ひるがえる、旗の群れ。
それは果てまで続くかと思われた。
その色は散らばり、違う地の者が寄せ合っていることがうかがえる。
世界すべての兵が集っているわけではない。だが、ロアーヌが率先して
破壊するものを阻止しようとしているのを知り意思を同じくした者が、
一つの戦地へと導かれたのだ。
「ミカエル様に賛同して来てくださったのですね・・・」
地を埋め尽くす人の波を、二人は崖の頂から見下ろしていた。
―――始めは内密だったが、旅先で完全に偽ることはできない。
そのうえ、世界に関わることのため広まるのにあまり時はかからなかった。
「世界を救う者にしては、あまりに勝手すぎるがな。」
「何をいっていらっしゃるのですか、そんな大儀を唱える者などいませんわ。」
凛とした声に、ミカエルは顔を向けた。
「みな自分が愛する人を守るために、戦っているのです。」
戦乙女に諭され、決意を新たにする。
「では行こう。我々の役目を果たしに。」
ふたりの影は、いにしえの従者の姿にも似て。
―――かの戦いも、このような熾烈なものであったのか―――
殺戮のみを行う、異形。
それはあまりにも無慈悲で、生き物の全てを否定した。
「くっ・・・、破壊されるためにわざわざここまできたわけではないわ!」
私達に残された道は、ただただ抗うことだけ。
それこそが、生きるもものの原理なのだから。
自らの運命を決める者、それを人間というのだ・・・・・・!
死力を尽くした槍撃。
こじあけた傷穴からあふれる光が、アビスの闇を犯していく。
―――アビスの魅せた幻だろうか。
光の広がる先で、二人の子供が抱き合う姿が映り、そのまま消えていった。
自らもマスカレイドの輝きを頼りにし互いに手をたぐりよせ、
侵食が過ぎ去るのをいつまでも待ちつづけた・・・・・