「ったく…これじゃあ狙撃どころじゃねぇっての……!!」
信長軍の侵攻が始まってから、孫市率いる堺衆はその猛攻に苦戦していた。
「敵将、いわしました。」
ただ一人、気軽に戦う女性を除いては。
「ほな刀と鎧と馬と財布置いて、おかえりやす。」
「おっ、覚えてろっ!!」
ふんどし一丁で逃げ帰る敵将の捨て台詞も、その耳には届いていない。
「はいな、毎度おおきに。またおこしやすぅ。」
その調子で十分程経った頃だった。
「あらぁ…あらへん。あの…お取り込み中すんまへんけど、ここに十本ぐらい並べて
置いてあった刀、知りまへんか? あれ、うちがいてこましたお人から………」
せっかくの阿国の質問だが、鍔迫り合いをする兵士達には知ったこっちゃない。
「つれへんお人。聞いてくれはらへん。……あらぁ?」
何やら気付いた阿国は急に走りだし、詰所に駆け寄った。
「おらへん。ここにお馬はん四頭並べて、待っててもろとったんやけど…。」
「あぁ、ここに並んでいた馬なら敵に奪われそうでしたので、奥に……」
「まあまあ、さよですか。」
トコトコと阿国が奥に進もうとするが、
「ち…ちょっと、駄目ですよ! ここからは進入禁止ですから!!」
詰所頭が必死に阿国を止めた。
「せやけど、うちのお馬さんでっしゃろ?」
「はぁ…それは…。…いや…しかし……」
「こんなんあかんわ。キリあらへんもん。」
キョロ…キョロ…と辺りを見回せば、どこも同じような戦場の風景。
これではせっかくの戦利品もまた奪われてしまう。
「よっしゃ……ほしたら本陣、いてこましたろか。」
味方としては心強い事この上ない台詞と共に、阿国の単騎突撃が始まった。
「さてと、ほんならお邪魔します〜……」
早々に五人の門番をぶっ飛ばし、阿国が門を押したちょうどその頃、
信長本陣左手で待機する女性は外から聞こえる喧騒に苛立っていた。
「何よもう…騒々しいわねぇ……」
そう言うとその女性は門を引き、外の様子を覗き見た。
ギギギ……
ものすごい至近距離で目が合う二人。
「…………」
「…………」
ニコニコと笑う阿国と、目をパチクリさせる濃姫。
「あなた…誰?」
「うち? うちは阿国いいます。巫女ですきに。」
「…で、な…何の用?」
「本陣、いてこましに来ました。」
「じゃあ…敵?」
「はいな。よろしゅう。」
「そ、そう…。」
ハッと我に帰り、濃姫はようやく元の調子に戻った。
手を腰に当て、妖しくクネクネ曲げる。
「あ、あ〜ら…やけに騒々しいと思ったら…。迷い猫かしら?」
「はあぁ…きれいなお人やわぁ。うちの舞も霞んでしまいそうやわぁ…。」
「うふふ…ありがと。あなたも可愛いわ…そう……苛めたくなるくらいね…。」
本陣は本陣だったが、阿国はなぜか遠回りをして濃姫の陣に突入してしまった。
「…ほな、お覚悟。」
「あら…私に勝てるとでも思ってるの?」
挑発的な濃姫の台詞に対し、阿国の表情にどこか真剣味が浮かぶ。
「せやけど、勝てへん相手でも……あらしまへんし。」
「言ってる台詞は格好良いんだけど…。あなた、周りを見るって事…知ってる?」
そう、すっかり囲まれてしまった阿国だった。
「姫君様、お離れください!」
「姫! そやつの相手は我々が!!」
「それにねぇ、すぐ右手には私の夫の本陣もあるし。」
濃姫の屈強な護衛兵達がジリジリと間合いを詰めて阿国に近づく。
「姫? あんたはん、お姫様やの?」
「ええ、そうよ…。もしも私が大声出したら、私より強い夫どころか
本陣ごとあなたに襲いかかるわよ? うふっ…うふふふふ……」
「さよかぁ…。……あきまへんわ、ちょっと出直してきます。」
「あ、あなたねぇ…人の言う事、ちゃんと聞いてる…?」
阿国はフワリと飛びあがり、兵士達の頭をポン、ポン、と拝借すると
いつの間にやら門の上にまで飛び移っていた。
「な…!?」
「ほな、またよろしゅう。」
バサッと傘を開き見下ろす濃姫達に笑顔を送ると、堺の町へと飛び降りた。
「えぇと…どこでっしゃろか……」
フワァ……と堺の町の上空を下りながら、阿国はある人物を探していた。
「あぁ、いはった。」
「おらおらぁ! 俺様は無敵、ア、無敵だぁ〜!!」
「よいしょっと。」
五右衛門の目の前に、文字通り阿国が突然空から降ってきた。
「お、阿国さん!?」
「五右衛門様に、ちょっとお願いがあるんどす。」
「お、俺にですかぃ? 何でも言ってくだせぇ! たとえ火の中水の中!!」
「そうどすなぁ…今からニ…うぅん、三十分後でええから…………」
「…はぁ。よく分かんねぇけど……合点でぃ!!」
「ほな、あんじょうお願いします。」
