あんたの事を想うと躯が疼くんだ…
そういうと京次郎は頬を赤らめまるで内気な少女のように震えていた。
彼女は人を斬るとき必ずこういった仕草をする。
と、言うことはだ、つまりあれだ。
俺は斬られるって事だ。
悲劇だ。せめて彼女の手に触れてみたかった。
あわよくば仲良くなって、頬に触れたり、脚を触ったり…そんな考えが走馬灯のように巡り、彼女は一歩一歩と近づいてきた。
多分これが彼女の見納めだ。
彼女は一歩一歩と間合いを詰めてゆく。
恐怖を紛らわすために堅く目蓋を閉じた。体からは冷や汗が吹き出し、手のひらはじっとりと汗が滲む。
そろそろ刀を鞘から引き抜く頃だろうか。
何も言わずにただ近づいてくる彼女に対し、いつにも増して畏怖の念が強くなる。
しかし、刀を引き抜く気配が無い。
床の軋みがより強く伝わり、彼女が今とても近くにいることが分かった。
覚悟を決める。
胸を刻むであろう刃に。
その刹那、胸に冷たいものがあたった。
刀だ、いや、違う、とてもやわらかい。
・・・・指・・・だ・・。