彼女を牢屋から逃がした。しかし私の力は限界に達していた。  
 
賭けるしかない。こちらの世界で姿を保つことが困難になる前に・・・  
 
ある人が彼女を守ってくれると信じた。きっと守ってくれる・・・  
 
 
 
「コンル?君の名前はコンルって言うのかい?」  
 
「はい。正確には(コンル)と言う名前を付けてもらったというべきでしょうか」  
 
「誰に?」  
 
「勿論、私の主であり友達であるリムルルと言う女性です。」  
 
「よし、じゃあ俺がそのリムルルって子の居場所まで連れてってやるよ」  
 
「はい!宜しくお願いします。」  
 
「俺もどんな娘か知りたいしね。きっと強い娘なんだろうね・・・」  
 
「いえいえ、これから成長していく人ですよ・・・」  
 
 
 
「コンルゥ!まだだ!まだ終わってない!」  
 
「決着をつけましょう。私自身の問題、そして私の戦いを「過去」は勿論、「現代」にまで巻き込む事は許されません」  
 
 
サムライスピリッツ外伝 もうひとつの物語  
 
 
「何てひでえ雪だ。天候は最悪。全く持って最低な日だよ」  
最高に悪天候の今日、とにかくバイクを走らせて自分の家のアパートに帰る事だけを考えていた。  
時間は夕方。まもなく今日が終わろうとしていた。  
大学レポートも提出完了、後はアパートに帰るだけ・・・のはずだった。  
「俺は夢でも見ているのか?」  
自分の自宅前に一人の女性が倒れていた。背は少し高く、白く透き通るような肌を、  
白い下地に水色の刺繍を施した、豪華な晴着で包んでいる。  
背の高さを強調する流れるような体のラインには、女性らしさを 演出する豊満な胸がたわわに実り、その胸元には、数珠状の ネックレスがきらりと輝いている。  
見た目は優しそうなお嬢さんといった雰囲気を漂わせている。  
「って、彼女の特徴を語ってどうするんだよ俺」  
とにかく女性に声を掛けてみる。しかし返事がない。このままじゃ凍死してしまう。  
「はあ、しょうがないなあ。何だかドラマ見たいな展開だよ。」  
仕方なくバイクから降りて女性をおぶってアパートに運ぶ。部屋を綺麗にしておいて良かったよ。汚かったらヤバかったかもしれない。  
彼女をベッドに寝かせて、何かをするわけでもなくぼーっとする。することがないからだ。  
その時電話が鳴った。着信相手を見る。  
「・・・姉貴かよ」  
 
特に何もする事もなかったので電話に出る。電話から第一声の声が聞こえてきた。  
「よっ!彼女いない歴20年。おめでとう〜〜」  
「・・・姉貴。それしかないんなら切りますよ」  
色姉さん。俺よりも一つ年上で現在、他県で就職中である。暇があれば電話をかけてくる人である。  
「で、冗談はさておいて先週はあんたの家に泊めてもらって悪かったね。  
一人で生活するのも楽じゃないのにわざわざ私の分まで準備してくれて・・・」  
実は先週、俺の県で仕事の研修があったらしく、色姉さんは2、3日俺の家を寝泊まりにしていたのだ。  
「それは別に構わないけど、姉貴、お願いだからあなたが持ってきた着替えを俺の家に残さないでくれよ〜」  
実は姉貴、俺の家に来た時に着替えの準備をしたのはいいが何と持って帰るのを忘れていってしまったのだ。  
しかしこの県でお気に入りの新しい洋服をちゃっかり買っていってるし。その洋服はちゃんと持ち帰っているのだ。  
普通、逆じゃないのか?  
「まあいいじゃん。時間があった時に取りに行くからさ。それに何かの役にたつかもしれないじゃん」  
 
