「元気そうね、リムルル」  
 
「ね、ね……ねえさま―――!!」  
 
涙にぼやけて形を変える前に、リムルルは思い切りナコルルの懐に飛び込んだ。  
「うわあぁぁぁぁ、会いたかったよ、会いたかったよぉぉ!」  
「まさかリムルルが来てくれるなんて……私も会いたかった……!」  
「夢じゃないよねっ、ホントにナコルルねえさまだよねっ!?」  
「ええ。分かるでしょ?私は私よ」  
「うんっ、分かるっ、ねえさま、えぐっ、うっ、うあぁぁぁん!!」  
無粋な質問はもういらなかった。片時も忘れたことの無い、正真正銘の姉の懐に抱かれ、  
リムルルはいつ止まるとも知らない涙を流し続けた。  
「みんな……みんな、ねえさまが死んじゃったなんて言うんだ!だからわたし、絶対  
そんな事ないって、コタンを出て、それで……それでぇ」  
「いいの……リムルル。もう何も言わなくて。ありがとう。本当にありがとうね」  
つかえた言葉さえ包み込むように、ナコルルの手がリムルルの頭を撫でた。  
「何年も何年も経って、私だってもう……会えないものだと思っていたの。これは  
奇跡なのね」  
「うん。大きなキムンカムイがねっ、ねえさまに会えるからって、この時代にわたしを  
送ってくれたの」  
「リムルルが真実を見据える本当にきれいな魂をしているから、きっとそんな奇跡を  
起こしてくれたのね……カムイ達に感謝しなきゃ」  
リムルルは姉の胸に顔を埋めたまま、こくりと返事をした。そしてもう一度ぎゅっと  
抱き合うと、びしょびしょになった顔を拭いながら姉の顔を見るために身体を離した。  
どこを見ても間違いは無い。それにちゃんと触れられる。温かくて、いいにおいがする。  
幻なんかではない。自分としっかり目を通わせてくれている人は、  
「ふっ、ふふっ、ねえさまだ。ホントに、ホントに……ねえさまだ!」  
なぜか笑いがこみ上げてきて、リムルルは真っ赤に泣きはらした顔のままで笑った。  
「ふふっ、変なリムルルね。人の顔を見て笑うなんて」  
ナコルルは冗談ぽく、肩をすくめてみせた。  
「ごめんなさい。だけどねっ、嬉しくて……なんだか、勝手におなかが笑っちゃう  
んだもん。ごめんね」  
「いいのよ。別に。ほら、もう泣き止んで?」  
親指でそっと頬を伝う涙を拭われ、リムルルはがしがしと乱暴に自分の袖を顔に押し付けた。  
姉は、優しさまで相変わらずだ。  
「ねえさま大変だったんでしょ?」  
リムルルは気になっていた事を口にした。  
「ずっとずっと、色んなところで傷ついて泣いてるカムイ達をねえさまの力で治してたん  
でしょ?」  
「えぇ。魔界が地上に残した傷跡をね。でももう大丈夫よ。全部、解決するわ」  
機関銃のように喋るリムルルをなだめるように、ナコルルは静かな語り口で言った。  
「そう。確かに大変だった」ナコルルの顔に、凛とした真剣味が差す。  
「魔界の爪あとは深かったわ、想像以上にね。だけど私だってアイヌの戦士よ。魔界に負けて  
なんかいられない、そう思って、大いなるカムイ達と一緒にこの世界を守ることに専念したの。  
この秘密の場所を中心にしてね」  
「うんうん!すごいなぁ、さっすがねえさま!」  
姉でありカムイコタン一の勇者であるナコルルに、リムルルは憧れの眼差しを向ける。  
「私にしか出来ないことだからね。アイヌの戦士として、この世界を終わらせるわけには  
いかないから。たくさんのカムイが住むこの土地を、元の姿に戻さなきゃいけないもの。  
ほら、あれを見て?リムルル」  
言って、ナコルルがおもむろに後ろを指差した。  
 
