: 140%"> サムライスピリッツ  

もう、姉の美しい裸身を隠すものは何ひとつなかった。  
おなじ裸身の妹に組み伏せられて、しかし、もう、抵抗はしない。  
ただ、見つめ返すだけ。  
巫女として、誕生のその日から純潔を守ってきた肉体を。  
けして少なくなかった、闘いの中その可憐さを摘み取ろうとした男たちに、  
指一本触れさせなかった処女性を。  
すべて実の妹に捧げ渡し、犯されることを受け入れた、姉の、目。  
ついに想いを遂げられる瞬間が、  
互いのすべてを捧げ合う夜が訪れたというのに、  
リムルルにはしかし、わずかな逡巡…。  
“嬉しい。嬉しい……!”  
“でも……。ちゃんとできるだろうか?”  
呼吸と共に静かに上下する、姉の白い乳房を見つめながら、逡巡する。  

自分の身が震える寸前であることに気付くと、  
身体に入った力を逃がしてそれを消し去ろうとする。  
頭が真っ白になりそうになって、  
懸命に考えを続け、自分の意識を呼び戻す。  
姉の、白い乳房。  
薄紅色の乳首。  
形のいい臍(へそ)。  
柔らかな翳(かげ)り。  
薄く浮き出た鎖骨、あばら、腰骨。  
染みひとつない白肌に覆われたそれら姉の肉体は、  
未踏の白雪の如き処女性の顕現と思われ、  
思わずむしゃぶりつきたくなるように人を誘う。  
同性の、年下の娘である、妹をすらそう思わせる。  
でも、貴重すぎて。  
繊細にすぎて。  
どこから触っていいのかすら、リムルルにはわからない。  
“こ……恐い……”  

夢が叶ったのに、現実となったその夢は大きすぎて、  
自分を押しつぶしてしまいそうだ。  
でも、ここでいまなにもできなかったら……  
もう一生、自分は姉になにもできないだろう。  
“口づけを……”  
まず、一番の夢。  
姉と接吻を。それだけでも。  
顔を近づけていくが、もう、姉は抵抗しなかった。  
もちろんリムルルは初めてだ。  
姉もそうだ。  
“どう、すればいいの?”  
たぶん、こうするんだろう。  
皮膚と皮膚が、触れた。湿った、柔らかく暖かいものが。  
“あっ!!”  
口づけ──  
口づけ──!  
同じ性の人と。実の姉と。そしてこの世で、最も愛する人と。  
身体中がカッと熱くなる。呼吸が止まりそうだった。  
“姉様! 姉様! ねえさま──っ!!”  
「うっ、う……う……」  
自分が泣いているのをリムルルは知った。  
胸が熱くなり過ぎていた。  
唇を合わせたままで、思わず、泣き声が出ていた。  
訪れたその瞬間はあまりに甘美なもので、  
一生に一度の機会になるかもしれないと思うと、  
リムルルはもう簡単に唇を離せなかった。  
一生懸命、自分の初めての唇を姉にこすりつけ続ける。  
そして姉は、おとなしくそれを受け止めてくれた。  

ちゅ……  
と最後の水音をたててふたつの唇が離れると、  
リムルルはそのまま姉の肩に頭を預け、  
荒い息をしながら涙を流し続けた。  
ナコルルは、自分も頬を染めながらくすっと笑った。  
「……押し倒されたのは、私のほうよ?」  
「ね、ねえさま……」  
リムルルは姉の裸身をきゅっと強く抱くと、  
もう一度、姉の唇を奪った。  
姉も、もう一度、優しく受け止めた。  
何度してもいいんですよね。  
そう確かめるように、  
リムルルは何度も唇を離し、押し付け、また離しを繰り返した。  
その度にちゅ…ちゅっとあまりにささやかな水音が小屋に響いた。  