「何の役に立つんですか!」  
そういうと姉貴は自信満々に答える。  
「例えば女性限定の店に入る時に女装して入ったり、学園祭の出し物で女装に変装してみんなを笑わせたり」  
「女装限定かよ!」  
マジでやめてくれ。  
「おっと、車の運転をしながら電話をしてると罰金を取られるらしいからそろそろ切るわ」  
「危ないからやめましょうね。姉貴」  
「じゃあ今度からメールだけにしておくか」  
「メールはもっとダメです!」  
 
冷蔵庫を開けてみる。まあ今日の分はあるだろうな。彼女の分も考えてギリギリだな。  
彼女はまだ眠ったままだ。このまま目を覚まさなかったらどうしよう。  
そう考えながらもキッチンに行き簡単な料理を作り始める。  
何故か出来上がったのはご飯と味噌汁と玉子焼き。  
「何か夕食なのに無難な料理だよな」  
そう思いながら、部屋に戻って彼女が起きるのを待つ。飯は彼女と一緒に食べてもいいかもしれないな。  
「俺も暇な人間なんだな・・・」  
「う、う〜ん・・・」  
「?」  
不意にかすかな声が聞こえた。もしかして・・・と思い俺はベッドに視線を向ける。  
すると彼女がびっくりしたように起き上がった。状況がしっかりと飲み込めていないらしく俺の顔を見て驚いている。  
「こ、ここは?もしかして夢の世界ですか?」  
「おいおい、寝ぼけているのかい?ここは夢でも何でもないぞ」  
第一声が夢の世界って随分と面白い事を言う女性だ。すると彼女が驚いて俺に尋ねる。  
「あなたには私の本来の姿が見えるのですか?」  
「本来?姿も何もその姿が君の姿じゃないのか?」  
「そうですか・・・この姿は本来、人間の夢の中でしかなれないはずなのに。どうしてこの現実世界で・・・」  
 
この人は何を言っているんだ?す、すごい独り言を言ってるし、大丈夫なんだろうか・・・  
「恐らく彼女を牢屋から助け出した時、封印した力が戻ってしまった。限界まで氷の力を使い過ぎたから・・・」  
「だ〜〜ちょっと落ち着いて!」  
俺はしびれを切らした。これ以上彼女の独り言に付き合っていたら気が変になるかもしれない。  
「まあ、混乱している気持ちも分からない事はないけど、まずは・・・」  
「まずは?」  
彼女も首をかしげて尋ねてくる。その時きゅ〜〜と俺の腹の虫がなった。思わず赤面してしまう自分。  
「まずは、飯を食べてからにしないか?君の分も作ってあるからさ」  
「えっ?」  
そういって簡単な手料理を彼女に差し出す。俺の作った料理をまじまじと眺めながら申し訳なさそうに彼女が答える。  
「お気持ちは嬉しいのですが・・・」  
「遠慮なんてしなくていいよ。たいした料理でもないから・・・」  
本当に簡単な料理だった。お世辞のいい様がないくらいシンプルな料理だ。  
「私、普段は氷を食べるんです。あなたが作ってくれた物も食べられない事もないのですが・・・」  
 
「な、なんだって?」  
氷を主食にしてるとはっきり彼女は言った。こんな変わった女性始めて見たぞ。  
「氷以外のものを食べると体の調子がおかしくなるです。でも氷と一緒に食べると大丈夫なんですよ」  
何か食べる時は最低、氷がないとダメなのか?うむむ、ますます変わった女性だ。  
「ゴメンなさい。ワガママを言ってしまって」  
「・・・」  
「?」  
ふと無言になった俺を見て彼女は首をかしげる。  
やっぱり怒っているのかと思い込んだのだろうか。彼女の表情が少し暗くなる。  
「よし!ちょっとここで待っててくれないか。今から氷を買いにいってくるよ」  
「えっ?」  
それに驚いた彼女が俺の顔を見る。  
「待ってな。すぐに戻ってくるから」  
「あっ・・・」  
止めようとする彼女をよそに俺は自宅を出た。まあコンビニは近くにあるからそう時間も掛からないだろう。  
俺は走ってコンビニに向かった。雪は既に止んでいた。田舎に住んでいるとはいえコンビニが近くにあって良かったと思う俺。  
学生にはホンマに助かるよ。スーパーまでとはいかなくても必要最低限のものは揃っているし。  
学生生活も色々と楽しいし、レポートも終わったし、明日はゆっくりと休めそうだ。  
そういえば彼女は何処に住んでいるんだろう。後で聞いてみるか。  
などと言ってうちにコンビニに到着した。さて、氷を探してみるとするか。  
 
