鉄が旅立ってから、五月の心には何かがぽっかりと抜け落ちたようになっていた。
鉄がいなくなったからと言っても、共に過ごした短い日々は忘れられない思い出となって五月の心を縛り付けていた。
五月が鉄と再会する以前の明るい五月に戻るには長い日々が必要だと誰もが思っていた。
そんな彼女の心を癒したのは、意外にも彼女に恋人の座をかけて闘いを挑んだ男たちだった。
男たちは五月の鉄への一途な想いを真摯に受け止め、彼女の恋人の座は諦めていた。
だが、五月を想う心は皆同じで、それ故に彼女の心を少しでも救いたいと思ったのだ。
男たちは傷心の五月に話しかけ、五月も男たちの優しさに、徐々に心を開いていった。
そしていつしか、五月は男たちに対して奇妙な感情を抱き始めていた。
恋や愛といった感情とは違う、奇妙な一体感。
鉄に逢えない五月の寂しさと、目の前にいる五月に手を出せない男たちの辛さがシンクロしたのかもしれない。
そんなことは全く解らない五月は、いつしか男たちに心だけでなく、身体まで開くようになっていった。
男たちの想いを慰めたいという気持ちもあったが、五月自身、鉄に抱いてもらえないと言う身体の疼きがあったのだ。
さすがに処女は鉄に捧げたいということで、男たちの欲情の処理は主に手コキと口で処理することになった。
男たちもそれに了解し、ここに五月と男たちによる秘密クラブが生まれた。
「はぁ、なんかなぁ……」
いつものように男たちの性欲を処理した後、五月は用意されている個室で一息ついていた。
今日はいつもより人数が多かった。
そのため、五月の手と口だけでは処理できず、あぶれる男が出たのだ。
もっとも、人数があぶれるのはいつものことで、むしろ五月個人に処理してもらえる男の方が少ない。大半の男は、五月の痴態を見て自分で処理をしているのだ。
だが、今日新しく来た男たちはそれが我慢できなかったようだ。
やがて五月の処女の部分や、皺っぽちゃの後ろの穴を使わせろと言い出したのだ。
それは誰もが思っていたことだったが、ここにいる以上は全員平等がルールだ。
今日、五月に直々にヌいてもらった男は、全員が一周するまでは手淫することとなる。
ただでさえ順番待ちの人間が多い中に新しいクラブ参加者が増え続けているため、今日来たばかりの新人に五月が廻ることはまずない。
『こんな中途半端なんじゃ、そのうち誰もこなくなるぞ!』
ついには苛立って、そう吐き捨てた後、男は部屋を出ていった。
残された場は、重い雰囲気に包まれ、五月もエッチな雰囲気になりきれないまま、各が欲求不満を残す形で今日のクラブは終了した。
「そりゃ、最初は私からしてあげるって言ったけど、こんなに人数が多くなるなんて思ってなかったし……」
部屋の一角に飾ってある鉄の写真をちらりと見て、
「それに、五月の処女は鉄っちゃんに捧げるってみんな了解してくれたじゃない……」
すでにその件に関して了承した人間は、全体の1割にも満たないほどに人数が増えている。
「なんか、色々言われちゃったな……五月なりに頑張っているつもりなんだけどなぁ……」
「ま、五月なりに頑張るしかないんじゃないかな」
後ろから声をかけられ、五月はビックリした。ここには私以外は入れないはず……
だが五月が確認のために振り向くよりも早く、声の主の手が五月の頭をナデナデした。
後ろを振り向くまでもなく、その行為で誰か気づいた。
「お兄さん……」
『お兄さん』と呼ばれる人物は、クラブの初期メンバーで、五月を妹のように可愛がっていた。
もちろん『お兄さん』という名はコードネームのようなもので、本名はクラブ参加者の誰も知らない。
本人曰く、愛する実の妹が五月に似ていて、その代理として五月との行為にふけっているらしい。
『お兄さん』と呼んで欲しい、と言われているのだ。
五月自身、男たちとの行為を、鉄との行為の代理として見ているため、『お兄さん』が妹の代理として五月を見ていることに抵抗はなかった。
むしろ、代理として見られるということは、身の安全を保証しているようなものだと思っていた。
「そっか、今日はお兄さんの番だっけ」
初期のメンバーは、クラブ発足直後は毎回のように五月の口と手を堪能していた。
そのためか、現在の五月に特設ヌいてもらうための順番待ちからは外されがちになっていた。
いまでは通常メンバーたちよりもはるかに回数が少なくなってしまっていたのだ。
それを見た五月が、ある日初期メンバーに、集団での行為が終了したあと、こっそりヌいてあげると約束したのだ。
初期メンバーたちはそれならば、と五月に一対一でヌいて欲しいと頼み込んだ。
他ならぬ初期メンバーからの頼みは断れず、また彼らに男性的に信頼を置いていた五月は、その願いを聞き入れた。
そして今日は、『お兄さん』の当番が廻ってきたのだ。
「このクラブの発足した理由はともかく、今はみんなが期待していることはひとつなんだ。……わかるよな、五月」
『お兄さん』は五月を呼び捨てにしている。なんでも例の妹も「さつき」という名前なのだそうだ。
「うん……なるべく、頑張る……」
「五月にしたってみんなが来てくれなくなるのも、寂しいだろ?
