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『女同士なんて二度とゴメン!』
(※二巻十ページ一行目のあたりから続く)
「いっつも、男の子になったオニキスちゃんとラヴラヴしたいーって思ってたけど、逆
もいいね! 私が男でそんでもって……そうだ!」
立ち上がられたせいで、投げつけたクッションが回避される。
アダマスはとっちらかった部屋から、何かを探し出した。
何か。
魔導魔宝。
「えっへっへー。いいこと思いついちゃった」
手にした宝石を片手に、にへらへらと笑いを浮かべる。
ブキミだった。
それはもう、これ以上ないくらいに。
「これをこーして……と」
あたしは茫然と見守る前で、『千年賢者』は腰の真ん中に手を運んだ。
その手が。
光をゆらがせた。
「うわぁーっ!」
着衣を引き裂いて現れた、『それ』は。
ず太い茎。
疣と瘤。
茶枯れの褐色。
勢い良く飛び出してきたかと思うと、ぐったりとしなって、肥大した先端が膝のあた
りでぶら下がる。『恐怖を棒状に伸ばして体にくっつけてみました』と、冗談みたいな
売り文句が頭の中に響いてきた。
「ほぉら、すごいでしょ? ね」
アダマスがにっこりと微笑んで、こっちに向いた。
あたしは、気を失った。
「ちょっとぉ。何よ、コレは!」
ベッドにくくりつけられている。
ロープでもって、あたしの手足はがんじがらめ。服を脱がされているかわりに、薄っ
ぺらい毛布をかけられているのが、唯一の救いだ。
「面目ありません、マスター」
部屋の奥で、これまたぐるぐる巻きにされた琥珀。
「あんた……役に立ってないっ!」
「あン! オニキスちゃん。大声を出されると、ここに響いちゃうよぉ」
甘ったるい声。
ベッドの上にアダマスが座っていた。
股間の――股間をさすっている。
異様な茎が。
「ひぇぇぇぇぇ! それで何するつもりなの、やめなさいってば!」
「アダマスは、もう我慢できません」
「あんたは思春期の男子か!」
アカデミーの学生たち。
同い年の男は、魔導士の修行中でも、やることをしたい連中ばっかりだった。憶えた
ての魔導で女子寮に侵入しようとする、たくましい性欲の持ち主がいっぱいいる。
いや、いた。
女子が放つ『火風水土気』の属性魔導で標的となって、たいがいは医務室に直行。
でも、困ったことに、今は魔導が使えない。
あたしのロッド、どこにあるの。
「手足ふんじばって、何するつもりっ!」
「ナニ、するの」
にっこり。
最悪の展開。
「や、やめなさい。やめて、そんなの入らないってば」
嫌だ、嫌すぎる。
普通の男にだって、されたこともない。こともあろうに、女にされてしまうなんて嫌
すぎる。とんでもないどころか、悪魔だって考えないような手段。女の恐怖そのもの。
股間に吸着。
毛布にもぐりこんだアダマスが、開いた足の間に顔をさしこんでいた。
「ひっ!」
ねぶられている。
舌が絡む。
襞が、指で広げられた。
「やっ……やめ、て、お願い、う、ひっぐ……」
もう、お嫁に行けない。
あたしの純心が、どんどん踏みにじられていくと思うと、涙が出てきた。毛布をはね
のけたアダマスに、泣き顔まで見られてしまった。
視界がにじむ。
ただひたすら、みんな消えてほしい。そんなことを一心に願った。
ところが、
「やぁーん。かわいいー! メチャクチャにしたくなるねっ」
ほんわかした笑顔で、とんでもないことを言われてしまった。
「ぐちゃにゅるに濡らしてからぁ、ゴツゴツこすりつけてもらうとね。とぉーっても、
