: 140%"> セーラームーン  

わたしにはなにもない。あるべきものがない。  
そう思い始めたのはいつの頃からだろう。  
幼いころはもっと笑っていたような気がする。それが自然だった気がする。  
でも、いまのわたしにはなにもない。  
なにもない。あるべきものがない。  

教室に足を踏み入れても、今日もわたしに声を掛ける人はいない。  
雑然とした雰囲気の朝の教室の中でも、わたしだけはその存在がないかのように。  
次々と登校してきては互いに挨拶を交わす同級生たちを横目で見るわたしは、  
彼や彼女たちの目にはどう映っているのだろう。  
うらやんでいるように見えるのだろうか。  
それとも、そんなことすら思われていないのだろうか。  
教室のわたしの席。ここに座ってただ時間だけが過ぎるのを待っているだけの日常。  
今まではそうだった。これからもそうだと思っていた。  
…しかし、最近はほんの少しだけ変化が訪れようとしているらしい。  

机の上に、昨日ちゃんとしまっておいたはずの教科書が載せられている。  
何気なく置かれたそのページの合間から、一枚の紙切れが挟まれているのを見た途端、  
かっ。っと顔が熱くなるのが自分でも判った。  
教科書に挟まれたその紙切れには、何が書いてあるのか見なくても判る。  
自然と動悸が早まるのを感じた。身体の奥が熱を帯びてくる。  

退屈な時間が過ぎるのを、今日はもう、待ちきれないかもしれない。  
そう思った。  

 

春も近づいたとはいえ、陽が落ちかける3月の夕刻はまだ肌寒い。  
学年末試験の期間を明けたばかりのこの時期、  
ほとんどの部屋から証明が落ちた部室棟には人も少なく、  
わたしは薄暗い廊下を『その場所』に向かって歩いた。  
設立されて間もないこの学園の部室棟にはまだ使われていない空き部屋も多く、  
そのひとつがわたしが目指す目的の場所だった。  
教科書に挟まれた紙切れに記されていたのは、そっけない『6:00』だけのメモ。  
でも、それだけでもわたしに用件は伝わる。  

人気のない廊下に立って、思わず左右を見渡しながら小さくドアをノックすると、  
それを待っていたかのようにスチールのドアが内側に開く。  
電灯も点けていない上に左右のカーテンがきっちりと引かれて、  
さらに薄暗くなった部屋の中にはいつもの『彼ら』がいた。  
「…と…土萠ほたる…です。ごぶさたしてました…」  
ドキドキと弾む制服の胸元をぎゅっと押さえながら、わたしは久しぶりに顔を合わせた  
呼び出しの主たちの顔を見る。  

「ほたるちゃん待ってたよぅ」  
ドアを開けてくれた背の高いお兄さんはそう言いながら身を屈めると、  
わたしの唇にいきなりちゅっ。とキスをした。  
「学年末試験なんて、もぉゼンゼン手に付かなくってさぁ〜」  
眼鏡のお兄さんは、ぱんっ!とスカートの上からわたしのお尻を叩くと、くすくすと笑った。  
「ほたるちゃんのほっそいカラダ、忘れられなくってさぁ」  
髪の長いお兄さんはいきなりわたしを後ろから抱きすくめると、身体中をべたべたと触る。  

その間、わたしはただ困ったような、照れたような顔をしておとなしくされるに任せているだけだ。  
「しばらく会ってなかったから、もぅ溜まっちゃって溜まっちゃって。ほたるちゃんは平気だった?」  
「お前いきなりそれかよ。ほたるちゃん答えられないだろぉ?」  
「全っ然ヌいてなかったからさぁ。3回づつは軽くイケるっしょ」  
お兄さんたちはわたしが答えに詰まるのを承知で、そんな言葉を掛けてくる。  
「やば〜。想像しただけで勃ってきたぁ」  
「オレなんて、昨日っからもうそればっか考えててさぁ」  
「ほたるちゃん、オレともキスしよっキスっ!」  
嫌らしい言葉を掛けられ、唇を奪われながら、  
何故かわたしは他のどんな時よりも心が休まるのを感じる。  

「…じゃ、そろそろはじめよっかぁ。」  
壁に掛かった時計を見上げながら背の高いお兄さんがそう言うと、  
抱き付いたままだった髪の長いお兄さんがわたしの胸元のリボンを解き始めた。  
「ほたるちゃん、今日はオレが脱ぎ脱ぎしてあげるからね」  
「…あ。はい…おねがいします」  
わたしは拒むこともなく、こくん。と頷いてしまう。  
「はい。バンザイして、バンザイ」  
言われたままおとなしく両腕を上げると、あずき色の制服の上着が脱がされ、  
お兄さんたちの鞄が並べられた床の上に無造作に放り投げられた。  
同級生の女の子たちに比べても、身体が小さく成長が遅いわたしはまだ、大人の下着を付けていない。  
「スカートもいいよね。それ。ジ〜っと」  
ジッパーを下ろされてチェック柄のスカートもすとんと足元に落ちる。  

