「これは要するにですね、遠くの映像をこの箱の中に入っている機械で映してるんです」  
「ふ、ふーん?えっ、でもちょっと待って?うーん・・・・・・」  
「いや、そんなに深く考えなくても・・・写真とか絵が動いてる、それだけなんですよ?」  
「にいさま、レラねえさま、お風呂沸いたよっ?」  
夕食後レラがコウタとテレビを見ながら、目をちかちか頭をぐるぐるさせていると、風呂の  
様子を見に行ったリムルルが元気良く戻ってきた。  
「お風呂・・・」  
レラは初めて見るテレビにすっかりしかめっ面になった顔を直しながら、そういえば、  
肉体を得てから温かいお湯にゆっくり浸かった覚えがないのをふと思い出す。  
温泉も見つけられなかったし、世の中の動きと自然、それからカムイについて調べる毎日  
は忙しく、一息入れる暇もなかった。  
こうやって肉体があり、女性であり誇り高き戦士である以上は、飾らないまでも清潔に、  
女らしく美しくあることが必要だとレラは常々考えている。そうでなくても疲れ切った  
肉体をほぐすのに風呂は最適だろう。  
「レラさん、どうぞ入ってください」  
難しい考えから一転、ほくほくとした湯気を思い浮かべていると、コウタがにこにこ顔で  
先を譲ってきた。  
「何言っているの。家の主を差し置いて、そんな事はできないわ」  
「主ってそんなエライもんじゃ無いですよ。それに俺、まだ風邪で熱っぽくて。明日に  
でも体調が良くなったら入りますから、どーぞどーぞ」  
コウタは随分と腰の低い男なんだな、とレラは思う。  
そこがどうしてもだらしなく、頼りなく感じられてしまう一因でもある気がするが、時代が  
変われば人も変わるものだろう。コウタのあまりに素直すぎるにこやかな顔を見る限りでは、  
それは優しさの裏返しでもあると感じる。  
――男は強く、心優しく。半分は合格・・・リムルルが惹かれるのも分からないでもないわね。  
それに、「れでーふぁーすと」という言葉をどこかで聞いた覚えもある。確かこういう  
状況で、男が女に気を遣う異国の風習を指す言葉だ。  
 
「わかった。お言葉に甘えるわ」  
レラはコタツから身を引き、小さな笑顔で答えた。  
「是非そうしてください」  
コウタもまた、それに笑顔を見せる。  
「それじゃ、簡単に使い方を教えてくれるかしら?蛇口・・・だったわね。あれぐらいは  
分かるのだけど」  
料理の時や日中に部屋を少し動き回って色々覚えたが、やはり現代の機械を自分ひとりで  
使うのはレラにはちょっと気が引けた。  
コンロの火を扱うのでも慣れが必要だったし、テレビもリモコンというものの仕組みも  
概念も、未だに良くわからない。  
「あー、それなら一緒に入ればいいんじゃないですか?リムルルと」  
「リムルルと?」  
予想していなかった台詞に聞き返すと、コウタが返事をするより早く、側にいたリムルルが  
レラの袖をくいくいと引いた。  
「一緒に入ろっ?わたし、ちゃんと全部覚えてるから。ねっ」  
「え・・・い、いいの?」  
「いいって、どうして?」  
「だって、その・・・」  
――そんなの突飛過ぎるわ。物事には順番が・・・  
などとコウタに勘違いされそうな事を言えるわけも無く、レラは言葉を捜す振りで照れ  
隠しをした。  
料理する事。ご飯を食べる事。お喋りする事。今日は何をするにも、リムルルと一緒の  
一日だった。レラにとってそれは夢のような事件の連続であり、昔からの夢が叶った瞬間  
の連続でもある。家族と、その中でもひときわ可愛い妹と、楽しくて愉快な時間を過ごす事。  
それこそが夢だったのだから。  
その夢の中でも、欲深ながらもし機会があるのなら是非やってみたいとレラが思っていた  
のは、リムルルと一緒に昼寝をする事だ。目の前でお互いの寝息が感じられるぐらいに  
近寄って寝てみるのも良いし、膝枕をしてあげて、いつまでもリムルルの頭を撫で続ける  
のも捨て難い。  
どちらにせよ、それはそれは幸せな時間を過ごせるものだろうと確信できる。  
 
