「ふぃ〜、食った食った」  
「今度のも、すっごい、すっごい美味しかったよ!」  
リムルルは口の周りを拭いながら、にっこりと真っ白な歯を覗かせた。  
この瞬間!最高だ。ちなみに、作ったのはただのチキンラーメンなのだが。  
「ねえにいさま?どうやってあんな一瞬で作っちゃったの?」  
トイレから出てコタツに入る頃には、部屋中に美味そうな香りが  
漂っていたのが、衝撃的だったらしい。どんぶりをコタツへと  
運んでいったときの、あっけに取られた表情が忘れられない。  
「ふふふ・・・実はにいさまはすごい料理人でね」  
「! やっぱり!すっごいなぁ〜、わたしにもこれ教えて!」  
「これは秘伝なのだ・・・一子相伝の」  
「いっしそうでん、ってなに?」  
「えーとまぁ、とにかく難しくて、そう易々とは教えられんの!  
まずは皿洗いから!」  
「えーっ、つまんない!」  
つまらない嘘を信じ込んで、リムルルはだだをこね始めてしまった。  
今度教えてやらねば・・・。  
 
・・・・・・  
 
テレビの前で、半身をコタツに入れたまま眠りこける兄の姿を、  
リムルルはコタツの反対側から覗いていた。  
『ご飯を食べると眠くなるのは、大人の人も一緒なんだよね・・・』  
ぐうぐうと寝息を立てる兄の姿を、まるで小さな子供の子守をしている  
ような、そんな気分でリムルルは黙って見守っていた。  
『ふふっ、やっぱり疲れてたんだ・・・』  
怪我をしてからというもの、毎日まいにち傷の具合を看てくれる、優しい兄。  
『きっと、わたしの治りが早いのは、にいさまのおかげなんだ』  
リムルルは、もうすっかり良くなって、一目では分からなくなった腕の  
傷痕をすーっと指でなぞりながら、看病してくれる兄の様子を思い出した。  
 
消毒液がしみて少し目をつむっただけでも、心配して薬を塗る手を止める兄。  
日に日に良くなる私の体を、まるで自分のことのように喜んでくれる兄。  
不安に駆られて弱気になった私を、本当の優しさで導いてくれた、兄・・・。  
『すごく、すごく嬉しいんだよ・・・?』  
思い出すだけで、心がぽかぽかとなる。体に元気が戻ってくる。  
『怪我しちゃってるのに、毎日が楽しいの・・・ワクワクしちゃって』  
もう一度、親愛なる兄の姿を覗く。何かむにゃむにゃと言っているのか、  
唇をもごもごと動かすと、またすぐに、んがっとおかしな寝息を立てた。  
子供っぽいその仕草に、リムルルはふふっと静かに笑った。  
『にいさま・・・ありがとう・・・』  
その心からの感謝が、想いを超えて声となる。  
「だいすき・・・だよ」  
小さな声で独り言のように、そうリムルルがつぶやくと、  
 
とくっ・・・とくん・・・  
 
『あっ、まただ・・・』  
リムルルは、不意に鼓動が早くなるのに気がついた。  
『最近、考え事してると・・・これ・・・どうしたのかな』  
原因のよく分からない胸騒ぎに、リムルルは溜め息にも似た深呼吸をした。  
だが、やはりちっとも効果が無い。寝そべってみても、じっとしていても  
抑えることのできない胸の高鳴り。  
『けど・・・ちっとも嫌じゃない』  
異変に気づいた当初こそ不安はあったものの、最近ではこの不思議な  
感触が、かけがえの無い物のような気がしてきたのだった。  
『きっと理由があるんだ・・・わたしの中で、何かが変わったんだ』  
その「何か」とは、何なのだろうか。皆目見当つかないリムルルは  
コンルに尋ねたこともあったが、よく分からないとはぐらかされて  
しまった。兄に訊いてみたときは・・・やけに心配してくれるその姿を  
見たら無性に恥ずかしくなって、途中なのに自分でごまかしてしまった。  
 