姉に釘付けだったリムルルの視線が、指の誘導を受けて初めて、ほら穴の先に広がっていた  
世界を見つめる。  
そしてリムルルは、ぺたんと腰を抜かした。  
「な、ななな」  
言葉さえ失ったリムルルを見て微笑む姉が指差すそれは、確かに「樹」だった。  
「樹」だったのだが、リムルルにはそれが一瞬何なのか分からなかった。  
この森の中に足を踏み入れてから何度も見た巨大な樹。しかし姉の背後、どこまでも続く  
花畑の向こうにあるその樹は、空に浮かぶ雲を「本当に」貫いていたのである。幹の太さ  
たるや、大人が囲んでなどというような代物ではない。根元の周りを歩いたなら一日はかか  
るんではないかとさえ錯覚するほどの太さで、枝葉などは雲に隠れ、所々空の青に混じって  
緑色に輝いている。兄と連れ立ってこの世界の都へと行ったときに見た、高い建物などとは  
比べるべくも無い。  
その樹は正しく「大樹」だったのだ。  
「驚いた?」  
「お、おおおお驚いたって、驚くよぉ!なにあれ!?」  
やけに冷静な姉に、リムルルは大きな目をさらにひん剥いて叫んだ。  
「落ち着いて、リムルル」  
「だって、あんなの……!」  
「いい?リムルル。あれはね、私が持っている力の集大成なのよ」  
「しゅう……たいせい?」  
ええ、とナコルルが短く答え、大きく両腕を広げて空を仰いだ。  
「私が持っている巫力……それを使ってアイヌモシリを本当の姿へと導くために、私は  
光になってあの樹をここまで育てたの。あの樹の中には、私の力が全部封じられているのよ」  
「じゃ、じゃあ!あの樹を育てるために、ねえさまは他のみんなを放っておいたの?」  
光に照らされた姉の言う事に、リムルルは感情もあらわに噛み付いた。  
「レラねえさま何回も言ってたよ、自然が苦しんでるって!わたしだって分かるよ、この  
時代のアイヌモシリって、何だか……姉さまが居なくなったあの頃に近づいてる気がする  
もん!な、なのに変だよね?一本の樹だけ助けちゃ変だよね、早くみんなを助けなくちゃ  
ダメだよね!ね!?」  
無理にでも笑いながら、リムルルは言った。  
どう考えても自分の考えは間違っていない。だからこそリムルルは必死だった。  
一人がたくさんの幸せを集めても、他のみんなが苦しんでいたら意味が無い。だからみんな  
と分けて生きなさい、と。人間も自然も、そうやって今日まで生きてきたのだから、と。  
生まれてからずっと、リムルルはそうやって教えられてきた。  
同じ教えの中で生きてきた優しい姉だ。何も変わっていない姉だ。だからさっきの言葉も  
何かの間違いに違いなかった。説明すれば思い出して、すぐに分かってくれると思った。  
しかしナコルルは、首を横に振った。  
「リムルル落ち着きなさい。聞いて。この樹がね、世界を救うために、アイヌモシリを  
本当の姿へと導くのに必要になるのよ」  
「ホントの姿?」  
思いが届かずに困惑し続けるリムルルとは対照的に、ナコルルは柔らかに微笑む。  
「そう。私達人間に、住む場所も何もかもも全て奪われ、虐げられ、忘れられたカムイ達。  
そのカムイ達が昔と同じように、人間からの供物を受け取って、幸せに暮らせるのがアイヌ  
モシリの本当の姿だとは思わない?」  
もっともな言葉に、リムルルはうんうんと深く同意を示した。  
「そうだよ。わたしはちゃんとカムイに感謝してる。にいさまもコンルとかシクルゥとかと、  
とっても仲良くしてるよ?」  
「いい子ね、リムルル。そう。アイヌモシリ(人間の土地)はカムイモシリ(カムイの  
土地)の延長よ。尊いカムイの恵みがあっての人間。この身を大自然の治癒に捧ぐ間、  
私はその摂理をしっかりと見直したの。そして……気づいたのよ」  
微笑みを崩さず、両腕を一段と大きく広げたナコルルは、大樹を背にしてこう言った。  
「カムイを癒す……そう、アイヌモシリから旅立った者たちをも蘇らせるこの力を持つ  
私こそが、人間がカムイに残せる、最後の……最大の供物だって、ね」  
 