しかし今、自分の鼻先にぶら下がっているのはそんな可愛い夢で終わるようなものとは  
違う。何せ、お互いの体を全てさらけ出して、洗いあって、さっき見た限りでは決して  
広くなかった浴槽に入ってあらやだリムルルったらどこ触ってるのちょっと止めなさい  
止めないとお姉ちゃん怒るわよほらほらえいえい相変わらず可愛いんだからもう・・・  
「にいさま、ねえさまが止まっちゃったぁ」  
リムルルが俺を呼んでいる。止まったってどういう事なんだろうと思いつつも、俺は  
テレビでやっていた知能テスト系の番組に悪戦苦闘中で、声には目もくれなかった。  
「タオルでも準備しといたらー?くそっ、解けね・・・」  
「あ、そか。じゃあレラねえさま、考え事終わったらこっち来てね」  
背中越しでしかも考え無しの返事だったがリムルルはそれでも納得したらしく、タオルや  
着替えを洗面所に持って行ったようだった。  
その後何度かレラはリムルルに呼ばれていたようだったが、一向に問題が解けずイラついて  
いた俺は、いつ二人が風呂に入ったかは覚えていない。  
ちなみに問題が解けなかったのは、風邪で頭の調子が悪かったから・・・そういう事にしておく。  
 
・・・・・・  
 
悩み、考え、妄想する事3分、レラは結論に達した。  
――この機を逃すわけには行かないわ。  
テレビの前でうーんと唸っているコウタを無視して洗面所の戸を恐る恐る開くと、リムルル  
が抱えていた空のカゴを床に降ろしているところだった。  
「あ、考え事終わったの?」  
「えぇ、大丈夫。リムルル・・・・・・よろしくね」  
「よろしくって?何かするの?」  
また馬鹿な事を言ってしまった。  
「いえ、何でもないわ」  
慌てて言葉を取り消す。一瞬きょとんとしたリムルルだったがすぐに気を取り直したようで、  
さっそく服に手をかけた。  
「それじゃ入ろ!えーっとね、服はこのカゴに脱いでね。明日洗うから」  
「えぇ、分かったわ」  
 
お世辞にも広いとはいえない洗面所で、リムルルはこちらに背を向けていそいそと、見慣れ  
ない素材で出来た桃色の「洋服」を脱ぎ始めた。その下には肌触りの良さそうな、腰までの  
肌着。それを脱ぐと、さらに胸の辺りだけを包みこんだ変わった形の肌着を着ていた。  
「リムルル、それは・・・何かしら?」  
レラが尋ねると、リムルルは自慢顔で胸を張り、それを見せびらかしてきた。  
「これっ?これね、ぶらじゃーって言うんだよ」  
「ぶら・・・じゃ?」  
「にいさまは、『すぽぶら』って呼べって言ってた。ぶらじゃーは形がちょっと違うの」  
「すぽ、ぶら・・・。まあ名前は良いわ。それ、何の意味があるの?ずいぶん密着している  
ようだけど苦しくない?」  
さらに追求すると、リムルルは何だか恥ずかしそうに頬を指でぽりぽりと掻いた。  
「あのねっ、にいさまがね、これしてるとおっぱいが・・・その、大きくなるって言うから・・・」  
「へぇ、おまじないみたいなものかしらね」  
うーんどうかな、と曖昧な返事をしながら、リムルルはそのすぽぶらとやらを頭から脱いだ。  
血色のいい肌に映える、真珠のようにきれいな桜色の突起が露になる。  
触れれば弾けてしまいそうな2つの乳首の愛らしさに、レラはつい、ほうっと小さなため息  
をついた。  
ただ肝心の、というより論点となっていた胸の大きさはというと・・・。  
リムルルが、レラとは明らかに違う理由でため息を吐く。  
「やっぱりすぐには大きくならないよね・・・」  
洗面台の鏡に自分を映し、リムルルは横を向いて胸を張ってみたり、両手でぎゅーっと  
左右から胸を寄せたりして、ぺったんこの部分を何とか強調させようとしているが、どう  
にも肉が薄くてどちらも失敗に終わっている。  
「膨らんできているんだから、じきにどんどん大きくなるわよ」  
レラは悩める妹を慰めつつ、自分も脱衣を始めた。  
「だけどなぁ・・・ねえさまがわたしぐらいのとき、もう少し大きかったと思うんだ」  
リムルルの若い悩み。本人としては大問題なのだろうが、ただただ可愛いらしいばかりだ。  
 