「そう……そうよね。これからは出来る限りのことはするわ。もちろん、本番はナシだけどね」
五月は暗い雰囲気を一掃するように両手で顔をぴしゃっと叩くと、笑顔を『お兄さん』に向けた。
彼に暗い顔は向けていたくなかったのだ。
「よし! じゃあ、そろそろ俺にもしてくれるかな?」
「う、うん」
幾度と無く行為を重ねてきた五月であるが、それでもいざ行為が始まるとなると恥じらいの顔になる。
これもまた、五月の人気のひとつでもあるのだ。
「さて、それじゃあどうしようかな……」
『お兄さん』は五月の顔をチラチラと横目で見ながら、部屋中に目を向ける。
この部屋の中にはクラブのメンバーたちが五月に使ってみたいと思って持ち込んだ様々な大人のオモチャが置かれている。
もっとも、そのほとんどが五月が拒否するため、今では部屋のオブジェとなり果てているものが多い。
「じゃあ、これでも使うか!」
そう言うと『お兄さん』は丸めて壁に掛けてあった荒縄に手を伸ばし、そのまま五月を後ろ手に縛り上げた。
「きゃっ!」
「どうだい、五月?」
きつすぎないように結び目を調整しながら、五月に問いかける。
「う、うん……ちょっと怖い……」
どうするつもりなのかな、と思うが、信頼できる人物であるため、五月もある程度は冷静だ。
これがいつもの集団プレイのときにされたのであれば、恐怖で泣きわめいて暴れたかも知れない。
「うんうん、それじゃあ、今日の下着を見せてもらおうかな」
『お兄さん』は五月の正面に回り込むと、スカートと上着を一気に捲り上げ、丸め込んで落ちないように留めた。
「キャッ、恥ずかしいよ……」
五月の恥辱にゆがむ顔を堪能すると、五月の両足を押し広げ、パンティに密着せんばかりの距離で股間の匂いをかぐ。
「くんくんくん……」
「やだ、お兄さんそんなとこかいじゃだめ……」
さっきまでの集団プレイのあと、シャワーをあびて新しい下着に交換したため、今の五月からはいい匂いが立ち上っている。
しかし。
「いい匂いだね、五月。でも……これは何の匂いかな?」
「え、何……なんのこと……?」
しらを切ろうとするが、五月にも自分の身体の異変に気づいている。
「そっか、わからないか……じゃあ、直接見てみようかな?」
『お兄さん』はパンティに手をかけると、スルスルと太ももまで引き下ろした。
「え、だ、だめ……見ないでよ〜」
五月の秘部が晒された。
身体の割りには陰毛は未発達で、ひどく薄い。普通に立っているだけで陰毛の隙間から割れ目が覗くほどだ。
しかし幼さを残す陰毛に比べ、女性器そのものは随分と大人の女性のそれに成型されている。
今も開かれた割れ目からわき出す滴が陰毛を濡らし、まだ太ももにひっかけられたままのパンティのクロッチ部と糸を引いて繋がっていた。
「シャワーを浴びてろって言っただろ、五月」
「あ、浴びたもん……」
洗ったばかりなのに秘所をこんなに濡らしていることは恥ずかしかったが、不潔だと思われるのもいやなので、正直に答えた。
「なんにもしていないのに、こんなにヌルヌルにしているのか……本当にエッチだなぁ五月は……」
「そ、そんなとと言われても……」
(自然に濡れちゃうんだもん……)
度重なるプレイによって、五月の全身の性感帯は敏感になっている。それは意識の面でも同じだ。
今から行為に入るという興奮と、両手を縛られている緊張が、五月を刺激しているのだ。
「舐めて綺麗にしてやるからな」
そう言うと『お兄さん』は両手を腰に回し、その下にあるボリューム感溢れるお尻をなで回しながら股間に口づけした。
「う、嘘……あぁぁっ、はぁっ!!」
今まで股間に触れられることや、指を挿入されることはあったが、舐められるというのは五月にとって初めての体験だった。
これが他の男であれば、あるいは蹴ってでも断っただろう。
