「リムルル・・・教えてあげる」  
逃げ場を絶たれ、甘く輝くレラの瞳に映されたリムルルは不安に駆られた。  
「お、教える・・・って、何を?」  
「ナコルルが教えてくれなかったこと。女にとって大事な・・・・・・とってもいいことよ」  
妖しく笑って、レラはリムルルの胸に触れていた指を離し、自分の口元に近づけそのまま  
ぱくりと含んだ。  
「んっ、んちゅ、んん・・・ちゅぱ」  
そして粘着質の音を立て大事そうに、愛しそうに自分の指をしゃぶり始めた。  
「・・・・・・!?」  
突然始まった姉の意味不明の行為に、リムルルは唖然とした。  
指をしゃぶるなんて、ご飯が指についた時と怪我をしたときぐらいで、あとは赤ちゃんの  
する事だ。なのに、なのに――  
――やだ、何で?すごく・・・いやらしいよ・・・どきどきするよぉ  
込み上げる鼓動と疑問で目を白黒させていると、レラはゆっくりと、唾液まみれになった  
指を口の中から抜き出した。  
「リムルル・・・」  
「ねえさま?ゆ、ゆび・・・」  
つぅっと、透明な唾液が指と口の間を伝い、たわみ、すぐにぷつりと切れ落ちて――  
「ひゃ、あ!」  
落ちたと同時に、リムルルは胸の先にぬるりとした感触を覚えて身を固くした。  
見れば、さっきまでレラの口の中に入っていた指が、自分の乳首をこねくり回している  
ではないか。  
「こうして、弄るのよ」  
「ふぁ、やだよ・・・んっ、やめて・・・あっ、うっ・・・な、なにこれぇ」  
リムルルはレラの手を掴んで止めようとしたが、乳輪の上を踊るように優しく撫ぜるような、  
桃色の先端をさらに意識させるその巧みな指の動きに翻弄され、掴むだけで終わってしまう。  
その様子を見たレラがもう片方の手でリムルルの顎を引き、自分の顔の前へと誘い目と目を  
通わせた。リムルルのくりんとした大きな眼は、既にとろんと半開きになっている。  
 
「どう・・・石鹸よりぬるぬるでしょう・・・何か感じない?」  
「ふぁ、あ・・・んんっ、ぬるぬるするぅ・・・変、へんだよぉ」  
「変?どう変なの」  
さらに一押しとばかりに、レラはリムルルの乳首の先をぴんと軽く弾いた。  
「あぁっ!あのね・・・ぬるっとして・・・だけど、その後にぴりぴりぃって・・・あっ、あ・・・」  
「そうよね、見てごらん?こんなに硬くして。もうピンピンよ・・・ほら、ほらどうなの?」  
そう指摘されてリムルルは、自分の乳首が姉と同じく高々と隆起しているのに気づく。  
「あぁ、うぁ・・・?うぅ、こんなに先っぽ・・・とがって・・・レラねえさまみたい・・・だよぉ」  
「そうね、ほら、こうしたら・・・もっと大きくなるかしら?」  
今度はリムルルが見ている前で乳首を摘まみ、くりくりと優しく捻り上げてゆく。  
「あぁっ、あっ・・・あ!」  
それを痛みと捉える二歩手前ぐらいの少し強い刺激が胸に走って、リムルルは目をつむり、  
声を大きくした。咲き始めた二人を隠すように、風呂の湯気がリムルルの息に揺れる。  
「どんどん・・・ぴりぴりが・・・うっ、さきっぽが・・・ぷくって・・・うぅ」  
「どうリムルル?こんどは・・・こう」  
「あぁっ、あっあっ、だ・・・だめぇ!おっぱいが・・・どんどん、どんどん〜っ」  
次々と、しかも様々な方向から送り込まれる刺激にリムルルは夢中になって、初めて自分の  
秘部に触れたあの日と同じように、それが何なのかを次第に悟り始めていた。  
「さきっぽが、おっぱいの、さ・・・き・・・が」  
「どうしたの?聞かせて?」  
「あ・・・あ・・・・・・!」  
一時の間を置いて、リムルルは悪びれる様子も無く正直に告げた。  
「おっぱい、これ・・・きもち、いいの・・・きもちいいのぉ!」  
「うん、そういう事。よく言えたわね・・・ご褒美よ」  
――きっと初めてなのにやっぱり感じやすいのね。似ちゃったのかしら、ねぇナコルル?  
レラは、今も眠り続けるもう一人の自分に問いかけながら満足げに髪をかき上げ、おもむろ  
にリムルルの右の胸・・・まだ何もされていないのに、すぐ横で行われていたことを見せつけ  
られて物欲しげにそそり立った乳首を口に含み、ちうっと音を立てて吸った。  
 
