――咲良田市。  
そこは大半の住人が、何らかのの不思議な能力を持つ街。  
そして、『ここ』は病院で寝たきりの一人の少女・片桐穂乃歌が作りだした  
神様がいる以外は『日常となんら変わらない』夢の世界だった――。  
 
9月24日(日曜日)  
 
河沿いの道を相麻菫と浅井ケイは歩いて、話しこんでいた。  
 
「ねぇ、ケイ。今回のリセットで消したモノの重要性に気づいた所で、  
一つ、私の望みを叶えてくれるかしら?」  
 
相麻菫が、そう言って挑発的かつ小悪魔的な笑みを、浮かべた。  
本能的に不安を感じ取るも浅井ケイは、いつもの通りの淡々とした態度を崩さなかった。  
いや、崩さないつもりだった。  
 
「なにかな? 相麻…――ッ!?」  
 
 
川沿いに生えていた柳の枝が突然スルスルと物理法則を無視して伸び、浅井ケイの四肢を絡めとる。  
 
『菫ちゃんが、君との思い出が欲しいと言ったからね』  
二時間だけ、君の自由を拘束させてもらうよ、と、  
この夢の世界に作られた偽物の神様・チルチルの声が、風にのってケイの耳元に届いた。  
『悪く思わないでくれ』  
心底、すまなさそうな。  
それでいて、どこか面白がっているような、若い男の声。  
 
「ありがとう。チルチル」  
 
相麻菫は虚空に向かって、笑いかけると、ケイに向き直った。  
しなやかな野良猫を思わせる歩みで、一歩二歩と柳の葉で拘束されたケイに歩み寄る。  
そのまま自由の利かないケイの顔を、相麻菫の手が挟みとる。  
頬に相麻の手の柔らかな感触を感じながら、相麻菫の様々な感情を内包する複雑な色合いの瞳を見返す。  
その瞳は潤んで、どこか切なさに泣いているようにも、見えた。  
 
「――ごめんなさいね。ケイ」  
そう言って。  
相麻は、ゆっくりとケイと唇を重ねた。  
角度を変えて二度。三度。  
――五回目から、ケイは数えるのを止めた。  
 
唇を割り、ケイの舌を求めて挑発する。  
応える気は、なかった。  
それなのに。  
気づけば、いつしかケイは相麻と情熱的なキスを繰り返し交わしていた。  
 
――ケイにとって、相麻菫は春埼美空の次に、二番目に好きな女の子だった。  
 
 
『ありがとう、チルチル』  
誰よりも大好きな男の子と、情熱的なキスを交わしながら相麻菫は、昔馴染みのチルチルに心の中で感謝した。  
 
思い出を作る――機会をくれて。  
いいえ。  
 
私は、この夢の中の世界で――既成事実を作る――。  
 
この夢の中の世界で、夢の中の相麻菫は、浅井ケイの子供を孕む。  
そして夢の中の偽物の浅井ケイとともに、若い夫婦のように育てる。  
 
しかし。ケイのまったく知らない所で、そんな企てをしても面白くない。  
私を振ったばかりのケイに、少しの辱めと、可愛い復讐をしてやろうと、相麻菫は笑った。  
 
キスを交わした数は20回を越えたはずだ。  
存分にケイの舌を啜り、その味を確かめ、感触に酔う。  
何度も何度も唾液を交わしあって、飲みこんだ。  
荒い吐息を少しだけ整えると、相麻菫はケイの前に膝をついて、身動きの取れないケイのズボンに手をかける。  
彼女の手が一つ、ボタンを外す。  
 
「――…相麻」  
 
ゆっくりと音を立て、ジッパーを下げる。  
彼女の手がゆっくりと、ズボンを下ろし、時間をかけて脱がせる。  
そうやって浅井ケイの羞恥心と気分を煽る。  
ケイの下着をゆっくりと膝上まで、下ろす。  
こんな真っ昼間の野外で相麻菫は、ケイの下半身を露出させた。  
こんな姿も、夢の世界の住人になら、誰に見られても構わない。  
チルチルにも誰にも邪魔されないようにと、お願いしてある。  
たとえケイがこの後、春埼美空の元へ戻ったとしても『リセット』は、まだ使えない。  
それは百も承知。  
彼は今日の昼になるまで『セーブ』も、出来ないのだから。  
つまり、この行為は『なかったことには出来ない』。  
 
