ラインヴァン城上空で今日もゼフィリスに惚気話をアクセル全開で喋るオウラン  
だが、今日は珍しくオウランが自ら話題を変えた  
「ねえ、この惑星の時間で明日は2月14日よね」  
「ああ、そうだがそれがどうかしたか?」  
「どうかしたって明日は…」  
「ひよこの日だな」  
事実である。この時代に銘菓ひ○こがまだあるかは知らないが  
「ちょ、あんたそれ兵器とはいえ女としてどうなのよ」  
「それ以外何かあったか?」  
本気で分からないという顔をするゼフィリス  
「もう、2月14日といえばバレンタインデーでしょ!好きな人にチョコを贈る日!」  
語るオウランは呆れながらも目は主のヒタカにチョコレートを渡す場面を妄想しているのか恋する乙女の目である  
「とはいえお前ならともかく私には関係ないだろう」  
「何を言ってるのよ、いるでしょ。贈る相手」  
いたずらを思いついた子供のような表情でゼフィリスを見る  
「誰だ?」  
「あ・な・た・の・ご・しゅ・じ・ん・さ・まv」  
「ななななな何を言ってるのだオウラン!私がシャノンにそんな…」  
明らかに動揺している  
「あ、ちなみにこの事はパシフィカ王女にも伝えてあるからー。とられないように頑張ってねーv  
 私はこれからチョコ作りに励むからーvラクウェルさんと差をつける絶好の機会なんだから!」  
「ちょっ、待てっ、オウランッ!」  
「頑張ってねーv」  
「……どうしよう」  
そしてゼフィリスは途方にくれる  
 
その頃のシャノン  
テラスで茶をすすっている  
 
ゼフィリスは悶々と悩んでいた。  
勿論、シャノンにチョコレートを渡すか否かである  
「うむ、そうだな、シャノンには日頃から世話になってるワケだし、  
 ここは感謝の意をこめて作るというのも…ああっ、やはりはずかしいっ!!」  
ありがちな逃げ道を用意している  
「あら、ゼフィ」  
「ら、ラクウェル…」  
今の醜態を見られてしまったか?と考えるゼフィリス  
「どうしたの?そんなところで悶えて」  
「ああ、少しな…ん?なんだその荷物は」  
「ああ、明日はバレンタインデーっていうチョコレートを贈る日なんでしょ?  
 そのために必要な諸々の材料よ」  
「…何故知っているのだ?たしかこちらにはそういう風習はなかったはずだが」  
「パシフィカが教えてくれたの」  
「…成るほど」  
どうやらオウランの目論見は見事に外れたようである  
「ゼフィも作るんでしょ?シャ・ノ・ン・にv」  
「あ、ああ。一応は…」  
「じゃあ、一緒に作りましょうか!」  
「え?」  
「そうと決まれば善は急げね」  
ゼフィリスの腕を掴んで厨房の方へ向かおうとする  
「ちょ、ちょっと…」  
ゼフィリスの制止の声は青空に吸い込まれていった…  
 
その頃のシャノン  
縁側(あるか知らんが)で昼寝  
 
色々と端折ってバレンタインデー当日  
その日、ラインヴァン城は戦火に包まれた  
「なんで今日がバレンタインデーだなんて知ってるんですか!!」  
「パシフィカが教えてくれたのよv」  
「何ですって?しまった、某としたことが一生の不覚ー!!」  
元凶は恋する乙女二人だった  
ちなみにオウランは対ラクウェル用トラップを仕掛け、  
ラクウェルは魔法でそれを破壊したり、ひょいと避わしたりしている  
周囲には流れ弾や罠に引っ掛った者の屍(死んでない)が累々と横たわっている  
巻き添えにならなかったものは安全圏から見物をしている  
後にこの戦いは『火の2・14』と呼ばれラインヴァン城名物となった  
ちなみにヒタカはこの状況を予測していたアンヴァーナイツの有志達によって別の場所に避難している  
なおオウランは既にチョコレートは渡している(毎年恒例)  
「くっ、罠がもう残り少ないわ…ならば!奥の手」  
「むっ」  
「必殺!バイラッハハンマー!!」  
「むぐー(助けてください、ラクウェルさーん)」  
猿轡を咬まされて簀巻きになったクリスをハンマー投げのように回し始める  
ジャイロ回転までしている  
ちなみに寝込みを襲ったジルとファファルによって簀巻きにされました  
「クリスくん!?そっちがその気なら…」  
「ファイヤー!」  
「むぐーっ!(止めてくださいよラクウェルさーん!)」  
本人の願い空しく放たれるクリスくん  
「スオーミ防壁!!」  
「お姉さまの盾になれるのでしたら本望ですわー!」  
 
