12月18日  
 
修行にも日々熱が入り、レラさんも俺の動きに少しずつだが頷いてくれるようになり、  
身体もどんどん軽く、食欲もどんどん多くなってきた。  
リムルルは最近、朝の修行から帰ると「お帰りなさい」とタオルを渡してくれる。やけ  
にうやうやしい。昨日だかの夜にレラさんにしっかりと教わったらしく、今朝のオハウは  
リムルルが全部作っていた。やる気が余っていたのか、それとも調味が上手くいかなくて  
味を濃くしては薄めてを繰り返したのか、量が鍋ギリギリ一杯のいつもの1.5倍になって  
いたが、そこは一応満足がいくまで作った物らしく、味もレラさんに負けず劣らずの素晴ら  
しい出来だった。俺はリムルルの頭をひとしきり撫で、レラさんにいたっては感動の余り、  
じゃーじゃーと流れ出る涙が茶碗にまで注ぐという事態が起きた。リムルルの事になると  
感情が150%むき出しになるレラさんはかわいいと思う。不安でもあるが。  
そんなレラさんが教えてくれる、リムルルのために作っているマキリの鞘の木彫りも  
着々と進んでいる。細かい部分にまでなかなかに意匠を凝らした味わい深い物が出来そう  
だと、今から少し自画自賛している。だがマキリばかりでは作業の進展が遅いので、所々  
は押入れにしまってあった彫刻刀でカリカリやってみたりもする。レラさんはそれに関して  
は特に何も言わないが、「使ったからにはどの刃物もちゃんと手入れなさいよ」とだけ  
俺に命じた。もちろんだ。というのも最近少し変わった夢を見た。  
 
夢の中で目覚めると、俺は少し薄暗い石造りの部屋にいた。顔よりもずっと高い位置、  
石の天井近くににある窓にはぶっとい鉄格子がはめられていて、外の様子は見えないし、  
そこから出ることなどまず無理だ。どうやら光源としての役割だけを果たすため窓のようで  
ある。背中にある扉も重そうな鋼で出来ている。典型的な西洋の牢屋のような部屋だ。  
しかしその部屋は牢屋ではなかった。視界のどこまでも、所狭しと磨き上げられた刀剣類が  
置かれているのだ。日本刀、青竜刀、槍、さすまた、匕首、包丁にナイフと、刃のあるもの  
なら何でもござれのよりどりみどりである。  
 
そんな武器庫のような物騒な場所の入り口で呆然と立ち尽くしていると、槍が整頓されて  
いた壁際のラックの一つから、ひょこっと小さな人影が現れた。  
笑いながらぺたぺたと軽そうな足音を立てて近づいてくるその子は、黒地に白でアイヌの  
刺繍を入れたシックなワンピースのような晴れ着を着て、短くおかっぱに切りそろえた  
銀色の髪を輝かせる小さな女の子だった。レラさんよりも目じりが斜め上を向いているので、  
笑っているその顔は子ギツネのようである。  
そんな笑顔にもあどけなさの残る、小学校も低学年ぐらいのその子だったが、その歳では  
少し早いんじゃないかと思うような、ガラス玉や薄いカミソリのような形をしたアクセサリを、  
耳や襟元にじゃらじゃらと身に着けていた。  
これは!と俺は思った。明らかな夢の中だという自覚があり、おめかししたアイヌの晴れ着  
の少女とくれば・・・・・・。というわけで俺が君は何かのカムイ?と聞くと、少女は「正解っ!  
コウタ兄ちゃんのマキリのカムイな!」と、少し頭に響く高くて可愛い声で言った。コンル  
以来のカムイとの遭遇だ。夢の中でしか、人の姿のカムイには会えないのだった。  
それで、何をしに来たのかな?と彼女と目線を合わせるためにしゃがんで訊ねると、彼女は  
細いキツネ目の間から銀色の瞳を輝かせて、あたりをきょろきょろしてこっちの話を聞いて  
くれない。それどころか「コウタ兄ちゃん、色々刃物しってるのな。これなんていうのな?」  
と、武器を指差して色々聞いてきた。子供特有の知識吸収モードだ。  
よくよく聞けば、彼女はカムイコタンの鍛冶場で生を受けてからというもの、誰にも使われ  
ていないせいで、レラさんが隠し場所から取り出すまで、ずっと眠っていたらしい。だから、  
刃物のカムイのくせに自分の事しか知らないのだ。  
俺はやれやれと頭をかいて、自分の想像が作り出した西洋風の武器庫の中で、小さなカムイ  
の手を引き、知識の限り刃物の名前や用途を教えてやることにした。無論、昔に遊んだ  
ロープレ程度の知識しか無いのだが、それでも彼女はさも楽しそうに鼻息を荒くして聞いて  
くれた。とっても素直なよい子ちゃんのようだ。  
結局、体育館ぐらいあった武器庫の中を一周し終わり、彼女の止めどない質問が「あー、  
楽しかった」に変わる頃には、俺は肩車までしてやっていた。  
 