「――頼む。相麻――」  
 
ケイの力のない制止の声も、相麻菫は聞こえないふりをして、ケイのぺニスを優しく両手挟みこみ、刺激を与えはじめた。  
愛しい人のモノ。  
相麻の両手がソレを扱く。  
 
ケイの為なら死んでしまっても良いくらい、私はケイを愛している。  
――そうして、一度は死んでしまった。  
ここにいる私は、写真から生まれた相麻菫のレプリカだけども、ケイへの想いは何も変わらない。  
愛しい。愛しい。それでもけして私を選ばない――浅井ケイ。  
けれども、今だけは、私のモノ。  
ケイの下半身に顔を埋め。その匂いを確かめる。  
雄の匂いのするそれを両手で十分に扱き刺激を与えつつ、その充血した先端に軽く口づけて啜った。  
苦い先走りも気にせず、大好きな美味しい食べ物のように、ケイのモノを咥えこんだ。  
 
髪をかきあげつつ、ケイのモノの竿を片手で軽く掴み、赤い舌先をチロチロと見せ、  
ケイのぺニスを舐めあげ刺激しながら、上目遣いでケイを見上げる。  
それはケイにとって、最も扇情的であり、最も理想的で挑発(そそ)られる仕草だった。  
理性を退け、より性欲と本能を刺激する。淫らで、愛しい仕草だ。  
もちろん相麻菫は、それを理解した上で、その上でよりケイの理想を演じている。  
どうすれば浅井ケイがより『感じる』か、より『その気になる』か。  
未来視の能力を持つ彼女にとって、それを知るのは容易いことだった。  
頬染めつつ、恍惚とした顔で相麻菫はケイの下半身の肉棒を、口内でねっとりと嬲り、責める。  
相麻菫の頭が、ケイの下半身で前後に揺れる。  
相麻菫の顎から、ぽたぽたと唾液が滴り、ケイの足元に液溜まりをつくる。  
ケイからは拒絶とも、快楽の呻きともとれぬ、意味をなさない喘ぎ声が、漏れた。  
 
「は、ンッ――相麻、相麻――」  
 
「――なぁに?ケイ?」  
 
ケイの声に、相麻の口が、不意に屹立した下半身から離れた。  
口淫で煽られ高められていた刺激と快感がいきなり途絶えたことに、少し残念な気持ちになる。  
露出した粘膜は、野外の風が当たって、少し冷たい。  
相麻の右手は、ケイの屹立を掴み、扱き続けている。  
 
「――なぁに?ケイ?」  
 
相麻菫がもう一度、問いかける。  
返事を躊躇っていると、彼女は彼のモノを扱く仕種を中断し、右手の親指と人差し指だけで屹立の付け根を痛いくらいにキツく握り締めてくる。  
 
相麻菫は知っている。  
 
――今なら、ケイは私に堕ちてくる。  
 
相麻菫がこの夢の中でカロリーを気にせず、好きなものが食べられるように  
ケイはこの夢の中の行為を『夢の中の行為に過ぎない』と逃げることができる。  
 
例え、この世界で、今ここで相麻菫と一線を越えても。  
例え相麻菫の腹の中に、生で出し妊娠させたとしても。  
それは、『現実』にはなんら影響を及ぼさないと判断する。  
相麻菫は、そうして『ケイの逃げ道を用意しておいた』から。  
だから。  
ケイは、私に堕ちてくる。  
 
 
「どうしたの――ケイ? 私にどうして、欲しい?」  
 
情けなそうにケイの口から、おねだりの言葉が零れて、相麻菫は満足げに笑った。  
 
「いいわ。ケイのお願いだもの。聞いてあげる」  
 
相麻はそう言うと、再びケイの股関に顔を埋めて、ケイの一物に吸いつきはじめた。  
程なくして――  
 
「ん――んンッ…」  
 
ケイの下半身と相麻菫の口内のモノがビクビクと痙攣すると、彼女の口内に熱くて苦い体液が溢れだした。  
ケイの射精を初めて口で受け、そのケイの味を確かめてから、何度にも分けて、ゆっくりと嚥下した。  
そのまま。  
腰がふらつくケイを、相麻菫は柳の木の根元に座らせた。  
そうしてから、自らのスカートの中から下着を下ろして、足から外す。  
脱いだばかりの温もりのある下着を、ケイの鼻先や頬に触れさせた。  
それからは、むせかえるような相麻菫の雌の匂いがする。  
 