リムルルにはその瞬間の姉の姿が、大樹に磔(はりつけ)にされているように見えた。  
 
大好きな姉が、自分が作り出したというあの樹のお化けに、四肢を杭打たれているように。  
 
「違う……そんなの絶対ちがうよ!!」  
腰抜けになっていたリムルルは叫びながら立ち上がり、嫌な予感に後ずさりした。  
ナコルルは凍りついた笑顔のまま、この場所へと出てきたほら穴の方へと下ろうとする  
リムルルに近づいてくる。  
「リムルル……素敵な考えでしょ?」  
「……ねえさま?」  
リムルルは戦慄した。全く聞く耳を持たない姉に、背筋が寒くなった。  
姉は変わってしまっていた。考えが行き過ぎているのもそうだし、表情が凍てついている。  
一つの考えにとらわれ続け、自分を失っている人間の顔をしている。姉がそんなになって  
しまうなんて信じたく無い。  
しかしこちらに近寄ってくるのは、本物の姉の「身体」だった。抱きしめあって触れ合って、  
リムルルは本能的にそう理解している。  
だけど絶対に信じたくない。姉は何かに心を奪われているだけだ!  
「ねえさ……違う……あ、あんた誰よ!ねえさまから出てけ!」  
リムルルは自分の頭に閃いたその言葉を信じ、姉の形をしたそれにぶつけた。  
するとナコルルの歩みは止まり、その顔が酷く悲しそうな表情に「切り替わった」。  
「何で……ひどいわ、リムルル」  
しかしそれもつかの間だった。ナコルルは悲しみを装ったまま、再びリムルルへの接近を  
始めた。凍りついた表情が笑顔から悲哀に変わることで、作り物っぽさに拍車がかかって  
いる。リムルルの背に、さらなる悪寒が走った。  
「こんなに会いたかったのに……」  
うわ言のように、ナコルルは唇を動かした。  
「うぅ……ねえさま!お願い!止まって!元に戻ってよお!!」  
どうする事も出来ず、リムルルは逃げた。身体が本物な以上、傷つけるわけにはいかない  
のだ。それにこの場所は危険すぎた。考えてみれば、リムルルが昔から知るアイヌモシリと  
ここは全然別物だ。花は枯れないし、木々は生長しすぎている。自然の摂理から抜け出した  
自然など、もはや信じることは出来ない。残してきた3人の身も危ぶまれる。  
「逃げないでリムルル……こんなに大好きなのに」  
詰め寄る姉が、何事か言っている。  
「やだ……来ないで!」  
リムルルは、会いに来たはずの姉についに背を向けた。耳を塞ぎたかった。  
「リムルル……こんなに必要なのに……」  
「もう、もう何も言わないで!」  
「リムルル、好きなのに……愛しているのに……こんなに欲しかったのに!」  
姉の声がそう叫んだのが聞こえると同時に、リムルルは何も無い花畑の上で、またしても  
すてーんと転んだ。  
「痛いッ!あっ、冷たい?」  
しかし、手を突く地面の感触が違う。薄い氷の膜の中に、花々が閉じ込められている。  
こんな事が出来るのは一人しかいない。  
「コンル……!」  
どうして転ばされたのかは知れないが、仲間の到来にリムルルが心を撫で下ろそうとした  
その時だった。目指していたほら穴を支えていた土壁が大きな爆発を起こし、逃げ道を  
塞いでしまったのである。それに合わせて、何かがリムルルの身体の上にじゃらじゃらと  
落ちてきた。妙な金属音がする。その上、結構な重みがあった。  
リムルルは慌てて得体の知れないそれを払いのけて立ち上がり、正体を見た。  
「……くさり?」  
金属音の正体は、赤黒く錆びついた鎖だった。それが自分のいた場所を中継して、爆発して  
通れなくなったほら穴へと真っ直ぐに続いている。よく見ると、煙が立ち込めるほら穴の  
土くれには、何かが深々と刺さっていた。黒光りする、奇妙な金属の塊だ。ここからでは、  
その物体の正確な正体は分からない。  
しかし、もっと簡単に分かることがある。  
もしもコンルが氷を張っていてくれなければ、ああなっていたのは自分だったという事。  
そしてその鎖の余りを腕にぐるぐると巻きつけて金属片を操り、遠くから背後を狙う卑劣な  
行為を働いたのは、実の姉の身体だったという事だ。  
 
「く……!」  
ぎりぎりと歯をならし、リムルルは怒りに身を焦がした。右手をハハクルに伸ばし、臨戦  
体勢を整える。コンルがすぐ横に近づいてくる。爆発の前にこの場へと来ることができた  
らしいシクルゥの足音が、自分の後ろで止まったのも分かった。  
「ふたりとも!ここ、おかしいよ!それにあれ、ねえさまだけどねえさまじゃない!」  
 
「何ヲ訳ノ分カラヌ事ヲ抜カシオルカ?」  
 
険しい表情で二人に注意を促したリムルルの耳に突然、男とも女ともつかない、不快な  
声が響き渡った。  
あの日の神社で、家のすぐ近くの公園で、リムルルの命を狙った奴の声だ。  
「あんただったのね!やっぱり!!ウェンカムイ!さっさと出てきなさい!!」  
『違う、あれはウェンカムイではない……』  
一歩前に出たシクルゥが、リムルルに告げた。  
 