『これは・・・わたしの問題なんだね、きっと・・・こっちに来て、探すものが  
増えちゃった』  
「何か」、そして「ナコルル」。2つになった探しもの。手がかりの無い  
姉を探さなくてはならず、その上、正体さえ分からない物まで追い求めて  
行かなくてはならないのだから、リムルルにとっては大変な重荷が増えた  
はずだった。だが、彼女の心はどこまでも抜ける青空のように爽快だった。  
むしろ、もう1つの探し物である胸騒ぎを与える「何か」そのものが、  
リムルルの体と心をより一層強く、明日へと導いているような心地さえ  
覚えていた。  
「がんばるぞぉ〜!う〜〜んっ!!よしっ!」  
「むぅ〜・・・んん・・・」  
突き動かされるように気合を込めて背伸びをしたリムルルの口から漏れた  
言葉が、兄の耳に届いたらしい。寝返りを打ち、小さなうめきをあげる。  
『あちゃ・・・起こしちゃった?』  
悪い事したなと思いつつ、はたと口を押さえると、リムルルはじっと  
気配を殺した。  
「むぐ・・・ぅ?・・・ん・・・ご〜っ・・・」  
その甲斐あってか、兄はもそもそと肩の辺りまでコタツの布団の中に  
潜り込ませると、再び寝息を立て始めた。  
「ほ・・・」  
リムルルは、安心しきったようにため息をつき、伸ばしていた脚を  
引っ込めると、コタツの隅に移動した。小さなコタツの中で、大きな  
兄がその身を全て埋めてしまえば、当然ながらリムルルの居場所は  
制限されてしまうからだ。しかし隅っこであろうと、コタツの脚を  
太股で挟み込むようにして座っていれば、ちゃんと暖は取れるものである。  
『にいさま、ゆっくり休んで・・・ね?』  
たくさんの優しさをもらっているリムルルの、心ばかりの恩返しだった。  
 
「ふぅ。あ、そだ!」  
リムルルはぽんと手を合わせると、コタツの上に置かれたカゴの中で  
山盛りになっている、みかんの存在を思い出した。甘くておいしいその  
果物は、いくつ食べても良いという事になっていた。現に昼食後、兄と  
1つずつ食べたのだが、  
『いくつ食べても美味しいんだよね〜、これ!』  
冬の果物が持つ不思議な魔力にかかったかのように、リムルルはその  
魅力的な明るい緋色の果実に手を伸ばした。  
「よいっしょ・・・あれっ・・・よよよ!」  
だが、届かない。リムルルが座っているコタツの脚とは真逆の場所に、  
そのカゴは置かれてしまっていたのだ。横着して思いっきり腕をぴーんと  
伸ばすものの、小さな手は空を握るばかりである。もぞもぞと身体を動かし、  
もう一度手を伸ばしたその時。  
「! んゃ?!」  
股のあたりにおかしな感触がして、リムルルは小さな声を上げた。  
「・・・?」  
コタツの脚が、身体をずらした拍子にリムルルの股を軽く突いたのだ。  
「あ・・・なんだ、びっくりした・・・」  
背筋を走るような、股のあたりがじわりと暖かくなるような。  
つい、みかんを手に取ることさえ忘れてしまう程の、未知の感覚。  
「・・・・・・何だったんだろ」  
しばらく考えて、暖気が漏れないよう少しだけ布団をまくると、  
おそるおそる、もう一度陰部をコタツの脚に近づけた。そして、  
くにゅっと、柔肉が形を変えた瞬間。  
「っ・・・?」  
再び、先程の感覚が陰部から広がった。その刺激が加わるたび頭が  
ぽうっとなり、少し腰が引ける。だが、腰が引けても無意識のうちに  
再び突き出して、その刺激の中に少女は自らを放り込んだ。まるで、  
その刺激の正体を探るかのように。  
 
