「ごっちん!!」
「む、何だ志乃?」
「あのねー」
昼飯前、小腹を空かした伍助に愛くるしい妻が寄り添う。
「口吸いってどうしてするのかなー?」
「な…!?」
薮から棒な志乃の質問に慌てふためく伍助。
「それはだな…つ…つまり…」
考えた事は無いことはないが、やはり口に出すのは恥ずかしい。
「…つ…つまり、愛し合う者が愛する故、それを確かめるというか…」
「ふぅーん」
しどろもどろになっている伍助。そんな彼をじッと見つめる志乃。伍助は次に何を発すれば分からず、沈黙が続いた。
「あ…志乃ッ…」
「えへへ、あたしお昼ごはんつくってくるから!!今日はアサリが安かったよ!!」
沈黙を断ち切るかのように志乃はふすまをシャッと閉め、台所へドタドタ走っていった。
「…ッ!!」
何故いきなり志乃がそんな事を聞くか。きっと志乃は求めていたのではないか?
志乃がオレに踏みいってくれたのに、機会を逃した自分の頼りなさでいっぱいだ。どうしてオレは遠慮してしまうのだ?夫婦なのにまだ溝があるではないか。まったく情けない。
「くそっ」
昼飯ができるまで時間はある。伍助は気を紛らすために庭で竹刀の素振りを始めた。
しかし、さっきの志乃の事もあってか、竹刀を握る手にうまく力が入らない。そう言えば台所へ向かう志乃は悲しそうだったな。
ふと気付くと伍助は竹刀を振る手を完全に止め、志乃の事を思い浮かべていた。
「志乃の唇はどんな味がするのだろう…?」
ポツリと呟く。
もっと志乃の体に触れたい。…何を考えているのだオレは!?そんな卑しい事を想像していたら志乃に嫌われるかもしれないのに!!
いかんいかん、と首を振り竹刀を握り、前を睨む。しかし握った竹刀をふれなかった。
「愛し合う者達が愛する故…」
自分でそう言ったか…何をためらっているのだ伍助…!そもそも夫婦間では口吸いなどごく自然な事だ。しかしやはり志乃に嫌な風に感じられたくない。だからもし
「ごっちんのスケベ!!」
なんて言われたらおしまいだ。だがやってみなくてはどうなるか判らない。ねぼけていたなんて誤魔化せるはずはない。オレがスケベで志乃と口吸いしたかったとしか言い様がない。とにかく、頑張るのだ、伍助!!
オレは台所の障子をそっとあけた。
「あっ、ごっちん!ご飯もうすぐできるからね!!アサリのお味噌汁だよ!!」
志乃はオレを見るといつもの笑顔で味噌汁をかき混ぜながらそう言った。
「志乃…さっきの話だが…」
「ごめんね!アタシ変なこと聞いちゃったね!」
「いや…構わぬのだが…」
「どうしたの?」
味噌汁をかき混ぜる手を止める志乃。ゴクリと唾をのみ出来るだけ真面目な顔になる様努めた。
「…オレはお主の事を愛しておる。」
「うン…」
「だからオレと志乃は…た…口吸いしてもよいかと」
「うん…アタシもごっちんの事、大好きだよ!」
「!?…で…では」
「いいよ、しても早く!」
そう言って妻は此方に顔を近付け目をつむった。その頬の赤さよりも自分の顔がほてり、赤くなっていることを感じながら、妻に手を触れようとする伍助。しかしその手は震えて止まらない。
(何処に手を置けば良いのだ…?)
どうしたらいいのか伍助にはわからず、ただ時間だけが刻々と過ぎてゆく。志乃の柔らかな唇をみたり、どうしたらいいのか悩んだりしている伍助に気が付いたのか、自分がこれ以上待ちきれないのかは知らないが、志乃はいきなりつむっていた目を開いた。
「もう!ごっちんのバカぁ!お味噌汁が煮えちゃう…」
…ぎゅッ!!
