切り上げ避難を始めていた。  
 ユリアンと同じく遠い町から来た人たちも数件立ち並ぶ宿に身を寄せ寒さに凍えている状態だ。ユリアンは後悔した。  
 
(だから俺は来たくなかったんだよ。ヤーマスは山に近いからすぐに天候は変わるし。こんな事やってるぐらいなら魔物征伐でもやればいいのに。大体エレンのやつはどうしたんだ?まだ来ないな)I  
 やきもきしながらいくら待っても一向にエレンの姿が見られない。イライラと靴のかかとを何度も何度も地面に打ち付ける。約束をすっぽかされたのかと思ったが、あれだけ笑顔で誘ってくれたんだから、それもないだろうと思った。  
 大体、昔からいくら軽口を叩いてもエレンは約束を破った事がない。  
 むしろ破るのは、いつもユリアンの方であった。そんな無責任なことをしても、謝ればすぐにエレンは、あっけらかんとして許してくれた。だからこれはただ単に遅れているだけだ、と自分に言い聞かせた。  
「しかし、それにしても遅いな。どうしたんだ?」  
 カウンターに腰掛け目をつぶって待っている。時々、マスターらしき男が酒を進めてきたが断った。ふとその時、隣の席で二人の男が安酒を飲みながらなにやらブツブツと話し合っていた。  
「おい、知ってるか?きょうかいの事を」  
「協会?ヤーマス協会がどうかしたんかい?やっこさん潰れちまったり買収されたりで今はもうないだろう」  
「そりゃ『協会』だよ。俺が言ってるのは『教会』の事さ。あのヤーマスのはずれにある教会だよ。あそこ今もあるんかなぁ…」  
「そりゃ、あるさ。あそこはヤーマスの名物のひとつなんだから」  
 たわいもない会話だったが何かが引っかかった。  
(教会?)  
 自分の記憶を少しずつ辿る。何とか思い出そうとするがうまく思い出せない。だが何度もがんばってみる。そうすると最後にエレンの言葉にたどりついていた。  
 あの時はうまく聞こえなかったがエレンは「教会もみたいよね」といっていたはずだ。そうであればエレンはそこにいるかも知れない。そう考えるといてもたってもいられない。ユリアンはマスターに酒を一杯頼んだ。  
 そのついでとして教会の場所を聞くと一秒足らずで、グラス酒を飲み干し宿を飛び出していった。  
「そりゃ、場所を教えてもらってないけどさ。でもそんなところにいるのか?」   
 
 悩みながらもヤーマスのはずれにある小さな教会に向かって走り出した。どしゃぶりの雨が絶え間なくユリアンの髪や衣服をぬらしていく。  
 足元にある水溜りが靴やズボンをべちゃべちゃにしていく。気がめいりそうになりながらも走りつづけるととうとう教会についた。  
 この教会は、ヤーマス協会が買い取ろうと画策していたが聖王の関係であるため、手を加える事もましてや取り壊しに使用とすることも難しくそのまま放置されていた場所である。  
 ピドナの人間たちに忌み嫌われ、安く売られている魔王殿とは大違いだった。だが聖王が死んでから何百年も立つ。  
 こんなに歴史がたった後ではだれも後を継ぐ者はおらず半分廃墟の模様を呈し始めていた。まわりは誰も手入れをしていないのか草が生えっぱなしになっていたり、壁の石が欠け壊れている。  
「ひどいもんだな。こんな所にエレンの奴はいるんだろうか」  
 独り言を呟きながら教会の扉を開く。扉の外見は木で覆われているがは鉄を組み合わせているのか妙に重い。しかも腐りかけており手をひっつける泥を握ったときのような音がする。  
 気分が悪かったがなんとか力をこめ押すとガラスをこするような嫌な音を立てながら開いた。外見がこんな風だから中もさぞ汚くホコリくさいのだろうと思っていると予想のままでずいぶんと掃除がされていないような汚い場所だった。  
 目の前にはステンドガラスを前にした十字架と聖王の銅像がたっていた。だが誰かの悪戯かガラスは壊され十字架と銅像は半分から上がない状態だ。両側には長椅子がいくつも並んでいた。  
 そんな内部の様子に苦笑いを浮かべながら歩いていく。銅像の前まで来た時ふいに言葉をかけられた。  
「遅かったじゃない。何してたの?」  
「…お前を探してたんだよ。なんでこんな所にいる?なんで教えてくれてなかったんだ?」  
 声をかけたのは探していたエレンだった。ポニーテールの髪に、いつも来ている赤い服装だ。  
 並べてある椅子のひとつに座っていたらしい。手でスカートの汚れをふいている。その姿を見ていると、あっけらかんとして悪びれた様子はない。ユリアンは頭が痛くなりそうだった。  
 