そうして五右衛門に何やら伝えると、阿国は再び走り出した。
今度は正真正銘、敵本陣へと。
一応は先程の反省も活かしているのか正面突破はせず、裏手から忍び込む。
――が、赤の巫女姿という目立つ衣装で忍をこなせるわけがない。
すぐに見つかり、敵本陣の中ですっかり囲まれてしまった。
しかし阿国は敵の厚い方にのみ焦点をおき、徐々にだが敵を圧倒して進んでいく。
そして――
「まるで深い闇…。覗きこんだら吸いこまれてしまいそうや。
うちの舞で…目を覚ましてくれんやろか……」
とうとう阿国は信長の天幕にまで押しこんでいた。
「者共…下がれ。」
「し、しかし殿…!!」
「二度は言わぬ……」
天幕の外側まで、怯えた表情を浮かべる兵士達が引いてゆく。
一見ひ弱そうな女性にこうまで好きに押しこまれたのだから尚更である。
甲冑を鳴らしながら、信長が下馬した。
「女……何用だ…。」
「阿国いいます。あんさんどついて、この辺のもん全部もらいます。」
「先程お濃の陣を騒がせたのも…お前、か?」
「そうどす。」
「ならば容赦はいらぬ、か……」
二人を取り巻く兵士の誰もが自身の目を疑った。
信長が一瞬で間合いを詰め、阿国の腹部にその拳がめり込ませていたのだ。
「ぐ…ぇ……」
「幕を閉じよ。全軍、前面の一揆衆に集中せよ!」
その言葉が意味するもの。それは、ここから離れろという事に他ならない。
薄れゆく意識の中で、信長の声が聞こえる。
「阿国とやら…。うぬの愚行…その身をもって償い、嘆くがよい…。」
「ん……」
息苦しさと肌寒さに、阿国は目を覚ました。
「んっ…んぐっ!?」
まず気が付いた事は、自分が裸である事だった。
猿轡のせいで言葉を紡げず、後ろ手に縄で縛られているために自由もきかない。
「気がついた、か…?」
全裸であぐらをかく信長に、阿国はまるで尻を突き出すような姿勢を取らされていた。
「んむっ!? んふぅっ!! んぅーッ!!」
「良きところで目覚めた……」
もっちりとして弾力のある尻をきつく揉むと、阿国の口から悲鳴が挙がる。
「んーーーっ!!!」
「そうだ……鳴け…。喚け…。そして……」
人差し指をペロリと一舐めし、
「…狂え。」
本来ならば排出を司る器官に、信長の指が沈んでいく。
「んぎぃっ!!…んっ…ぐうっ!……ぶゥッ!!」
「どうした……こちらの経験は無いのか…?」
ガクッ、ガクンッと阿国は大きく痙攣し、跳ねんばかりに腰を浮かせる。
後ろに拘束された五指がそれぞれ異様に曲がり、見開いた目から流れる涙が
猿轡からポタポタと垂れる涎と合流して滴り落ちていく。
「抜いて欲しい、か…?」
力無く阿国が振り返り、ガクガクと狂ったように頷く。
「んぷぅッ!!」
信長は勢いよくその指を引き抜いた。
息を荒げる阿国をさらに抱き寄せると、その尻に舌を這わせた。
「んぷっ…!」
「所詮は淫売よな……」
いつの間にか阿国のふとももには光る筋が幾本も滴っており、
その源泉となる秘唇はキラキラとすっかり濡れそぼっていた。
その発言を否定するためか、信長を拒むためか、阿国は激しく首を振る。
「どれ…我が喉を潤せ……」
尻をきつく鷲掴みにしながら、信長はその泉に吸いついた。
秘肉を左右にかき分け、音を立てて愛液を啜る。
「んひぃッ!…んっ!…んぶーーっ!!…んんッ!……んぷぅっ!!……」
両手を伸ばし、重力に負けた乳房を搾る様にして力一杯掴む。
「あふぅッ!!」
「どうした…今ので一層溢れ出てきたぞ……?」
タプタプと左右に揺らすたびに奥から溢れ出る愛液。
「んんぅっ……んふぅ……」
恥辱感に襲われ、阿国は真っ赤になって俯いた。
まるで牛の乳搾りのような手つきで乳房を揉み、屹立した乳首を捻る。
「んぷぅーーッ!!」
「ふん…感じておるわ……」
皮を強引に剥き、飛び出た陰核をゴリゴリと強く摘む。
「んぴぃッ!!……ぷぁ…あ……か…は……」
快感を通り越した強烈な刺激に、阿国は半分白目を剥いて涎を垂らした。
信長がさらに湧き出た蜜を啜ると、阿国の尻が悲鳴と共に大きく跳ねた。
「んひぃーーーーーッ!!!」
「うおッ!?」
噴水のように勢いよく吹き出た液体が、信長の顔面を直撃した。
「き…貴様……」
「はぁ…はぁ……あ…あぁッ……はぁ…はぁ……」
「よくも…よくも我が顔に潮など……!!」
ドサッと尻に手をやり突き倒せば、阿国は前屈みに崩れこんだ。
尻を突き出したような情けない姿勢を直す力すら戻っていないようで、
ただ荒れる呼吸を繰り返しているだけだった。
信長はその尻を再び掴み、自身の怒張を当てがった。
「その罪…許しがたし!!」
ズプゥッ!!