「えっ、シクルゥ、何て?」  
「ソウダ、其ノ通リヨおぉぉ!」  
『だめだリムルル、危ないっ!』  
 
三つの声が同じに重なった直後、音の末尾が光と爆音にかき消された。  
強烈な威力を持った一筋の破壊の閃光が、空からリムルルの目前へと降り注いだ。  
「うわあああっ!?」  
草花は丸焦げにされ、地面に大穴が開く。リムルルもまた、その爆発的な衝撃と轟音に  
よって遠くまで跳ね飛ばされた。幸いにも直撃は免れ、リムルルは受身を取ってすぐさま  
立ち上がった。  
「くぅ……ああ、シクルゥ!」  
ちかちかする目を擦り、リムルルは自分と同じに跳ね飛ばされたシクルゥに駆け寄った。  
だがシクルゥは息こそあるものの、呼びかけには応じない。それどころかぐったりと横  
たわって、立ち上がれるような状態でさえない。  
「うぅ……まさか、わたしをかばって!」  
「子供ひとりにそこまで肩入れするとは。驚きですな、尊き山のカムイともあろう御方が。  
いや……それとも、もうお気づきなのですかな?その娘の持つ力に」  
聞きなれない男の独り言に向け、リムルルはきっと鋭い睨みをきかせた。声色こそ違うが、  
その口調は明らかに天から聞こえてきたあの声の主のものだった。  
「あんた、何者なの?」  
声の主は空高くから舞い降り、鎖を握り締めたままのナコルルの横にふわりと着地した。  
腰よりも長い銀色の髪、雨雲の色をした布地に金の装飾を施したきらびやかな衣装。  
細く繊細な印象を与える整った顔立ち……そして、リムルルを陽の光よりも強く照らす  
金色の眼光。  
「我が名はシカンナカムイ。何よりも俊く美しい閃光のカムイの名……よもや忘れたわけ  
ではあるまい?リムルルよ」  
薄い唇を開き、男は自分の正体を明かした。  
「シカンナ……カム……イ……?」  
リムルルは確かめるように、大事にその名を呟く。知らないはずは無い。  
「その通りだ」シカンナカムイが満足そうに頷いた。  
「その右手に握られたメノコマキリこそがその証。華麗にして最強の技をカムイコタンに  
伝えた者の名を、使い手たる者が知らぬはずは無かろう」  
――嘘!心を読まれてる?  
構えをきつくするリムルルを見て、シカンナカムイが晴れ着の裾から出した人差し指を  
左右に揺らした。  
「少し違うな……人間の考える事など、たかが知れておる。それだけの事よの」  
世にも恐ろしい事を、さも当然のようにシカンナカムイは説明する。  
 
「さてリムルルよ、ここへ足を運んだ目的、無事に果たせて良かったのう」  
「無事?無事なんて!そんなワケないじゃない!ホントのねえさまを返せ!」  
「本当のねえさま、とな」  
反抗の意思を露にするリムルルの態度に、シカンナカムイが怪訝そうな顔をする。  
「ここに居るではないか。アイヌの戦士としての自覚を深め、我らカムイとの共存のため、  
その身を滅ぼす事もいとわぬ……最も美しき人間が。のう、ナコルル」  
感情の一切を失った、ビー玉のような目をしたナコルルが、こくりと首を振った。  
どうした事か、それを見たシカンナカムイの顔が途端にゆるんだ。  
「おおぉ……見よ、この美貌!漆で塗ったように艶やかな黒髪!絹の如き肌!素晴らしい!  
人間の中の人間、まさに芸術品よの」  
シカンナカムイはため息をつき、ナコルルの顎を両手で包み込んだ。  
「たまらぬ……この美しさ!カムイに抱かれ、永遠の生を受けるに相応しい」  
「あっ、ちょ、やめろっ!」  
リムルルが、腰のハハクルに手を回したまま、一歩前へとにじり寄った。  
「ねえさまに触るな!そんなやらしい目で見るな!」  
「美しいものを愛でるは、至極当然の欲求よ……」  
シカンナカムイは至近距離から、金に光る視線でナコルルの顔を舐め回した。  
「そして、その美しい存在を美しいままにしておきたいと思うも、また至極当然のこと。  
滅びに向かいし我らのアイヌモシリを救うためとはいえ……ナコルルの美貌までもが消える  
必要は無い。我はそう思った。だから我は、ナコルルの魂を肉体から切り離した」  
何という事もなしに、シカンナカムイは淡々と言った。  
リムルルは、頭の中が空っぽになるのを感じた。  
体じゅうから力が抜け、構えが自然と解ける。  
――魂を肉体から切り離す?  
なんだ、それは。  
それは入れ物から、中身を取ってしまうようなものだろうか……と、リムルルは思考とも  
呼べない状態で、心にぼんやり言葉を並べた。  
お茶碗の中に入っていた食べ物を出して、空の状態にしたようなものだろうか。  
中身が無い器。中身があってこその器。そこに何かが入っているから、初めて器は役に  
立つのに。飾っているだけじゃ、意味が無いのに。  
大事なだいじな、「ねえさま」という中身を取り出したら、それは一体何なのか。  
「ねえさま」の魂は、目の前に広がる花畑の上でシカンナカムイに弄ばれているねえさまの  
形の中には入っていない。カムイはそう言った。たった今。  
それなら、誰がその唇を動かして自分の名前を呼んだのか。  
抱きしめてくれたのは誰か。涙を拭ってくれたのは。笑いかけてくれたのは。  
「やっぱり……やっぱり違うじゃないか」  
うつむいたリムルルは、震える声を絞った。  
「ねえさまを操って、こんなおかしな土地を作らせて、あんなオバケみたいな樹を育て  
させて、おまけにわたしの気持ちまでバカにして」  
リムルルの周りの空気が、熱を帯びたようにゆらめいた。宙にとどまっていたコンルが  
ふわふわと波を受けたように漂った。草むらがざわりと騒ぐ。  
「今なら許したげるよ」  
リムルルが厳しい顔を上げ、飛び出しそうになっている何かを堪えた声で言った。  
「さっさとねえさまを元に戻して。わたしのねえさまに、勝手なことしないで」  
四季の無い、上っ面だけの平和を形にしたような花畑の空気が、リムルルの張り詰めた  
迫力にびりびりと揺れている。  
「ほおう、やはりその力は……我の見立てに狂いは無かったようだの。ふふ……」  
横目でリムルルの変化を見ていたシカンナカムイは、リムルルには聞こえない声で小さく  
言った。そして今度こそリムルルのほうを振り返ると声を張った。  
「早まるでないぞ!リムルル!我はアイヌモシリを天から見守る守護者。人間の営みを  
見守り、時として罰を与え、その身に余るであろう武器は奪い取った」  
これもそうだ、とシカンナカムイはナコルルの手に握られた武器を指差した。  
「これは罪人殺という。生死の狭間に迷った男が手にしていた、危険極まる、そしてあまり  
に美しい武器よ。使い手が鎖を持てば、その動きはどこまでも変幻自在。四方八方を無尽に  
飛び回り、山ほどの命を食らった。だから我は、これを奪った。他にも山ほどあるぞ。  
人の世には置いておけぬ、我らがアイヌモシリに滅びをもたらすであろう禁制の品々……」  
 