「まあまあ、お風呂で聞くから。早く入るわよ」  
軽い約束をして、レラは胸を包むさらしを巻き取りにかかる。  
「おっぱいは大きいほう・・・が・・・」  
「うーん、そうねぇ。ふぅっ」  
胸の締め付けから解放されて呼吸が一気に軽くなる。レラは素っ気無い言葉を返しながら  
深呼吸をした。闘いに備えてのさらしは普段は若干苦しいものの、これが無いとやはり動き  
づらいし、取り去ったときの開放感が内心気に入っていたので、着用するのに抵抗は無い。  
――ふぅ・・・今日も一日が終わるわ。  
息だけでなく精神まで開放されて、レラはそんな事を心の中でつぶやきながら下穿きに  
手をかけた。が、そこで一筋の視線が自分に注がれているのに気づく。  
レラは一旦手を止めて、口を開けたままこちらを見つめている視線の主、リムルルに話し  
かけた。  
「リムルル、どうかした?」  
そういえば、さっきまで悩みの打ち明け話をしていたような気がしたのだが。  
「・・・・・・」  
「リムルル、脱がないの?」  
「! は、はい?」  
二度名前を呼ばれて、リムルルは目の前に急に人影が現れたときのようにびくっとした。  
「どうしたの?何か・・・変?」  
レラは少し不安になった。というのもここ何日か身体を清めていなかったから、知らぬ  
うちにどこか汚れていたのかもしれない。そう思って自分の身体をくまなく見回すが、  
特に異常は無いようだった。  
それでもリムルルは相変わらず皿のような目でこっちを見ている。その揺るがない熱い  
視線は、ただ自分の身体の一点、一箇所だけを見つめているようだった。  
だが簡単にたどってみればすぐにたどり着くそこは、何の変哲も無い普段どおりだ。  
――・・・・・・胸を見てるの?  
「胸・・・おかしいところ無いけど。リムルル?」  
「え、うん!何でもない、何でもないよ!早く入ろ!こんな所に裸でいたら風邪ひいちゃう」  
 
レラが胸という言葉を何気なく口にした途端、リムルルは酷くあわてた様子でこちらに  
背を向けた。  
どうやら下穿きを脱ごうとしているらしいが、手元がおぼつかない。顔も赤い。  
――胸、むね・・・ははーん。なるほどね  
リムルルの気持ちがレラには手に取るように読める。背伸びしたがりのリムルルらしいわ、  
とも思う。思うと同時に、リムルルの無駄の無いすらりとした背中を見ていると、悪戯な  
気持ちがふつふつと浮かび上がってくる。  
胸があれぐらいだから、あっちもきっと。  
――ちょっとからかっちゃおうかしら。  
やっとベルトがとれたらしく、レラの企みも知らないリムルルは下穿きを降ろそうとして  
いるところだった。だがレラをちらっとうかがって互いに目があった途端、リムルルは  
お尻をレラに向かって突き出した姿勢のまま、ジーンズを下げる手を止めてしまう。  
「レラねえさまってば、見ないでよぉ」  
あまりにも読み通り思惑通りに事が進んで、レラはリムルルの困り果てた顔を見ながら  
笑いをかみ殺し、大げさに驚いてみせる。  
「あらぁ、ごめんねリムルル。私も脱ぐからね、ほら」  
言うなり、レラはリムルルがしっかりとこちらを見ているところを見計らって、すとんと  
下穿きを落とした。  
「・・・・・・」  
リムルルの目が、見事な点になった。レラの、大人のそこを凝視したまま。  
――あぁ・・・やっぱり可愛すぎる。  
レラは心の中で身震いし、リムルルのお尻をぽんと叩いた。もう少しからかえそうだ。  
「ほらリムルルも早く脱ぎなさい、待ってるんだから。私がお風呂のが使い方わからない  
のは知っているんでしょう?この格好じゃ寒いわ」  
「う・・・・・・う〜っ、もう!脱いだなら先にお風呂場行っててよぉ!すぐ行くから!」  
せかすと、リムルルはぎゅうと両手でレラを風呂場の戸のほうに押しやってきた。  
「はいはい、分かったから押さないで。すぐ来てよね?リムルル」  
「はぁ〜いはい・・・」  
リムルルのしぶしぶ声を背中に浴びながら、レラはガラス戸を閉じひとりくすくすと笑った。  
 