その「楽しかった」のタイミングを逃さず、俺はすかさず彼女が何をしに俺の夢の中に出て  
きたのかと聞くと、彼女はいきなり俺の肩からひょいっと身軽に飛び降りて、ぺこりと  
お辞儀をしながら言った。  
「忘れてた!えーと、毎日ちゃんと手入れをしてくれてありがとうございます!あたしは  
コウタ兄ちゃんの事が好きな。いわゆるご主人で・・・・・・あたしは、えーと、そう!憑き神な!  
だから今日は感謝して、こうやって出てきた。何かあったらちゃんと役に立つから、笹舟に  
乗ったつもりでいてな。あ、笹舟って知ってる?川に浮かべて遊ぶヤツなっ!」  
彼女はメチャクチャ重要な事と、お先真っ暗になるぐらい不安な事を澄み切った高い声で  
言った。そして笹舟の作り方と遊び方を、周りにいくらでもあるナイフで石床をガリガリ  
削って絵を描き、熱心に俺に指導した。  
俺の相棒がこんな小さな女の子だとは思わなかったが、素直で中々に憎めない子なので  
「これからもよろしくな!」と語尾を真似して握手をすると、彼女はにんまりと、細い  
目を糸ぐらいにまでして笑って、手近の武器棚の影に隠れて手を振り、そのまま消えて  
しまった。  
そういう事もあって、俺のマキリに対する愛着はさらに深まった。きれいに磨いてやると、  
輝きの向こうであの子が「きゃっきゃ」と笑っている声が聞こえるようだ。  
だもんだから、きっとニマニマしていたんだろう・・・・・・マキリを手入れしている俺の顔を  
見て、リムルルが露骨に顔をしかめて「きもちわるーい」とか言いながら、俺の頭、こめ  
かみの辺りを後ろからぐいぐいはがいじめにしてきた。まったくこの子は。行動に脈絡が  
感じられない上に甘えん坊で可愛いなぁ。  
まあ、別段隠し立てすることでもないだろうし、俺の名誉のためにも食後にカムイの夢の  
話をしたら、リムルルは今度は「すごーい!」って大層驚いていた。レラさんもお茶を  
すすりながら、にこりと笑って頷いてくれた。この人の笑顔はなかなか見られないから  
なお嬉しい。  
 
霊感とは程遠い俺のような一般人が、こうにまで神秘の世界に触れられるのだから、確かに  
俺、少しすごいのかもしれない。スジがいいのだろうか。いやでも、それって歓迎すべき  
なのか?今度は幽霊に遭ったりして。  
まあとにかく、マキリのあの子には悪いが、なるべくなら表に出てくるような事は起き  
ないといいな、と思っている。平和が続けば、そしてその中でリムルルがナコルルさんを  
見つける事が出来たなら、それが一番だから。それに、あんなに小さな女の子が戦い傷つく  
のを見るのは絶対に耐えられないだろうし。  
だから彼女にはせめて、この木彫りの作業の進行を見守っていて欲しい。眠っている間に  
出てきて・・・・・・って、それじゃ靴屋の小人か。  
 