真っ白なスリップ姿になったわたしに抱き付いたままのお兄さんが嬉しそうな声を出す。  
「ほたるちゃんのおっぱいちっちゃいよなぁ〜。オレ、凄いスキ!」  
髪の長いお兄さんはスリップの上からわたしの胸の先端をつまむと、  
指先でねじるようにイタズラする。  
「…あっ…やっ…やだっ…待ってください」  
もじもじと身体をよじるわたしの反応を楽しんでいるのか、一旦胸から手を離すと  
スリップの裾から手を差し入れて、直にわたしの胸に触れる。  
「ふにゅふにゅしてあげる…ほたるちゃん、これキライ?」  
そんなふうにわたしの耳元でいやらしく囁きながら、  
わたしの大きくない胸を何度も何度もやさしく握る。  

「いつまで揉んでるんだよ。ほたるちゃん困ってるだろ」  
眼鏡のお兄さんがにやにやと笑いながらそう言うと、  
髪の長いお兄さんはしょうがないな。なんて言いながら、スリップの裾をつまんで持ち上げた。  
「ほら。ほたるちゃん、もいっかいバンザ〜イ」  
唇をきゅっと噛んで恥ずかしさを我慢しながら、  
わたしはもう一度腕を上げて脱がされる姿勢を取る。  

するっ。っと、両腕から引き抜かれたスリップが脱いだ制服の上に重ねて放り出されると、  
お兄さんたちが口々に歓声を上げた。  
「お〜。ほたるちゃんのおっぱい久々っ」  
「相変わらずちっちゃくってカワイイなぁ」  
「おい。お前が力入れて揉むから、赤くなってんじゃねぇか」  
「…っ!」  
そんなお兄さんたちのぶしつけな言葉に、わたしは思わず両手で胸を隠してしまった。  
「そのままタイツ脱いでタイツ」  
「ストッキングの下からパンツ透けてるのって、なんかエロくない?」  
「あ〜。言えてる。オレ、そのままでもいいけどなぁ」  
口々にはやし立てる声に従うように、わたしは片手をストッキングに伸ばした。  

…幼い頃、わたしは事故で生死の間をさまよった事があるらしい。  
その時はパパのおかげで一命を取り留めたのだが、わたしの身体には酷い火傷が残った。  
それを隠すためにわたしは真夏でも長袖の冬服を着て、厚手のストッキングを履いている。  
片手で胸を押さえたままのわたしを見て、背の高いお兄さんがからかう。  
「ほたるちゃん、いまさらおっぱい隠さなくってもいいじゃん」  
「そうそう。この間だってあんなにキスいっぱいしてあげたのにさぁ」  
そんな風に言われても、やっぱり裸の胸を見せるのは恥ずかしい。  
片手で胸を隠しながら脚にぴたりとはりついたストッキングを脱ごうとしても、  
なかなか上手くいかずに、自然と脚ががにまたみたいなみっともない格好になってしまう。  
「ほたるちゃん、脚細いからストッキング似合うよなぁ。…いつ見てもイイよ。それ」  
そんな風にわたしをからかいながら、眼鏡のお兄さんがわたしの恥ずかしい格好を眺めている。  
「…や…やだ…やめてください」  
こうやってわたしの顔が熱くなるのを見て、それがまたお兄さんたちを喜ばせるらしい。  
「もっとくいっ!くいっ!ってお尻振って振って」  
わたしは無言のまま、赤い顔でうつむいてしまう。  

ストッキングを脱いで、下着だけになったわたしの脚には太腿からくるぶしに至るまで  
引きつったような赤黒い傷が醜く張り付いている。  
背中にだって、脇腹にだって、これと同じような傷跡が残っている。  
いつも見ているはずなのに、改めてそれを見るとわたしの心はまた暗く沈む。  
みんながこれを見て笑う。  
みんながこれを見て顔をしかめる。  
みんながこれを見て、わたしに冷たい視線を向ける。  
わたしのせいじゃないのに。わたしはこんなもの欲しくないのに!  

「…あの…前から聞きたかったんです…気持ち悪く…ないんですか?」  
思わずそんな言葉が口を付いて出てしまう。  
その瞬間、わたしは自分自身の言葉に心臓を掴まれたような気分になった。  
なんということを訊いてしまったんだろう!  
もし、目の前のお兄さんたちが、わたしが最も聞きたくないと思っている答えを口にしたら!  

でも、お兄さんたちの口から出た言葉は、わたしの嫌な想像を裏切ったものだった。  
「…え?ほたるちゃんが気持ち悪いワケないじゃん。何言ってるんだよ?」  
「そうそう。オレたち、ほたるちゃんの事、マジでイイと思ってるんだぜ」  
「気持ち悪かったら、こんな事できないって」  
そう言いながら、わたしの足元にしゃがみこんだ背の高いお兄さんが  
火傷の跡にぺろっ。とキスをした。  
思わず息を呑んだわたしに、お兄さんたちはにっこりとやさしく微笑む。  
「だからさぁ。今日もいっぱい可愛がってあげるからね?」  
「早くやろやろっ。とりあえずしゃぶってよ〜。ほたるちゃん」  
「パンツ脱いじゃいなよ。素っ裸素っ裸っ!」  

ああ。と、わたしは思った。  
わたしにはなにもないと思っていた。あるべきものがないと。  
でも、目の前のお兄さんたちはこの醜い身体を見ても、わたしの事を可愛いと言ってくれる。  
わたしの事を一人の女の子として見てくれる。  
空気のような存在でもなく、嫌悪と嘲りの対象でもなく、好意の笑顔をわたしに向けて。  

だから、わたしは、この人たちと一緒にいようと思った。  
あるべきものを、見付けられるかも知れない思った。  

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