夜の闇。  
   
 街灯も建物の明りもない。あるのは、煌々と厳かに灯る月明かりだけ。  
 そんな貴い光を一身に受けるように、決意した足取りで歩き始めた女が一人。ただでさえ美しい金髪 が、月に照らされることにより、さらに映えて見える。  
 イギリス人らしい、目鼻の形がはっきりした白く整った顔だが、今は緊張のせいで強張っていた。  
 「あら、良いところに来るじゃない?」  
 遠くから観察していたはずだったが、いつの間にか女は侍の目の前にいた。余裕の笑みを女・・チェ ルシーは浮かべる。その裏に、小さな安堵を隠している事を侍は見抜いている。  
 「今から黒生屋敷に忍び込むわ。手伝ってくれない?」  
 侍は、チェルシーの決心の表情の意味を理解した。  
 「何故そんなことを?」  
 侍の問いに、少しだけチェルシーは返答を躊躇った。だがすぐに、重そうに乾いた唇を開く。  
 「・・昼間の見たでしょ?私もう、吉兆の苦しんでいるところを見たくないの」  
 言葉の内容の通り、チェルシーは辛そうに顔を歪める。それが裏表のない、本心から言ってる言葉だ と侍は確信する。  
 「で、協力してくれる?」  
 チェルシーの問いに、侍は・・・  
 
  了解した  
  赤玉党滅すべし!  
 →条件次第だな  
 
 「条件?」  
 チェルシーが怪訝そうに侍を見つめる。  
 「あんたの身体だ」  
 「っ!!」  
 チェルシーが一気に表情を変える。そしてすぐに、侍への罵倒の言葉が飛び出してくる。  
 「あんたっ・・!サイッッテ・・・!!」  
 皆まで言わせず、侍はチェルシーを木の台の上に押し倒した。そして自分もその台の上に乗り、チェ ルシーの上に馬乗りになる。  
 「なっっ!」  
 「料金は前払いだ」  
 激しく暴れるチェルシーの腕を、侍はまるで何度もやったことがあるかのように上手く抑え付ける。 チェルシーは平均的な女性の中でも、それもイギリス人の中でも腕力のある方だったが、カリブすら易 々とさばく男 の力の前では、何の役にも立たなかった。  
 「こ、こんなことして、ただで済むと思ってるの!?」  
 「吉兆か? いざとなれば奴も斬り殺すさ」  
 「・・・ッ!」  
 その瞬間、チェルシーは初めて目の前の男に恐怖を覚えた。  
(この男は、党や吉兆に対する忠誠心など、これっぽっちも持っていない・・)  
 「このゲ・・!」  
 チェルシーの罵倒の声は、再び侍の動きによって中断させられる。但し今度は、先程のような荒々し い事ではなく、まるでそこに唇があるかを確認するかのような口付けによって、だ。  
 「んっ・・!」  
 接吻の甘い味に、鉄の味が混じる。侍の唇を、チェルシーが噛んだのだ。だが侍は何事もなかったか のように、チェルシーの唇を貪るようにキスを続けた。  
 
 チェルシーの赤い唇をしばらく味わうと、侍は一旦口を離した。唇の血も、もはや止まっていた。  
 「ファッカァオフ! 外道ッ! 死んじまえっっ!」  
 チェルシーはかすかに目尻を濡らして、侍を罵る。チェルシーの眼光は、まだまだ強い怒りを放ち、 力に満ちている。  
 しかし侍は、それに全く気づいていないかのように、表情を変えない。  
 不意に、侍はかすかに開いていたチェルシーの股の間に、自分の股間を密着させた。もちろん、着物 越しにだが。  
 「ぐうっ!!」  
 それと同時に、チェルシーの身体に重いものが圧し掛かってきた。侍が、体重を半分チェルシーに預 けたのだ。それにより、チェルシーの意識は、その重さに対して向くことになる。  
 「お・・もっ・・・!」  
 気づくと、チェルシーの抑えられていた両手が自由になっていた。その両腕で、慌ててチェルシーは 男を押し上げようとするが、侍の身体は少しも上がらない。  
 それこそ、侍の狙いだった。  
 チェルシーが侍の身体を離そうとしている間に、侍は己の着物の下を捲り、さらにはチェルシーの着 物までをも素早く捲り上げる。  
 「あっ・・!」  
 チェルシーが気づいて声を上げた時には、もう遅かった。冷たい外気に陰部が触れ、チェルシーは小 さく身震いした。  
 「こ、この鬼畜っ!」  
 それでも心だけは折られまいと、チェルシーは力いっぱい叫ぶ。その声に、表情の無かった侍はよう やく笑みを漏らした。  
 