シカンナカムイは右手を差し伸べた。瞬間、毒々しげな桃色の閃光が走り、その手の上に  
奇妙な球体がふたつ現れた。  
リムルルは警戒を深め、二つの球体の動きを目で追った。人の頭ぐらいの大きさだろうか、  
奇妙な紫と薄緑の球体が手品のように回転し、行き交うたび、その向こうに透けるシカ  
ンナカムイの顔が歪んで見える。  
「これらは遠く海を隔てた地に、代々伝わっていた宝珠。緑に輝くこの石はパレンケストーン  
と呼ばれ、聖と闇……相対するはずの二つの性質を内に秘めておる。人間が内に秘めし  
二面性から生まれたか、アイヌモシリに訪れる朝と夜を示すのか。それとも、この世とは  
別の世界の存在を示唆しているのかも知れぬ……。ともかく、この石の闇の性質を利用しよう  
とした者がおり、破壊されても再生を繰り返す以上、我はこの石をアイヌモシリに野放し  
にしてはおけなかった。だから我が手の中にある」  
「わたしはその石からとんでもない真っ黒な気配しか感じないわよ!」  
「何を言うか。目が曇っているのではないか?リムルルよ」  
球を覗き込むシカンナカムイがにんまりと笑い、ひどい形に屈折した。  
「この色、この光!手元に置いてからというもの、衰えを知らぬこの輝きに魅せられる  
ことしきりよ。カムイをも誘うとは、アイヌモシリに置いておくには危険、人間には  
過ぎた玩具。無論、このもう一つ……タンジルストーンもまた禁忌と言えよう。リムルル、  
特別だ。ほれ、しかと見入るが良い」  
透明な中に複雑な光が瞬く紫色の石、タンジルストーンが、シカンナカムイの手を離れて  
リムルルの顔の正面にまでゆらゆらと近づいてきた。距離が縮むにつれ、肩の辺りがずしり  
と重くなるような、不気味な波動が強まってくる。  
「くっ……!こんなもの手元において、あんたは何で平気なのよ!」  
経験したことの無い、見つめるほどに気持ちが悪くなる眺めだった。リムルルは今すぐに  
でもハハクルを抜き、目の前の球体を真っ二つにしてしまい衝動にかられた。  
「こんな邪気で満たされた道具、カムイが持ってるなんておか……し……?」  
右手を愛刀へと伸ばそうとすると、タンジルストーンの放つ邪気がふっと収まった。  
そして、その代わりに強烈な別の存在感が内側から光となって溢れ出した。  
それを浴びたリムルルはぐらっと肩を落とし、言葉を失った。  
見た目は変わらない妖しい石の奥から、心に直接触れてくる大きな何かが伝わってくる。  
この世の全てを包み込むように、あまりに大きくて優しくて、手のひらの上の雪よりも  
儚げなそれ。  
「ねえ……さま!ナコルルねえさまぁ……あ、あぁ……!」  
リムルルの大きな瞳から、再び自然と涙がこぼれた。  
晴れ着が汚れることもいとわず、リムルルはがっくりと膝を突き、光輝くタンジルストーン  
を抱きしめようとした。しかしその両腕は空を切り、リムルルはばったりとそのまま倒れた。  
「出会えたようだの……リムルルよ。ナコルルの魂に」  
幾重もの光の残像を描きながら、タンジルストーンはシカンナカムイの手へと戻った。  
「タンジルストーンは、パレンケストーンと対をなすもう一つの秘宝。人の魂を封じる  
ことで闇の力を招くといわれた、邪な儀式の礎となる魔石よ」  
シカンナカムイが手のひらを返すと、二つの石が微動だにしないナコルルの肉体の周り  
を回転しながら上下し始めた。  
「ナコルルの魂は強い力を持っている。死に生を再びもたらし、カムイをも蘇らせ、滅びを  
食い止めるこの力……。しかしそれも、肉体が朽ちてはなんともならぬ。自らの肉体は  
癒すことは出来ぬようなのだ」  
明るい太陽の輝く空を、シカンナカムイは懐かしそうに見上げた。  
「あの日解放されたナコルルの力は強すぎた。この肉体では限界があったのだ。だから我は  
限界を迎えるその前に、ナコルルがポクナモシリへと逝く前に……魂をこの石の中に封じた。  
無論、ナコルルもそれを望んだ。喜んでの」  
「嘘だ、そんなの」  
「何?」  
伏せたままだったリムルルが立ち上がり、口を挟まれ不機嫌そうなシカンナカムイを見  
つめた。その顔は、涙と泥に汚れていた。  
「あんたはナコルルねえさまの事、何も知らないんだ。ねえさまは……自分の身体がどう  
なろうなんて気にするような人じゃないんだ」  
リムルルの声は、凍てつくような冷たさを伴っていた。傍らに浮かぶコンルが、不安げに  
揺れている。  
 
