私が、一三歳になった日のことだ。  
槍術の稽古を済ませて、屋敷の浴室へ向かうときだった。  
「プルミエール」  
 私を母として育ててくれて、戸籍上の関係で言えばお姉さまのヌヴィエムお義姉さまが私を呼び止めた。  
「お姉さま」  
私のほうへ歩いてきて、私の顔に汗があるのを見ると、お姉さまは手を振った。  
「汗を流しにいくところなのね。それなら、後でいいわ」  
「ええ。後でよろしいのですか?」  
「汗を流してもらったほうが、私としても助かるの」  
 お姉さまの言っていることの意味を図りかねる。  
「お部屋に伺えばいいのですか?」  
 お姉さまは、少し目を上向きにして考えた後うなずいた。  
「そうね。それでは、待っていますよ」  
 
 浴場には、タオルをもったメイドが一人たっている。  
「お姉さまの用事って、なんでしょうね?」  
浴槽に入った全身がリラックスしていく感覚を、楽しみながらメイドへたずねる。  
「私にはうかがい知れないことでございます」  
 予想通りの反応。  
短いため息を吐いた後、私は自分の体をなんの気なしに眺めた。  
「少し、大きくなってきたかな。ねえ?」  
「なんのことです?」  
左の掌で、右の胸をトップが隠れるようにして見せる。  
トップを隠す意味はないのよね。裸を見られているのだし。  
「お嬢様も、もう一三歳になられますからね。無いよりはあったほうがよろしいでしょう?」  
「無くても困らないのに」  
 メイドは話にはのらず、浴槽に近づいてくるとタオルを持った手を差し出してきた。  
「あまりお待たせさせないほうがよろしいんじゃございませんか?」  
 タオルを左手で受け取って、立ち上がる。  
「そうね」  
 浴槽から右足、左足の順番で出し、バスマットの上に立つ。  
 と、浴室と脱衣所をつなぐ扉が開いた。  
「え?!」  
 お姉さまだった。  
「私もお風呂に入ろうかと思って」  
「お話は?」  
 お姉さまは笑った。そして、メイドを一瞥すると、首を出口のほうへゆっくりと傾けた。  
メイドはうなずいて、出て行った。  
 
「入りながらでも話せるわ。むしろ、都合が良いくらい。プルミエールはもうこれ以上は入っていられないかしら?」  
「いえ、でもお姉さまとご一緒なんて久しぶりですわ」  
 私は、まだ拭くのに使っていなかったタオルを下へ置くと、浴槽へと戻った。  
 お姉さまは浴槽にはいると、私に寄ってきた。  
「殿方に興味がでてきたかしら?」  
「? ないこともない、という程度ですわ」  
 通った鼻筋と、少し吊り気味だけど切れ長で、睫毛の長い瞳が形作った美しいお姉さまの顔が私の目の前に来た。  
「ねえ、プルミエール。私のこと、好きよね?」  
「それは、もちろん……尊敬していますわ」  
 満足そうにうなずくお姉さまの顔には、妖艶としか表現のできない表情が広がっていた。  
「私はね。昔、ある男にとても侮辱されてね、男性に愛情をもてないのよ」  
 ゾクっとした。艶かしいという言葉がこれほど似合うことは無いだろうという微笑み。  
 
「プルミエールが男性を愛することを否定するつもりはないのよ。だけど、試してみてからでも良いんじゃないかしら?」  
 倒錯的な香りを嗅いだ。  
「お姉さま、それは……」  
 私の問いに答えるより早く、お姉さまの手が湯に浸かっている私の胸に触れてきた。  
トップのあたりを、お姉さまの細い指がさすり、摘む。  
「はぁ……ん……」  
 私は左手でお姉さまの腰のあたりの肌に触れ、右手でバスタブのふちを掴んだ。  
「気持ちいいでしょう」  
 愛撫していないのに、お姉さまの声は恍惚というペイントが施されていた。  
お姉さまの手が、私の臍からたどるように、そこに、来る。  
「や、ダメです……ん……お、姉さま……」  
 自我と羞恥を覚えてから、初めて他人に触れられたソコから駆けぬける刺激は未知の感覚だった。  
私の体が、触れられる毎にピクピクと反射を繰り返す。  
チャプン、チャプンと水面が音を立てて揺れた。  
「貴女を大事に育ててきたわ。こんなに、美しく育ってくれて嬉しいのよ」  
 仰け反った体の背に腕を回し、空気に私の上半身の前面が触れた。そのまま体を引き寄せると、お姉さまの舌が顎、首筋、胸へと這っていった。  
「ん……はぅ……」  
 私の体が、湯の温度より熱く感じられるように火照っていく。  
 