「ひゃあ!あんっ!レラ、レラねえさまぁ!何っ、そ、そんな!」  
途端、リムルルがレラの頭を両手で押さえつけて泣きそうな声を上げた。  
しかしレラの耳には愛らしい小鳥のさえずりにしか聞こえない。  
「んっ、んっ、んちゅ・・・ふふっ、こっちがさびしそうだったからね。はむ・・・」  
「すっ・・・ちゃ!すったら・・・だめ、だめぇ、だっ・・・あふっ・・・め、うあ、あぁ・・・」  
「そう・・・強すぎた?それならこんなごほうびは?」  
だめと言われて律儀にレラは口を離したが、何かを予告してすぐにもう一度吸い付いた。  
「ふあぁぁん!やぁ、やはぁっ・・・あぁ・・・?」  
髪を掴んで抵抗しかけたリムルルの両手から、みるみる力が抜けてゆく。  
レラは今度は吸い付くだけではなく、口の中で舌を使ってリムルルの乳首を舌で転がし  
始めたのだ。  
「う、ふぁ・・・や、やぁ・・・っつ!ひぐ・・・」  
「んんっ、ん・・・るろ、ちゅ、ちゅ・・・」  
レラの口の中に消えたリムルルの乳首は、柔らかくて熱いぬめりに囲まれていた。  
右かと思えば左、根元かと思えば先。さっきよりも優しくて先の読めない舌の動きに、  
無防備で若い神経は身体の主に素直に快感を送り続け、その度にリムルルはぴくぴくと  
白い肩を震わせた。  
「ふぁ!あ・・・いぃ・・・の・・・さ、先っぽが・・・まだ!もっとぉ、ああぁ、あ!」  
隠れて見えない自分の乳首がまだ大きくなっているような錯覚を覚えるぐらいの快感。  
もちろんレラはもう片方の乳首を指で弄り続けるのを忘れない。両の胸からの攻めに  
なす術もなく喘ぎ続けるリムルルの額には、いつしか汗が滲み始めた。  
「んふ・・・すっかり気持ちよくなったみたいね」  
「はぁ・・・は、さきっぽ・・・きもち、い・・・、んっ、ぬるぬる・・・じんじんするのぉ!」  
レラの言葉どおりだった。  
攻められて、気持ちよくさせられ続けて、乳首全体をぬるぬるにされて。  
初体験の愛撫を受け続けるリムルルの口からは喘ぎと悦び、そして「もっと、もっと」と  
無垢さ故に際限を知らない少女の快楽を求める声だけが発されていた。  
 
「あっ、きもちぃ、きもち・・・いぃ・・・・・・それ、だめぇ!あっ・・・・・・はぁ〜、はああ」  
ただ乳首をしゃぶり指で転がしているだけとは到底思えない、巧妙に計算されつくしたと  
しか考えられない緩急を持った快感の波に、リムルルは足の指先さえひくひくと動かし  
息を荒げながら、嬉しそうに自分の胸を弄り続けているレラをぼんやりと眺めていた。  
複雑にいやらしく動く舌は今もリムルルの乳首に絡まっては解けを繰り返し、黒い瞳は  
その舌の技や指の動きに合わせるようにして、リムルルの感じている様を常にしっかり  
と観察していた。  
顔の下では、泡にまみれた素晴らしい手触りだったあの憧れの胸が、床のほうを向いて  
レラの動きに合わせふるふると揺れている。そして泡に隠れきっていないその先端は、  
リムルルの手によって硬くそそり立ったままのレラの乳首は、何かを健気に待ち続けていた。  
そうだ、と、リムルルはすっかり忘れていた事を思い出した。  
――自分ばかりじゃ、ずるいよ。  
「レラねえさま・・・ダメ」  
リムルルは背中を預けていた湯船に浮かんでいた桶に片手を伸ばすと、レラの胸にばしゃり  
とお湯をぶっかけた。  
「わぷっ!?」  
背の低いリムルルの胸元に顔を寄せていたレラは、突然胸から飛び散った水を顔面に食ら  
って身を反らしてしまった。  
被った水で泡が流れ落ち、つやつやとした魅惑の乳房が再び姿を表したのを見て、リムルル  
はレラの隙に乗じてふらふらとその胸めがけて倒れこむ。  
「ねえさまぁ・・・」  
一瞬で体勢が逆転した。背中を入り口のガラス戸に預けたレラの乳房にリムルルはいつも  
兄の顔にしているように頬をすり寄せ、石鹸の香りと柔乳の弾力を楽しみながら、胸にちゅ、  
ちゅと小さな口付けを降らせた。  
唐突な攻守の流れの変化と、リムルルのむずむずするぐらい初々しい愛撫に、レラは文字  
通り泡を喰った。  
「あっ、リムルル・・・ちょ、ちょっと!」  
戸惑いながらも、レラはリムルルが自分の左右の胸を「大好き」で埋め尽くすのをただ  
どきどきしながら眺めている。  
 
