家に巨大な氷の固まりが届いた。  
これは…。  
 
外に放っておいたら氷の有ったところに変な服を着た女の子がへたりこんでた。  
仕方がないんで家に連れ込むとわけの解らない言葉でしゃべりながら刀を振り回しはじめたので、とりあえず漏れの部屋に押し込んで放置。  
静かになってから部屋に入ると泣いていた、涙ながらにしきりに同じ事を言ってくる…こいつ、可愛いじゃねぇか。  
少し汚れていたので服をひん剥いて風呂へ放り込む、死んだ妹を思い出すなぁ…  
少しするとその娘は置いておいたタオルを頭からかぶって出てきた、とりあえず妹の服を着せる、少し大きい。  
飯が一人分しかなかったので漏れは我慢してこの娘にあげると、少しも食べないうちに漏れにすすめる素振りを見せた、やさしい娘だ。  
布団は一枚しかない、仕方がないから床に寝る、するとその娘は掛け布団を漏れに被せて横に入って来た、泣いている、いったいこの娘は誰なんだろう…?  
 
のんきな娘だ、泣きやんだと思ったら漏れをしっかり抱いて静かな寝息を立ててる、警戒心の欠片もない…  
まんじりともせず朝を迎えた、漏れが朝飯の用意をしているとその娘も目を覚ました、まわりを見回してきょとんとしている。  
大きなあくびのあとにため息をつくと、その娘はトテトテと可愛い足音を立てて風呂場へ駆けていった  
どうやら風呂桶に溜まった水で顔を洗っているようだ、今度蛇口の使い方を教えよう。  
飯ができたので並べる、日本食だし食えないものは無いだろう、その娘と向かい合わせに座った。  
箸は使えるようだ、飯を食っているとその娘はしきりに自分を指差して「リムルル、リムルル」と言っている  
漏れはその娘を指差して「リムルル?」と聞くと、にっこり笑ってうなずいた、どうやらこの娘の名前は『リムルル』というらしい。  
それにしても参った、仕事がある、この娘を置いておくわけにはいかない、仕方がないので職場に連れていく事にした。  
漏れの仕事は一応有名な自動車企業のディーラーで営業をやってる、ヒラだ。  
リムルルには外回りに付いてきてもらう事にした、漏れは営業部長に今日回る得意先と、午後にある納車の打ち合せをしてさっさと営業所を出た。  
得意先を回る間に今の言葉を少しづつ教えればいいだろう。  
 
一緒に得意先へ急ぐ途中彼女は電気量販店の前に来ると一目散に店内に走っていってしまった。  
参った、いったい何なんだこのこの娘は、足が異様に早い、すぐに振り切られてしまった。  
幸いまだ時間はたくさんある、普段なら漫画喫茶に行って暇をつぶすのだが・・・。  
漏れは普段の不摂生を恨みつつリムルルを探し回ること数分  
彼女はテレビの売り場に突っ立っていた、そういえば、漏れはまだこの娘にテレビを見せていなかった  
「ガルフォード・・・」  
「え?」  
「ガルフォード!」  
彼女が指差すテレビの画面には、最近話題になっているイギリスのサッカー選手が写っていた。  
こいつを知らないとは・・・まさかとは思うが、この娘はこの国の人間では無いのか?  
異人種を見慣れない人間にとって、その人種の固体は皆同じ顔に見えるものである  
たとえば我々のほとんどが黒人の顔に見分けが付かないように。  
「サポ、オッカイ、ウトゥラ・・・ウチャロヌンヌン・・・」  
彼女は顔を真っ赤にしてこう言った。もしや、この娘は・・・。  
漏れはリムルルの手を引っ張って本屋へすっ飛んでいった。  
語学のコーナーに行くと漏れはアイヌ語辞典を手に取った。  
 
サポ=姉  
オッカイ=男  
ウトゥラ=一緒  
ウチャロヌンヌン=口付け  
 
すべては繋がった様だ…今日からアイヌ語辞典を枕に寝なきゃな。  
 
商談中もリムルルについてあれこれ考えた。  
 
そもそも何であの娘はこの時代にアイヌ言語を使うのか…  
まさかとは思うが、あの娘はまだアイヌが独自社会を築いている時代の人間なのか?  
俄かに信じがたいが、それならば氷漬けと言うのも解る。  
昔読んだ小説に、そんなのがあった気がする  
とりあえず漏れの中ではそう結論付けるより仕方なかった  
これ以上色々考えたらますます混乱する。  
 