「――相麻は、Sの気があるんだな…」  
「そうよ。言ったでしょ?私は好きな相手をいじめたいタイプなの」  
 
とりあえずスカートのポケットにその下着をしまい込むと、  
相麻菫はケイの下半身の上に跨って、ゆっくりと腰を落としはじめた。  
 
「――止めてくれ、と、言っても聞いてくれないだろうな」  
「ええ、ケイ。私は、はじめから、止めるつもりはないわ」  
 
僅かなケイの最後の抵抗も、相麻菫は微笑んで、するりと華麗にかわしてみせた。  
ケイのモノを手で掴み、自ら割り開いた秘唇に導いていく。  
そして――。  
 
「――ンッ――」  
「――あぁッ――!」  
 
次の瞬間には。  
根元深くまで、二人は繋がっていた。  
 
「――ふふ。不思議ね。ケイはこうして目の前にいるのに。私のお腹の中にも、小さなケイがいる…」  
「相麻――小さいは、余計だ」  
「あら。ごめんなさい。でも、こうして収めておくのがツラいくらい、大きいわよ?」  
 
それに固いのに柔らかくて、芯があって…。  
ああ、堪らないわ。ねえ。ケイ。  
私、あなたが大好き。大好き。  
そう言って相麻は、ゆっくりと腰を上下に振りはじめた。  
それは次第に速くなり、ジュボジュボと淫らな水音を立てはじめる。  
発情期の獣のように、身動きの取れないケイのモノに腰を沈めて、貪り、動き出す。  
向かい会って座る二人は、理性を飛ばしはじめた頃から、どちらからともなくキスをはじめた。  
上も下も、愛しい浅井ケイと繋がっていて。  
相麻菫は、この時間が永遠に続くように強く――強く、神様に願った。  
 
 
「――この後、この夢の世界の私は『二人になる』の」  
 
一通りの行為が終わった後で、相麻菫は浅井ケイにそう告げた。  
 
本当は浅井ケイもだけど。それは、あえて教えてあげない。  
当初の予定を遂行する相麻菫と。  
このままケイの子供を妊娠し、赤ん坊を産み育てる相麻菫と、  
出来てしまった子供の責任をとる夢の中の浅井ケイが、この夢の世界にはいるはずだ。  
この片桐穂乃歌の世界が、なくならない限り。  
――ワン・ハンド・エデン――。  
ここは歪んだ――小さな私の楽園。  
 
「ねぇ。見て――ケイ」  
 
柳の木の根元に座り込んだままの浅井ケイの前に、すっくと立ち。  
相麻菫はスカートを持ち上げ、中を見せる。  
露出された彼女の女性器からは、ケイが相麻菫の体内に放った精液が溢れ、太ももの内側を伝わって滴り落ちている。  
それは、その光景は――酷く淫らで、思わず顔を背けたくなる。  
ケイは自らが、相麻菫に欲情し彼女の中に、己が確かに射精してた跡を見せられた。  
 
 
――たった二時間。  
 
それでも、それは人間が致命的な間違いを犯すには、充分すぎる時間だろう。  
たとえば最愛ではなく、二番目に好きな女の子と、何度もセックスをするくらい。とても簡単な短い時間だ。  
 
そうして――三度。  
 
夢の世界とはいえ、真っ昼間に人の行き来すらある野外で、  
浅井ケイは相麻菫に犯され、セックスをして、相麻菫の望みどおり中に生で射精させられた。  
 
春埼美空のこともあるし、と、相麻菫は微笑んで続けた。  
相麻菫はケイに背を向けて、服装を整え、下着を身につける。  
その下着は瞬く間に、相麻の中にケイが出したもので、染みを作るだろうと推測できたが。  
 
 
「――ケイ、今日のコトは忘れてもいいわ――」  
 
相麻菫は振り返り、いじめっ子のように、笑みを浮かべて付け足した。  
 
「――『忘れられる』ものなら、ね?」  
 
忘れられない能力。  
完全記憶を所持するケイに対して、  
とても綺麗に――そして挑発的に彼女は笑った。  
 
 
 
【終】  
 
 

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