――私・・・期待してる!リムルルがどうしてくれるのか!色々教えるはずだったのに・・・!  
そしてついに、柔らかな胸に短い口付けを繰り返していたリムルルの唇が、痛いぐらいに  
張り詰めたレラの頂に優しく触れた。  
「あ、うぁ!リムルルぅ・・・!」  
遠慮がちな、ほんのちょっとの接触にもレラは過剰なまでにびくんと肩を弾ませ、床に  
爪を立てた。リムルルがうっとりと微笑む。  
「やっぱり、一緒なんだ・・・レラねえさまもおっぱい触って気持ちいいから、ここ・・・  
こんなになったんだよね?さっきからずっと、かちかちのままで・・・ごめんね」  
「は、いやっ・・・あっ!ああ・・・ああぁ」  
鳥が餌をゆっくりとついばむ様に、乳首に触ったり離れたりを繰り返すリムルルの唇。  
そこからか漏れた熱い息もまた唇の感触と共に敏感な突起をくすぐり、返事をする事  
さえも許さないぐらいにレラの気持ちを昂ぶらせ、極限にまで焦らしてゆく。  
――あぁ、リムルルが、リムルルが!私の胸を・・・おっぱいを弄って、口付けて、息を  
吹きかけて・・・!  
「あぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ!」  
「もっと、きもちくなって・・・レラねえさま・・・」  
ちゅる。  
リムルルの唇の間にレラの乳首が静かに沈み、その奥で舌の生温かいぬめりが先端と触れた  
瞬間だった。  
「んっ、あう、ッ・・・・・・く!!!」  
レラはびくっ、びくっ、と大きく肩を揺らし、足の先まで突っ張って、声にならない絶叫を  
上げた。軽く達してしまったのである。  
「ろうしたのぉ?」  
リムルルは乳首を口に半分含んだまま、顎をのけ反らせて身体を強ばらせたレラの顔を  
見やる。  
喋ったときにまたも先端をリムルルの舌に突かれて、レラはもう一度肩を跳ねさせた。  
息を荒げて苦しそうに、まだ身体の中に残っているらしい何かの刺激に眉をひくひくと  
寄せながら、真っ赤な顔に引きつった笑みを浮かべる。  
 