「あちこちからおもいだしたよ〜に〜ジョンのこえ〜」ってにいさまが歌ってた日の朝  
 
カムイコタンのおうちの、四角いいろりのそば。  
お外は暗くて、しーんと鎮まっている。風の音もしない。だけどきっと、空からは雪が  
どんどんと降ってきているんだと思う。  
だけど、家の中はこんなに暖かだ。だって、いろりがある。ぱちぱち音を立てて、アペ  
フチカムイがわたし達の生活を見守ってくれているから。それに、わたしの隣にはねえさまが、  
優しくて大好きなナコルルねえさまがいるから。   
ねえさまは、わたしがにいさまへの「くりすます」の贈り物に、マタンプシ(鉢巻)を  
作ることに賛成してくれた。そしたらねえさまはいろりの灰にすらすらと指で模様を描いて、  
こんなのはどうかしらって、昨日からずーっと模様の事で悩んでいたわたしを助けてくれた。  
やっぱりねえさまはすごいなあ。だって、わたしはねえさまに負けないぐらいたくさん  
の模様を知っているはずなんだもん。それなのに、ねえさまはこれ以上無いぐらいに、  
にいさまにぴったりな模様をたったの一回で示してくれちゃったんだから。まるでにいさま  
の事を知ってるみたいに。  
何も言わなくても、ねえさまにはわたしの事なら何でもわかっちゃう。いい事も、悪い  
事も。楽しい事も、辛い事も。  
わたしは隣に座ったねえさまに寄り添って、いろりの火を眺めていた。それで、ねえさま  
が大好きだって、小さな声で言った。ねえさまは、ありがとうって、わたしの髪を指ですいて  
くれた。ねえさまの手は春風の心地がする。冬でも夏でも、いつでも芽吹きの香りがする。  
その手が気持ちよくて、ずっとこのままならいいねって、わたしはねえさまのお膝の上に  
頭を降ろした。  
横になって見るいろりの火は、とってもきれいで不思議だった。静けさをずっと強く意識  
させる火の粉の舞う音がするたびに、ねえさまの白くてきれいなお顔が、赤く浮かんで、  
沈んで。  
 
幻想的な眺めにうっとりとしていると、ねえさまは、「そうね、一緒が良いわね」って、  
わたしの頭をそっと撫でてくれた。  
   
約束したもんね。ずっと一緒だって。  
   
なのに、いろりの火は消えてしまって――  
ねえさまのお膝の感触が、私の頭の下から消えてしまって――  
ぼふん  
 頭がお布団の上に落ちた衝撃に目を開くと、レラねえさまのお布団があって、壁に立て  
かけられて隅に追いやられたコタツが見えた。  
「夢・・・・・・だったんだ」  
ぼそりとわたしは言った。寝返りを打って、枕から頭が落ちてしまったみたい。  
にいさまが居ないから、その分布団が広まっちゃうからね。ごろん、て。そういえば今朝は、  
にいさまが出て行くところを見ていない。扉が閉まる音が聞こえたような、それだけが  
思い出せる。だから、にいさまの唇の感触があったのかも知らない。  
きっと、わたしの頬に触れてくれたんだとは思うけど。とっても、とっても優しいから。  
にいさまはわたしの事を気遣ってくれて、一緒に暮らしてくれて、そしてずっと一緒に  
いるために、今もきっとレラねえさまの厳しい修行に耐えているんだ。そう思うと、わたし  
もこうはしてらんない。今日も空気は冷たいけれど、にいさまとレラねえさまはもっと寒い  
お外で頑張ってる。わたしはそんな大好きな家族に、とびきりの朝ごはんでこたえなきゃ。  
・・・・・・にいさまに、大好きだって言ってもらえるような、女のひとになるんだ。  
ほら、もうどきどきしてる。にいさまの事を考えるだけで、また。起きたばかりなのに  
鼓動に身体全体が脈打つみたい。  
お布団を掴んで、頭まで被ってうずくまってみる。起きる前に、最近の朝はこうするのが  
癖になった。自分の体温が残ったお布団の中で脚を胸に抱えて、ぎゅーっと小さくなるの。  
春を待つクマみたいに。そうするとなんだか、大きなにいさまの腕が伸びてきて、全身を  
抱きしめて貰っているような心地になる。自分の体温と、お布団のどこかにまだ残っている  
にいさまの温度と、少し湿ったお布団の中の空気を吸い込むたびに、全身が熱くなって  
くるの。息苦しいぐらいに。  
 