 
「はぁ・・・」  
私はため息をついていた。ここは夢の世界ではない。では、何故自分はこの姿をしているのだろうか。  
この姿は絶対に現実の世界ではなってはいけない。やはりあの時、リムルルを牢屋から助けた時に封印が解けてしまったんだ。  
力も限界に達していた。もしこの姿がずっと続いてしまったら・・・  
掌の上に力を込めて見た。氷の力を出す事が出来た。しかしそれは危険な力。  
「この力は二度と使いたくなかった。しかし、もうどうする事も出来ない・・・」  
窓の外をゆっくりと眺めていた。辺りには雪が積もっている。カムイコタンもちょうど雪が降っている季節だった事を思い出す。  
「この姿がずっと続いてしまったら大変な事に。リムルルと再会するまでに何とかしないと・・・」  
とにかく自分が置かれている立場が分からない。間違いないのは、ここは私のいる「過去」ではなく「未来」の世界。  
彼が帰ってきたら聞いてみよう。  
「まさかこの「現代」にまでアイツが復活しなければいいのですが・・・」  
 
「まいどありがとうございました〜」  
氷の袋を二つ分買って来た俺はすぐに帰路へと向かう。ちゃんと大人しく待っているだろうか。  
帰路の途中で不気味な男が座っていた。血に染まったような刀。床屋にもいってなさそうなボサボサ頭。  
暗闇で人気も全く無い道端。  
いかにも悪党そうな顔つきの男がこっちを見ていた。刀を持ってるなんて何か危ない奴だな。  
関わらないようにした方がよさそうだ。そう思って俺はその場を後にしようとした。  
「オイ、何無視してやがるんだ。ヘッヘッヘ。そんなに俺が怖いってか?」  
向こうから勝手に声を掛けてきた。何処かのチンピラだろうか?刀を持ってるからヤクザだろうか?  
「この時代に来てみりゃ、どいつもコイツも俺にびびって殺しがいのないクズばかり。貴様が始めてだぜ。俺を見てびびらなかったのは」  
「・・・」  
男の話を無視して俺はその場を後にした。変人野郎の話にはついていけねえ。  
その時だった。頬に痛みが走った。後ろを見ると俺の首に刀を突きつけ、さっきの男がこっちを睨んでいた。  
 
頬からは血が流れていた。一瞬背筋が凍りついた。下手に刺激したら殺される。  
「何無視してやがるんだ。しまいにゃ一瞬で殺すぞ。ヘッヘッヘ怖がれよ」  
「分かった。アンタの言うとおりにするから、命だけは助けてくれ」  
武器を持った奴に何をされるか分からない。慎重に言葉を考え命乞いをする。  
「じゃあ、俺様の質問に答えろや。てめぇ、覇王丸って奴を見なかったか?俺みたいな格好をしてやがるんだがな、くっくっく」  
覇王丸?何処の時代の人間の事を言ってるんだ?勿論知ってるはずが無い  
「いや、見なかった」  
「そうかい、じゃあ死ねや」  
ちょっと待て。いきなりそういうオチかよ。冗談じゃない。殺されてしまうじゃないか。  
焦った俺は咄嗟に、刀を振り上げてようとする男の金的を蹴り上げた。  
当然刀を振り上げようとしていた為、下半身はがら空きであった。鈍い一撃が走る。  
まともに受けた男が悲鳴をあげる。まさに断末魔のような悲鳴だった。  
「う、うぎゃあああああああっ!!!!」  
 