「ぁ、ふ、ふふ・・・リムルルが、はぁ、はぁ・・・気持ちよすぎてねっ・・・お姉ちゃん、  
ちょっとだけ・・・爆発しちゃったの。はぁ、ふぅ〜」  
「ばふはふ?」  
――うあ・・・咥えたまましゃべるなんて!反則よぉ・・・・・・あ、あぁ、気持ち・・・いぃ!  
「んんっ、そ、そうっ・・・気持ちいいが一杯になるとね、頭がぼうっとして、そこにばちばち  
って、つばぜり合いの・・・わかる?その、火花が飛んだみたいになるのよ。気持ちよすぎて  
何も考えられなくなって・・・今みたいに・・・震えちゃうの。止まらないの・・・よ・・・ッ!うぅ!」  
リムルルに果てさせられた。  
未熟な妹に。あんな少しだけしか触れられてないのに。  
思い返すだけで、レラは耐え難い羞恥と狂いそうなぐらいに幸せな現実に呑まれ、余韻など  
といった生やさしい物では無い、小さく打ち寄せ続ける波に身体をいつまでもくねらせた。  
「あう、うぅっ、ぅっ・・・んん!ふぁ、はあ!あっ・・・ッ!・・・うぅ!」  
リムルルには、途切れ途切れに呻き自分の身体の下で小さく跳ねるレラはいやらしく、  
とても美しく見えた。でも、これではまだまだ足らないのだと感じる。  
孤独だった姉に対する慰めと言ったら偉そうだが、とにかく今は自分の手で、誰よりも  
気持ち良くなって欲しかった。  
「レラねえさま・・・もっとしてあげるね。だからもっときもちくなって・・・あむっ」  
姉がしていたように、じっくりと蕩ける視線をお互い絡ませながら、リムルルは赤子の  
ように再びレラの乳にしゃぶりついた。  
「リムルルっ・・・ひゃ、あっ!あっ!ああっ!」  
「んくっ、んっ・・・んっ・・・んっ・・・ぷぁ。ちゅる、れろ・・・るろ・・・んふっ。んっ、んっ・・・」  
乳輪まですっぽり覆い隠すぐらいにまで、胸に唇をぎゅうっと吸い付けて敏感な部分  
全体を口の中で刺激しては、今度は口を離して猫のようにちろちろと小さな舌で乳首を  
転がす。そしてまた、頃合を見てたっぷりと含む。  
そしてこれまた姉の手を真似た動きで、口にしていない方の乳首を留守にすることも無い。  
レラの胸を揉みしだき、乳首を指で摘み、転がし、擦ったりもしてみた。  
「あっ、そ、そうよ・・・うっ、吸ってもっとぉ・・・上手ぅ、はあ、あっ、し、舌も・・・!  
舌も使っ・・・あ・・・あぁっ、そこっ、そこぉ!いい、リムっ・・・リムルル・・・!」  
 
たどたどしいながらも時に緩く、時に激しいリムルルの心の篭った絶妙の愛撫にレラは  
涙さえ浮かべ、ただ身を委ねていた。  
胸を強く吸われては背筋を駆け上がるダイレクトな刺激に声を荒げ腰を浮かせ、舌で乳首  
を弾かれては、胸からほとばしる電気に息を詰まらせる。  
そして、小さな両手で乳房を優しくこねながら一心不乱に胸をしゃぶるリムルルを見ている  
うちに、レラは心の奥深くにある母性を強く突き動かされるようになっていた。  
自分もそうだが、リムルルには母親がいなかった。母の愛に飢えているのはどっちも一緒  
だろう。それなら。  
――リムルル、好きなだけ吸っていいの。今だけは・・・私がお母さんだと思って。  
興奮に耳まで赤くしながら、レラはリムルルの髪をゆっくりと手ぐしですいた。  
柔らかく茶色がかった、癖のある髪。赤ちゃんみたいに、可愛い髪。  
「リムルル・・・もっと、もっと吸って!お姉ちゃんのおっぱい・・・気持ちよくして!」  
「んんっ、ちゅ・・・うん、ねえはまぁ・・・れろっ、もっろ・・・したげうね、じゅるるっ」  
「あぁ、うあっ、あっ・・・あっ!リムルルっ!そんな、そんなにっ、したら・・・ぁ」  
リムルルもまた、自分の送り込む快感に身悶え続けるレラに頭を撫でられるたび、何だか  
背が縮まっていくような感覚がしていた。  
小さくなって、懐にすっぽりと包まれて、優しく頭をよしよしされながら、眠たげにちう  
ちうと音を立ててお乳を吸っている赤ちゃんの気分。  
母親の事なんて全然知らないけれど、こんな風に温かくて良い匂いがするんだろう。  
お乳が出るはずも無いレラの乳首が、ちょっとだけ甘く感じられた。  
「ちゅっ・・・ちゅっ。んはぁ、はぁ・・・レラねえさまぁ」  
リムルルは口を離して顔を上げた。  
「ふあぁぁ・・・!はぁ、はぁ・・・リムルル・・・・・・ぅ」  
熱い輝きを確実に増しつつあるレラの瞳とリムルルの瞳が結ばれる。  
「大好き・・・レラねえさま」  
「リムルル・・・」  
 