最近は何だか一緒にいるのも、お膝の上でてれびを一緒に見ていても、手に触れているだけ  
でも恥ずかしい。出会ったばかりの頃はもっとちゃんとにいさまの事を感じていられたのに。  
そばにいると、大人のにいさまにはわたしの事もわたしの気持ちも、ねえさま達と同じに  
全部見えてしまっているような気がして、胸騒ぎがして。  
だから、こんな事してるの。  
にいさまのにおい。にいさまの温度。全部たからものだから。  
にいさまと片時も離れたくない。わたしの事、いつも忘れないでほしい。わたしを、にい  
さまの一部にしてほしい。  
そう思ったから、わたしはにいさまにマタンプシを作る事にしたの。てれびで見たもん。  
もうすぐ「くりすます」っていうお祭りがあって、その時に贈り物をするのが、この時代の  
慣わしなんだって。こんなに都合の良い機会なんてそう無いから、  
だから今だってすぐに、にいさまの頭の大きさはだ思い出せるんだ。昨日の夜に、頭を  
ぎゅって抱きしめたから。一瞬だけど。でもね、一瞬じゃないと、わたしの気持ちがにい  
さまに見えてしまうから・・・・・・そしたら困るから。  
布団の中に残った、甘いにおいを胸いっぱいに吸って、わたしは布団から這い出した。  
部屋の空気が、何倍にも冷たく感じられる。だけど大丈夫。にいさまの温度が、わたしを  
守ってくれてる。  
さあ、今朝からは忙しい。朝ごはんを作って、にいさまに見つからないようにマタンプシも  
作らなきゃいけないんだから。  
ナコルルねえさま、待っててね。ねえさまが教えてくれたマタンプシをにいさまに巻かせて、  
みんなで一緒に、絶対に探しに行くから。きっともうすぐ、もうすぐだよ。  
 
 
コウタの家での生活 8日目 明け方  
 
「ふうぅ・・・・・・リムルルぅ」  
「レラ・・・・・・ねえさま」  
少し薄暗い部屋の中、お互いの名を呼びあい、指を絡めあい、リムルルの吐息を感じながら、  
その小さな唇に私もそっと唇を重ねる。柔らかな接吻。妹の唇の甘い感触。  
いつしか唇は割り開かれ、指と同じく、二枚の舌が熱っぽく絡み合った。  
「んちゅ・・・・・・ちゅる」  
「ちゅっ・・・・・・ふぅん、くちゃ・・・・・・はあっ」  
慣れない行為に少し息苦しそうにしながらも、リムルルは積極的に私の舌を求めてくる。  
ねっとりとした唾液が顎にまで垂れ、着物の襟を汚しても止まらない。求められるままに  
私はゆっくりと押し倒され、ついに布団の上に身体を横たえた。  
唇が一度離れ、膝と手を突いて私の身体の上に跨ったリムルルが、熱に冒された視線を  
私の胸元に下ろした。これからの行為を予感させる緊張した空気が心地よい。  
「ねえさま・・・・・・レラ、ねえさま・・・・・・」  
「リムルル、いいのよ・・・・・・」  
ゆっくりと頷くと、リムルルは襟元からその小さな手を差し込んできた。  
「あ・・・・・・」  
期待に声が出てしまう。さっきまで強く握り合っていた妹の右手の平が、私の胸の頂を  
捉えた。少し汗ばんだ指が胸の形をやわやわと変えていき、余った手が、布の上から私の  
もう片方の乳房を下から持ち上げるようにして揉みしだいた。  
「あっ、リムル・・・・・・んんっ」  
ぎこちない手つきが余計に愛らしく、控えめに訪れる快感にとろけた声が漏れる。  
「ねえさま・・・・・・きもち、いいの?」  
恥ずかしい問いかけに答える代わりに、私はリムルルの髪を下から撫で、身体を起こして  
顔を近づけ、唇を再び奪った。  
 
