「晒し者のガンマン」  
 
 荒野に立つ町に二つの人影が並び立っている。片方は絵に描いたようなダサ  
い田舎モンの剣豪気取りで、もう片方はワルぶった半端モンの腰抜けがその主  
だった。二人はついさっき決闘を始めたところだったが、腰抜け散弾銃の方が  
見くびって軽口を言い出した。  
 「勇ましいガキだ。カノジョにいいとこ見せてやれよ」  
 そう言って飛び退ると腰抜けはいかにも腰抜けらしく二階に飛び上がって部  
屋に飛び込んだ。田舎モンが見苦しく慌てて小屋の下に駆けつけると同時にあ  
の半端モンが飛び降りてきた。肩に担いでるのは、絵に描いたような上玉のベ  
ッピンだった。  
 「お知り合いか?」  
 「てめ…この…」  
 ヒヨコッコのガキ剣客が、いかにもバカな小僧らしく顔を真っ赤にして、あ  
のちっとばかし大き目の木刀を叩き捨てると、あの余裕だけの腰抜け散弾銃が  
ニヤニヤと笑った。  
 「こいつは可笑しい。俺は捨てればどうするとは何も言っちゃいねえはずな  
んだが」  
 一杯食わされたガキが見てらんねえ滑稽な顔してから犬みてえに吠えて飛び  
掛ったがもう遅い。腰抜けの鉄砲でガキは倒れた。  
 「一丁上がりっとぐわっ!」  
 腰抜け散弾銃はうつむくと片膝を地面につけ、そして倒れた。  
 銃口を振って風を切り、まだ昇っていた煙を消したその男、その男こそが稀  
代の色男にして怪力無双、神算鬼謀の風雲児、萬三九六だった。  
 「あ、あなたは、もしや、あなたが噂の三九六様!?」  
 転げ落ちたベッピンは三九六のもとへ、腰抜け散弾銃を足蹴にし、ガキ剣客  
を踏み越えて駆け寄った。三九六を見上げる目は潤み、銀河を湛えていた。  
 「お慕いしていた三九六様に会えるなんて、それも助けていただけるなんて  
…こんな幸せは他にありません!!ぜひともお礼を!!」  
 「なかなか物分りがいいじゃねえか。おめえら今日はツイてるぞ!!」  
 三九六に仕える三人の忠実な下僕が歓声を上げた。  
 
 「三九六様!!三九六様!!」  
 「何だぁ葡萄酒のおかわりか…ってここはどこだ?」  
 二四に起こされた三九六を驚いた顔で東欧風の装いをした壮年の男が見ている。  
 (確かにこいつ、全身全霊を掛けた一撃を二度も受けたはずだが)  
 三九六はアメリカの野心家の噂を聞きつけて馳せ参じ、自分を腹心に迎え入れる  
よう熱心に説き伏せようとしたのだが、怒りやすい事で恐れられているゴルバは三  
九六の自画自賛に怒りが爆発してサーベルを抜くと斬りかかったのだった。  
 (常人ならもう立てなくなるはずだが)  
 巨大な妖怪にも匹敵する三九六のしぶとさにゴルバは驚いた。しかし端々からに  
じみ出る三九六の本性は、やはりゴルバの我慢を超えていた。  
 (雇えんな)  
 「三九六様いかがします?」  
 三人が心配そうな顔で見上げている。  
 「こいつは俺様の実力がわからねえ小者ってわけだ。我旺以下だな!!こんなの  
にとっつかまって一秒一秒すらが値万金の俺様の人生を無駄にしなくてよかったぜ  
。いくぞおめえら!!」  
 実際には、我旺は三九六などアテにはしていなかったのだが。  
 そして三九六はゴルバのアジトを後にしたのだった。  
 
 一方その頃荒野に立つ町では、屋根に引っかかっているドラコを猛千代が見つけ  
ていた。  
 (何だあいつ?)  
 「オイそこのガキ何見て笑ってやがる!!」  
 「あいつね、つい先日来たお姫様にブンブン振り回されてあんな所まで飛ばされ  
たんだよ。今まで散々悪行重ねた極悪人だから丁度いいお仕置きになると思ってそ  
のままにしてるんだ。」  
 猛千代にボソッと町の保安官が言った。  
(劇終)  
 

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