「まったく!ぷんぷん」  
擦りガラスの向こうにいるレラが笑っているような気がして、リムルルは頬を膨らませた。  
だけど、怒れば怒るほど空しい気持ちになる。怒る原因も、むなしさもどれもこれも、この  
複雑な気持ちをしまい込んでいるちっちゃくて頼りない胸と、レラの大きな胸が悪いのだ。  
「ちぇ〜っ」  
リムルルは悔しそうに唇を尖らせながらもう一度鏡の前に立った。そしてさっききれいに  
磨いたばかりの鏡に映る、浮かない顔の下でなかなか芽を出してくれない自分の胸をじーっ  
と眺めてみる。  
でもやっぱり、どう見ても大きくなっていない。  
髪はいつでもこんなに伸びるのに、どうして胸は簡単に大きくならないのか。栄養が行って  
ないんじゃないのか。本当は大きくする方法みたいなのがあって、それを自分は教えられて  
いないままみんなに忘れられているんじゃないか。  
考え過ぎなぐらい考えるたび、自分の顔が情けなく悲しそうになっていく。  
自分でも見ているのが辛い顔。自分でも見ているのが悲しい身体。  
「・・・はぁ。レラねえさまが待ってる」  
どうにもなりそうに無い現実を見つめ続けてさらにむなしくなったリムルルは、ジーンズと  
一緒にショーツを下ろした。しかし。  
「うぅ」  
見たくもないし、見ないようにと努力したつもりだったのだが、それでも股のあたりがイヤ  
でも視界に入ってしまう。  
ここも、やっぱり子供の頃と大して変わらない。レラの、きれいに毛の生えそろったあそこ  
が頭に焼き付いて離れない。  
「はぁ・・・」  
もうひとつ、肩を落としての大きなため息。  
仕方の無いことなのだ。自分を除いた家族は、みんな大人なのだから。そう言い聞かせる。  
でも、こんな目を凝らしてやっと見えるぐらいの、産毛と大して変わらないような申し訳  
程度の陰毛を見られるのはすごく恥ずかしい。むしろこれなら生えてないほうがましだ。  
兄はあんまり見てこない(と思う)からあまり意識しなかったが、やっぱり自分の身体は  
女の人らしさに欠ける。  
 