とっても気持ちがいいんだよっ」
自分勝手だ、そんなの。
男の身勝手な性欲の餌食に……。
いや。この場合は女だけど。
とにかくっ! そんなのに、この天才美少女魔導士であるところのオニキス・ドーナ
の玉体が好き勝手になんか、されてたまるもんか。
「くっ……」
必死の抵抗を試みる。
縄が、きしんだ。
肌が痛い。細い革の紐が、肉にくいこんでくる。
「暴れると痛くなるよ、オニキスちゃん」
ちゅぴ。
「はう!」
がっくりと、あたしの四肢から力が抜ける。
「ひゃ、あ、は……ひぁ」
ゆゆゆゆゆ、指。
指が、は、入ってきたぁ。
にゅるにゅるざりざりくにくにもにゅもにゅきちきちうぃうぃ。
……だぁーっ! 人の体の中だと思って、やりたい放題に動くんじゃないっ。
絶叫で、やめさせようとした。
「は、うっ、や、やぁ、はう、うぅぅっ……」
駄目だ。
声に力が入らない。
体のそこらじゅうから、力が抜けきってしまったみたいになる。自分の体だというの
に、指一本で何もかも奪われてしまった。
オニンギョウノアタシ。
アダマスに好き放題、いじくりまわされるだけの玩具みたいだった。
「うふふっ。気持ちいいのね、オニキスちゃん」
憎らしいくらいの微笑み。
見てると体が熱くなる。怒り? それとも悲しみ?
渦を巻く感情、それが多すぎて自分でもわからない。
ただひとつ、わかっていることがある。
熱い。
たまらなく、熱い。熱を逃がそうとして、腰をくねらせてしまうぐらいに。
「ここ、もっとイイよね。ね」
「ダメ、ゆっ、指っ! そん、な、おっ、あ、いや、いやぁ」
「こっちはどうかな?」
「ひぁぁ……や、やめ。お、おかしくなるっ! ひっあ、くぁ……」
襞の摩擦。
内側から、とろとろと自分がこぼれてしまいそうな感覚。
太腿を撫でられた。臍まで舌が上がってくる。丹念に舐められると、全身の体液が一
箇所に集まってくる感じがした。奥へ、奥へ――あたしの、最も大事なところへ。
熱い。どんどん熱くなる。
「びちゃびちゃだぁ。オニキスちゃんのえっちぃ」
濡れそぼる指を見せびらかす。
「や、だ……もう、許して。お願い」
「自分だけ気持ちよければいいなんて、良くないよ」
と、反り返った茎を示すアダマス。
「いーっぱい、出してあげるねっ。立ち上がったら、ダラダラ垂れ落ちてくるぐらい」
狙いが定められた。
あたしの大切な場所に。
「それっ」
「ひゃぅっ!」
ぷちん。
そんな音が聞こえたような気がした。
たったそれだけで、あたしの処女が散ってしまった。
「なっ……なんか入ってる、固いの入ってくるっ!」
「もっと入るよぉ。奥まで行くからね」
「い、いやぁぁぁっ」
あんな無気味なものが、あたしの中を舐めまわしている。
頭痛がした。
腰も痛い。心だって、張り裂けそうなほどだ。
それなのに、アマダスはとても気持ちよさそうな顔で、腰を動かし続けていた。
「あっ、あ。すごいっ……オニキスちゃんの中、トロけちゃいそう……あったかい」
長い耳がぱたぱたと、動作にあわせて上下する。
リズムに重なって、疣つきの茎で内壁をなぞられた。膣の襞を広げられるのが、魔導
の手応えのようによくわかる。
短呪を詠唱する速度よりも、鋭く動く贋物の男根は、すさまじい勢いで前後した。
意識が薄くなって、どんどん怖くなる。
子宮を突く、振動。
眉間に皺を刻みそうな痛みが、あたしを呼び覚ました。
「いっ、あ。こんな、こんなのっ……ああ、あヒッ! あ、当たってるぅ」
「かわいい声。オニキスちゃんも今日から、おちんちん大好きっ子だね」
耳元でささやかれる。