「何って?一緒に見にこようってあの時言ったじゃない。だから先に来てあげてたんだよ。外は凄い雨だし。現にあんた来たでしょ?」  
 いつもこうだった。ちゃんと約束は守るのだがすぐにフラフラとして何一つコントロールできないでいる。エレンとサラの次に長く付き合っているユリアンならわかる事だったのだ。  
 なのにわざわざあんな宿で待ってしまっていた自分を馬鹿に思った。そうすると同時に、怒りも芽生えてくる。  
「お前な!いいかげんにしろよ。人を誘ったと思ったらすぐにこんな風にフラフラ、フラフラ。それでなくても大変な時なのに。…サラのことも!」  
 ユリアンの怒りは収まらない。大声でつばを飛ばしながら叫ぶ。そのせいなのか、ボロボロの壁が揺れたようにもみえた。そんなユリアンの勢いに少しも動じることなくエレンは落ち着いたままだ。  
「ユリアン、あんた気張りすぎだよ。もうちょっと落ち着きなよ」  
「落ち着けだって?これが落ち着いてられるかよ。四魔貴族を倒してやっと世界が平和になったと思ったら今度はアビスかよ。しかもサラが…もう誰も失いたくないんだよ」  
 掌を汗でいっぱいにしながら言葉を吐き出す。胸にたまっていた想いが口からどんどん出てくる。叫びつづけるうちにいろいろな事が頭の中を巡る。子供のころのこと、大人になる前のこと、騎士団でのくらし。  
 トーマスたちと一緒に笑いあっていた平和な日々。  
 だがそれはもう帰ってこない。ユリアンの近くの人たちもずいぶん死んでいった。ハリードやウォードといった戦士たちの死も見てきたのだ。  
 つらく苦しかった。己の胸が痛んできた。こんな時に言う言葉ではなかったのに、なぜか関をきったように溢れ出してくる言葉を止める事は出来なかった。涙もいっしょに流れてくる。  
「あんた…つらかったんだね。ごめんね。あたしが守ってあげればよかったのに」  
 涙を流しながら立ち尽くしているユリアンの前にエレンがたった。背が足りない為、どうしても見上げる格好になってしまう。  
「でもあたしも冗談であんた誘ったわけじゃないよ。昔からの腐れ縁だからって事でもない。あんたじゃないと駄目だから。あんただったらあたしのこの苦しい気持ちを少しでも消し去ってくれそうだったから」  
 
「…?」  
「あたしもつらい。サラがいなくなって。戦いが続いて。みんなが死んでいって。…だからこんな時だからこそあんたといっしょに楽しみたかったんだ。でもこれはあんたにとって重荷だったんだね。ごめんね」  
 透き通るような声で言葉を続けている。だがひとつひとつ搾り出すようでそれでいて重い言葉だった。ユリアンは自分の涙を拭くこともせずエレンの言葉を聞きつづけている。  
「ごめん…本当にごめん」  
 ついには言葉は途絶え何も喋らなくなってしまった。それでも少しずつ漏れるのは「ごめん」という謝る言葉だけのみだった。あんなに気の強いエレンが子供のように怯え、小さくなっている。  
「あれ、なんだか悲しいや。ごめんね。すぐ止まるから」  
 胸の内を告白したという安心感が出たせいでエレンの目のはしからどんどん涙が出てきた。何度止めよう止めようと思い手でぬぐってもあふれてくる涙は止められなかった。  
 むしろ手の動きは、目に刺激を与えているようでどんどんとひどくなる。ついにはホコリがたまった床にひざをつき泣き出してしまった。  
(エレン…)  
 ユリアンは涙を流すのをやめた。乾ききらない目で泣いているエレンを見る。こんなエレンの姿を見るのは何年ぶりだろう。ユリアンには昔、大喧嘩をして一度泣かした事がある。そのときも今のように大きな声で泣いていた。  
 あの時もくだらない喧嘩だったように思う。理由が思い出せないのだ。意味もなかったのだろう。  
 昔ならこのまま無視をしていたかもしれない。だが今は違った。なぜか泣いているエレンを守ってやりたく思えてきたのだ。  
 少しずつエレンの方へ足を進める。どんどんエレンの方へ迫っていく。  
 スッとエレンの影の上に影が重なる。何かと思って顔を上に上げると目の前にいたのはユリアンだった。そのまま見ていると緑色の髪が茶色の髪に交差する。ユリアンが口を静かにくっつけ、唇を開くと舌を絡めてきたのだ。  
 エレンは驚いせいで歯で進入を拒んでいたが、ゆっくりと唇を濡らされるうちに力が抜けてくるように思えた。そして開いた口の中へとうとうユリアンの舌が入ってきた。  
「……あっ」  
 思わず声が漏れる。エレンにとって男性から受ける二度目の口付けだ。はじめてのキスは違う男だった。若くキザっぽい青年に、つい口説かれいい気になってキスを許してしまったのだ。  
 