「ねえさまは助けを求める事なんてしない。手を差し伸べられても笑ってるだけで取ら  
ないよ。全部自分でしょい込んで、みんなのために自分の身体を犠牲にしちゃうんだよ。  
わたしだろうと、どんなに偉いカムイのあんただろうと、絶対に聞きいれるわけがないんだ」  
それに、とリムルルは付け加えた。  
「レラねえさまは言ってた。ナコルルねえさまはこの森で『寝ているんだ』って、ね。  
何で起きてるの?誰が……起こしたのよ」  
 
ひと時の沈黙。  
 
「ふっ」  
にらみ合いに、先に折れたのはシカンナカムイだった。  
「……くっ、ふふ。降参だ。反面というのはどうも口が軽い傾向にあるのかの」  
やれやれとでも言いたげに首を振り、含み笑いを残して言う。  
「お前の言うとおりだ。我はナコルルの力の源たる魂をパレンケストーンの力で奪い取り、  
封じた。あの大樹には先にも言った通り、魂からあふれ出るナコルルの力を満たしてある。  
いやはや、まさかここまで育つとはの」  
「一体何のためにそんな事してんのよ!」  
「お前がそれを知る必要は無い」  
シカンナカムイはたったの一言だけであしらった。  
「ただ……繰り返すようだが、ナコルルは我らカムイに与えられた最後にして最大の供物  
であったこと……そしてこのシカンナカムイに愛でられ娶られたこと、誇りに思うがよいぞ」  
「めとられ……?何を……言って」  
「む、やはりまだまだ餓鬼かの。我が言葉の片鱗から汲み取れというのが無理な相談だった、  
そういうことかの……。リムルル、こういうことなのだ」  
シカンナカムイはナコルルの背に伸ばしていた腕を脇の下に潜らせ、乳房を掴んだ。  
途端、「あっ」と、姉の口から変な声が漏れるのがリムルルの耳に届いた。  
「ふふ……先も言うたであろう、この身体、永遠のものとするに相応しい、と」  
ついに言葉の真意を悟り、リムルルの極限まで見開かれた目が点になった。  
だが、止めに入るには遅すぎた。  
「幾たび抱いても抱き飽きぬ……可愛がり甲斐のある、極上の躰(からだ)であるぞ?」  
くちゅっ。  
実の姉の唇が、カムイの唇に音を立ててふさがれるのを見ながら、リムルルは思った。  
――全てが狂っている。  
人の魂を、仲間のはずのシクルゥを、そして力をもぞんざいに扱うカムイ。  
魂を奪われているにもかかわらず、艶かしい声で鳴く姉の身体。  
愛すべき存在が、全て狂ってしまった。  
そして、やはり自分もまた……狂った。  
本当に、心から最後まで信じてやまなかった、信頼していた存在に。  
 