目指す頂まであと少しというところだったレラは、お預けを食らったようなものだった。  
そのために一瞬面食らったが、リムルルの唾液に濡れた口から出た言葉を聞いて、快感に  
まみれるばかりとなっていた心をきゅんとさせた。  
――やっぱり、可愛すぎるっ。  
「ふふ・・・リムルル、ありがとう」  
「うん。・・・はもっ・・・んちゅ、んちゅ・・・じゅううっ」  
「うあっ、はっ、リム・・・ルルぅ?!」  
小さなインターバルに用意されていた妹の可愛さに緊張を緩めたところを、その妹に  
タイミングよく、しかもしたたかに乳首を攻められて、レラは再び高い所へと一気に  
押しやられた。  
「んくっ、ちゅうっ、くちゅちゅっ・・・」  
「ああぁ!そんなっダメっ!急に・・・あっ!くるっ、来ちゃう・・・からっ!あぁん!」  
背中を貫く閃光の眩しさと快感に、意思とは関係なく顔が歪み、脚の指先まで緊張が  
走り、汗が次から次へと噴き出す。  
もはや、じわじわと性感を味わうような段階ではない。  
レラは口から垂れかけているよだれさえ気にせず、叫ぶ。  
「くあっ、あっ・・・あぁぁ!リムルルぅ、そっ、そう・・・うんっ!来るうッ!」  
「んっ・・・・・・ちゅっ、ふぅん、ちゅっ、れろ・・・ちゅぱ・・・じるっ」  
「あぁ!あっ!あ、くっ、来るのっ、おねえちゃん来ちゃう!来る、うっ・・・ッ」  
「ちゅうっ、ちゅるっ、るろっ・・・ねえはま・・・ちゅううっ!」  
リムルルに思い切り吸い付かれ、理性も意識も吸い取られ、世界が白く濃い湯気に消えた。  
「リムル・・・もうっ、おねっ、もうっ、もっ・・・あ・・・ッ、くッ、く・・・る・・・・・・ッ!!」  
がく、がく、がくがくっ。  
レラは身体を「く」の字に曲げ、胸元にあるリムルルの頭を掴み、自分のおでこを擦り  
つけるようにしながら、大きな痙攣を間を置きながら繰り返した。  
「・・・っ、うっ・・・ひッ・・・・・・ッ・・・!」  
白く、深く、どこまでも眩しい絶頂。  
今度こそ余韻など一生やって来そうにないぐらいに、体中余すところなく快感に満ち溢れ  
ている。  
 
いつまでも続く絶頂にひくひくと身体を揺らしているレラの下で、リムルルもまた、姉が  
再び「爆発」したのを感じ取った。  
――ねえさま、また・・・気持ちよくなりすぎちゃったみたい。ふふ・・・やった  
おかしな達成感にふふっと笑ったリムルルは、頭を支えているレラの手をそっと払うと、  
焦点が合わないままの姉の顔に、ちゅっ、と濡れたキスをした。  
「きもちかった?」  
口から煙を吐くような、天井に向かって斜めを向いたままのレラは何も答えなかったが、  
はぁ、はぁと苦しそうに震える合間に少しだけ頬を緩ませた。そして、たらりと下がって  
いた腕をリムルルに伸ばし、細い身体を引き寄せる。  
「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・」  
裸のまま抱きしめあうレラの呼吸が、耳からだけでなく寄り添った身体の全て、いたる所  
から感じられる。  
レラの背中に泡の手触りを覚えて、リムルルはそういえばお風呂に入るために風呂場へ  
来たんだという事を思い出したが、今はどうでもいいし、こうして抱き合っているだけで  
十分に温かだった。  
「ねえさま・・・熱いよ」  
「ふぅ、ふぅ・・・リムルルも・・・熱いわね」  
「ねえさま、気持ち良さそうだったよ。今もだけど、すごく・・・あの、いろっぽいよ」  
「リムルルったら・・・」  
胸に埋もれるリムルルのおでこに、レラも唇を寄せた。  
息も落ち着いて、やっと余韻らしい余韻がやってくる。もやもやとした掴みどころの無い  
快感が肢体を余すところ無く包み込んで、あらためて行為の激しさを物語っている。  
冷える事を忘れた身体のまま、湯気を眺めていたレラは脈絡無しに思う。  
――リムルルと、してしまった。  
それは、我に返ったと言っても良かったのかもしれない。  
風呂に入る前に、少し淫らな妄想をした事は覚えている。変に意気込んで風呂の扉を開いた  
のも記憶している。かといってそれは妄想であり、一時の気の迷いだったのだとも思い出さ  
れる。いや、確かにそうだったのだ。本当に妹を手篭めにしようとなど、絶対に思っては  
いなかったのだ。  
それが、こんな事になるなんて。  
 