ドゴッ  
 
鈍い音がしてクリスとスオーミの頭部がぶつかった音がした  
崩れ落ちる二人・・・  
「くっ、自分を慕う娘っ子を盾にするなんて・・・正に外道!  
 そんな人に私のヒタカ様は渡しません!」  
「人様の旦那様を勝手に武器にするのもいかがなものかしら」  
ふふふふふふふふ  
二人の邪悪な笑いが城中に木霊する  
「いい加減に終わりにしますわ!究極兵器…」  
「いい加減に終わりにしましょうね。究極奥義…」  
「フォルシスキャノン!」  
「むがー(放してくださいよ!あっラクウェル姉たすけてー)」  
「パシフィカスマッシュ!」  
「むきー(放してよラクウェル姉…ってフォルシス!?)」  
放たれる互いの最狂技!何故か炎の属性まで付加されてぶつかり合う兄妹…その時!  
 
少し時間を戻してシャノンの部屋に向かう廊下  
「果たしてシャノンは喜んでくれるだろうか・・・いや、私の選んだ主なのだ!  
 きっと応えてくれ…って私は何を言っているんだ!」  
このような独り言を呟きながら移動している  
女中たちはほほえましく思いながら見守っているようだ  
そして廊下が交叉する地点に来た  
「むごー(ゼフィリスどいてー)!」  
「むひょー(ゼフィどいてー)!」  
「へ?」  
ドゴーン!  
城が揺れるような音と共にまともにラクウェルとオウランの最狂技をその身に受けるゼフィ  
「ゼフィ!?」  
「ゼフィリス!?」  
ゼフィリスにかけよるラクウェルとオウラン(武器やら盾にした四人の心配はしないのですか)  
「よかった・・・気絶してるだけね…」  
「・・・」  
特に大事無いようでほっとするオウランを他所に青ざめた顔で何故か絶句するラクウェル  
「どうしたんですかラクウェルさん・・・ってええっ!?」  
そこにはボロボロになったゼフィ謹製チョコレートがあった  
しかも溶けてる…  
「どうしよう・・・」  
「とりあえずシャノンのところに運びましょうか…」  
問題を一時棚上げして協力してゼフィリスを運ぶ二人  
 
一方その頃のシャノン  
彼は今日の分の書類と格闘していた  
普段なら彼の事務能力を考慮して大した量を回されないはずなのだが、  
今日に限って王子、バイラッハ伯爵等が身内によって誘拐されたので彼らに回される筈の書類の一部がシャノンのところにも回ってきているのだった  
「疲れた・・・少し休憩するか・・・ん?」  
ノックもなしにそろそろとドアが開く。  
用心のために右手を新しく鍛ってもらった刀の柄に添える  
そこから現れたのは  
「へ、ゼフィ?」  
ゼフィリスがごろんと置かれていった  
置いていったものたちは手だけ見えたが誰だかはわからない  
どうしたものかと途方にくれるがとりあえず寝てる(?)ゼフィリスを起こして事情を聞いてみることにしたらしい  
「おい、ゼフィ起きろ、ゼフィ」  
「んっ…あれ?シャノン・・・」  
目を覚ますゼフィ  
「なにがあったんだ?いきなり運ばれてきたが…」  
「運ばれてきた?なんだそれは・・・あ、そうだこれを渡そうと・・・あれ?」  
渡すはずのチョコがボロボロになっている  
溶けていたため持った時に指に少しチョコがついた  
「せっかく作ったのに…」  
落ち込むゼフィリスを見て考え込むシャノン  
そして少しの逡巡の後に  
 
ペロ  
 
「ッッッッッッ!!!!!???」  
顔を真っ赤にして口をパクパクさせている  
「ナッナナナナ何をするシャノン!!?」  
「いや、何かは知らんが俺にくれるためにわざわざ作ってきたんだろ?  
 それを無駄にするのは流石に寝覚めが悪い」  
「だっだが何をしたか分かっているのか!?シャノン」  
「味からしてチョコレートを舐めた」  
そう言っているシャノンの顔も少し赤い  
「いやっだから…まあいい今日は地球ではバレンタインデーと言う日なのだ  
 世話になった人にチョコレートを贈る日なのだ  
 それで・・・」  
言葉を濁す  
「そうかありがとな」  
「う、うむ。結局ああなってしまったがな・・・」  
「まあ、いいじゃないか来年もあるんだろ?その時にちゃんと渡してくれればいいさ」  
「そ、そうか?」  
「ああ」  
そうして仲睦まじく語り合う二人を夕焼けだけが見てたそうな  
そしてゼフィリスは来年はちゃんとしたチョコレートを渡せたのかそれはまた次回の講釈で…  
 
終  
 

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