「あ……あぅ……あンン……」  
細い裸身が、てのひらでまさぐられ、こすられる度に、艶声が漏れる。  
乳房の上を白い指が滑り。  
乳首を捕らえて揉み。  
脇腹をさすり落ち。  
耳を、頬を手が弄んで、そして口づけ。  
その度にナコルルは甘く喘いだ。  
リムルルは、今度こそふるふると身体を震わせていた。  
自分の手の動きが、姉を悶えさせ、喘がせている。  
自分の手の動きが、姉を生まれて初めて性の世界へ堕(お)としゆきつつある。  
妹の自分が。  
その行為は、姉を、堕落させるものかもしれない。  
いや、間違いなく、清廉の化身たる巫女を、性の坩堝(るつぼ)へ、  
さらには同性の、そして禁断の血の関係に引き落とそうとしているのだ。  
でも、欲望は果てしなく少女を中から燃やし続け、  
甘美な地獄への前進は止まらなかった。  

姉を自由にしている。  
その思いは、何度も何度も繰り返しリムルルの胸を燃えたぎらせたから。  
「んは……あふ……あ、あ……あっ」  
唇でまで、乳首を愛撫する。  
少女が母の次にしゃぶった乳首は、姉のそれとなった。  
小さくて、硬くて、柔らかくて、口中で熱かった。それは。  
「あっ…あっ…あっ…あっ…」  
さらさらと長い髪の流れる美しい音がして、  
見えなくても、姉が首を振って悶えていることをリムルルに伝える。  
可愛い。  
毎日接しているだけで涙が出るほどいとおしかったのに。  
こんな見たこともない姿を見てしまったら、  
さらにもっといとおしくなってしまう。  
そんなの、どうやって我慢すればいいのか、リムルルにはわからない。  
だからもう我慢しない。  
震える手を下に伸ばすと、指先はそこに触れた。  
「あっ……!!」  
姉の処女地に、妹の指が触れた。  
ふたり共に衝撃的な感触だった。  
熱い秘密の場所に触れて、リムルルは頭が破裂しそうだった。  
秘匿された場所に触れられて、ナコルルは恥に真っ赤になった。  
しかし、行為は続行された。  
「ああン、ああン、ああっ、ああっ、ああーっ」  
もはや姉の自尊心もなにもなく、  
ナコルルはそこの快楽と恥に真っ赤な顔を振り乱し、  
恥ずかしい大きな声を上げ続けて止められない。  
リムルルももう後退など念頭になく、ひたすらやわらかく  
すばやく指を動かし続けて、姉を追い落とすのに必死だった。  
そして姉は、堕(お)ちた。  
「ああぅ、ああーっ! ああ! ああ! ああ──っっっっっ!!」  
妹の腕の中で細い体を震わせ、ナコルルは幼い性の頂上を極めた。  

「ねえさま、足を、もう少し開いてください……」  
「こ、こう……?」  
幾度かの頂上に昇りつめたあと、そしてふたりは、儀式に入っていた。  
互いに互いを捧げる儀式だ。  
股間をいじる妹の手に、さらに自由な空間を与えるため、  
姉は、下品にすら見えるほど足を開いてあげる。  
「ねえさま……」  
掛ける言葉をみつけられなかったから、  
リムルルは唇を重ねることでその代わりにした。  
指が、ナコルルの処女に侵入する。  
抵抗が強い。  
しかし、垂れ落ちるほどの量の熱い液に助けられ、  
徐々にナコルルは掘り進められてゆく。  
やがて妹の指は根元まで姉の中に収まった。  
それで終わりではない。  
一度指を引き戻すと、今度は妹はもう一本の指を添えて  
姉を掘り進む。  
「!」  
痛みが大きくなったようだ。  
しかし、ふたりとももうやめる気はなかった。  
かたや耐え、かたや慎重に中を進み、やがて二本の挿入に成功する。  
そして、さらに。  
三本目。  
三本の挿入を終え。  
指をゆっくりと引きぬくと。  
妹は我が指についた血糊を視認した。  
“ああ──!”  
今宵、私は……。  
姉を、奪った。  
鮮やかな色が、ナコルルを堕(お)としたあまりにも鮮烈な証しだ。  