「・・・ぁ・・・・・・んっ」  
断続的に、ぐい、ぐいと、股ぐらをコタツの脚に押し付ける。そのたびに、  
頭の中でオレンジ色のイメージがぽっ、ぽっと光を放つ。全身の血の巡りが  
高まり、頭に血が上ったような、のぼせたような感じだ。  
「あっ、あっ・・・あン!」  
肩が、僅かな刺激に対してもぴくん、ぴくんと跳ねる。  
「んっ、んっ!」  
また、痛みを感じたときのように目をぎゅっと閉じ、その刺激に耐える  
こともあった。だが、何度も腰を滑らし、その刺激がリムルルに何を  
与えてくれるのかを少しずつ身体が学習していくにつれ、それが明らかに  
拒絶するべきものではないのが分かる。そして、幾度かの前後動を終えたとき。  
「あっ・・・これ・・・・・・うんっ」  
リムルルはその行為が与えてくれるものを、しっかりと感じた。  
「・・・き、気持ちいい・・・のぉ」  
恐れる必要は無かった。そこには、甘美な快感だけがあるのだから。  
リムルルはコタツの脚を両手で掴むと、意を決し未熟な秘部をしっかりと  
コタツの脚に押し付けた。  
「・・・うんっ!」  
思惑通り、何となく腰を突き出したときとは違う、像のはっきりとした  
快感が股間から溢れ、リムルルの頬をピンクに染める。  
「ふぁ、あ!・・・んっ」  
しかし、その刺激に自らの口から漏れる今まで聞いたようなことの  
ない声に、リムルルは内心どきりとした。  
『やっ、やだ!わたしっ・・・どうしちゃったの?』  
その甘い声はテレビの音声にかき消され、決して自分以外に聞こえる  
ことは無かったが、性的な知識に疎いリムルルにでさえ、その獣じみた  
声色は直感的にある感情を呼び起こさせた。  
『い、いやらしい・・・よぉ・・・』  
ならば口を閉じて、そんな声が漏れないようにするなり、両手で覆うなり  
すればよかった。だがそれほどまでに、淫らに変身してゆく自分を強く  
感じていながら、少女にはそれができなかった。  
 
「うぅん・・・やぁ・・・あっ、ふぅ・・・ん」  
『すご・・・く、すっごく気持ちいい・・・何、なんなのぉ・・・?』  
息を少し荒くしながら、リムルルは自分に問いかけた。しかし、その答えを  
与えてくれるものはあるはずもない。意思とは関係なく動く腰は、ただ  
快感を貪る方向へと流れゆく。単純な腰の往復動作には、いつしか強弱が  
与えられていた。  
「ふぁ・・・んん・・・・・・ひゃ!・・・あぁっ・・・ぁ」  
腰に入れた力を緩め、刺激から少し距離を置き、その直後にぐいっ、と  
再び陰部を強く押し付ける。  
「ひっ!・・・ん・・・ふあぁん・・・うっ・・・うぅん!・・・はぁっ、あはっ!」  
断続的に背筋を駆け上る刺激が、自慰行為によって得られる快感を  
はっきりと浮き彫りにさせた。その動きはぎこちなかったが、  
腰をくねらせるリムルルの頬はさらに紅潮し、そして水面近くを泳ぐ  
鯉のように、顎を上げはくはくと息を荒げ始めていた。  
「はっ・・・はっ・・・んあ・・・あふっ、うぅ・・・きもちっ・・・いい・・・これえぇ!」  
小さな部屋に、リムルルの喘ぎが生まれては消えてゆく。この奇妙な  
行為を始めてからどれだけの時間が経ったのか。あいも変わらず、  
リムルルは細い腰をもぞもぞと振っていた。快感は蓄積され、身体が  
慣れるにつれその味は深まってゆくようで、すでにリムルルの思考は、  
甘い体験がもたらす興奮と快楽でとろとろに溶かされていた。  
「ふぅ〜っ、あはぁ・・・くうぅん」  
無垢な少女であるからこそ、その行為に歯止めを利かすものは無い。  
子犬の甘える声のような、小さなあえぎと共に漏れる熱の篭った吐息。  
その吐息が、狭い部屋を熱くしているような錯覚さえ感じる。そして、  
押し付け擦り付ける秘部から、休むことなくこみ上げる快感と熱。  
『すごい・・・すごいのぉ・・・熱くって、きもちくて・・・溶けちゃい・・・そぉ・・・』  
中からも、そして外からも与えられる熱。それはリムルルの思考を奪い、  
幼さの残る汚れを知らぬ少女を自慰行為へと駆り立てるには十分すぎた。  
顔には玉の汗が輝き、ぎゅっ、ぎゅっと敏感なそこを押し付けるたびに  
リボンがふわふわと揺れ、はらりとこぼれた前髪が、可愛いおでこにへばりつく。  
 