唇と唇が触れ合った瞬間、リムルルの愛撫が止まったかと思うと、服の上で私の感触を  
確かめていたリムルルの手が襟元へと移り、ぐいと掴んで押し下げようとした。だが、  
腰帯を巻かれた服がそう簡単にずり落ちるわけはない。  
「んっ、慌てないでリムルル・・・・・・何が欲しいの?」  
その行為の示すところは一つだが、わざとらしい質問をしてやると、リムルルは切なげに  
顔をしかめた。苦しくてもうたまらない、そんな表情だ。  
「あのねっ・・・・・・あの、ねえさまのおっぱいが・・・・・・好きなの、好きだからぁ」  
「好きだから?」  
「いじわるしないでよぉ、お願い。おっぱい・・・・・・見たいのぉ。見せて!お願い」  
「ふふ、そう。見たいのね?なら・・・・・・見るだけよ?」  
さらに意地悪な要求を与えつつ、肩に手をやり、私はするりと胸元をはだけさせた。  
その途端、私が命じた禁を早々に破り、リムルルが再び私の上にのしかかってきた。  
「あっ、リムルルっ、こらっ言うことを聞きなさいっ・・・・・・みっ、見るだけって、うあんっ」  
リムルルが両の胸に少し爪を立てるようにして乱暴に押さえつけ、抗議する私の口を唇で塞ぐ。  
「んんーっ!」  
「んちゅっ、ふは・・・・・・れろっ、ねえはまっ。くちゅっ、ちゅっ」  
「はっ、はぁ、んんんーっ」  
密着しあった口の中でリムルルの甘い舌が縦横に動き回り、脳さえも揺さぶられ、私は  
呻きながら妹のされるがままになっていくのを感じた。  
「ふあ・・・・・・ダメだよねえさま。こんなにおっぱいの先ぴんぴんなのに無理しちゃ。わたし  
が・・・・・・ちゃんとほぐしてあげるから、ね?」  
きらめく細い糸を引きながら、リムルルは唇をようやく離し、くったりと横たわる私に  
妖しい微笑と共にそう宣言した。  
図星だった。この興奮に支配された空気の中では、直接に見なくても自分の胸の頂がどう  
なっているのかが簡単に分かってしまう。痛いぐらいにしこり立っているのだ。  
 