それなのに、一緒に風呂に入る相手は魅力爆発の身体を持ったレラなのだ。ああもまじ  
まじと視線を受けては耐えられない。お風呂の中で溶けてしまいそうだ。  
どうしたものかとリムルルは少し考え、ひらめく。  
「そうだ!にいさまの真似しちゃえばいいんだよ」  
裸が見えなければ、レラも見てこようとはしないだろう。それならタオルで前を隠して  
しまえばよいのだ。それで、なるべく姉に背を向ける。これなら恥ずかしくないだろう。  
リムルルはいそいそとタオルを取り出して、たらんと腹掛けのようにたらしてみる。  
すると胸から股まで、皮肉にも細い身体のお陰で前面がほとんど覆い隠された。  
――これでいいはずだよ?  
開いた片手にレラの分のタオルを握り締め、よーっしと変な気合混じりでガラス戸を  
ガラガラ音を立てて開いた。  
「へへ、お待たせ」  
「んもう、すっかり冷えちゃったわ・・・あら?リムルル、何を隠してるの? 」  
仕方なさそうにこちらを振り向いて笑ったレラが突然真顔になって聞いてくる。  
リムルルはふん、と顔をそらして言ってやった。  
「だーって。ねえさまがあんまり見てくるんだもん。やだもん、恥ずかしいもん!」  
「それじゃ動きづらいでしょうに。わかったわ、ごめんねリムルル。もう見ないから・・・ね」  
「え、あ・・・あれ・・・本当に?」  
何を言われても取らないつもりでいたのに、やけに素直に謝られてリムルルは肩透かしを  
食らった気持ちで聞き返した。すると、レラはやけにしんみりした表情で頷いた。  
「本当よ。ごめんねリムルル。そうね嫌よね、そんなに見ていたつもりはなかったんだけど」  
それ程キツく怒った覚えは無いのに、レラはずいぶんと消沈してしまっている。  
もしかしたら気にしすぎだったのかな、とリムルルは思い直した。あんまりレラの身体が  
きれいだったせいで、一方的に引け目を感じていただけなのかもしれない。  
リムルルの右手から身体を隠していたタオルが無意識のうちにするりと落ちて、風呂の  
緩いオレンジ色の電灯が、本人が抱くコンプレックスとは裏腹な、ほっそりとした美しい  
少女の身体を照らし出す。  
 
「そ、そんなにしょんぼりしないでよぉ。ほら、もう隠さないよ」  
「ありがとう・・・わかったわ。さあ、身体洗ってあげる。手ぬぐいはこれね?」  
下を向いてしまう位にしなびていたというのに、リムルルが裸体を晒した途端、レラは  
にわかに元気を取り戻してリムルルのタオルを拾い上げながら笑った。  
――もしかしてわたし・・・だ、騙された?  
この展開も全部姉の手の上の話だったのかもしれないなと、リムルルは口元を引きつらせた。  
だがもう、蒸し返しても意味の無いことだ。それにさっきほどじろじろとこちらを見ている  
様子もない。気を取り直して、リムルルも姉の元気に負けじと白い歯を見せつけた。  
「それじゃ、わたしが先にレラねえさまのこと洗ってあげるよ!その方が使い方覚えられて  
いいよね?」  
「それはそうね。じゃ、よろしくお願いするわ」  
うん、とレラが納得したのを見て、リムルルは浴槽のふたを開いた。  
溜まりに溜まっていた湯気がぼわんと広がって、冷たい風呂場の空気を白くしっとりと  
柔らかなものに変えてゆく。  
リムルルの横でそれを見ていたレラが、あらぁと小さく嬉しそうな声を出した。  
「素敵ねぇ」  
「でしょ?とっても気持ちいいんだよ?はいレラねえさま、これに座って」  
リムルルがプラスチックの椅子を差し出すと、レラは意に反して床に直接あぐらをかき、  
どかっとその場に座ってしまった。  
「こっちの方が落ち着くわ。だめかしら?」  
「べ、別にいいよ?」  
後でまねしてみようと心に留めて、浴槽に桶を入れてかき混ぜてみる。完璧な湯加減だ。  
「それじゃ、お湯かけるよ〜」  
桶になみなみと張られたお湯を揺らして、一思いにざばぁ。  
レラの背中に向けて、いつも兄にやっているのと同じようにリムルルは湯を打った。  
「あっ、うぅぅ〜、気持ち良いわ・・・お湯なんて久しぶりだから」  
レラの喉の奥から絞り出された声を聞きながら、二杯目を用意する。  
「じゃ、もう一回ね。それっ」  
「ふぅ・・・あぁ・・・」  
 