事故にも近いような、乳首に走ったほんの小さな快感に端を発し、何も知らないのをいい  
事に教えてあげるなどと言いくるめて、快感に打ち震える妹の姿を楽しんでしまった。  
そしてあろうことか、自分が逆に果てさせられてしまった。  
同性、しかも肉親との密なる破廉恥な行為。  
カムイに今すぐ罰せられてもおかしくはない、悪戯では済まされない罪深き行為。  
果たしてこれで良かったのだろうか。  
ただただ、妹の愛らしさと抑えられない欲望に屈して。  
誰の目にも妹を愛していると分かる、いつか結ばれるべきあの男を差し置いて。  
そして、その妹の気持ちも考えぬままに。  
「・・・・・・」  
馬鹿馬鹿しい自問自答に、未練たらしく快感を引きずる頭が軽いめまいを起こす。  
良かったはずがない。今すぐにでも立ち上がって、身体に着いた泡を洗い落として、妹を  
湯船に残してここを去るべきなのだ。罪は罪だが、まだこれで終わるのなら、胸で戯れた  
だけなら――  
ぼろぼろの体裁じみた言い訳に逃れようとしたその時。  
ごぽっ・・・ぬちゅっ・・・  
「はっ・・・あ・・・?んんっ!」  
川辺で一人遊びをしながら過ごしたあの晩と同じように、鋭く過剰なまでに研ぎ澄まされた  
レラの神経が、体の奥から熱い何か吐き出される瞬間を捉えた。  
予想もしなかった下半身の蠢きに、レラは両太股をお互いにぐぐっと押し付け合い、目が  
潰れるぐらいにきつくまぶたを閉じる。そうして、気を抜けば風呂場に響き渡ることになる  
であろう驚きと強烈な快なる叫びを無理やりに押しとどめた。  
「〜〜〜〜・・・・・・っ、ふ・・・ぅ」  
まぶたをそっと開くと、レラの動きにまた何か始めるのかと勘違いしたリムルルが、瞬き  
をしながら大きな瞳でこちらを見ている。  
「ねえさま?」  
レラは嫌な汗を全身に感じつつも無理に笑い、抱きしめる腕で細い身体を引き寄せた。  
「ん・・・ふふ、何でもないの・・・リムルル、もう少し、このままでいて?」  
 
お願いされてリムルルはうっとりとした顔に戻り、自分だけのものだと言わんばかりに  
レラの胸に再び鼻をすり寄せて言う。  
「うん、いいよ。レラねえさま、やあらかくて気持ちいい・・・いいにおい・・・好き」  
好き。  
リムルルの言葉が耳を通して、空っぽになった身体の中でいつまでも共鳴する。  
ねえさまが、好き。  
ねえさまが、好き。  
リムルルが、私のことを。こんなにも。  
じゅぷ・・・じゅ。  
「ふ、ふぁ・・・あ・・・ぁ・・・!」  
幸せな言葉に酔っていたレラに漬け込もうとするかのような、穏やかな時間を楽しもう  
とする理性にことごとく反発する欲望の不意打ち。  
「・・・!・・・・・・っは、う・・・ぅ、ぅぅ」  
意識さえ吹き飛びそうになりながらも、レラは残された理性全てを傾けてリムルルに悟られ  
ないように気を遣いながら、湯気漂う天井に向けひっそりと熱い息を吐き、またも股の奥  
から出口へと流れようとした愛液の感触に耐えた。  
―――あぁ・・・うずく!何故?こんな・・・だめ、もう止めないと・・・いけ・・・な・・・ぃ  
心の中で誰にも聞こえない悲鳴をあげ、欲望の連鎖からもがき抜け出そうとしながらも、  
レラはそこから一歩も動く事はできない。ただ、押し殺すだけ。  
「くっ・・・ぅ・・・うぅ」  
強い意志で戦う戦士の成れの果てがこれ。誇りも結局はただのおごりでしか無かったのか。  
言う事を聞かない自分の身体の不甲斐なさに、レラは悔し涙をにじませた。  
未だ甘く火照り続ける残り火のような乳房のずっと下、黒い茂みの奥でそこはもう無視  
出来ないぐらいにまでうずき続けている。  
風呂に入って、裸になったリムルルの一挙一動を見るだけだったその時から始まって、  
胸でお互いを愛し合っていた最中にも、じんわりと意識が僅かにそこへ傾く程度の蠢きを  
レラはずっと感じ取っていた。  
だが、妹との淫らな戯れが間違いだと、間違いだと知りつつも快楽を一度極めてしまった  
情けない自分を振り払おうとしたところで、その蠢きは突然、身体の主に牙をむいたのだ。  
 