「ふぅー、ふーっ・・・はぁー、あっ!はああん・・・!」  
『気持ちいい・・・きもちっ・・・いぃ・・・のぉ!』  
リムルルの頭の中で、その言葉だけが閃いては消えていた。  
だが、宙を泳ぐ涙に潤む視線が、ふとこちらに背を向け眠る兄の  
姿を捉えたその時。荒波に揉まれていた理性の欠片が頭をもたげた。  
『にいさま・・・!そだ・・・やめな・・・きゃ。やめなきゃ!』  
こんないやらしい姿を兄に見られたら、蔑まれてきっと愛想を尽かされて  
しまうだろう。熱を帯びたリムルルの背筋に、快感の代わりに戦慄が走る。  
『それだけは、それだけは・・・嫌っ!』  
右も左も分からない世界。その中で、私の手を引いてくれる、たった一人の  
家族。誰よりも大好きな、大事なひと。心から慕うそのひと・・・  
『にいさまにっ・・・ばれた・・・ら・・・。わたしの・・・こんないやらしいとこっ、  
にいさまが・・・見てた・・・らっ・・・!にいさまが・・・にいさまが・・・!』  
「あっ・・・ふああ・・・んんんん〜っ!」  
さっきと比べても明らかに大きな快感の波が、突如として少女を飲み込む。  
それは皮肉にも、兄の笑う顔が脳裏に浮かんだ瞬間だった。背筋を  
バチバチと音を立てるかのように快感が駆け上り、その衝撃は頭の中で  
火花を散らすかのようである。あまりに強烈な快感に大きな声が出そうに  
なるのを、唇をかみしめて必死に飲み込んだ。  
『やだ・・・!こんなの・・・こんなのぉ!気づかれ・・・っ・・・ちゃうぅ!』  
焦りだけが空回りする。少女にとっては、絶体絶命の危機のはずだった。  
だが制止を求める理性の根幹にある兄の存在が、どういうわけか行為に  
拍車をかけてしまう。  
「やっ・・・んん・・・あ!はぁ、はぁ・・・ふあぁぁ・・・!」  
広い背中を見るだけで腰の動きがせわしなくなり、脳裏に浮かぶ兄の顔が、  
閉じた口を再びだらしなく開けさせた。心の中で、幾度も叫ぶ。  
『にいさま・・・たすけて・・・にいさまぁ・・・やっ・・・止まらない・・・!  
ねぇ、にいさまぁ!どうして?あぅ・・・にいさま・・・お願い・・・  
たっ、たすけ・・・てぇ』  
この快感の螺旋から、自分を出口へと導き出して欲しかった。しかし  
その思いとは裏腹に、頭の中でほとばしる閃光は眩しさを増してゆく。  
そう、助けを求めれば、助けを求めるほどに。  
 