だが両手を縛られているということと、『お兄さん』が信頼における人物だったため、五月の抵抗は殆どなかった。
くちゅっくちゅっ……くちゃぁぁ……、くちゅくちゅくちゅぅぅ……
「はぁ、はぁ、……あぁぁぁん!!」
『お兄さん』が激しく股間を吸い上げるため、大きな音がたつ。その音が、五月の恥ずかしさを増している。
両手が自由にならずに一方的に責められると言う構図も、また五月を辱める。
「いい声だ……美味しいぞ五月……」
『お兄さん』はいつの間にかズボンを脱ぎ捨て、下半身裸になっている。五月の股間に吸い付きながら、『お兄さん』は自分の分身をしごきあげていた。
ちゅっ、くちゅくちゅっ……にちゃぁぁぁぁっ……
「あぁ、ダメ、それ以上されたら……変になっちゃうよぉ〜〜!!」
「ダメだ五月、まだイくな!」
そう言いながらも激しく汁を飲み干す。
そして舌でクリトリスの包皮を捲り上げ、敏感な肉芽に吸い付いた瞬間、
「ダメ……ダメダメ、イっちゃうーーー!! ……!!…………!!!!……」
『お兄さん』の頭部を挟み込んでいた太ももに力が込められ、つま先がピンっと伸びきる。
ビクンッビクンッと小刻みに身体を震わせたあと、ようやく五月は『お兄さん』の頭を解放した。
「ご、ごめんなさい、お兄さん……五月……イっちゃった……」
ハァハァと息を荒げて股間に顔を埋める『お兄さん』を見るが、彼はピクリとも動かなかった。いや、目に見えないほど小刻みに奮えているのが、太ももを通して感じ取れた。
「お兄、さん……?」
「なんで……」
あっ、と思った瞬間、五月の身体は両足を上にして地面に押し倒された。『お兄さん』が両足首を掴んでいるのが見えた。
「お兄さん、どうしたの!?」
「なんで言うことを聞かないんだよ!」
明らかに様子がおかしかった。
いつもの優しいお兄さんではない。
「だ、だってあんなに責められたら……」
「うるさい!」
『お兄さん』はそのままさらに力を込めて、両足を五月の身体に押しつけた。
五月は身体を二つ折りにされ、上からのし掛かられているような体勢にされた。
『お兄さん』の体重が乗った両足を押しつけられ、豊満な乳房がつぶれて足の両側からムニュリとはみ出している。
「く、苦、しい……よ、お兄……さ、ん……」
縛られたままの両腕が地面と背中の間に挟まれ、呼吸が満足に出来ない。五月の顔は顔色が見る見る青ざめていった。
「ちっ、折角初めての絶頂はコイツで迎えさせてやろうとしたのにな」
(お兄、さん……)
「やっと廻ってきたチャンスなんだ……あんな奴に奪われるくらいなら……」
『お兄さん』が何を言っているか、五月には聞き取れなかった。
元よりの疲労と呼吸困難が重なり、五月の意識は闇に落ちていった。
(ん……何……苦、しい……)
五月が意識を失っているのは、時間的にはほんの短いものだった。
彼女が目覚めたのは、股間に感じる異物感だった。
(痛……痛い!)
はっと目を開けたとき、目の前には息を荒立てる『お兄さん』の顔が間近にあった。
「お兄、さん……なに、してるの……!?」
脳に酸素が回らず、意識が朦朧としている。
ただ、股間だけが焼けた鉄棒を押しつけられたような熱さと、引き裂かれたような痛みを持っている。
「な、なにを……お兄さん、なにを…… …………!!??」
ようやく五月は気づいた。
顔を五月に近づけたまま、『お兄さん』の腰は激しく上下している。
そしてもう見慣れたと言っていい『お兄さん』のそれが音をたてて出入りしているのは……
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「やめて、お兄さん、抜いて……抜いてぇぇぇ!!!」
「ハァ、ハァ……」
ジュプッジュプッ!
