「おててで白目」  
 
 振り向いた女の目は死んだ魚や人形の目のようにも見えるどこか奇妙  
な目だった。錯覚を起こさせる奇妙な目は狙いを定めると動きを止めた  
。女の目が捉えたのは、緋雨閑丸だった。  
 無関心を閑丸は装う。しかし、あるかないかの一瞬の戸惑いに動揺が  
表れていた。それでも無関心を敢えて貫こうとする閑丸は、ふと目を女  
に向けた。女はまだ目を離していなかった。相変わらずあの調子の目だ  
った。  
 「何を、していたの」  
 「何を、って…何も」  
 「何を、していたの」  
 どこかこの世の物ならざる様に、あるいはカラクリ人形の様に女が  
問いかけてきた。喋れる事を意外に思いつつもはぐらかそうとした閑丸で  
あったが、女には通じなかった。  
 「何をしていたの」  
 閑丸の中に不思議を超えて恐怖の感情がわきあがった。ただの美しい大  
人の女かと思ったが、とんでもない存在に遭ってしまった。  
 「ごめんなさい!!あなたがあまりにもきれいだったから、ついもう  
少し長く見ていたいと思って追いかけてしまいました」  
 傘も放り出して閑丸は頭を下げた。何度も頭を上げては下げている間  
に、恐ろしい予感がした。  
 (許してくれないのかな)  
 「そうなの。わかった」  
 閑丸の悪い予感は裏切られた。女は相変わらずの無表情だがかすかに  
和らいで見えた。閑丸が安心している間に、女の視線が下がった。閑丸  
の股間は盛り上がっていた。  
 「それで、何をするつもりだったの。私を見た後何をするつもりだったの」  
 「え?そ、それは…」  
 「わからないのね。教えてあげる」  
 感情を持たない女の動きに閑丸は後れを取った。女の手は閑丸の股間  
の逸物を取り出すと、閑丸の手をとってそれに沿わせていた。  
 「いや、その、…知って…ます」  
 閑丸の声は段々と小さくなって蚊の鳴く様な声になっていった。女の  
手に引かれて閑丸の手はその閑丸自身の股間を緩くにぎって摩る。女が  
背後に回っても手は休む事が無かった。そして  
 「うわぁっ!!」  
 閑丸は体をこわばらせて身震いすると股間から迸らせていた。目は白  
目を剥いていた。  
 
 「あれ?リムルルさん?」  
 「閑丸くん目が覚めた?」  
 気がついた閑丸はリムルルに介抱されていた。  
 継げる言葉が見つからなかった。既に乱れた衣は直されていた。あの  
女は影も形も残っていない。しかし言葉が見つからない。  
 (言えるわけないよな。きれいな女の人を追いかけたら捕まってあん  
な事されたなんて)  
 リムルルの顔が赤みを増していったが二人は無言だった。揃って口を  
開こうとするが閑丸の口もリムルルの口も結局閉じたままだった。  
 (いいのかな。このままリムルルさんに黙ったままで)  
 閑丸はそう思ったがやはり黙ったままだった。  
 「あのね、閑丸くん」  
 真っ赤になったリムルルが恥ずかしげに切り出した。  
 「閑丸くんおなか出して倒れちゃったけど、あの女の人と何してたの?  
遠くて見えなかったけど」  
 そこまで言った時閑丸は駆け出していたが滑って転んだ。いつの間にか  
地面が光っていた。  
 「言わなきゃダメなんですか?」  
 リムルルはうなずいた。逃げる事は出来そうに無い。観念した閑丸はた  
め息をつくと語り始めた。  
 「あの女の人がね、僕の…あそこを取り出して…、…そしてこうやって  
僕の手を…」  
 「もう一回やってみて」  
 興味津々なリムルルに心底困りながらも、閑丸はため息を更につくと股間  
の逸物を取り出して摩り始めた。  
 「すごいすごいどんどん大きくなってってる!!どこまで大きくなる  
のかな」  
 「やめて…」  
 息も絶え絶えな閑丸の声を無視してリムルルは楽しげに閑丸の股間を遠慮  
せず摩り始めた。間もなく  
 「まだいけないのにいっ!!」  
 閑丸は再び身を固まらせて激しく身震いすると、白目を剥いて股間から迸  
らせていた。  
 「うわっ!!また白目剥いちゃった!!閑丸くん!!閑丸くんしっかり!!」  
(終わり)  
 

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