「うっ・・・うぅ・・・ひゃ!あぁ・・・いやあ・・・ぁ」  
理性はすでに、荒れ狂う海の中に姿を消していた。そして。  
「に・・・にぃ、さまぁ・・・」  
理性以外の「何か」によって、リムルルの口が兄の存在を求めたその瞬間。  
じわぁ・・・  
「あ・・・っ」  
絶え間なく快感を与え続けていたリムルルの秘部に、異質な感触が生まれた。  
押し付ける股ぐらの奥で、何かが湧き出たような、そんな感じだ。  
「はぁ・・・はぁ・・・・・・?」  
リムルルは息を荒げたままコタツからその身を引くと、ズボンの中へと  
右手を滑り込ませ、ショーツの布地に触れた。  
「・・・!!」  
リムルルは思わず息を飲んだ。おろしたてのショーツに、生暖かいしみの  
感触があったのだ。  
『うそ、うそぉ!』  
この歳になってお漏らしをするなんて、信じられない。あまりの快感に、  
尿意さえ感じる暇も無かったのだろうか?  
『そんなわけない・・・!』  
よくよく考えてみれば、食事の前にトイレに行ったばかりだ。  
現に、今はちっともトイレに行きたくない。  
『そ、そうだよ・・・おかしいよね?』  
冷静さを取り戻したリムルルはズボンを膝まで下ろすと、火でも焚いたか  
のように熱くなっている股間をまじまじと見つめた。すると、確かに白い  
ショーツには、普段は尿が出る部分を中心に、はしたないしみが広がって  
いた。外気に触れ熱を失った液体が、ひんやりと再びその存在を彼女に示す。  
「何なのよぉ・・・」  
不安にかられたリムルルは、ショーツの中に指を差し入れた。  
にゅるり・・・  
「ひゃ!」  
小さな肩がびくりと跳ねる。なぜなら、排泄を行うためのそこに、  
尿とは全く違う粘り気を持った液体の感触があったからだ。  
 
「え・・・えぇ・・・?!」  
予想外の出来事に震える細い指が割れ目をなぞり、遠慮がちにその間へと  
浅く指を埋める。  
くちっ・・・ちゅく・・・  
唾液のような、くちゃくちゃとした行儀の悪い水音。リムルルのそこは、  
やはり生暖かい粘液で潤されていた。恐る恐るショーツから指を取り出し、  
中指と人差し指を見つめ、震える2本の指を開くと、  
「あ・・・あぁ・・・」  
その指の間に橋を渡すかのように、透明な粘液がぬらりと糸を引いた。  
繊細な飴細工のように光を受けて指を照らす、何よりも純粋な快感の証。  
「や・・・やだぁ・・・何これぇ」  
だが、その正体を知る由もないリムルルの顔から、さーっと血が引いてゆく。  
『まさか・・・びょ、病気になっちゃったの?』  
青ざめた表情でショーツを下ろし、火照りのとれない秘部を覗き込んだ。  
その視線の先、なめらかな恥丘には、柔らかな栗色の産毛が僅かにだが  
生え始めていた。黒々とした姉の陰毛を見るたびに焦りと憧れを感じて  
いたが、自分にも訪れた体の小さな変化に初めて気が付いたときは、  
姉に一歩近づいたような気がして、嬉しかったのを覚えている。そして  
さらにその下にあるのは、ふっくらとした、柔らかな2つの無毛の土手。  
普段は子供のそれのようにぴたりとその口を閉じ、未熟な花を見せまいと  
しているが、今日は様子が違う。充血した秘肉が、僅かながら割れ目に  
そって顔を出しているのだ。  
「やだ・・・これ、気持ち悪いよぉ・・・」  
その場に座り込みゆっくりとM字に両脚を開くと、べったりと付着して  
いた愛液がくちゅりと糸を引きながら、陰裂が小さく開いてゆく。そして  
細く美しい脚を開ききったとき、汚れを知らない紅色の花弁が広がった。  
「や・・・やっぱり・・・なんか腫れちゃってる!」  
不安にかられたリムルルは、それが如何にあられもなく扇情的な仕草  
なのかも知らず、自らの指でつるりとした土手を左右に押し広げ、  
さらにくぱあっと口を開かせた。  
 