現世に蘇った身体にまた一つ消せない罪を刻み、その背徳に心痛めるほどに、そこは妹の  
肉体をさらに欲し、淫らさにまみれた液をあざ笑うように湧かし続けている。  
どっ、どっ、どっ。  
レラの心臓が、肉欲に激しく押しつぶされる。  
一度は行為を終え休んでいた心臓に火が添えられて、再び燃え上がり、レラを急かす。  
地響きさえ起こしそうに高鳴る音がリムルルにも届いたのか、耳をレラの胸の間に寄せ  
ながら、何だろうという顔をして聞き耳を立てている。  
その横顔。快感の汗に濡れた髪を細いうなじにはり付かせる、美しい妹の横顔。  
それを見て思う。  
リムルルは、つぼみだ。  
無垢であどけない表情に少しだけ女を覗かせ、その胸のように今も膨らみつつあるつぼみ。  
それはそれは瑞々しく、香り高い。  
今やっと、朝露に濡れた白く汚れの無い花弁の一枚が開こうかという頃にあって、もう既に  
美しく咲き誇ることがあらかじめ約束されているように誇り高く、気品に満ちみちている。  
リムルルという名の、希望と未来の証たるつぼみ。咲かせねばならないつぼみ。  
しかし、レラは恐れていた。  
 
リムルルが本当の幸せに花開く日を、この目で見ることは叶わないのかもしれない、と。  
 
自分がまだナコルルの中で眠っていた頃、リムルル達はこの世で何者かと戦ったのだと  
いった。  
巨大な泥人形、致命傷にも倒れぬ異常な生命力を持つ羅刹丸という男。そしてそれらを  
いかづちとともに何処からか呼び起こし、リムルルの命と巫力を狙う、長い平和の時に  
埋もれたはずのナコルルの存在さえをも知っているという、謎の天の声。  
レラはその話を二人から聞いたとき、面に出す事はしなかったが、寒気がするほどに戦慄  
していた。  
何故なら、それ程に大きな力を持ち、それを非道な事に使うような輩だというのに、レラは  
二人に教えられるまで、全くその存在に気づかなかったからである。  
 
レラとナコルルには(おそらくリムルルにも)邪気を感じ取る強い能力が生まれつき備わ  
っていた。そしてその能力は今も衰えてはいない。現に、この世で大自然に危害を加える  
人間達は容易に見つけ出し、然るべき罰を与えてきた。  
リムルルと抱き合っている今も精神を一度集中させたなら、良からぬ事を企む人間の一人  
や二人を捉える事など朝飯前だろう。  
そんな、悪を嗅ぎつける事において完璧と言っていい絶対的な感覚を持ちながら、レラは  
今日半日に及ぶ探索にもかかわらず、「この国の中」に、ついにその邪な影を見つける  
ことが出来なかったのである。近所を探したなどとコウタには完全に嘘をついていたが、  
この島全体をシクルゥと共に駆け巡ったが、だめだった。  
「何もなかったんですか」とコウタに聞かれたあの時、本当の事を言うべきか、隠し通す  
べきか、どれだけ言葉に迷ったか。  
――・・・一体、何者なの?!  
レラは、心の中で悲痛な叫びを上げた。  
人間の・・・自分の妹の命を奪おうとし、この時代にあってはもう誰も知るはずの無い、  
世界中の大自然を癒すちからを持つ、ナコルルの巫力に目をつける輩とは、一体。  
邪気、いや、邪気では済まない特大のおぞましい野望を胸に抱いているはずだというのに。  
海を隔て世界の裏側にいようと地の底に潜んでいようと気づいて当然の存在だというのに。  
それでも、見つけることも感じる事もかなわなかったその輩。  
――おぞましい!  
レラは早鐘を打ちまくる胸をどうにかして止めようとするかのように、ただリムルルを  
抱きしめた。  
だが、感覚が鈍ったわけでは無いのにどうしても相手の姿が捕らえられないレラは、自分の  
感覚には絶対の自信を持っていただけに、身を寄せたまま震えを抑えられない。  
――何故・・・感じないの?一体誰・・・どうして!どうして分からない?!  
ウェンカムイでも無く、闇に心を売った人間でも無く、魔界の者でも無く、悪意を持たぬ  
まま人を殺そうとし、巫力にただならぬ執着を見せる者がこの世にいる。  
それの意味するところは、殺める事、滅ぼす事、絶大な力を握る事を、息をするのと同じ  
に考えている者が、妹とナコルルに近づいているという事なのだ。  
言うなれば、それは無邪気な破壊者。  
 
