『「いい体ですねえ」ミナ編』  
 
 強い邪気を追うミナの前に現れたのは美しい、しかし妖しい剣士だった。  
 「…様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」  
 鋭い居合いと変幻自在の奇妙な技の前に、ミナは敗れた。敗れたミナに丁寧  
に剣士が言葉を投げかけた。ミナの心情を考えることなく。  
 「では、行きましょうか。」  
 「チャン…プル…。ごめん負けちゃった…。」  
 「さあ。」  
 「みいぃなあぁ。」  
 チャンプルに伸ばした手は届かなかった。剣士の言葉に縛られて、ミナは  
剣士に行く先もわからないまま歩かされた。しばらくは追って来るチャンプ  
ルの姿が見えた。しかしふと前を見て向き直った時、もうどこかわからなく  
なってしまっていた。剣士はそれに構わず歩み続けた。剣士は丁寧に、しか  
し相手の事情に構わない。  
 ミナを引きつれて剣士黒河内夢路は歩き続けた。歩くうちに周りの風景は  
煌びやかに、しかしいかがわしさを漂わせた物に変わって行った。見るから  
に乱暴そうな者が行き交うが、二人に近づく者は誰もいない。夢路を見た何  
か武術の心得がありそうな者が、そうでない者に注意している所が時々見えた。  
 二人が入った宿には誰も客がいなかった。夢路が主人に何か話して二人は  
奥に進んだ。  
 「お疲れの所すみませんが、まだ少しやってもらわねばならないことがあ  
ります。ご協力していただけますね。」  
 丁寧な言葉だった。しかし最初から拒否を許さない言葉でもあった。  
 「チャンプルを、探しに行ってはダメ?」  
 人に慣れないミナの、迷いながらの精一杯の言葉だった。しかし夢路は冷  
淡だった。  
 「やってもらわねばならないことがあります。」  
 そう言って近寄った。心が無いような、何かに心の全てを預けて今は一切  
残していないような、真っ黒で無を思わせる目だった。  
 夢路の手がミナに近づく。ミナの体が激しく震えた。痙攣と言っていい震  
えだった。息が混乱し、汗が噴出す。顔面は蒼白になっていた。目が揺れ動  
いて定まらない。  
 ミナはチャンプルを除いて他者が苦手だった。会うのも避けたい。話すのは  
苦行に近い。触れるなど、論外だった。  
 倒れて転がった。転がって壁際までたどり着いた。いよいよ息が上がって、  
ミナは気を失った。  
 
 「いい体ですねえ。」  
 
 目が覚めたミナに夢路はそう告げた。夢路はミナに服を着せ直し終わった所  
だったようだ。ミナは倒れた。うつ伏せになって震えた。両肩を抱いて、言葉  
にならない嗚咽を繰り返した。  
 「もうお休みなさい。」  
 夢路が布団を用意していた。布団を引っ手繰って、自分で敷き直してからミ  
ナは眠りに就いた。  
 
 夢路は気絶したミナの胸に手のひらを這わせた。手のひらは曲面を思わせる  
軌跡を描いて、胸の表面を余すことなく動き回った。反応は無かった。夢路の  
手の奇跡はミナの胸の形を、そして大きさを示した。  
 胸を測量し終わった夢路は、ミナを裸にした。小さくない胸があらわになっ  
た。その胸に直に手を触れさせた。もしもミナが気がついていれば、死をも覚  
悟で抗ったに違いない。もっとも、ミナは普段でも時に死にたがるのだが。  
 夢路の指がミナの胸の弾力を証明していた。弾みかえるような胸である。繊  
細な動きで夢路の指がミナの胸を変形させては元に戻らせた。決して傷つけた  
り、痛がらせる事が無いように夢路の指は動いた。誰も見ている者はいない。  
しかし情交を好む女が見ていれば、夢路に抱かれようと押しかけに行くような  
愛撫だった。だがミナは気絶している。反応は、無い。触れられている事さえ、  
後で言われなければ気がつきもしないだろう。疲れも手伝って深い気絶だった。  
時折、夢路の手で揺れ動く胸全体の揺れを増幅して乳首が振動した。完全に外  
の光がさえぎられた部屋で、部屋の光に照らされるミナの胸が影を揺らした。  
 胸だけでなく、全身を触れて回る夢路の手。ミナが抵抗しないだけ、その手の  
働きぶりははかどった。異様な程に夢路の手は働いた。脚に、腰に、足に、そ  
して、両足の付け根にまで…。そのいずれもが、相手を気遣わない丁寧で柔ら  
かい手つきで行われた。ミナの肌を女性の様な手が滑った。部屋を照らす光に  
ミナの肌が光り、夢路の手が映える。  
 夢路の手がミナの体を堪能している。しかし夢路は何を思っているのか。快感  
か。それとも義務の面倒くささか。義務の充実感か。誰にもわからない。黙々  
と夢路の手は動き続けた。  
 
 「さあ行きますよ。」  
 返事は無い。翌朝二人は町を発った。起きてもミナに生気は無かった。夢路に  
手を引かれてミナは廃寺にまで来た。  
 「ここで待っていなさい。と言ってももう動けないか…。」  
 「…。」  
 夢路はミナを廃寺に残して出かけた。夢路の目に一人の尼が映った。背が高い。  
男としても高過ぎる。そして、いい足取りだった。夢路にはわかった。何者か  
はわからないが資質のありそうな人間だ。突如頭巾が飛んだ。尼の仮装をしていた  
大女と夢路はお互いに飛び退って向かい合った。  
 (おわり)  
 

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