 「・・うああっ!!」  
 濡れてもいない部分への、いきなりの突っこみ。その痛みに耐え切れずチェルシーは声を漏らす。耳 元で、侍のハァハァという荒い呼吸が聞こえる。時折、薄笑いも混ざる。  
 チェルシーは、自分の中に侵入した男を涙目で睨んだ。そしてそれと同時に、自分の不運を呪った。  
 「うっ・・くっ・・!」  
 どうあがいても、声が漏れた。痛みは、少しずつ薄れていく。だが、それ以上に悔しさで声が出る。  
 「ひっ・・・ぅっ・・!」  
 壊れそうな意識の中で、チェルシーは少しずつ、侍に気づかれないように、自分の刀へと手を伸ばして行く 。  
 (あと30センチ、あと20センチ・・)  
 「ハアッ、ハアッ・・・!」  
 男がいよいよ、本能をむき出しにして、チェルシーを貪り始めた。  
 自分の身体を防衛するためとはいえ、結合部から少しずつ湧き出てくる液体が、チェルシーは憎かった。  
 (あと、5センチ・・!)  
 そこまでの距離になった時、チェルシーは一気に手を伸ばした。勝利を確信したのだ。だが、侍はそ の動きに気づいていた。  
 バチンッ!  
 「あっ!」  
 その瞬間、チェルシーの刀は、侍の左腕によって弾き飛ばされていた。  
 「ハハッ!惜しかったな!」  
 侍は声を上げて笑った。  
 
 一瞬の絶望感の後、チェルシーは再び力のあらん限り抵抗を始めた。  
 ガタガタときしんで揺れる木の台が、その激しさを物語っていた。だが侍はそれを沈めようともせずに、 
まるで荒馬に乗るのを楽しむように、肉棒の出し入れを続けた。すでに、十分なほどそこは潤んでいる。  
 「ハッ、ハアッ、ハッ・・!」  
 「げ、外道っ!クズ・・ヤ・・ロウッ!」  
 本来、チェルシーは今日も吉兆と夜の行為をするはずだった。そのため、身体は十分に男に都合の良 い反応をしてしまっている。  
 だがチェルシーは、ギリギリのところで意識を保ち、激しい感覚の揺さぶりにも流されずに、恨みの 言葉を放ち続けた。  
 それが、男には愉快でたまらないと言うのに。  
 「ふっ・・くっ!ハァッ・・・!」  
 だがそんな気丈な心も、そろそろ持たなくなってきていた。口汚い罵りの言葉も、もはや思い付かな くなってきている。漏れる声は、既に嬌声に近い。自分の頬が暖かいと感じたのは、一筋の涙が通った からだった。  
 「素直になれよチェルシー?」  
 侍の挑発。その声で、失いかけた意識が再びはっきりして来る。  
 (また・・あの薄笑い!)  
力を失いかけていた目に再び力を宿らせ、侍を睨む。そして、先程以上の激しい抵抗。  
 その中で、男は一気にラストスパートをかけるように腰の動きを速くする。  
 「死ねっ!死ねっ!!」  
 男の動きの変化が分ったチェルシーは、さらに罵倒と抵抗を激しくする。  
 (それだけは、やらせないっ!)  
 全身の力をありったけ使い切るように、チェルシーが最後の抵抗を見せる。  
 そして男の方も、まるで肉食獣が、獲物が最後の死力を尽くすのを必死に抑えるように、全力でチェ ルシーを抑える。  
 もはや侍の頭には、己の欲望をチェルシーの中に吐き出すことしかない。  
 
 「いやっ・・・死ねっ!馬鹿っ!!」  
 最早チェルシーにあるのは、恨み辛みではなく、次の事態だけは避けなくてはならないという危機感 だけだった。  
 そして侍の方にも、それとは全く別方向の危機感、出さなくてはならないという危機感があった。今 は互いに、強い感情と本能しかなかった。  
 そして、その瞬間はやってきた。  
 身体を少しでも離そうと最後の粘りを見せるチェルシーだったが、男はそんな隙を与えなかった。  
 全身の感覚を全て放出するような感覚。  
 そして、そんな男の欲情を、自分の中に注ぎ込まれて行く絶望感。  
 ドクッドクッという音が、侍には聞こえた気がした。  
 「い・・やぁあっ・・・」  
 侍の腕の中でチェルシーは、快楽と、絶望に押しつぶされたように、気を失った。  
 
 「おい、チェルシー!」  
チェルシーが目覚めると、朝の光を背にした吉兆がいた。  
 「吉兆・・?」  
 「心配して出てみたら・・。何でこんなところで寝ているんだ?」  
 チェルシーはハッとした。  
(そうだ、私はあの侍に・・)  
 同時に、吉兆の前だと言うことを思い出し、慌てて自分の身体を見た。だが、まるで何も無かったか のように、着衣は整っていた。  
 台の上で寝ていた事を除けば、まるで本当に何事も無かったかのようだった。もちろん、チェルシー には夢と現実の区別はついたが。  
 チェルシーは、聞かなくてはならないことを聞いた。  
 「あの、あの侍は!?」  
 「もういない。先程この峠を去った」  
 「・・・!」  
 (あいつ、やっぱりただの強姦魔だったって事!?)  
チェルシーの頭に怒りが再び蘇ってくる。しかし次の吉兆の台詞は、予想もしない言葉だった。  
 「黒生家を、たった一人で潰してな」  
 「・・・・・え?」  
 
 
 気ままに、どこまでも己の旅を続ける侍。再びその侍に、チェルシーが出会うことは無かった。  
 

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