 
やっと一つ目の得意先での御用聞きを終えた。  
幸いリムルルは商談中、ずっと取引先のトイレで大人しくしていてくれたので助かった。  
まぁトイレットペーパーをぐるぐるまいて遊んでいたがこれはご愛敬という物だろう。  
得意先回りも午前中は一社のみなので、ボチボチ昼を食うことにした  
リムルルを連れて近くのファーストフードの店に入る。  
まさかアイヌ語辞典にハンバーガーの頼み方の例文など載っていよう筈がない  
漏れは困ってリムルルを見ると、腕を組んで考え事をしていた。  
可愛らしいので眺めていると、リムルルはひょいと天井近くのメニューを指差した…  
 
「ビッグマ〇クだね?」 と一緒にメニューを指差すと彼女は少し照れたように笑って頷いた。  
高いけど可愛いから食わせてやるか…。  
 
頼んだ品を持って席に着くと、リムルルはその大きささに目を白黒させながらも喜んでいるようだった。  
漏れも早々とハンバーガーを頬張る、それを真似してリムルルもはむはむとパクつく、小さい口でよく頑張るものだ…。  
 
その後、リムルルは車に驚いたりパソコン触れて遊んだりと、少しは現代の生活に慣れてもらえたようだ。  
同時に漏れはリムルルが何かしでかさないか心配でハラハラしながら仕事をしたので普段の数倍疲れた。  
夕飯は家で作ろう、スーパーで色々買い込むと家路に着いた。  
疲れたのかリムルルは漏れの背中で寝ている、世話を焼かせるが憎めない娘だ…。  
 
コンコンと耳障りな音を立てて自宅の安アパートの階段を上がる。  
205号室、漏れの部屋だ、鍵を開けて扉を開くとこれもまたギギギと耳障りな音を立てる。  
このアパートには風呂とトイレはある、しかし漏れの部屋にはテレビ兼パソコンと粗末な卓袱台、台所に冷蔵庫があるぐらいだ。  
「ひどい部屋だ」 そう自ら呟くと、漏れはリムルルを静かに畳に寝かせた。  
ふと、部屋の隅に目をやると一昨日までの夜のお供が大挙して雪崩を起こしている  
時代は違うかもしれないが、さすがに幼い女の子にこれを見せるのはまずいだろう  
漏れはそれらの雑誌を新聞紙に包むとサッサと押し入れにたたき込んだ。  
 
一段落ついたところでさっそく夕飯の制作に取り掛かる、アイヌであることがわかった以上昼のような洋食は当分食えないだろう。  
買ってきた鮭をグリルに入れる、炊飯器は設定済みだ、あとは放っとけばいい。  
その間にアイヌ語を少しは覚えなければ…、漏れが辞典をいろいろ捜し回っていると鮭のいい匂いがしてきた。  
匂いに釣られて目を覚ましたのか、リムルルはネコのように伸びをしている。  
平和だ、思えばこうやってまともな食事を作ったのは何ヵ月ぶりだろうか…。  
「ネ、アオカ」  
「ん?」  
不意にリムルルが話し掛けてきた、とっさに日本語で反応するが、話せないのを思い出し後悔する  
漏れはなるべく困った顔をして自分を指差して口の前で手を振る。  
少しリムルルはすねたような顔をしたが、近くにあったコンテとスケッチブックを手に取ると絵を書き始めた。  
その絵は棒人間のような人間が二人、一人の人間は長い紐をもって走っている  
そしてその紐の先にはなんだかモジャモジャした物が付いている。  
もう一人は槍のようなものを持ってその毛玉のようなものを追い掛けている  
「アオカ」  
そういうとリムルルは紐を持った人間の方を指差した。  
「アオナイ」  
今度は後ろの槍を持って追い掛けている人間を指差した。  
どうやらこれはゲームで、漏れは紐を持って走り回らなくてはならないらしい。  
 
乗り気でなさそうな顔をすると、リムルルは漏れに近寄ると腕を抱えてふるふると揺らした。  
いつの時代も子供のおねだりは同じような物だ。  
仕方なく漏れは大きくうなずくとリムルルは小さな声を上げて漏れの腕にギュッとしがみつてきた。  
久々に鼻の下が伸びてしまった、いやはや全く…。  
そろそろ鮭も焼けただろう、遊ぶのはご飯の後にしよう…  
 