「んぷぁーーーッ!!!」
「この……」
「ん…ひあっ……あぁあぁぁあッ……」
大きく腰を引けば、モチュモチュと肉襞と秘肉が勃起に絡みつく。
「淫売がぁっ!!」
勢いよく突き込めば、パチュンッ!!と甲高い音が鳴る。
「ひぶぁっ!!」
荒荒しく腰を掴むと、信長は容赦無い突き入れを行い始めた。
「んひぃっ!!…あふぅっ!……ぷあっ…あっ!…やっ!…やぁっ!!」
さんざん阿国が悲鳴を挙げてきたため、猿轡が外れる。
「…むっ?」
「あんっ!…やっ!!……あっ!…あーーっ!!…ひあっ!…ひあぁっ!!」
すると信長は責めを中止し、阿国の背にもたれかかってその猿轡をはめ直した。
そして何事もなかった様に再び突き込み始める。
「んんっ!!……んふっ!…んぷぅっ!!…んぷ……ん…ふうぅっ……」
「どれ……」
好き勝手に腰を打ち込んで阿国を大いに鳴かし、続いて信長はそのまま後ろに寝転んだ。
繋がったままの阿国は下から奥まで串刺しにされ、その身をよじり眉をしかめた。
今度は凄まじい突き上げが始まった。
信長が力一杯突き上げると、浮きあがった阿国がその体重で深く沈みこむ。
その度に阿国の口から悲鳴が挙がり、結合部からは飛沫をあげた。
しかしその悲鳴にいつしか『甘さ』が交じり、徐々に腰も動き始める。
「ふっ……堕ちた、か…。」
手首の縄を解いてやると、阿国は自然と後ろの信長の頭に手を回した。
突き上げられる調子に合わせて積極的に腰を振り、その表情には
快楽に溺れた女の背徳的で淫靡な笑みが浮かんでいる。
「そら…うぬの好きにするがよい……」
そう言って信長が律動を停止すると、阿国は徐々に腰を動かし始めた。
信長に突かれる中で腰を振るのではなく、あくまで自身の意志で。
背後からの視線が恥辱的だったが、それでも腰の止まらない阿国だった。
「よし…褒美だ……」
背後から手を伸ばし、コリコリと乳首を摘む。
「んひぁっ!!」
信長がそのまま乳首を固定すれば、阿国が上下する度に乳肉が
伸びたようにしながらタポタポと揺れ踊った。
「んひっ……あっ!やっ!……あ…はひっ!!……ひんっ!……」
膣肉もキュキュッ、キュキュキュッと愛らしく締めつけ欲棒に淫らに
絡みつけば、信長の興奮も一気に昇りつめていく。
阿国の声にならない悲鳴を無視して凄まじい勢いで貫き始めた。
背後からでも豊かな乳肉の横側が垣間見え、揺れ踊っているのが分かる。
「んっく……う……さぁ…味わうがよい………我が洗礼を!!」
背後からきつく乳房を鷲掴みにし、一気に精を流しこんだ。
「んぅーーーーーッ!!!」
深奥に勢いよく精液がぶつかる度に、阿国の体が大きく震える。
溢れる精が結合部から流れ出し、陰嚢を伝って地に落ちていった。
ジュポッ……
「んひんッ!!」
時間をかけて最後の一滴まで注ぎ込み、阿国を押し倒して勃起を引き抜いた。
ドクドクと奥から溢れ出る大量の精液を見つめる信長。
「さて……さっそくもう一度楽しませてもらおうか…?」
「んんっ!!…んんんーーーっ!!!」
阿国は首を横に振り、力の入らない体を引きずって信長から逃げようとした。
その動きに合わせて白濁液が秘部からしたたり落ちていく。
「ふん……これ以上貫かれば狂いそうなのであろう…?」
ガシッと阿国の腰を掴み、亀頭を当てがったその時だった。
「ア、さすがは戦国一の浮気者ぉ、信長さんよぉお〜〜〜!!」
どこかから聞こえるその声は、戦場一帯を越えて本陣の信長達にまで届いた。
「なっ…!?」
すぐさま天幕に紫色の影が写る。
「あなた…今の大声なにかしら?」
シュッ…と開く天幕。
「なに……してるの…?」
「おっ…お濃ッ!!」
