最近、気に入らないことが一つある。
「ねえ、閑丸くん」
「ん?」
「あーん」
「………ちょっ、リムルル」
アイヌ民族の文様がある服を、彼女なりの工夫か、涼しげに仕立て直した軽装の少女と、
背に、年恰好と不釣合いな宝刀を背負った少年が、囲炉裏の前で座っている。
「誰かが見てるかもしれないし……」
「誰って?あーん」
「その、お姉さんとか」
「大丈夫だよ。姉様、今出かけてるし、それに姉様ならきっとリムルルのこと分かってくれるもん」
否ッ!
物陰で私の眼が光り輝く。
ナコが許せど風が許さぬ、そう、私、レラが許さない!
………しかし、
「あーん」
「あ、………うん、美味しいね!」
「でしょ!今姉様に料理を習っててね!」
……あ〜あ〜、若いっていいわねえ。無邪気で、朗らかで。
今度ラタシケプ作ってあげる、とか、じゃあ今度は僕も一緒に作るよ、とか言いながら、
そのうち、今日は何にする、いや、今日は食べ物はもういいんだ、
え、どうしたの?閑丸くん、いや、今日食べたいのは、その………
いだだぎまぁず、とか何とか言っちゃって、全くリムルルッたら年の割りに私よりも早ーー
がばっ!
「いかんッ!それだけはっ!」
「ん?」
「何の音かな」
「しまった!気配を消さねば!」
「…………」
(…………)
「空耳かなぁ」
「ああ、きっとレラさんだよ」
バレバレッ!?
「レラさん?」
「うん、姉さんに似てる人でね。ちょっと怖いけどとっても優しいの。少し変だけど」
リムルル!持つべき者は妹よ!怖いと変は余計だけど。
どうにか、感づかれなかったようね。とりあえず、どうしようかしら。
どうにかして、二人がコトに及んじゃうのを阻止しないと………
リムルルはワタシノモノ!じゃなくて、ここで少しはお姉さんキャラらしく健全なる性教育というやつを……
……………よし。
閑丸くんを奪おう。
汚される前に汚す、それしかない。世の中は全て既成事実よ!
それを知ればきっとリムルルも「ひどい!閑丸君のケダモノ!」と
なるに違いない!そうすれば閑丸くんも若いんだ、「ひどいよ!リムルル、そんな!うわーん!」と
泣いて出て行くに違いないわ!
よし、策は決まった。決まれば即実行、決行は今夜よ!
………あれ。けど私、接吻でさえ、したことあったっけ?
夜ね、そろそろ寝付いた頃だわ。
子供は寝る時間よ、気配を消してゆっくりゆっくりと………
いたわね、静かに寝ちゃって。
あ………
手なんか繋いでる………リムルル、その手は今は優しく暖かいけど、
近い将来貴方を傷つけ汚す狼の爪なのよ!今私がその手を引き剥がしてあげ、
って、離れない?何て力なの!?くそ、離しなさい!えい!この!
………離さないか、なかなかやるわね………って、そんなことしてる場合じゃないか……
え。………っと………
な、何をすれば、いいんだっけ………
そうだ、アドバイザーに聞けばいい!
トゥルルル・トゥルルル、………もしもし、もしもし、私の中のナコ!聞こえる!?
起きて、こういう時はどうすれば………!何?ピーッという発信音の後にお名前と電話………
くそっ、性悪女め、私こそ真のヒロインよ!オーホホとか言って、御前試合に出たら、
和風メイドに獣娘に、果ては紫ナコまで出てたから、ぐれてるのね!この緊急事態に!
とりあえず、どうする………?
…………
服、脱いでみるか………