晩飯を卓袱台に並べ、ビールを開けようと思ったが、考えてみればこれから風呂に入らなければいけない。  
リムルルは一人で入れるよな…と、横目で彼女を眺めつつ、飯を頬張った。  
リムルルは鮭を普段から食べていたのか、手早く骨を抜いてパクついている、  
漏れは、小骨に四苦八苦しながらどうにか食べている、最近魚を食ってなかったな‥  
「ネ、ネ、イテキ〜(ねえねえ、そんな取り方じゃだめだよ)」  
リムルルの手が不意に鮭の皿に伸びた、どうやら骨を抜いてくれるらしい。  
手早くリムルルは鮭の骨取る、人間はもともとこういうことが出来る物なのだ、不摂生を反省しなければ…  
 
「エ、イェーイ!(どうぞ、やーい。)」  
「えと、ヒオーイオイ…(えと、ありがとう)」  
「イペピルカ?(少し食べていい?)」  
「エ(いいよ)」  
 
通じたようだ、リムルルは漏れの箸をかっぱらって鮭を口に運んだ。  
リムルルから箸を返してもらってさっさと食おう  
……間接キスだがまぁいいか、可愛いし(´∀`)  
 
…飯も食い終わったし、風呂に入るとするか。  
湯がわいた頃合いを見計らってリムルルを風呂場につれていくと服を手早く脱ぎ始めた  
警戒心は無いのだろうか、本当に不思議だ。  
考えてみればこうやって小さな女の子と風呂に入るのは小学生以来だ。  
死んだ妹の背中を流してあげたりしたっけ…。  
 
漏れが考え事をしている隙にリムルルは手拭いを取ってさっと湯槽に飛び込んだ。  
少々憚られたが漏れも前を隠して風呂場に入った  
 
リムルルは無邪気に湯槽に浮かんだヘチマのスポンジと戯れていた。  
「これなにー?」  
「あぁ、それ?スポンジだよ」  
「すぽんじ…?たべられる?」  
「いや…」  
無理と言い終わらない内にリムルルはぱくっとスポンジを口にくわえた。  
「おいおい、汚いぞ…」  
「…げ〜、まずいよこれ」  
やれやれ、現代文化に慣れるのはまだ先みたいだ。  
 
漏れが体を洗い終えてボケーッとしているとリムルルは  
「※※※※※※※※?」  
と湯槽の端に寄ってくれた。  
どうやら一緒に入るように誘っているようだ  
「いいのかい?」  
「※※※※」  
仕方がない、一緒に入るか…いやはや、まいったまいった、ははは。  
狭い湯槽に並んで入る、犯罪だよなぁ…でも、とても幸せだ。  
「※※※※※※※※」  
リムルルは肩を叩いてくれるようだ  
「え?いいのかい?」  
「※※※※!」  
お言葉に甘えて叩いてもらう事にした。  
軽い振動が疲れた体にこ心地よい、やさしい娘だ…  
…まるでお爺さんと孫だ、そう言えばよく職場の仲間にもジジ臭いと言われるな、まいったまいった。  
しばらくすると、リムルルは僕の名を尋ねてきた  
「…あぁ、僕?」  
「※※※※、※※※※※※※※(あなた以外にだれがいるのさ)!」  
そう言うとリムルルは漏れに突っ込みを入れた、やんちゃめ…  
「まぁ、お兄さんとでも呼んでよ」  
「※〜、※※※※※※※※※※※※」  
どうやらお兄ちゃんってガラでもないようだ。  
二人で大笑いしながら風呂を出た。  
脱衣室で体を拭いてやると、「※※※※※※※※(やめてよぅ)!」とほっぺをひっぱたかれてしまった。  
…本当に幸せだ。  
明日は早い、早く休もぅ‥。  
 
ふらふらになってたけど押入れの奥から布団を出してきた  
布団が二つあるのにこのこと一緒に寝るなんて犯罪だろう。  
 
「さて、寝ようか。」  
「$X#¥(ねぇねぇ)」  
リムルルは漏れの腕をつかんで離さない。  
「・・一緒に寝る?」  
リムルルはにっこり笑うと首を縦に振った。  
 