「ああん、信長様ぁ……もう一回可愛がっておくれやすぅ……」
いつの間にか猿轡を取った阿国が、信長の勃起に頬を摺り寄せる。
「あ〜ら…なんだか楽しそうねぇ……」
「ち…違う……お濃…これは……」
落ちている猿轡を拾い、濃姫が信長に近づく。
「なるほどねぇ…。猿轡で悲鳴を抑えておいて……お楽しみってとこかしら?」
「……話せば…話せば分かる……」
「どうかしらねぇ?」
阿国は見た。
信長を蹴り飛ばした後に濃姫が投げた小型の爆弾が、その股間で炸裂した瞬間を。
そのせいで本陣から煙が上がり、織田軍は浮き足立った。
「もういいわ。全軍、お引きなさい。」
ほどなくして濃姫が撤退の号令を出した。
股間を黒こげにされて白目を剥く信長を馬に積み、濃姫はその上に乗る。
「あなたとは…また会いたいわね。」
「そうどすなぁ。うちもいつか…お手合わせしてもらいたいわぁ。」
「うふふ……それじゃあね……」
ドカッ!!と信長の頭を蹴ると、その衝撃で馬が走り出した。
その頃、奇跡的な勝利に呆然とする孫市達だったが、とある事に気付いた。
「いけねぇっ!! お…おいっ、敵陣に急げ!!」
突如孫市が民衆を連れて走り出した。
「まさか…まさか『うちが一番乗りしたから、全部うちのもんどす♪』とか
言いだすんじゃねえだろうなぁ、あのお嬢さんは!? とにかく急げ!!」
ギギギ……
固く閉ざされた門を壊し、開いて中を様子見る。
「しめたぜ。どうやら間に合…」
「よいしょっと。…あらぁ皆さん、終わりましたん?」
いつもの様子で阿国は置き去りにされた馬やら刀やらを並べていた。
「…わなかったみてぇだ。」
「もう、いちゃもん言わしまへんで?」
「いちゃもんって…何だ?」
「うちが一番乗りしたんやから、全部うちのもんどす♪」
頭を抱えるしかない孫市。
「だがなぁ、やつらが撤退したのはあんたのおかげじゃねぇ。」
「あらぁ。それ、うちの策略ですきに。」
「策略? あんたの? 冗談言っちゃあいけねぇって。」
「ほんまどす。あれ、うちが五右衛門様に頼んだんどす。」
「おうよ! さっすがは阿国さん、敵さんを不仲にさせる見事な策略ってぇわけだ!!」
「だ…だがなぁ。それだったら五右衛門のおかげって事に……」
「おかしな事言わはりますなぁ。五右衛門様は、うちの護衛はんやで?」
「お…おいおい……まさか……」
「五右衛門様のもんはうちのもん。うちのもんはうちのもんどす。」
「そうくると思ったぜ…。……おい、五右衛門。てめえは異論ねぇのかよ?」
「何言ってんだ? 阿国さんは、ア、正論しか言ってないってんだぁ!!」
「ほな五右衛門様、あきんどはん呼んでおくれやす。」
「ア、合点でぃ!!」
「ったく……完全にやられたぜ…。」
先程まで勝利の女神に見えていた女性が、今は疫病神にしか見えない孫市だった。
こうして阿国は莫大な戦利品を換金するとさっそく出雲に送り、
新たな旅立ちの時を迎えていた。
「いやぁ阿国さん、大層な額になりやしたねぇ?」
「ほんま、ごっつ儲か……助かりましたわぁ。おおきに、五右衛門様♪
次はどこいきましょか? うち、今度は奈良の大仏はんとか……」
「…………」
「…どないしたんどす?」
珍しく五右衛門が真面目な表情を浮かべ、何やら思案している。
「…阿国さん。しばらく身を隠したほうがいい。」
「あらぁ、どないして?」
「信長が敗退したと聞いたら……たぶん明智の野郎が追ってくるはずだ…。」
「あけち? 誰でっか、それ?」
「説明は後で。あっしに考えがありやす…。さぁさぁ、行きやしょう。」
「あらあら、そない押さんといておくれやす……」
こうして二人は伊賀の抜け道を通り、伊勢への逃走を計る事となった。