五月は身体を二つ折りにされたまま、上からのし掛かられるように犯されていた。
ほんの少し前まで何者の侵入も許したことのない処女の聖地に、荒々しい肉棒が深々と入っては出るを繰り返している。
「やだ……やだぁぁ!!」
寝そべらせるのに邪魔だったのだろうか、いつの間にか五月の両手は解放されていた。
「どいて……どいてよぉっ!!」
『お兄さん』の肩に手をかけ、必至に押しのけようとするが、自分の鍛えられた足と『お兄さん』の全体重が邪魔をして上手くいかない。
「へっ……へへへ」
五月が目覚めたことに気づいた『お兄さん』は程度の低そうな表情を彼女に向けた。
「どうだ五月……入っているぞ! お前の中に入っているぞ!」
「なんで……なんでこんなことを……」
「なんで、だと? 待ちに待って、ようやく回ってきたチャンスなんだ、ここまでやって当然だろ!」
言いながらも、腰の動きはやめない。
「そんな……お兄さん……あんなに優しかったじゃない……」
「優しいってか? バ〜カ、あんなのお前の信頼を得るための演技に決まってんだろ! 妹なんてのもいねえんだよ!」
「信頼って……こんなことされて、信頼もなにもないじゃないの……!」
「俺はお前の処女が欲しかっただけだからな。処女さえもらえればもうお前なんか用はねぇんだよ」
『処女が欲しかっただけ』
この一言が一番ショックだった。
そう。鉄に捧げるつもりだった、『女の子』の一番大切なもの。それが今、目の前の最低な男に奪われてしまったのだ。
自分はもう『女の子』ではない。『女』になってしまったのだ。
(もう……鉄っちゃんに合わせる顔がないよぉ……)
「もうやっちまったもんは諦めな! 処女を奪った事実は消えないんだからよ! おらぁっ!」
『お兄さん』がグンッと腰をつき入れる。
「くはぁっ! い、痛い……痛いよぉ……」
破瓜の痛みと無理な体位で犯されている苦痛で、五月の目からボロボロと大粒の涙がこぼれた。
男の腰使いは、荒々しくも上等なものだった。
だが、処女だった五月にはそれで快楽を得ることはできない。
さっきまでのような可愛らしい悲鳴を上げることも出来ず、泣き叫ぶしかなかった。
普段の五月を知る者がこの姿を見たらどう思ったことだろう。それほどまでに、五月は醜態を晒していた。
「それっ! もうイクぞ……イクぞぉ……!」
そう言って五月の身体を両足ごとぎゅっと抱きしめ、身体の密着度を高めて、腰の動きを早める。
もう男性器のメカニズムを知り尽くしている五月は、膣のなかでも『お兄さん』の射精が近いことを感じとれる。
「だ、だめ、中で出したら……」
処女を奪われるだけならまだしも、もし『お兄さん』の子供が出来てしまったら……それこそ鉄に二度と顔を合わせることはできないだろう。
そのとき、突然ドアが荒々しく開け放たれた。
「てめえ……なんてことしてやがる!」
「!?」
「ノ……ノリさん……?」
五月の位置からでは『お兄さん』の身体が邪魔で見えなかったが、その声の主は初期メンバーのひとり、ノリだった。
彼は先日「特別順番」でスッキリしたばかりで、今日は参加せずに、集団プレイの後始末をやっていたのだ。
「五月ちゃんを放せ!」
ドアから入ってくると、丁度『お兄さん』のむき出しの尻がノリの方を向いている。
ノリは怒りで我を忘れたように、その尻に向かって渾身の力を込めた蹴りを放った。
「うぐっ! うっ! ……くぅぅ……!!」
初めの一声こそ痛みの悲鳴であったが、続く言葉はどこか雰囲気が違っていた。
「あ……あぁぁぁぁ……」
五月が目を見開いたまま、喉から絞り出すような悲鳴をあげる。
「?」
蹴りを放ったノリにはなんのことか解らなかった。
「くっ…………ふぅぅぅ……」
大きく息を吐いて、全身の力を抜く『お兄さん』。
「ど、どけよ! 大丈夫かい、五月ちゃん!」
「う……うぁぁ……うああぁぁぁぁぁぁん…………」
ノリが『お兄さん』を引き離しても、五月は身動き一つとらずに泣き続けた。
「五月ちゃん……これ……」
ノリが上着を渡すと、五月はそれを奪うようにして部屋から出ていった。
「この……猫被ってやがって! お前だけは絶対に許さないぞ!」
「ふぅ〜ご馳走さん」
ノリの怒りに対して、『お兄さん』はまるで食後の一服をするかのようにタバコを取り出した。
「好きにしろよ。俺は処女が喰いたかっただけだから。もうあとはどうでも」
「このっ……!」
その態度に、ノリは思わず『お兄さん』の胸ぐらに掴みかかった。
「だけどバカだね、お前も」
「なに!?」
「ホントは胸にでも出してやろうと思ってたのに、お前が尻を蹴ったお陰で中出ししちまったって言ってんだよ」
「な……」
「折角のお楽しみを邪魔されたからな。五月の中にブチ撒いてやったんだよ!」
ノリが五月の出ていった跡を見る。そこには様々な液体が点々と続いており、その中には見覚えのある液体が混ざっている。
「そんな……俺の……俺のせいなのか……?」
「バカだね〜ノリもさ」
嘲笑るように笑うが、それはノリの耳には入ってなかった。
「俺は……俺はなんてことを……」
力無くうなだれるノリ。『お兄さん』は彼の手を簡単に払うと、悠々と部屋を出ていった。
その日以降、五月の姿を見た者はいなかった。