嬉しいけど不本意だけど犯罪だろうけど仕方が無い  
なにせ本人の意思だ、まぁあくまで不本意だけどね。  
「そうだ、歯を磨かなきゃ!」  
「??」  
漏れはリムルルを洗面所に連れて行った、歯ブラシは買い置きしてあるから困らない、リムルルに好きな色を選んでもらう。  
「ん〜・・・&$%#$(どれにしよ・・)」  
青と赤で悩んでたみたいだけど赤に落ち着いたみたいだ。  
「じゃあね、まずはこのチューブをね・・・」  
くわえた・・・・。  
 
「こら!やめなさい、なにやってんの!吸っちゃだめだって!」  
「ゲホ!!うぇ〜・・・ペッペッ、#$*%д#(から〜〜〜)!?」  
リムルルは歯磨き粉を散々口の中に含んでしまったようで顔をしかめながら吐き出してる。  
口の周りが歯磨き粉だらけだ。  
「ほら、ティッシュどうぞ」  
「〇#%%(ありがとう・・・うぅ・・苦いよぅ・・)」  
「どういたしまして」  
さて、コントやってると遅くなるし、さっさと歯を磨いて寝なきゃな。  
 
歯を磨き終わった後、すぐ布団にもぐりこんだ。  
「#$#〜〜〜!!!」  
リムルルもよくわからない声をあげてすぐに布団に突っ込んできた。  
「’&%’#$(おにいちゃ〜ん!!)」  
漏れの背中にしっかりしがみつくリムルル。  
 
ああ、神様、漏れは氏んでもいい・・・・。  
 
 
 
「・・・んん、よく寝た・・・まだ明るくないんだ。」  
きょろきょろと周りを見回してみた、窓からは明け方の薄暗い空が見える。  
「おなか減っちゃった、何か無いかな・・。」  
布団から手を出すと、横にあったちゃぶ台の上を物色してみた。  
「・・・なんにもないや、姉さまがいたら何か作ってくれるのになぁ・・・・・。」  
この季節は本州でも朝は冷え込む、リムルルはふるふると震えるとまた布団に潜り込んだ。  
 
「お兄ちゃんあったか〜い・・・・・・・・・」  
二度寝を決め込もうと思ったリムルルの脳裏に衝撃が走る。  
 
「・・・・・どうしよう・・・・おしっこしたくなっちゃったよぅ・・・・。」  
リムルルは布団から頭だけちょこんと出すと、厠の方を覗いてみた。  
「・・・まっくらだ・・・・・で、でも大丈夫だもんね、リムルル怖くないも〜ん・・・」  
そろり、布団から抜け出すと、真っ暗闇がリムルルを包んだ。  
「・・・・・あ〜ん、コンル〜〜!!」  
不意にダダダ、と外で音がした。  
「ひええええっ!」  
どうやら郵便配達のバイクの音のようだったが、現代生活の短いリムルルは大急ぎで布団に逃げ帰った。  
「・・・どうしよう・・・コンルもいないし・・・・お兄ちゃん、ねぇ、起きてよぉ」  
 
「・・・んん〜〜!!弾幕薄いよ!何やってn・・・・・。」  
「お兄ちゃん、ねぇってば!お兄ちゃん!お兄・・・・ちゃん!ねぇ・・・おにい・・・ちゃ・・・・ん・・・。」  
 
 
 
「・・・・?」  
血が出てる、やられたか、こんな宇宙の端っこで氏ぬとは、やっぱりアOロにも・・・セOラさんさえ・・・・!!??  
 
体が濡れている  
この年になっておねしょか!?  
リムルルに見られたら洒落にならない!早く隠さなくては!!  
 
漏れは電気をつけた・・・・・何かおかしい。  
背中が濡れているのだ、布団を見る、漏れの寝ていたところは乾いている。  
リムルルの布団を引っぺがしてみる。  
「!!あ!!」  
「$&#&’>?{*‘>&!!!!!!!!」  
 
リムルルだった、泣いてる。  
漏れは胸をなでおろすと、リムルルの頭をくしゃくしゃと撫でた。  
「いいんだよ、泣かないで」  
「&#%$*+@・・・・うわ〜ん!!」  
リムルルはそのまま漏れに抱きつく、ぎゅうっと抱きしめてやった。  
 
・・・・さて、ご飯の前に風呂に入らないとな、会社には遅刻しそうだ。  
 
 
                       〜続く〜  
 
 
 

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