「ほら・・・・・・こんなに硬いよ?」  
「ああっ!」  
ちょっと触れられただけでも、喘ぎが抑えられない。そんな私の反応を楽しむかのように、  
リムルルはこりこりと指の腹で乳首を押しつぶすように刺激してくる。当然、私の微かな  
変化さえ逃さぬよう、小さな耳を私の口元に向けてそばだてながら。  
「あっ、ああ・・・・・・うふっ、ふうう」  
「ねえさま、かわいいよ。おっぱいも、おっぱいの・・・・・・先っぽも。ちゅるっ」  
ささやき声がして、続いて胸の上にぬめりが走った。生温かな、水の粘る音。  
「ふぁああ!」  
正直な身体に訪れた至極の刺激に、たまらず私は叫び声を上げてしまった。  
「声も可愛いよ、レラねえさま。なんだかわたしまでヘンな気持ちになっちゃう。だから  
もっときもちくなって、もっと聞かせて・・・・・・。ほら、わたしが助けてあげる。もっと  
もっと・・・・・・ちゅっ、ちゅ・・・・・・」  
私の強い喘ぎを号砲に、リムルルの愛撫はどんどんと熱を帯びてゆく。  
「ちゅっ、ちゅるうぅ、んっ・・・・・・ぢゅるぅぅ・・・・・・ぷあっ、ねえさまきもちい?」  
「はぁっ、あっ、あぁ・・・・・・」  
リムルルの唇が立てるわざとらしい水音に全身を焦がされるような羞恥を感じて、私は  
顔を背けた。  
リムルルがゆっくりと首を左右に振って、ささやく。  
「ふふっ、隠してもだめ。ねえさまは、おっぱいこうされるのが・・・・・・大好きなんだよね。  
わたし、ちゃんと覚えてるんだから。ほらっ。はむっ・・・・・・」  
「あぁ〜っ、リムルルっ、だ、だめぇ」  
乳房全体を覆い尽くすように、リムルルは胸の上に口を大きく開いてしゃぶりついてきた。  
「んっ、んんっ、ちゅるちゅる・・・・・・ぢゅるるる・・・・・・ほら、どう?」  
「んんんっ、あぁ・・・・・・あ、あぁ!だめ、だめよぉ」  
「ふふっ、ねえさまこの前よりも気持ちよさそうだね」  
「そんな事・・・・・・な・・・・・・あぁぁ!」  
 
はしたない粘着音が左の胸の上に吸い付いた妹の口から弾け、胸全体に広がる温かさと  
ほとばしる快感に、私は身体を蛇のようにくねらせた。  
「だめっ、だめぇ・・・・・・リムルル、あっ、あああ・・・・・・!」  
そして、迫り来る快感の波にそのままさらわれようとした時。  
「じゃあ・・・・・・やめちゃおうかな」  
リムルルがにやりと笑い、覆いかぶせていた身を引いてしまった。もちろん手も、あの  
柔らかくて艶やかな唾液にまみれた唇も胸から離れてしまっている。  
「えぇっ?」  
弄ばれているのは分かっている。けれど、唇が離れたことで熱を失い、冷えてゆく唾液に  
ぬるぬるにされた胸の中では、燃え上がっていた情の炎がくすぶりを上げ続けている。  
妹が仕掛けた快感の迷路の中で、絶頂という出口を求めてさまよう私は思う。  
――こんなの・・・・・・ひどい!  
「だ、だめよぉ・・・・・・やめないで」  
妹の見え透いた罠に、私はいとも簡単に落ちてしまった。  
「もっとしてほしいの?」  
「もっと、もっとぉ・・・・・・お願い。ここで止められたらわたし」  
「ねえさまはいやらしいなぁ・・・・・・いやらしいおっぱいが止まらないんだね?」  
ぞくりとした。  
前髪をかき上げながらため息交じりに言うリムルルの瞳に、いつもと変わらず自分を  
見つめる妹の目の奥に、私は小さな蔑みを感じずにはいられなかった。  
気のせいだったかもしれない。上から見下ろされているからかもしれない。あれだけ  
素直で可愛い妹が、自分を馬鹿にしたりするような事などあり得ないのだから。  
でも、感じてしまった。その瞳に、冷たさを。  
・・・・・・そして、激しい快感を。  
もう自分が作り出した幻でも、何でもいいのだ。  
氷柱を心臓にねじ込むような妹の冷たい視線に、私は犯されたかった。  
 
