年の瀬も近付いてくると夜冷えも厳しくなってくる。戸締まりをきちんとして、冬用にと綿を打ち直しした掛布団を引っ張り出してくる。  
物理的には寒さはしのげる。しかしやはり物足りない。  
隣で寝ている妻の志乃の寝顔を見ながら伍助は一人葛藤していた。  
とりあえずどれくらい熟睡しているのかを見るために顔を近付けてみる。  
しかし気付かずに眠っていた。  
これならどうだと頬に触れてみた。  
だが計算外なことに伍助の手は意外と冷たかったらしく触れたことではなく冷たさに驚いて目を覚ましたようだ。  
「あれ〜。ごっちんどうしたの?」  
まだ半分寝ているような顔をして呟かれてしまった。  
「あ…いや…すまぬ。…これはその…寝相が悪くて…」  
「ダメだよ、ごっちん。ちゃんとかけて寝なきゃ…」  
「…そ…そうだな…」  
「……それに…私なんかに触ったらバカになっちゃうよ…」  
妻はそのままぱたりと眠りに入っていった。  
「……志乃?」  
伍助の中に何か釈然としないものが残った。  
きっとそのような難癖をつけられ松山に触れられることはなかったのだろう。たとえ同じ部屋にいたとしても、暖まりあうことはなく一人寒さを我慢していたのだ。  
「……バカになどならぬ……なるならばうさぎになるのだ…」  
伍助は出来るだけ布団をくっつけてまた潜り込んだ。そして手が暖かくなったのを確認すると相手の布団を探り手を握った。  
「…おやすみ」  
 
次の朝起きた志乃が機嫌が良かったのは言うまでもない。  
 
 
糸冬  
 
 

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