 だがそのときは男が不慣れな事もありベタベタして気持ちが悪いだけだった。それ以来、男性とキスをする時はなかった。だが今日、やっと二度目のキスにめぐり合った。相手がユリアンだったのは計算違いだったかもしれないが。  
 その間もキスは続いている。目をけっして閉じる事はない。エレンの顔をしっかりと見ていた。ユリアンの目はとても美しかった。子供のように純粋で、それでいて何か強く猛々しいものを感じる目だ。  
 力強い眼差しはエレンのとろんとした目を見つめて離さない。このまま永遠に口付けを交わしていたいと思っていたエレンだがハッと目を開くと両手で胸を押し離れようとした。そのことを抵抗と感じ取ったのか、ゆっくりとユリアンは離れていく。  
「ごめんな。こんな事して。でも、お前が泣いてたから…」  
 しばしの間なにもいえなかった。エレンが怒って殴ってくるかもしれない。そのときは甘んじて受けようと思っていた。だがエレンはまったく起こっていなかった。ユリアンの考えとは違う事を考えていたのだ。  
(キス…嫌じゃなかった。そうか…そうなんだ)   
 エレンはわかった。なぜ、あの時ユリアンを誘いたかったのか。なぜユリアンでなくてはいけなかったのか。その答えは今もドキドキと熱い鼓動を繰り返す心臓が答えてくれる。  
(ああ…あたし、こいつの事が好きなんだ。だからあの時あんな事になってもユリアンと一緒に遊びたかった、楽しみたかったんだ…)  
 両指をいじりながら頭を下げてうつむいているユリアンにエレンは自分からキスをした。ユリアンは驚いたようだったが、すぐにキスを返した。二人はまるで磁石のように引っ付きながら抱き合いお互いの肌のぬくもりや感触を確かめ合っていた。  
 数十分後、二人は宿の一室にいた。数件並ぶ宿の中でもっとも大きく豪華な宿だ。その中の一室を二人は選んだ。他の安宿ならもう満室だがこうも豪華なつくりで大きいと、他のものたちは躊躇するらしく空きはたくさんあった。  
 
 薄暗い一室だが壁にはご大層にやわらかい布と高級そうな木材を使用している。地面はフカフカとしたじゅうたんだ。まるで貴族が泊まる部屋のようでもある。  
 ユリアンが自分の財布から全て出しこの高級そうな一室を借りてくれたのだ。エレンと自分のこの少しの時を楽しむ為に。  
「エレン…俺は、これが最初じゃない。でもだからって、初めてのお前に優しく出来ないかもしれない。いいのか?」  
 お互いに向かい合いながら二人は話し合う。ユリアンはいつもより妙にぎこちないようだ。自分から言ったとおり、これが初めての体験ではなかった。  
 初めては騎士団に入った後、先輩たちに誘われ酒を飲んだ帰りに娼婦を買った事がある。その時が最初だった。だが酒のせいか、それとも別の何かのせいか。  
 とても満足に楽しめたとは言えず、二日酔いで気分が悪いまま朝を迎えたのだった。しかも女を買ってしまったという恥ずかしさ、後ろめたさからこのことをかくしていた。  
 しかし、こうして今、エレンの前で自分の恥ずかしさも考えず言った。なんだかおかしくもあったが少し自分を誉めたくなったユリアンだった。  
「ナニ言ってるんだよ。馬鹿だな。…来てよ。もう我慢できないんだろう」  
 初めての経験を前にするのにエレンには物怖じというものがまるで感じ取れない。移住者の娘としても遺伝的な気風のよさだろうか、それとも男勝りの性格のせいだろうか。  
 どちらにしても恐怖はほとんど無いようだ。ただ少々緊張の気はあるらしく自分の股をお互いの太ももでズリズリと擦っている。すべりでも良くしようと考えていたに違いない。  
「じゃいかせてもらうぜ。くぅ、緊張すんなぁ」  
 ユリアンの独り言が聞こえたのか、口を曲げ笑うエレン。そんな無邪気なエレンの肩を抱きベッドに押し倒した。  
 だが優しく力をこめたせいと、柔らかな太陽の光を吸収したベッドのせいで、エレンにはまったく痛みや衝撃は感じ取れなかった。むしろ気持ちよい感覚が走った。  
 