今だってその輩はこの建物の外で自分の様子を伺っているのかもしれない。音も立てずに  
忍び込み、向こうの部屋でコウタを殺し、風呂場に近づき、壁を突き破り、レラは何も  
出来ないまま巨大な手に掴まれ、一握りで全身の骨をばらばらに砕かれ、爪の先で首を  
飛ばされ、紙を破るたやすさで身体を八つ裂きにされてしまうのかもしれない。  
リムルルの目の前で。  
熱い血の雨で、妹の白く美しい汚れない肌を真っ赤に染めながら。  
――いや、いや!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない・・・・・・・・・  
全身のいたるところから返り血を滴らせ、目を見開いたまま放心するリムルルを、レラは  
一瞬想像してしまった。  
――あぁぁぁぁぁ!そんな・・・そんな・・・!絶対にイヤ・・・駄目!死にたくない!  
戦士の心が生まれて初めて味わう恐怖に狂い、死を拒んで逃げ回る。  
だが、レラの心に食らいつく恐怖・・・それは常人が抱く死に対する恐怖ではなかった。  
死ぬこと自体に対する恐れなど、純粋な戦士の魂たるレラの心の中には、端から存在して  
いない。  
戦い、命を奪い合い、自分が敵に及ばなければ、戦士の人生はそこで終わる。それだけ。  
だから尊敬する父も死んだ。  
ナコルルもその身全てを大自然に捧げながら、力尽きて死のうとしている。  
自分もまた、得体の知れない敵との戦いに敗れ、同様に死んでいくのかもしれない。  
無感動で乾いた言い方だが、戦士とは、戦士の命と人生とはそういうものだ。  
そう思っている。今でも。  
でも、死にたくない。  
死ぬのが恐くて、死にたくないのではなく。  
あまたの死線を当たり前に潜り抜けてきて、今更になって生に執着する戦士。  
冷静でなければいけない戦士の心が、泣き叫ぶ。  
リムルルと離れたくない。  
リムルルのそばにずっと居たい・・・  
幸せに暮らすリムルルを見守りたい・・・!  
 
いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも  
 
・・・・・・自分の愛するものを護れなくなる事への恐れ。  
やっと手に入れた家族が、どこかへと消えてしまう事への恐れ。  
死ぬのが恐いのは、リムルルがこの手から失われてしまうから。それだけだった。  
「リムルル・・・」  
どれだけの間こうして抱き合ったままでいたのだろう。  
レラはリムルルの背中に回していた右手を戻し、その小さな胸に指を這わせてゆく。  
「んっ、くぅん・・・レラねえさま」  
リムルルは子犬のような声で鳴いた。しばらく弄られていなかったのに、乳首は硬く  
なったままだった。まるで冷めやらぬ身体全てを傾け、レラの「教え」を受け止めよう  
とするように。  
快感という名の幸せを期待しながら、リムルルは再び頬を染め上げてゆく。  
閉じたままの未熟なつぼみを両手の中に包み込み、レラは心から祈る。  
 
――今宵、まだ咲かないその美しい花びら・・・一枚だけちぎって、私に分けて欲しい。  
 
その曇りない純白を心に忍ばせて私は戦う。相手が何であろうと。どんなに強大だろうと。  
骨を砕かれても屈するまい。首を飛ばされても刃を振るい続けよう。この身を引きちぎ  
られたとしても、指一本でも残ったのなら絶対に刺し違えてやる。  
チチウシと一緒に花びらを・・・リムルルとのかけがえの無い時間と思い出を握りしめたなら、  
ただ一晩でもリムルルと幸せを共有する事が出来たのなら、もう何も怖くないし、誰にも  
負ける事は無い。  
刹那的だと笑われても、自己満足だと蔑まされても構わない。そうなのだから。  
刹那の快感。リムルルと幸せを分かち合えたという自己満足。  
しかしその花びらは、リムルルにひとときでも誰よりも近づいたという確固たる証拠。  
リムルルが、自分の手で女に生まれた幸せのかたちのひとつを知った証拠になるのだ。  
私は戦士だ。悲しいけれど、本当の女の幸せなどきっと永遠に掴めぬままに終わる。  
だけどリムルルはそれではいけない。そんな定めを背負うのは自分だけでいい。  
リムルルには、女の幸せを掴む義務がある。全てが終わる前に。  
命に代えても護り切ってみせる。指一本触れさせはしない。  
 
・・・・・・だから、お願い。今夜だけは。  
 

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