男を誘うようなその姿勢を維持し、首を曲げてリムルルがまじまじと  
観察するそこでは、赤く充血し肥大した花びらが蜜を浴び、てらてらと  
輝いていた。その肉ひだに触れると、柔らかい感触と共に生温かい  
透き通った蜜が指を湿らせ、糸を引いた。  
「あぁ・・・。こっ、ここ・・・特にひどいよ・・・」  
そう言って見つめる先は、未熟な突起であった。小さな蕾がぷくりと  
おできの様に膨れ上がり、包皮を盛り上げ、鼓動に合わせてヒクヒクと  
疼いているようにさえ見えた。心配になって指で触れると、痛いような  
むずがゆい様な、およそ快感とは程遠い刺激がリムルルを襲った。  
「ひゃん・・・!」  
すっかり獣欲から覚めてしまったリムルルは、先程まで押し付けていた  
部分が特にその突起へと集中していたことも、そしてそこが、あれ程の  
快感をもたらす部位であることに気づくはずもなかった。包皮の上からの  
僅かな接触であっても、初めて直接触れるそこが発する刺激は決して  
甘美なものではなく、ただただ少女の不安を煽る材料でしかない。  
愛液を両手で拭うと、リムルルはふらふらと立ち上がってショーツを  
穿いた。布地に染み込んでいた乾きづらい粘液が、再びひやりと陰唇を  
いたずらに撫でる。  
『あんな・・・動物のような声、出しちゃって・・・』  
落胆する心に影を落とすのは、自分の発した喘ぎの声。  
『ここがこんなになるまで、気付かなかったなんて・・・!』  
未知なる陰欲に溺れ、自分を見失ってしまったという事実が、小さな肩に  
さらに重くのしかかる。蒼白となった頬を、後悔の涙が伝った。  
「と・・・トイレいこ」  
兄を起こさぬよう、力なくぱたりと扉を閉じ、下穿きを下ろして便座に  
座ると、リムルルは涙を拭いながらため息をついた。  
「ちゃんと出るのかな・・・」  
不安な気持ちを抑え、僅かな尿意をふりしぼる。  
ちょろ・・・・・・しゅわあぁぁぁ・・・  
いつもと何ら変わらない様子で割れ目を飛び出した尿は、小さな弧を描き、  
便器の中に溜まっていた水を黄金色に染めながら、控えめなしぶきを上げ  
消えていく。  
 
「ほ・・・よ、よかった・・・おしっこでた」  
子供のような台詞を小声で言うと、リムルルは安堵の表情を浮かべた。  
やがて噴水が勢いを失うと、兄に言われたようにティッシュで残った  
尿をごそごそとふき取った。そしてもう一度、恐る恐る股間を見つめる。  
「あ・・・りゃ?」  
リムルルは目を丸くした。なぜなら、すっかり興奮が冷めてしまったせいで、  
陰部がいつもの状態に戻っていたからだった。膨れ上がっていた蕾はなりを潜め、  
二枚の土手はぴたりと閉じられており、軽く脚を開いてもピンクの花弁が  
陰裂からはみ出ることは無く、ほてりもいつの間にか止んでいた。  
「なおった・・・なおった!」  
トイレから飛び出しうーんと伸びをすると、急に眠気と倦怠感が襲ってきた。  
初めての自慰行為は、予想以上に身体を疲れさせていたのだ。だが、  
「もう角っこはいやだ・・・どうしよ」  
恨めしそうに、視線でコタツの四隅を突付く。兄は未だにぐぅぐぅと  
寝息を立てるばかりだ。  
「にいさま・・・」  
その安らかな寝顔と、篭り切った部屋の湿った空気が、さっきの出来事を  
思い出させる。なぜ、兄の存在があれほどまでに自分を狂わせたのか。  
理性を失い、腰を振り乱し、異常にさえ気付かないほどに。心の中にある  
もやもやが、胸をきつく締め付けた。そして、どきどきと心臓が再び  
高鳴り始める。いつもよりもずっと強く、切なく。  
「わかんない・・・わかんないよ・・・」  
今日はおかしい。自分の身体が、自分の身体ではなくなっているようだ。  
「はぁ・・・」  
深く大きなため息をつき、リムルルはコタツの中へ潜り込んだ。  
もちろん、兄の横へ。  
「にぃ・・・さま」  
間近で兄の顔を眺めながら、リムルルはあっという間に眠りへと落ちた。  
ぎゅっと大きな手を握りしめながら。  
 
 
リムルル第2章 おしまい  
 

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