ため息と一緒にさらさらと湯が流れ落ちる、姉の背中。  
兄とは全く違うのはもちろん、ナコルルよりも少し丸みを帯びたシルエットを、湯が包み  
込むように落ちてゆくたび、レラは心の底から気持ちよさそうな吐息を漏らす。  
あれだけの筋力を持つ戦士の身体はなりを潜め、今目の前にあるのは、今まで見たどんな  
女性よりも強く「女」を感じさせるレラの豊かな肉体だった。  
だが素晴らしいのは肉体だけに止まらない。水しぶきを受けて濡れた後れ毛を整える仕草や、  
肩にかかった湯を手で撫で、導き、全身に行き渡らせようとする仕草。  
きっとリムルルが真似をしたところで何でもないただの「動作」でしかないそれらさえ、  
レラの魔力にかかれば女性らしさをこれでもかと引き立たせる魅惑のスパイスになる。  
「きれい・・・ううん。うつくしい、だね」  
レラには聞こえない声で、リムルルは同じ女であるにもかかわらず、姉の艶姿に見惚れ  
ながらふとつぶやいた。  
この身体を。憧れにも近い、理想の女性をこれから自分は洗うのだ。そう思うとすごく  
嬉しいと同時に、緊張と不思議な高揚感で胸が高鳴る。  
「あぁ・・・いいお湯だわ。ありがとうリムルル」  
「う、ううん。良かった。じゃあ石けんで洗ってあげるね」  
ふいにお礼を言われ、ついにこの時が来たぞとただでさえ高鳴っていた胸が一段と喜びと  
緊張に弾んだ。  
「これで洗うの?」  
レラは肌から水を滴らせながら、リムルルの手に掴まれた、その手の平二つ分ぐらいの  
スポンジを、物珍しそうに眺めている。  
「そうだよ。これにね、この石けんをいーっぱい付けるの。それでこう、もしゃもしゃ・・・」  
「すごい泡、それにいい香りね。リムルルからしたのは、これの匂いだったのね」  
液状のボディソープをこれでもかと染込ませたスポンジから揉むほどにぶくぶくと生まれる  
真っ白な泡に、レラは子供のように見とれ、広がる石鹸の香りを楽しんでいる。  
自分もそうだったようにレラも石鹸が気に入ったようで、小さな姉との共通点を見つけて  
リムルルは嬉しくなった。  
 
「これで、身体をごしごしってするんだ。それじゃ、また背中からやるよ?」  
「うん、お願い」  
ごしゅ、ごしゅ。  
細かな泡が潰れては生まれを繰り返す音を発しながら、レラの背中を白く飾ってゆく。  
兄より小さい分磨きやすくてらくちんだ。しかし大きさはもとより、男の人と女の人と  
では肌の感触まで全然違うのだな、とリムルルはしみじみ実感した。兄が背中を洗って  
くれる時によく「リムルルは肌すべすべで気持ちいいなぁ」と言っているのを思い出す。  
「どう?」  
洗いながら具合を聞くと、レラは丸めた背中を伸ばし、また元に戻した。  
「うん。これは素敵な・・・肌触りね。ふぅ、いい気持ち・・・!」  
だいぶ声がとろけている。ずいぶんとお気に召したようだ。やっぱり趣味というか好みが  
自分と合っているなぁと、リムルルはこんな事にまで姉妹の絆を感じてはしゃいだ。  
「でしょ?これ、わたしも大好きなんだ!よし、背中おしまい!お尻も洗うね?」  
姉の背中のキャンバスをすっかり真っ白に塗りつぶしたリムルルは、腰のくびれとは  
対照的な、肉付きの良いふっくらとしたお尻の前にしゃがみ込んだ。  
「ちょ、おしりって?」  
「大丈夫だよ。ごしごし〜」  
レラの慌てぶりも、はしゃぐ心には届かない。  
リムルルはそのまま鼻歌混じりでお尻にスポンジを傾けた。  
「あ・・・ちょ!んんっ!」  
途端、レラは身をよじり、閉じられた口から苦しそうな声を上げた。  
姉の突拍子も無い変化にやっと気づいて、、リムルルは力加減を間違えたのかとびくっと  
して手を止める。  
「だ、大丈夫?痛かった?おでき?」  
心配して背中の後ろからレラの顔を覗き込むと、レラは少しだけ赤くなった横顔で笑い、  
はぁっと息をついて首を横に振った。  
「大丈夫。おできなんかじゃないわ・・・ふふ、くすぐったかっただけよ」  
それを聞いて、なんだぁとリムルルも笑う。  
「びっくりしちゃったよ。ちょっとだから我慢して、ね?」  
「うん・・・・・・」  
 