卑猥な文言を告げられると、顔が赤く染まった。
気安い口調と裏腹に、乱雑な腰の動き。
蠢く肉に抉られて、あたしは腰を浮かせてしまった。
「あ、ああっ、うあおぁ、ひっ、ひぅ、くぅ」
「うふふ。おっぱい、こんなに固くなってる。大きくって、ホントうらやましいなぁ」
「ひゃああぁぁっ……」
胸の先端をついばまれる。
ハイエルフの舌先が、桃色の突起を転がす。
「……んっ」
両方の乳房を寄せて、ふたつが同時に吸われた。味わうように、ちろちろとピンクが
からまる。繊細な指の動きが、胸のふくらみをやわらかく揉んだ。
そして、腰の律動はとどまることがない。
すごく――気持ちがいい。
こんな快感があってもいいの? そう思うくらい。自分の体ではないかのごとく。
一〇〇〇年。
長い期間で蓄えられた『千年賢者』の技巧に、あたしは屈伏しかけていた。
「出して、ほしい……?」
問われて、何と答えられようか。
「…………」
「ちゃんと言わなきゃ、ね」
「く……くださ、い……」
言ってしまった。
「素直なオニキスちゃんって、大好き」
唇まで、奪われてしまった。
そのくらい、あたしは無防備だった。
がしがしと突き動かされるモノに、喘いで頭を白くさせるしかなかった。
「出るよっ。い、いっぱい出すよっ」
「あああ、あ、く、くあ、く、くるのっ。……ぁ……ぅっくう」
胎内で脈を打つ茎。
あたしは知らない感覚を学ぶ。
男を味わう方法。
熱い体液が。
……どくどくと、流れこんでくる。
どこまで行っても終わらない迷路のようなものが、一瞬だけ見えた気がする。
これが、『はじめての絶頂感』なのだと思う。
子宮の奥がきゅうっと収斂して、あたしは気を失っていた。
「うわぁ。あの男の子、素敵だよねえ。オニキスちゃんも、そう思うでしょ。ねえ?」
「あんたは底無しか……」
あれから暇に任せて、三日三晩。
その間、ずーっと、ずーっと、ずーっと、ずーっと(以下七十二時間分略)
ヤリっぱなし、だった。
「まだヒリヒリするし、目の下のクマはとれないし」
「似合ってますよ、マスター」
琥珀の両足をむんずとつかんで、ばさばさと全身で羽ばたかせてやった。
ただでさえ、アダマスの男漁りにつきあわされて機嫌が悪いのだ。それ以前だって、
股間からどろどろの生臭い体液を垂れ流す自分の姿を見て、ショックを受けている。
あたしは、すっかり汚されてしまった。
泣きたい。
ずっと、泣いていたい。
そうでなければ、ベッドで寝ていたい――睡眠の方、ってこと。
それもこれも、みーんなみんな。
アダマスのせいだ。
挙句、
「えーっ? お兄さん、あっちの子のほうがいいの?」
何を勝手に、話を進めているやら。
「オニキスちゃーん! こっちにおいでよ。男の子たちが、お話ししたいって!」
話だけで済むのか、それは。
立ち上がる。
「早くはやくってばー」
呼ばれた。呼ぶ声がする。足が自然に動いてしまう。
アダマスによって、すっかりと開発されてしまった体が、自分でもわからないうちに
歩いている。どこへ向かっているのだろう。
オニキス・ドーナ十七歳。
この際、はっきり言っておく。
あたしは、魔導士としての才能がある。
あたしは、十二分に美人で通る容姿である。
体だって、そこいらにいる尻の固そうな娘や、千年生きててやっと人並みのバストの
ハイエルフなんかと比べ物にならないぐらい、いじりがいがあると思う。
その、あたしが。
そんなあたしが。
だから。
すこしだけ。
「男に気持ち良くしてもらうぐらい、……いいよね」
〈女同士なんて二度とゴメン! 了〉