 そのまま二人は数分ほどベッドに横たわっていたが、とうとう耐え切れなくなったのかユリアンの手がエレンの服の胸元に伸びる。指を胸元に近づけると優しく触れた。  
 ピクピクと小さいながらも振動は指に伝わってくる。その官職がなんとも心地よく思えた。  
 エレンの服はボタンで閉められていた。焦ることなくボタンをひとつひとつていねいにはずしていく。  
 下からは光をうける美しい胸全体が顔を出した。けして大きいとはいえないがそれでも中々の大きさである。  
 ピンと張り出した胸は体にちょうどあっているといえた。体全体も小柄なはずなのに常に戦いに身をおき鍛えているせいで均衡がとれている。筋肉がうまくバランスをとっている格好だ。  
「綺麗だな」  
 ついふと言葉が漏れた。けしてお世辞で言っているわけではなかった。己の正直な気持ちが口を開かせたのだ。言葉を受けたエレンは恥ずかしいのか、怒ったように目の前にあるユリアンの胸を叩く。  
 だが、けして痛くは無い。からかう程度のものだ。やはりうれしかったのだろう。  
 上半身があらわになり、下半身にうつろうとしたがエレンは脱がせるのが嫌なのか、すぐに自分から脱いでしまった。  
 ユリアンはすこし口惜しい気持ちもしたが、そんなことで別に焦る事もないと自分に言い聞かせた。  
 脱いだ服を壁沿いに投げ自分も服を脱ぎ始める。昔から農作業や開拓のため働いてきただけある。それに加えロレーヌの由緒正しい騎士団で鍛えられているのだ。  
 とてもたくましく若々しい肉体が顔を見せた。エレンはその体を自分の服を脱ぐ途中にもチラチラと横目で見ていた。  
「ナニ見てんだよ。もしかして興味あるのか?」  
「そんなんじゃないよ。ユリアンはガキだな」  
 
 視線に気づき、ユリアンがからかう。平気そうに言葉を返したエレンだが内心ではどきどきと驚いていた。  
 二人は全てを脱いでしまうとさっきのようにお互い向き合う。二人の目は愛し合う相手しかうつさなかった。お互いの鍛えぬかれた体。  
 子供の頃はよく見ていたのに大人になるともう見なくなった。それは当然の事だったが二人ともさびしく思えたのも確かだ。  
 上から下へ見ていくとお互いの視線は一部を見たまま動かなかった。それは相手の下半身である。  
 ユリアンの男は肌の色と違い少し黒ずんでいるようにも思えたがたくましい。天井を高く見上げている。子供の頃、父親のものを見た以来だった。  
 エレンのほうはというと自分の女を隠しもしない。薄い毛に覆われている。その下には美しいピンク色のモノが見えた。  
 二人は近づき、ゆっくりと抱きあった。相手のぬくもりがとても心地よい。エレンの胸がユリアンにあたりやわらかく潰れる。  
 しばしの間ふたりは抱き合っていたがエレンは自分の腰にぶつかるものに気づいた。下を除いてみるとそれはユリアンのモノだった。  
「あんたのもんがもうこんなに大きくなってる」  
 そういうとエレンはユリアンの男を握った。改めて握って見ると堅くてとても大きい。男をみたのは父親以外では初めての事だが、父よりも大きかった。やさしく親指で先端をなぞってやるとピクピクと震えている。  
 不思議だったのはこんな汚らしくグロテスクなものが妙にかわいらしく思えた事だ。  
「うっ」  
 ユリアンの声が漏れた。いきなりエレンに触れられたためだろう。気持がいいらしく顔を天井に上げはぁはぁと息をしている。  
「そのままこすってくれないか。エレンに握られてるだけで出せそうだけどもっと気持ちよくなりたいんだ」  
 