私の手で。  
処女だった姉が。  
性のなにも身に受けたことのなかった姉が。  
今宵──。  
もし悔いるにしても、ふたつずつの裸の乳房を触れ合わせて同衾(どうきん)し、  
姉の破瓜血をみつめているいまでは、もう遅すぎる。  
いま胸を押しつぶそうとしている重さは、後悔ではなく、  
大きすぎる感動なのだと信じたい。そして。  
次は、私の番だ。  
「ねえさま。どうぞ」  
姉はうなずくと。今夜初めてみずから動いた。  
手を、無防備な妹の股間へと伸ばす。  
今夜はまだ誰にも触られていないにも関らず、  
そこは、彼女にとって過去最大の潤いに満ちていた。  
当然のことだった。  
一本目が挿入された感触は、妹の心を感動で震わせた。  
“ねえさまが! ねえさまがとうとう私を! ああ──っ”  
二本目は、大きな痛みと、喪失の幸福を。  
“ねえさま……私も……とうとう……いっしょに……!”  
三本目は、ふたりの愛と誓いの瞬間だった。  
重い痛みと、いとおしい異物の感触と、喜びとに、リムルルは震えた。  
“ああ……ああ。リムルルはもうねえさまを放しません。けして離れません”  
指が抜かれたあとは、ふたり共に  
じんじんとした股間の幸せの痛みに耐えながら、  
裸で抱き合い、口づけを甘く繰り返した。  
失い、捧げ終えた裸身を姉妹して結び合わせながら。  
毛布の中で結ばれた手と手が、  
ふたりの神聖な血を、絡み、混じり合わせている──  

 * * *  

さっき軽く目覚めた時はまだ裸の肩を閨(ねや)に寄せ合っていたはずなのに、  
もう、毛布の中の隣に姉の裸身はなかった。  
「姉様…」  
人はいない。  
帯も締めず裸の肩に衣を引っ掛けただけで外に出ると、  
姉はすでに身を正して井戸水を汲んでいた。  
朝餉(あさげ)の用意と、身支度をするため。  
「…おはよう。リムルル」  
いつもと違う夜を過ごしたにふさわしく、  
いつもと違う紅色が、姉の頬に差した。  
「姉様……身体は痛くないですか?」  
「だいじょうぶ」  
姉の方から、抱きしめてきてくれた。リムルルの、夢だった。  
「あんなに優しく、あなたのものにしてくれたんだもの」  
「姉様。好きです…」  
「私も、好きです…。ずっと放さないでいて…」  
血の繋がった姉妹の誓いの口付けの光景と共に、  
朝日は山の稜線をゆっくりと離れ、地上をまぶしく照らしだす。  

道を歩いて来た姉妹を、待ち受けていた人影があった。  
「よう、ご両人さん。出立の支度はできたかい?」  
声を掛けてきたのは、大刀(だいとう)を背にぶら下げた浪人者、  
覇王丸と名乗る男だ。  
ナコルルはなぜか、乱れてもいない衣服の前を押さえ、少し赤くなった。  
リムルルは姉の左腕を抱えながら、やはり赤くなってその影に隠れようとする。  
「は……はい、こちらはいつでも出立できます。では村を出ましょう」  
「お、おう。じゃ、小屋の中の連中にも声を掛けて来てくれや」  
足早に、というのでもなかったが、  
姉妹はなにかそそくさと気まずそうにその場を去った。  
覇王丸は隣の兵法者に声を掛ける。  
「……あのふたり、やっぱり、その……しちまったのかねえ」  
柳生十兵衛はふんと鼻を鳴らしただけだった。  
「けどよ。女同士だぜ? ……実の姉妹でぇ……だぜ?」  
「好きにさせておけ。いつ果てるも知れぬのが兵法者の習い。  
なれば、思い残すことがないようにしておくのもまた、その者たちの好き好きよ」  
「捌(さば)けてるな。オッサンも案外……」  