「そうなのぉ・・・・・・おねえちゃんは、いやらしい・・・・・・おっぱいなのぉ!」  
胸を反らせて、私は自分でも信じられない言葉をまくし立てた。  
「おっぱいがおかしくなっちゃうの!リムルルが鎮めてくれないと、だめに・・・・・・なるぅ」  
「ふふ。ねえさま、いいよ。わたしが治してあげる。いやらしいおっぱい、助けてあげるよ」  
口元を歪ませて鼻をならしたように「見えた」リムルルの顔が、再び私の胸元に埋められる。  
「あぁっ、あああー!」  
少し乱暴な、だけど待ち焦がれていた胸への愛撫に、私は絶叫した。  
鼻先で乳首をくりくりといじられ、いやらしい雌の匂いを嗅がれる。そして尖り切った先端を  
指で挟まれ、ちゅるちゅると激しい音を立てて吸われるたびに、既に全体が性感帯と化した  
胸から、怒涛の勢いで快感が生まれては私を追い立てる。  
定まらない視線をリムルルにやれば、リムルルももう、胸を愛撫すること意外には何も無く、  
餌を貪る動物のように乳首を一心に攻め立てていた。  
――あ・・・・・・あぁ、妹の口で、また・・・・・・おっぱいだけで・・・・・・わた、し・・・・・・!!  
自分より年下の妹に言葉ではずかしめを受け、胸だけでの絶頂を迎えるという自分のいや  
らしさと節操の無さに、私は再びぞくぞくとその身を震わせた。  
――こ、こんな、変態じみた・・・・・・あぁぁ!  
しかしそんな被虐的な快感に震える自分を直視すればするほど、温かなぬめりに包まれた  
乳首からの快感が一層の甘さを示し、その快楽に狂うしかない。出口は、その先にしか  
ないのだ。  
「はっ、あっ、あぁ・・・・・・リムルル、もっと、もっと!もっとぉ・・・・・・」  
白けていく意識の中で、うなされるように私は何度も繰り返した。  
「んっ、んっ、んんっ・・・・・・じゅるっくちゅ・・・・・・んはっ」  
一段と貪欲さを増したリムルルの愛撫は、強烈な刺激となって私の中を走り抜けてゆく。  
「リムルルっ、好きよぉ!おねえちゃんをもっと、気持ちよくしッ・・・・・・ああっ!」  
「じゅるるるっ、ねえさまっ、爆発・・・・・・するの?」  
もう、私の顔は激しい快楽にやられて酷いことになっているのだろう。私の表情から結末  
を読み取ったリムルルが、てらてらと唾液に輝く唇を離してにやりとし、問いかけてきた。  
 
「しちゃうっ、爆発するのっ、お願いもうだめっ・・・・・・クる・・・・・・クるっ、キちゃう!」  
「いやらしいねえさま、妹のわたしにこんなことされて・・・・・・そんなに感じたの?」  
燃え盛る私を尻目に、リムルルもその不思議な冷たい興奮の視線を私に投げかけてくる。  
「う、うぅ・・・・・・」  
言いよどむ私に、リムルルは追撃を仕掛ける。  
「おっぱいだけでこんなに乱れちゃって」  
「違う、違うの!私は・・・・・・そんな」  
「違わないよ!ねえレラねえさま?よーく考えてみて?ほら、妹にいじめられて、しかも  
こんなに乱れて・・・・・・気持ちよさが止まらなくて、またはしたなく爆発しちゃうなんて。  
ふふっ・・・・・・」  
背筋が凍るような、コンルにさえ放てないであろう強烈な冷気を伴う眼の輝きとともに、  
リムルルは深いため息の後、こう私に言い放った。  
 
「ねえさま、変態さんなのかもね」  
 
その言葉が、最後だった。  
リムルルの熱くぬめった舌が三度私の右の先端を捉え、唇がきりきりと絞り上げる。  
「そん、な・・・・・・くあああっ!」  
引き裂くような言葉と強烈な愛撫が絡み合い、落雷の衝撃にも似た快感が全身を突き抜けて、  
くすぶっていた甘い感触を一気に大火へと変貌させた。突然に訪れた終末が、準備の整わ  
ない身体へとしたたかに鞭を打つ。  
「あっ、あっ、あぁ・・・・・・あ、あ、ぁ、・・・・・・キたの・・・・・・リムっ、ふあああ――っ!!」  
びくっ、びくっ、びくびくっ・・・・・・  
リムルルを身体の上に乗せたまま、私は深い絶頂を示す派手な痙攣を繰り返した。  
快感だけで白く塗られた「羞恥」という箱の中に、愛する妹の手によってどこまでも深く  
放り込まれながら・・・・・・。  
 