「ああ、わかったよ。うまく出来ないかもしれないけどがんばってみる」  
 最初は握っているだけだったが、上下に少しずつ擦っていく。するとさっきよりもむくむくと大きくなっていくのを感じた。  
「き、気持ちいい。もっと、もっと頼む」  
 目をつぶり快感の波に耐える。ユリアンのそんな可愛い姿をもっとみたくなり手はどんどんと速度を増していく。もう片方の手は下の玉をコロコロと転がす。そのせい快感は増しもう耐え切れなくなっていく。  
 息遣いも荒くなる。そしてついに握っていた先端から白い液が放出されていった。  
「うううっ!い、いくっ」  
 精液は噴水のように大量に吹き上がりエレンの下半身や手に降りかかっていった。粘々とした精液は指の間を流れていく。そして落ちた精液は地面のじゅうたんに溜まった。  
(こんなに出るんだ。お、男って凄いな)   
 エレンは目を白黒させて驚いている。そんなエレンの様子を満足そうに眺めている。  
「お前の手の動きがあんまり気持ちよかったせいで我慢できなくなったんだ。へへへっ、今度は俺の番だな。寝ててくれないか」  
 少年のように笑うと、ユリアンは指の精液を拭い取っているエレンを無理やりにベッドへ寝かす。エレンは急にベッドへ横にされてしまった。  
 おかげで十分に拭い取れていない。何をするのか眺めていると掌を裸の胸の上へ置いた。そしてゆっくりともみ始める。  
 そんなに大きくは無いが小さくも無い適度な大きさの胸だ。とても揉みがいがある。最初は軽くもむ程度だったが次第に大きな動作へ移っていった。指をつかい乳首をもち右に左にとこねる  
 。たまには少し強めに握ったり押しつぶしたりひねったりという事も欠かさない。そのたびにエレンの口元から小さな悲鳴が聞こえてくる。  
 そうして何分か続けているとエレンの乳首が少しずつ硬くなっていくのがわかった。それに調子をよくしたのか撫でたり、つまんだりといった動作をいっそう激しくする。  
「うう。…気もちいい」  
「そうか?じゃ、こうしてやる!」  
 
 ピンと天井を向いた乳首にユリアンがむしゃぶりつく。エレンは驚いたが、別に抵抗はしない。なすがままにされている。  
 慣れないのか乳首を舐めつづけているままだが、何度か繰り返すうちにコツというものをもう掴んでいく。右手でエレンの左の胸を撫で、顔で右の胸を優しく舐める。  
 ふたつの場所を同時に責められる快感がとても心地よかった。べちょべちょに濡らした胸がひかっていた。  
「よし!今度は反対側だ」  
「反対側?」   
 ふと体を起き上がらせると今度はエレンを逆さにする。つまり足をつかみそっちのほうから引っ張ったのである。引かれた体はベッドの上をバウンドし、頭側とは反対のほうへ向いた  
 。胸を責められていて気持ちよかったのに、いきなり中断されてエレンが少々不満足であった。  
 顔を上げ文句をいおうとしたが、ユリアンの好奇心いっぱいの表情に何もいえなくなってしまった。  
(なんで、あんなにあいつはガキなんだろうかなぁ?)  
 ユリアンの悪戯心は止まる事がなく自分の方へ来た足首を両方の手で掴むと一気に端へ開いた。ユリアンから見た場合ハの字になる格好だ。これはエレンも恥ずかしかった。  
「なにしてんのよ!や、やめてよ。恥ずかしい」  
「恥ずかしくなんかないぜ。綺麗だよ。ほらピンク色でキラキラ濡れてるんだから」  
 ユリアンが言ったとおりエレンの秘所は濡れていた。それは興奮の為だ。長い間、いっしょに抱き合っており体がずいぶん準備できてきたのだろう。  
「大丈夫だよ。もっと気持ちよくさせてやるから」  
 今度はなんと口を秘所にもっていきいきなりペロンと舐めた。  
「ひっ」  
 味はあまりない。だがどちらかというとしょっぱい感じだと思った。だが悪くは無かった。気に入ったのか、何度も何度も舐める。あまりに全体を舐めすぎて少々肛門のほうまで舌がいってしまった。  
 