よもや、カムイに刃を向けることになろうとは。  
 
だがそんな躊躇を遥かに上回る本当の怒りが、リムルルの心を燃え上がらせた。  
 
「許さない……」  
姉は何のために生まれてきたのだ。  
力を持っているがために戦いを強いられ、心の奥底では常に孤独を抱え、本当の意味で  
女性らしい生き方など望むべくも無く暮らし、挙げ句は自分の身を犠牲にして守ったはず  
のカムイに、何よりも大切なものを奪われたというのか。  
「よくも……よくもねえさまをおっ!!」  
喉が潰れるぐらいの叫びと共に、リムルルの周囲が金色に爆発した。  
コタンに伝わる武芸の開祖とも言うべきカムイを前にしたところで、リムルルの恐れは  
完全に麻痺していた。敵意に満ちた瞳はぎらぎらと輝き、小さな身体を中心にして膨れ  
上がった怒気が晴れ着を躍らせている。  
「ウェンカムイめ、それ以上ねえさまに触るなあああああっ!」  
リムルルはハハクルを抜くことさえせず、シカンナカムイ目がけて駆け出した。  
 
「んちゅっ……ふんッ……不細工な攻めよ。我が極意の何を学んだというか」  
長い舌でナコルルの口の深くまでを犯していたシカンナカムイが、やっと唇を離した。  
「ナコルル。楽しみは後に取って置くもの……。さあ鎖を引け。まずはあの餓鬼を黙ら  
せるのだ」  
頬を染め、くちづけだけで果ててしまいそうだったナコルルの顔が、びしりと凍りつく。  
ナコルルはこくりと小さく主の言葉に応じると、握っていた罪人殺を五間(約九メートル)  
に迫ろうとしていたリムルルの足元目がけて素早く放った。  
地面すれすれを飛ぶ巨大な手裏剣が、乾いた鎖の金属音を響かせ、草花を刈り取ってゆく。  
かなりの速度だったが、リムルルはそれを難なく最低限の動作で飛び越えた。  
しかし、能面のナコルルの狙いはその一撃ではなかった。手元の鎖を掴んでくいっと軽く  
引くと、地面と平行だった罪人殺が空へと直角に向きを変えた。地面に垂れていた鎖もそれに  
続いて浮き上がり、再びリムルルの足元を狙うが、リムルルは横に跳んでそれをかわし、  
さらに前進する。  
――懐だ!近づいちゃえばこっちのものだ!  
リムルルは相手の武器の特性から、至近距離での闘いを挑むのが最善の策だと判断した。  
握り手があり、一つの刃がハハクルほどもあるとは言え、手裏剣は手裏剣だ。手元を離れて  
しまえば、あとはあの鎖を封じるだけで制御不能に陥るのは誰の目にも明らかである。  
立ち止まったままのナコルルまで、もう二間。  
あっさり巡ってきた好機を逃すまいと、リムルルは姉の両腕に手を伸ばそうとした。  
……しゅ……るるるっ  
その刹那、頭上高くから鎖の音が響き、リムルルはとっさに右へと横っ飛びに跳んだ。  
がすっ。  
リムルルの戦いへの本能が一瞬だけ勝った。リムルルが最後に草花を蹴り、踏みつけた  
小さな緑の足跡の上に、禍々しい四刃の手裏剣が突き刺さった。  
「言ったであろう、変幻自在と」  
ナコルルがひょいと後方へと飛びのくと、その後ろにつくシカンナカムイが代弁した。  
「そんな平凡な狙いが通用するとでも思うたか?」  
完全な仕切り直しだった。むしろお互いの立ち位置は、最初よりも広がってしまっている。  
だが、距離をとった二人の姿を見据えたリムルルは焦る素振りさえ見せず、シカンナカムイ  
の挑発にも乗らなかった。ただ、  
「いくよ、コンル」  
はっきりとそれだけを相棒に伝え、もう一度ナコルルへと走り出した。  
「フン、愚直な。その俊さだけは認めざるを得ぬが、馬鹿の一つ覚えだな。揉んでやれ」  
鎖を引いて手元に戻ったばかりの罪人殺を再び構え、ナコルルは命ぜられるままに勢いを  
つけて放った。  
鈍い色をした大手裏剣が草花を無残に切り裂いて、リムルルの胸へと近づく。  
真っ直ぐに飛んできたそれをリムルルはまたも飛び越え、脚を止めずに走り続けた。  
振り返らないまま、リムルルは背後からの強襲を想像する。  
それはいつ?どの方向から?読んで読めるものでは無い。相手は読みの外から狙うのだから。  
かと言って、コンルの力でこの距離から相手二人を攻撃するのも無茶だ。コンルの力は、  
リムルルにとって最大の切り札だ。そう易々と使っていいものではない。  
――まだまだねえさまの間合いだ。慎重に神経を張って、大胆に接近!  
姿勢を低くして走りながら、リムルルは自らを戒めた。  
姉の懐に入るまで、あと数秒。  
その間のうちに、手裏剣は再び自分を狙って飛んでくる。見えない位置から。  
確信を胸に、リムルルは聴覚とギリギリに絞られた視覚だけに全神経を傾けた。  
ざっざっざっざっ……  
規則正しいこれは、自分の足音。用は無い。  
ふっ、ふうっ、ふっ……  
一番近いこの音は、自分の吐息。まだまだ余裕の音。これも用は無い。  
極限にまで狭めた視野に収めたナコルルとウェンカムイの姿が、次第に大きくなり始める。  
 