 * * *  

それから、姉妹がふたりで重ねた夜は、もう数知れない。  
禁断の愛を押し込める理由ももはやなく、  
ふたりはふたりだけの蜜事に、夜毎(よごと)溺れ続けていた。  
初めての恋人に、心のすべてを奪われていた。  
姉妹して、お互いの肉体に夢中だった。  
日常は清楚な佇まいを失わないナコルルも、  
夜はもう、妹の性の虜だ。  
今夜は、仰向けにした裸身を海老のように折らせて、  
天井を向いた秘部の潤いを妹にむさぼられるに任せている。  
リムルルは自分のしている行為のいやらしさに、  
姉の見せる、ふたりしか知らない媚態に、  
胸を突くいとおしさに、夢中だった。  
もし彼女が女でなかったら、姉はとっくにリムルルの子を孕んでいただろう。  
眼前であらわにむさぼられるみずからの薄桃色のあわいに、  
ナコルルの視線も茫洋としている。  
リムルルは我が手で開通した姉の洞(ほら)を、  
三本の指でじゅくじゅくと出し入れを繰り返している。  
もう姉のその場所も、こんなにし慣れている。  
同時にもうひとつの姉のすぼまりを舐めると、  
いまだに姉は驚いた顔と声をあらわす。  

空いた手で濡れた突起物を弾きながら、  
そうして出し入れしているうちに、  
姉の声は絶息に近いものとなり、やがて、  
姉の最高の昂ぶりを表す、間欠泉のごとき熱い汁の迸(ほとばし)りを、  
ぴゅっぴゅっと天に向って女の部分から飛ばしだした。  
自分がいやらしすぎてほんとうにいやだ、と姉がみずから言う  
その状態を、しかしリムルルはどうしても繰り返しさせてしまう。  
可愛らしすぎるから。  
欲望が、果て無く身を突き動かすから……。  
やがて、全身を汗と妹の唾液とみずからの粘液で光らせたまま、  
ナコルルは荒い息でくたっと身を横たえた。  
少し息が整うと、腕を伸ばして妹を呼ぶ。  
リムルルはいつものように自分の股間を姉の顔の前に動かす。  
今度は、妹の番。  
姉もいまや、妹の性器と排泄器官を喜んで舐めしゃぶってくれるのだ。  
合い舐めの行為にすら、従ってくれる。  
すぐに水音と妹の高い声が天井に響きだした。  

今夜は妹の胸に頭を預けながら、  
ナコルルは、激しい行為の余韻に浸っていた。  
「ほんとにいつも夢中ね。リムルルは」  
「……恐いから」  
「恐い?」  
「はい、姉様。幸せが恐いです」  
まるで年下の恋人をあやすように、抱いた姉の髪を指ですきながら、  
リムルルは言葉を続ける。  
「生まれてから一番幸せなのに、その幸せの最中に、  
ああしている夢の中みたいな最中に、どちらかが  
消えてなくなってしまいそうな……なんでか、いつもそんな気が…して……」  
声が揺れた。不吉な自分の言葉が、リムルルの涙腺を  
みずから刺激してしまったようだ。  

ナコルルは涙を指でぬぐってやった。  
「この世が揺れ動いている、こんな時。  
毎日が戦いの日々のいま。確かに、今日は明日のなにごとも約してくれないわ」  
お互いの、いま生きている証しの生身の体温を感じ合いながら、  
姉の言葉は続く。  
「それでも、なにが起きても生きてゆかねばならないのよ。  
誰も皆、幸だけを味わって生きてゆくことはできない。  
この世は、幸と不幸とが互い違いに織られてゆく、一枚の布のようなもの」  
「一枚の布……」  
「ええ。幸がない時も、明日の幸のために、誰かの幸のために、  
力を尽くして生き続けてゆくのが人のさだめ」  
「……でも、いつかねえさまとともに在れなくなるなんて、想像もできない……」  
「いまの幸せを味わいましょう。このぬくもりを。愛しさを。  
せめて、永劫、けして、忘れぬように……」  
リムルルの涙は、姉の体温に暖かく包まれたまま  
やすらかな眠りに落ちゆくまで、絶えることなく続いた。  

ふたりに残された蜜月、残りあと僅(わず)か──