 ユリアンになすがままにされていたエレンだったが今度はなんとか反撃をしてやろうと精液にまみれているユリアンのモノを手にとった。ユリアンの体がビクリと震える。  
(何をする気なんだろう?)  
 考えているとなんともいえない感触に見舞われた。生暖かく柔らかなものに自分の男が包まれたのだ。首をまわすとエレンが自分の男を口にくわえていた。  
 これには流石のユリアンも少々驚いた。たしかに農村、開拓村育ちでがさつとは言え自分からあんな汚らしいものを口にくわえるなんて思わなかったからだ。  
 だが止めはしなかった。エレンは自分を愛する気持ちから、フェラチオを始めてくれたのだからそれで満足だった。  
 自分はエレンを、全力で気持ちよくさせようと再度、秘所に唇を寄せた。  
 目の前になにやら不思議なものがある。小さな豆のようなものだ。これが何かわからず口でくわえてみる。ビクッと大きくエレンの体がバウンドした。それはエレンのクリトリスだった。  
 女性にはクリトリスを責められるのが妙に気持ちよく感じると聞いた事があった。  
 エレンもやっぱり女性だから同じなのだろう。ユリアンは秘所とクリトリスを同時に責めて見ることにした。  
「いい…。ユリアン。そこいい。もっと、もっとお願い」  
 そう寂しそうなとても可愛い声と顔で哀願されてはたまらない。ユリアンは一層速度と力を込め励む。そして何度か繰り返した時、なんと秘所からねばねばとした液が溢れ出してきたのだ。エレンがイったということだろう。  
 エレンはシーツで顔を隠しながら、恥ずかしそうにこちらを見ていた。ユリアンも笑顔で答える。二人は笑顔になりながら再度お互いをくわえた。  
 そうしてお互いが男と女を何度も舐めつづけていると、ユリアンが顔を上げる。エレンはフェラを中断しは足の間で真剣な顔をしているユリアンをみた。  
「なぁ、エレン。そろそろ…いいか?」  
 ユリアンは不意に一言を漏らす。最初は言っている事がよくわからなかったようだが何度か聞いているうちに言っている事がわかってきた。つまりエレンの中に入っていいかときいているのだ。  
 
 ユリアンにしてみればもう耐え切れないのだろう。確かにそこまでいかないといけないという空気でもあり、ここまできて逃げたくも無い。だが恐怖もあった。  
「………」  
 いよいよ処女を喪失するのかと思うとエレンの背中に寒いものがはしる。恐怖心なのか、好奇心なのか、それらが入り混じったものがエレンの心を支配する。だが、ここで物怖じするわけにはいかないと自分で決心しユリアンの方へキッと向いた。  
 腰を両手で持ち上げると位置の確認をする。舐めて濡らしたもののそれだけでは十分といえないかも知れない。場所を確認し入りやすくさせる事が一番のはずだ。ユリアン自身も緊張している。背中から汗がどんどん出てきておりベッドのシーツへしみをつくる。  
 何度かちゅうちょしそうになったが、エレンが受け入れてくれようとしているのだと決めついに女への挿入を開始した。グイッと腰を密着させて押し込める。  
「いたあぁぁぁぁぁ!」  
 部屋全体に響き渡りそうなほど大きい悲鳴が鳴り響く。声の主はエレンだ。入ってきた男をうまく受け入れることが出来ず痛みが走っている。ユリアンはというと小さなエレンの中へうまく入らせる事が出来ずに四苦八苦していた。  
 途中まではなんとか力技で入れることが、出来たがそれからが難しかった。経験の不足が災いしているのかもしれない。  
「ご、ごめん。だ、大丈夫か?痛くないか?」  
「いたいに決まってるよ!くうぅぅ、大きすぎるんだよ。あんたのは!」  
 涙を流しながらせいいっぱいの抗議をする。しかしどんなに抗議してもエレンの痛みはなくなることが無い。歯を食いしばって耐えようとする。だがもうこの痛みを受けるのは嫌だった。  
 エレンは決意したかのように、ユリアンに向けて目で変事をする。「一気にこい」と言うような目を。  
 ユリアンもそのつもりだった。きつく閉めてきてもう耐えられそうにもないのだ。それにきつさだけではなく気持ちがとても良かったせいもある。  
 まわりは生暖かい柔肉で覆われており、次から次へ押し寄せる快感のせいで、自分のモノが耐え切れなくなっていくのがわかるのだ。  
 もう今度こそ本当に躊躇はしなかった。さっきよりもっと奥に力をこめて押し込める。女性には膜があると聞いたがこんな状態では確認も出来ない。ただ自分のやるべきことをやり遂げるまでである。  
「ひっ!」  
 