足音。吐息。動かぬ二人の姿。  
――飛んでくる、必ず!  
足音。吐息。動かぬ二人の姿。  
――鎖の音!聞こえるはず!  
足音、吐息。動かぬ二人の姿。  
――研ぎ澄ませ!  
足音、吐息。動……いた!  
――ねえさまの手元!  
ナコルルは、地面に垂れていた鎖を振りたわませて叩きつけた。鎖に生じた幾つもの波が  
のたうちまわり、リムルルの足元へと向かう。  
すかさずリムルルは地面を蹴り、宙へと舞い上がった。足に絡み付こうとする鎖を次々に  
踏み散らし、逆にその反動を利用して、空中を走るように一気に間合いを詰める。  
「ほおう。達者な身のこなし。だが……そこまでだ。罪人殺に狙われたが最期よ」  
シカンナカムイが言うや、能面のナコルルは鎖をじゃらっと逆手に持ち替え、思い切り  
引っ張った。  
「うわっ……とお!」  
器用な綱渡りを演じていたリムルルの身体が、張り詰めた鎖に持ち上げられ、ぽーんと  
高くに投げ出された。もっとも、この程度でリムルルは集中を切らしてはいない。  
……しゅるるるっ!  
小さな耳に傾けられていた強い意識が、背後に迫る大手裏剣の近づいてくる音を捉えた。  
その軌道は、宙に放られたリムルルの身体が最高点に到達したところを正確に狙っている。  
誰しもが自分の身体を制御不能になる空中。  
そこを狙った必殺の一撃。  
理に適っている。地上でこちらを見上げているシカンナカムイが、にんまりと白い歯を  
見せるのもわかる。  
だがリムルルは、危機の迫る背中を振り向こうとはしなかった。ただ耳をそばだて、戒め  
通り音に集中していた。そして、頃合を見計らい――  
「コンルっ!今!!」  
鋭い合図。  
リムルルの足の高さに漂っていたコンルが、美しい結晶の形からばきばきと姿を変え、  
空中に氷の足場を作りだした。  
「よいしょっと!それっ!!」  
人一人が乗れる大きさのそれを踏み台にして、リムルルは狙われていた最高点をゆうに  
上回る高さへと跳んだ。ナコルルの操る罪人殺が、コンルが用意した氷の足場に空しくも  
深々と突き刺さる。  
「残念でしたっ!狙いは完璧だったけどね!」  
「なっ……何だと?!むう、ナコルルっ!」  
展開を全く予想しなかったのか、シカンナカムイがナコルルを急かす。しかし透明なコンル  
の氷は罪人殺をしっかりと食いしばり、空中に固定してしまっている。引っ張ったぐらい  
では落ちてこない。  
諦めたナコルルは自分の手に巻かれた方の鎖をほどき、それを振り回そうとした。  
「させない!コンル、槍だっ!いやりやりやりやりぃっ!」  
リムルルが叫び、コンルの身体が強い白に輝く。すると、コンルとリムルルの周りに無数の  
氷柱が次々に姿を現し、何の迷いも無しに地面へと勢いよく降り注いだ。  
しかもその矛先はシカンナカムイには向いていなかった。  
狙いは全てシカンナカムイの前、鎖だけで戦おうとしているナコルルへとつけられていた。  
「馬鹿な!」  
異変に気づいたシカンナカムイが叫んだ時には、美しく鋭利な氷柱は、迎撃の準備も整わ  
ないナコルル目がけてどかどかと突き刺さった。  
「り……リムルル貴様っ、何故実の姉を、な、ナコルルっ!?」  
血相を変えてナコルルの前に躍り出たシカンナカムイは、それ以上の言葉を失った。  
ナコルルを突き刺したかに見えた氷の槍は、ナコルルの手元から足元に垂れていた鎖の  
穴ひとつひとつを寸分違わず突き刺し、地面にがっちりと固定していた。どの槍も際どく  
ナコルルの身体を避け、傷ひとつ与えていない。股の下を潜っているものさえある。  
空中と地面の両方に罪人殺を固定されたナコルルは、命令を遂行できずに立ち尽くすのみ  
となっていた。  
それは、驚くべき技を見せ付けられたシカンナカムイも同様だった。神技を繰り出した者の  
存在を思い出して宙を仰ぐ頃には、氷の槍よりも激しい勢いを伴ったリムルルの土足が、  
白く高貴な顔に容赦なくめり込んでいた。  
 

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