「ッツ!!」  
ばちっと、私は天井を睨むようにして目を覚ました。  
眠気など欠片さえ引きずっていない。昔からの、いつもどおりの完璧な目覚めであり、  
「さ、最低だわ」  
それは今日に限っては最低の目覚めでもあった。あまりの夢の内容に、頭を抱えこむ。  
何というおぞましい夢!  
数日前、確かに妹の手によって私は胸だけの絶頂へと導かれた。けれど、今朝の夢は何だ  
というのかしら。妹に指示を下す間もなく、完全に主導権を握られたまま、しかも自尊心  
を傷つける言葉の連続で打ちのめされてしまっていたではないか。  
「しっ、しかも・・・・・・それで、あんな・・・・・・!」  
到底夢とは思えない、鮮明で変態的な絶頂の記憶に、私はたまらず布団を頭に被った。  
消えてしまいたかった。生き恥とさえ感じてしまう。  
布団からひょこりと頭を出して壁にかかった時計を見れば、あと数分でいつもの起床の  
時間だわ。視線をそのまま横に下ろせば、リムルルとコウタが幸せそうに一緒の布団で  
眠っているのが見える。何も変わったところの無い部屋からして、寝言を言っていな  
かったのが不幸中の幸いね。早いところ精神を立て直さなくては、修行どころではないわ。  
日に日に磨かれてゆくコウタの腕なら、こんなに浮き足立った今の自分の修行では物足り  
なく感じてしまうかもしれない。しかもコウタはなまじ感受性が強い男。気配りが利くわ。  
変な質問をされては記憶が蘇って耐えられない。  
「そうだわ、ふーっ、すーっ、はぁーっ・・・・・・」  
三回の大きな深呼吸をしつつ布団の中で四肢をぴんと伸ばし、私は何とかいつもの目覚め  
へと自分を持っていこうとした。だけど、魂と直接につながっている身体は正直そのもの。  
「はぁー、ふぃー・・・・・・ッ!」  
五度目の深呼吸と共に背伸びで脚を開いた瞬間、股の付け根に嫌な感触を覚えて、指先  
から力が抜けていった。  
「ま、まさ・・・・・・か」  
突き付けられた現実と、火を見るより明らかな結末さえ拒否しながら、私はおずおずと  
異変を訴えた股の間へと指を這わせた。  
 
「あ、うあぁ・・・・・・そんな」  
自らの恥部が吐き出した、現実という名の愛密に指をしとどに湿らされ、私は布団の中で  
ぐったりと力を失った。  
妹に犯される破廉恥この上ない夢で、私はしっかりと感じていた・・・・・・。  
変態。変態。ヘンタイ。  
夢の中で聞かされた、虐待心に満ちたリムルルの声が頭の中でこだまを返す。どうにか  
振り切ろうと私は頭を振り乱し、耳を塞いでしまった。  
「そんなじゃないのに、私は!やましい事なんて!」  
だったら何で、一枚しかない寝巻きに染み込むほどの量の淫らな蜜を、私の股間は湧かせて  
いるのかしら。不在の間にリムルルに下穿きを見られたら、それこそ・・・・・・。  
「だめよ・・・・・・違う。落ち着いて、私」  
そう。真実だけに目を向ける必要がある。分かっているの。そう。ほら、リムルルはあんな  
事はしない。するわけがない。まして、家族の私を脅し、快楽の奴隷におとしめるような  
事など。  
私はきっと疲れているんだわ。現世への転生直後の身体には、妹に会えた喜びとあの鮮烈な  
風呂場での情事はかなり堪えているはず。だからあんな夢を私に見たの。絶対に。  
安らかに眠る、美しいカムイのようなリムルルの寝顔を見なさい。あのやさしい子が、  
あんな事するわけがないじゃないの。  
あれは夢だけの話。夢だけの。私の心の中だけの――  
 
それじゃあ結局、夢を見た原因は・・・・・・私。  
 
やっぱり、やっぱり、私は・・・・・・?!  
 

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