もうくすぐったくないよう、リムルルは少し強めにこしこしと、レラの尻を左から右へと  
擦り上げる。  
「今度は平気でしょ?」  
「んっ、ん・・・!」  
たっぷりとした肉感の向こうに、強靭な筋肉。そのお陰でレラの尻はふくよかながら弛み  
を微塵も見せず、桃のようにきゅっと引き締まっている。  
曲面を磨くリムルルの手の動きに合わせ、レラは背中を磨いていたときよりもさらに悦の  
混じった小さなうめきを発しながら、時折肩をひくん、ひくんと動かした。特に割れ目の  
辺りをなぞったときなどは、かなり反応が顕著なように見える。  
ちゃんとくすぐったく無いように洗っているつもりなのに、それでもこの反応だ。レラ  
ねえさまは随分と敏感なんだなぁと、リムルルはまだ泡でたっぷりのスポンジにボディ  
ソープを余計に染み込ませながら思った。  
「ねぇ、リムルル?」  
ボディソープのポンプをかしかしと押しているリムルルを、レラが顔だけ振り向いて呼ぶ。  
「なあに?」  
「後ろは・・・もういいんじゃないかしら」  
やけに緩んだ声でレラが言う。声だけでなく、湯気の白に紛れた黒い瞳から放たれている  
視線も緩く、甘く、切ない。  
その瞳の輝きにリムルルは何だか胸が熱く焼かれる心地がして、一瞬言葉を失いかけた。  
「そ、そう。後ろはね、今終わったとこなんだよ?それでねっ、それで、次は、次は――」  
前も洗うよ。  
どうも気恥ずかしくて言い出せずにいると、レラがあぐらを崩してこちらを向いた。  
「こっちも洗ってくれる・・・わよね?」  
白い湯気を桃色に変える、上気した肌。まん丸い胸。くびれた腰。引き締まったおなか。  
そして、崩れた脚の間で湯を滴らせ輝いている、黒い茂み。  
憧れの本物の女体が、リムルルの心を、そして言葉をも奪い去った。  
スポンジが、つるりと手から滑り落ちる。ぱふんと床に跳ねて、泡を撒き散らす。  
鷲づかみにされたままに高鳴る心の真ん中で、リムルルは姉の裸体を見つめながら思う。  
いつかはこうありたい。レラのように美しく、女らしく、格好よく。  
でも、今すぐは無理だ。すぐには大きくなれない。  
――それなら、ずっと見ていたいな・・・・・・  
 
「見ているだけでいいの?リムルル」  
誘惑の溶け込んだ澄ました笑みに、心を見透かした、何かを試すような言葉。  
すでに熱く焼き抜かれたリムルルの心がどくんとさらに高鳴って、ぱちんと弾けた。  
落ちたスポンジを差し出され、リムルルは静かにそれを受け取る。  
そしてそのスポンジをもう一度良く泡立て、泡かスポンジかどっちを持っているか分から  
ないぐらいにして、  
「じゃ、じゃあ・・・洗うよっ?洗う・・・ょ」  
一応伝えるだけ伝え、リムルルはそっとスポンジを乳房に寄せた。  
ぷにょ。  
「うぁ・・・」  
お尻とは全然別物の柔らかさが、スポンジの僅かな圧力にさえ形を変え、受け止める。  
乳首を中心にして円を描くようにスポンジを滑らすと、たっぷりの泡がどんどんレラの  
胸の上に敷き詰められていく。  
――大きくて、柔らかくて・・・まんまるだ。  
自分の胸は、ぷくっとでっぱった乳輪と乳首が、ちょっとだけ膨らんだ胸の上で突き出て  
いるだけ、言ってしまえばお鍋のふたのようだ。  
それに比べてどうだろう。魅力だらけのレラの胸は丸いお椀を被せたように立派に膨らんで  
いるし、しゃんと突き出た乳首も格好いい。  
「いいなぁ・・・」  
リムルルは羨ましくて、レラの乳首の先に泡まみれの指を突き出して軽くちょんと押した。  
「あっ・・・!」  
上ずる声を出してレラがあごを引く。同時に、触れられた乳首がじわっと少しだけ形を  
変えたように見えた。  
気のせいで片づけてしまえるぐらい僅かな、しかし確かな姉の挙動の変化。  
それをリムルルが見逃すはずが無い。憧れの身体、姉の身体に起こる全てを。  
「・・・・・・」  
「・・・・・・」  
不思議そうな顔で姉の顔を見つめる妹と、恥じらいに唇を噛み、瞳を横にそらした姉。  
二人の間に、小さな沈黙。  
 