お姉さまの手の動きが、私の敏感なソコを速度を変えつつ摩擦する。  
「プルミエール、私のことも触れてちょうだい」  
「え?……は、はい」  
 私は体を通っていく快感に震えながらも、お姉さまの下腹部へと手を伸ばした。  
お姉さまの体は、私の上半身を支えているため、湯面の上に出ているのでヌルリとした感触が指にあった。  
「そうよ、そこ……ん……ああっ」  
 お姉さまの喘ぎに思わず手を止める。  
「いいのよ。とても上手よ」  
 お姉さまが私の右肩から顔を上げて、口づけをする。  
二人の手が、互いのソコを刺激して、体の奥から私のなかに表現のできないアニマが噴き出してくるようだった。  
 不意にお姉さまの腕がその運動をしなくなった。  
と、仰け反るような姿勢をして、お姉さまのソコの粒と私の粒がこすれあった。  
「やぁっ……ん……はァッ……」  
 気持ち、いいっ!  
いやっ、なにか、なにか、変!!  
私の中で弾けたものがあった。同時に、私のソコから液体が、湯の中に迸った。  
お姉さまが動くのを止めた。  
「う……ん……達せたのね。……そうね、プルミエール」  
 言いながら、お姉さまは片足を淵へとかけて、ソコを私の眼前に突き出した。  
 
「貴女だけというのは、不公平よね?私も貴女と同じ快感を得たいの」  
 知った中での究極の快感の余韻で、ぼうっとした頭のままたずね返す。  
「どう、すればいいのですか?」  
「舌を使ってくれれば良いの。どこが、いいかは少しはわかったでしょう?」  
「はい」  
 不潔とは思わなかった。今まで浴槽に入っていた……お姉さまの美しい体。  
赤い、私と同じ色の陰毛を見ながら、私は舌で、お姉さまの指によって私が快感を与えられた部位に流線を描いた。  
「ん……そう……」  
私の舌が、お姉さまの孔から沁み出てくる蜜を舐めとる。  
誇り高いお姉さまの喉から、嬌声があがる。官能的に、腰をくねらせているその姿態が、舌を早く動かしたい衝動を誘った。  
もっと、もっとお姉さまの痴態を見たい。  
「あはぁ……はゃ……はやいぃ……」  
犬が必死で水を飲むように、私は顔を上下に動かしてお姉さまの宝石と孔を包み、掬い上げた。  
「プル……ミエール……もう、ああっ!」  
お姉さまの両手が、私の額に当てられた。ぐっ、と離すように押された。  
いや、お姉さまの達した瞬間の蜜を飲みたい。私は、下あごを押し出し、お姉さまの孔へと舌を伸ばした。  
 さっきまでの、ねっとりした液体とは異なる液体が出ていた。孔の内壁を舌が撫でたためか、お姉さまの腕から力が抜けた。私の舌が、探るたびにお姉さまの足が震える。  
「もう……やめっ……やぁん……んはぁっ!」  
 間欠泉のように、お姉さまの孔から蜜が吹き出すたびに跳ねるお姉さまに悦しさを覚えて、そこから吹き出すのが已むまで私は舌を這わせ続けた。  
 
 
白いバスタオルで身を包んだお姉さまが私を睨んでいた。  
「プルミエール、やめていいって言ったのに、よくも私の言うことを……」  
「ごめんなさい!でも」  
「でも?」  
「お姉さまが、あんなに可愛らしい声をあげるのは聞いたことが無かったから。つい夢中に」  
 お姉さまの顔が赤くなった。ふてくされる様に横を向き、壁ぎわにかけておいたサマードレスへと手を伸ばす。  
「くだらないことを言わないの。……私も貴女が、まだ誰にも見せていない姿を見れて嬉しかったわ……」  
 そう言いながら、寂しそうな表情を浮かべたお姉さまの方へと歩み寄った。  
「お姉さまは最初に、試すっていいましたわね?」  
「そうね。でも、最初に言ったように、プルミエールが……」  
 制すように私が、声を重ねた。  
「私、男性には興味をまだ持てませんが」  
 お姉さまが顔をこちらに向けた。  
「お姉さまに教わりたいことならたくさんできましたわ。今晩、お部屋へ行けばもっと教えていただけますか?」  
 その問いに答えて、お姉さまはサマードレスの裾を掴んで、仰々しくお辞儀をした。  
「喜んでお教えしますわ」  
   
数年後、私は家を出たけれど、お姉さまより魅力的な男性にも、”女性”にも会えていない。  
最初に覚えてしまった人の性別などというのは、大して重要ではないというのが私の考えになっている。  
でも、さっき助けた編みこんだ緑色の髪の娘はかわいかったな。初めて、私が知ったころの年くらいだと思うのだけど。  
すこし、試してみようかしら?  
 
 
 

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