 男が最後の場所まで到達した時エレンの息が止まった。女からは血が垂れている。その血がシーツの上に落ち赤い斑点を作った。  
 だがその赤い点もすぐにエレンの動く足のせいで見えなくなる。  
「痛い、痛い」  
 美しい顔が苦痛にゆがむ。血が流れ出たということはもう内部まで侵入しており膜も破れたという事である。だがやはり最初の経験で苦痛から逃れる事は難しい。  
 エレンも痛みに苦しんでいた。内部をえぐられるような痛み。エレンが初めて経験するものだ。  
「くっ!」  
 ユリアンも焦っていた。痛くさせないと誓ったのにどんどん血は流れ、エレンの涙も多くなる。焦れば焦るほどどうしようもなくなるのがわかった。  
 これではいけないと思い、まだエレンの暖かく気持ちの良い内部にすぐに放出してしまおうと決意した。  
「…エレン、出していいか?」  
「いいっ。いいから早くお願い。…痛っ」  
 一応聞いてみたもののエレンは痛みの方ばかりに気がいっているようで  
 限界にきていたユリアンの男は、ついに溜まりたまっていたものをエレンの中へ放出した。ビクビクと震えながら次から次へとドロドロに濃い精液を送りつづける。  
 エレンはそれを受け息も出来ないのか、天井ばかり見ている。手はユリアンのたくましい背中に以前として巻かれていたが爪が食い込み血が流れ出していた。  
 あまりに多かった為か、女の中へ収まりきらず端やまわりから溢れ出してくる。ただその色は、白くなく赤い血と混じりピンクに染まっていた。  
「はぁ、はぁ」  
「…うう」   
 声が漏れていく。力いっぱい抱きしめあい離そうともしない。ユリアンは快感を、エレンは痛みをのりこえやっと二人はひとつになれたのだった。  
 二人は言い様の無い満足感に襲われゆっくりとベッドへ横になっていった。  
 
 ふたりが目を開けたときにエレンは少々怒りを込めた声でユリアンを責めていた。  
「あんなに痛いなんて思わなかった。…ユリアン、あんたへたくそなんじゃないの?傷でも作ったのかと思うほど痛かったんだから」  
 エレンが涙混じりの顔でつぶやく。男のプライドを刺激されたのか、焦りながらユリアンは反論する。  
「そ、そんな事ない。俺は下手じゃないぜ。お前が初めてだったから痛かっただけさ!…うまくも無いかもしれないけど」  
 最後に小言でボソッとつぶやく。だが何をいってもエレンは納得してくれない。へたくそへたくそと連呼され、どんどんユリアンは落ち込んだ。  
「ま、気にしなくていいよ。今度するときは気持ちよくさせてもらうからね」  
 いたずらっぽくエレンは笑う。そんなエレンにユリアンも笑いかけながらベッドに横になった。  
 「気持ちよくさせてやる。何回だって」と言葉を残して。いい気持ちでウトウトしだした時、エレンの声が耳元に届いてきた。  
「ユリアン…あんたと一緒になれて本当にうれしい」  
「…ああ、俺もさ。お前とは兄弟みたいだったのにこんな事になっちまったな。でも後悔してないぜ」  
 暖かい言葉をお互いに掛け合う。天井でランプがゆらゆらゆれ二人を照らしている。  
「今日はもう終わりだけど…今度いっしょに行こうぜ。またいつになるかわかんないけど」  
「いいよ。今度いこう。いっしょに遊びにこよう。…そのときはサラもいっしょだよ、ユリアン」  
「ああ。一緒に行こう。そのときには本当の平和がきてるから…」  
 二人は目を閉じ柔らかなベッドの上で心地よい眠りにつく。口元からはスヤスヤと静かないびきが聞こえてくる。  
 朝起きた時は暗く染まっていた空は青く青く光っている事だろう。そして二人は旅立つ。  
 はるか遠い世界、アビスを封じ込めるために。どんなに苦しい事やつらい事があったとしても負けはしないはずだ。  
 サラを助けようとする誓い、世界を守ろうとする決意、そしてなにより二人がお互いを愛しどんな困難にも立ち向かおうとする勇気があるのだから…。  
 
 

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