「先手必勝!」  
言うが早いか俺は一目散に逃げ出した。捕まったらマジで殺される。暗闇の中俺は一気にダッシュする。  
念には念を入れてさっき買って来た氷の袋(一袋だけ)をアイツの足元にばらまいてから・・・  
「ま、待ちやがれ。ぶっ殺してやる!めちゃめちゃに切り刻んでやる」  
怒りに燃えた男が追いかけようとした。その時足元の氷に足を滑らせる。  
「ぎゃあああっ!!!」  
くるりと一回転して転ぶ男。転んだ拍子に刀が宙に舞い上がる。  
「許せねえ。てめえ本気で殺してやる」  
ようやく立ち上がって再び俺を追いかけようとする。次の瞬間刀が男の頭に当たる。  
「おうっ!」  
幸い刃の部分ではなく峰打ちの部分だったので致命傷には至らなかった。  
しかし頭に当たった一撃でバランスを崩し再び足元の氷の足を滑らせる。  
「ち、ちくしょう。ちくしょう。てめぇ!!!俺は、俺は諦めんぞぉぉぉ!!!!」  
俺の後ろから何やら捨て台詞見たいなのが聞こえてきたがどうでも良かった。  
とにかく逃げる事だけを考え俺はその場を後にした。  
 
結構必死で走ってきた。さすがにここまで来ればもう大丈夫だろう。  
ほっと胸を撫で下ろし、歩くのをやめて徒歩で歩き出す。  
アパートまで後少し。彼女を待たせる訳にはいかないな。  
 
 
 
アパート近くに着いた。そして俺は入り口前で彼女を見つける。  
「おかえりなさい。わざわざ催促をさせて申し訳ありません」  
「もしかしてずっとここで待ってたの?」  
「はい。あなたが出て行ってしばらくしてからずっと帰ってくるまで待ってました」  
そういうとにこっと笑顔で俺の顔を見る。かわいいなあ〜〜〜  
「・・・じゃなくて!!」  
俺は咄嗟に彼女に尋ねた。  
「ずっとここで待っていたって、こんな寒い夜になんて無茶な事を・・・」  
「そうですか?私はこれくらいの寒さは何てことありませんよ?」  
嘘偽りの無い言葉で彼女は答える。冗談じゃない。今日は天気予報で気温は三度しかないって言ってたのに。  
よく考えてみたら、さっきの男、全然寒そうな顔をしていなかったな。あれは異常だな。もう、人間じゃねえよ。  
 
「とにかく、今日の天気を見れば分かると思うけど、凄く寒い日なんだよ。こんな天気で寒くないって言ってたら人間じゃないよ」  
すると彼女の口から信じられない言葉が返ってきた。俺はその言葉を聞いて耳を疑った。  
「あなたには信じられないかもしれませんが私は人間ではないのです」  
「ヘッ?」  
何を言い出すんだ?自分は人間じゃないって。ぼ、ボケているのか?  
「私は、あなたに分かりやすくいえば「精霊」と呼ばれる存在なのです。氷の・・・  
そしてもう一つ信じられないかもしれませんが私は「過去」の時代からやってきたのです。  
あなたの時代よりも数百年前の時代から・・・」  
 
 
ふとした事で自宅前に倒れていた謎の女性。  
後に彼女の存在が俺の中で大きくなっていく事をこの時の俺は知るよしも無かった。  
だが、奇想天外な彼女の告白よりも先に訴えたい事があった。  
「はーーっくしょん!!!」  
「!!!!!!」  
突然の大声に彼女もビックリしていた。無理もない。彼女の前でくしゃみをしてしまったのだから。  
こんな寒い外で立ち話をしてたら風邪をひいてしまう。  
とにかく話の続きは家で聞きたかった。ゆっくりと・・・  
「うふふ・・・誰かがあなたの噂をしているのですね」  
 
 
 
頼むから真顔でそんな天然を言わないでほしい。そう思いながらため息をつく俺がいた。  
 

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