「え…ちょッ…」
いきなり志乃が手首を掴むものだから、伍助の心臓は跳ねる様に脈打っている。
「んッ…!!」
「ん…」
あまりにもいきなり過ぎたので反射的に目を閉じてしまった。そっと目を開けるとそこには志乃の顔しか見えない程志乃と接近していた。唇から伝わる柔らかい感触。それは確実に伍助の興奮を誘っていた
。
「…かはッ」
「…う…む…む」
息をするのを忘れたようで息を大きく吸う志乃。
「ごっちん、ご飯持って来るから部屋で待っててね!」
伍助はまだ唇に水気が残ったまま、言われるがままに部屋で志乃を待っていた。
志乃は二つのお盆を置いてふぅ、と軽いため息をついた。
「じゃあ、食べよっか!!」
口吸いしたせいか志乃の唇はほんのり色付いていた。…志乃…本当に…
「…済まぬ、お主を抱きたい。」
「…へ?」
躊躇する前に伍助は畳に志乃を倒した。
バサッ!!
「あッ…ごっちん!?」
「志乃…すまぬ」
伍助が倒れた志乃に覆い被さろうとした時、志乃は丸い目を潤ましたので、一瞬その真面目な性格故に、罪悪感を覚えたものの、伍助にはもう止められない。
志乃の着物の襟をぐいと掴み、胸をはだけさせた。透き通るような白い肌の山なりを伍助の欲のままに揉みしだく。
「いやぁ…ッ…そんなことしちゃ…」
自分の胸を触られるなどいままで無かったもので、志乃はこの感覚を素直に受けとめれなかった。しかし、呼吸は荒く、時折漏れる声は甘く部屋に響いた。
伍助は堪えきれずに志乃の股に手を入れようとすると志乃の両手でそれを阻止された。
「ダメ…なんだよぉ?こんなコト…」
「構わぬ、オレ達は夫婦なのだ!」
「夫婦ならこんな恥ずかしいコト、してもいいの?」
「恥ずべき事は無い!オレはお主を…愛しておるのだ…」
「でも…なんか、怖いよぅ」
それだけ言い、志乃は両手を離した。着物の帯を外し、志乃を全裸にした。伍助は志乃を抱き寄せ、膣に指をまわす。
「…あぁッ」
抱きついて声を漏らす志乃。その花弁にはとろりと蜜がまとわりついた。伍助は袴を脱ぎ、伍助の一物は天を仰ぐ程血の気を纏っていた。それを志乃の秘部に当てた。
「入れるぞ…」
志乃は何も言わずにコクリと頷いた。しかし目を潤ましていた。
(出来るだけ…志乃を痛くさせないように…ゆっくりと…)
興奮の中、伍助の心の片隅にそう思っていた。まさにゆっくりだが、思ったよりも志乃は痛くないようだ。伍助の一物が志乃に殆んど入り、その蜜で濡れた時、背中が熱くなった。
「あ…」
「う…動くぞ…」
そう言って伍助は腰を動かし始めた。
はじめは締められてそれこそ気持ちいいとは思えなかったものの、徐々に緊張が解ける様に、快感を味わえた。段々と早くなるにつれ、志乃の声が艶てくる。
「はぁ…あぁ……んッ…」
その声が誘ったのか、伍助は志乃の中に精を放った。
「う…志乃…」
志乃は肩で息をしていた。その顔に僅かに笑みが見えた。
「ごっちんのせいでお味噌汁冷めちゃたね…。」
まだ息が荒い志乃に伍助は戸惑った。
「…すまぬ、冷めた味噌汁はオレが食べよう。」
「いーよ!だってお腹減ったし、アタシも食べる!!」
そう言った志乃にはいつもの笑顔で着物を着なおした事、それは心配症の伍助を安心させた。
「このお味噌汁変な味がするねー?」
煮えて、冷めた味噌汁はとても美味しいとは言えなかった。しかしそんなに悪い味はしない。
「ごっちん、今の…明日も明後日もしようね!」
いきなりそんな事を言われたので、志乃の顔に味噌汁を噴射した伍助だった。
(終)