「・・・・・・」  
「あの・・・さ」  
湯気に囲まれた静寂を先に破ったのはリムルルだった。  
「あのさ、レラねえさまもここ、あの、おっぱいの先・・・触ると、ヘンな感じするの?」  
恥ずかしくて兄には聞けない、だけど常々疑問に思っていた事だった。  
「なっ・・・そんな・・・」  
「するの?しないの?」  
あまりに直線的過ぎる質問に一瞬面食らったような顔をしたレラだったが、やがて頬を  
赤らめ、観念したように笑いながら頷いた。  
「・・・ふふ。えぇ、するわ」  
それを聞いて、リムルルはここぞともう一つ聞いてみる。  
「・・・それで、さきっぽ硬くなったりする?」  
二つ目の質問を受けたレラの表情からは羞恥の色は薄れ、妖しさが戻りつつあった。  
小さく突き出した桃色の舌先で上唇をちゅるりと湿らし、少し声を落として言う。  
「試してみる?」  
「・・・い、いいの?」  
返事の代わりにリムルルの顔を挑発的な目で見ながら、レラは少しだけ胸を突き出した。  
発されたサインに、リムルルはスポンジを放り出して両手の泡を指先に集め、自分が時々  
兄にされて何となく気持ち良い方法を思い出しながら、優しく少し遠慮がちに、レラの  
左右の乳輪をくるくると両の人差し指で撫でくった。  
「ふぁ・・・ん・・・そぅ・・・リムルルぅ、あっ」  
円を描く指の動きに合わせて途切れ途切れにレラが喘ぎ、すぐに乳首がむくりとその存在を  
示すように立ち上がる。  
目前に陣取り、真剣な顔でじいっと観察していたリムルルが、指を動かしながら小さな  
歓声を上げた。  
「うわぁ、すごい、むくむくって・・・。良かった。わたしだけじゃないんだぁ」  
「んっ・・・わたしだけ、ってそうよね。ナコルルは何も教えてくれないわよ・・・ね。んっ・・・  
あの娘に・・・んんっ、限って・・・!」  
 
小指の先ぐらいになった乳首をしげしげと眺めながら指を動かし続けるリムルルに、レラは  
半ば呆れ顔で言いながら、手をそっとリムルルの胸へと伸ばし、ぷくりと膨らんだその先に  
触れた。  
「んきゃ?」  
ただそれだけ、急に触られただけだというのに、ぴりっと胸から電気が走る。  
リムルルはおかしな悲鳴を上げ、レラの乳首から指を離してしまった。  
「ね、ねえさま、まだわたしの番じゃない・・・よぉ」  
「いいのよ。私に・・・お姉ちゃんに任せて」  
わざと自分の呼び方を「お姉ちゃん」に切り替えてレラはじりじりとリムルルに迫る。  
何だかこっちの方が、ずっとリムルルに近しいような気分がするのだ。  
そんな思惑をよそにリムルルは、シゥルゥのように四つんばいになった姉に見つめられ、  
にじり寄られ、尻餅をついた。  
そして迫られるがままに、湯船の壁に背中を預けてしまった。  
「リムルル・・・教えてあげる」  
逃げ場を絶たれ、甘く輝くレラの瞳に映されたリムルルは不安に駆られた。  
「お、教える・・・って、何を?」  
「ナコルルが教えてくれなかったこと。女にとって大事な・・・・・・とってもいいことよ」  
 

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