第二話 大坂の舞
「おつかれさま。心が震えたよ。特別な気持ちがする。暖かい気持ち。
戦いに明け暮れる俺にまだこんな気持ちがあった事に驚いてる……」
「ややわぁ、また上手言わはって……」
堺に着くなり早速一曲待った阿国の肩に孫市は手を回し、二人は消えていった。
「よくもまぁベラベラベラベラと!」
一方の五右衛門は、残念な事に肩どころかその手すら触れた事が無い。
堺到着早々、孫市に先を越されたわけである。
「…さぁ、ここにでも座ってくれ。」
「はいな、おおきに。」
用意された椅子に阿国が腰掛ければ、孫市もそのすぐ隣に腰掛けた。
二人きりなのをいい事に、さっそく孫市の手が阿国の腰に伸びる。
「あぁ、せやせや。傘、どこ置いたらよろしおす?」
突然阿国が立ちあがったので、孫市の手がスカッと空ぶった。
「あ…あー…そうだな、その辺でいいから適当に置いてくれ。」
「そうどすか?…ほなここにでも。」
「さぁさぁ、長旅で疲れたろう? 座ってくれ。」
「ほな。よっこいしょっと。」
「へへへ……」
「あら、しもた。さっきの舞の御代金もろてへんわぁ。」
スカッ。
「あ…後で俺が集めといてやるよ…。」
「ほんまに? そら嬉しいわぁ。」
「さぁ、座った座った!」
孫市がバンバンと椅子を叩いた。
「ほな。……あ、せやせや。」
「こ、今度は何だい?」
「一揆って、お金かかりますのんやろ?」
唐突な質問に、孫市の表情が固まる。
「そりゃあ……まぁ…なぁ。でも本物の戦じゃねぇし、それなりだがな。」
「なんや、そうですの?」
「今回のは一揆っつうか抵抗っうか……まぁ、資金はほとんど無いぜ?」
いつもの微笑の中にも、孫市はどこか阿国が残念そうに見えた。
「…でもまぁ、金ならあるさ。」
「どこ? どこにあるのん?」
途端に食いつく阿国。
「ここからでも見えるだろ? ほら、そこさ。」
「どこどこ?」
「そこだよ…ほら……っていうか遠く見渡す限りって言ってもいいかな…?」
巧みに阿国の気を逸らしながら、孫市の手が腰に巻き付こうと伸びゆく。
「あ、分かった。」
スカッ…ドテッ。
「あれでっしゃろ?」
立ちあがった阿国が指差し見つめるもの。
それは敵陣だった。
「いてて……そうさ。戦場にあるのは金目のものばかりだ。武器に鎧に馬に米。
要はそれを奪えばいいのさ。」
冷静を装って格好の良い事を言う孫市だったが、もう我慢の限界だった。
向こうを見つめる阿国の尻に直接手を触れようとしたその時。
「ほんまや…あんなにいっぱい………孫市様。うち、てったいます。」
「な、なにを手伝うって?」
クルリと振りかえる阿国と、すぐさま手を引っこめる孫市。
「うちも戦、てったいますきに。」
「な…?」
「その代わり、うちがいわした敵さんのもん…もろてええ?」
「だ、駄目だ駄目だ! 戦利品はみんな平等に分けるってのが決まりだぜ!?」
「そんないぢわる言わんとぉ。な? よろしやろ?」
「いじわるじゃねぇって。しかもそんなの、誰も納得しねぇし。」
「孫市様…なんとか説得できまへんの?」
「お、俺がか!? いやぁ……なんつーか…なぁ…?」
堺衆に『阿国だけ戦利品を歩合制に』と頼みこむ自分を想像し、苦悩する孫市。
「…あきまへん?」
顎に手をやる孫市の隣に座り、阿国はその顔を覗きこんだ。
「な? お願いどす……」
「そうだな……」
孫市の手が、ようやく阿国の腰を捕えた。
幾度も挑戦しただけあって、そのしなやかな腰に触れただけで下半身が反応する。
「…今度は逃げないのか?」
「うふふ…なんの事どす?」
「へっ……負けだ負けだ。分かった。あんただけ特別に頼んでみるぜ。」
「ほんまに? あぁん……うち、嬉しい……」
ポテッと孫市の肩に頭を乗せれば、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「でもただってわけには………なぁ?」
「ほな…参加費払っておきましょか……」
袖から出る白くしなやかな指先がツツ…と孫市の手と重なり、軽く握る。
「ちょっと…高くつくぜ?」
クイッと阿国の顎を指先で摘み、見つめる。
「あん…。ちょっとでええからまけといて……」
触れ合う二つの唇。
鼻と鼻を何度も交叉させ、純粋な接吻を熱く交わす。
孫市が舌を潜り込ませると、阿国の舌がそれを迎え入れた。
孫市がチョンチョンと突っつけば阿国もチョンチョンと突っつき返し、
いじわるで隅に逃げれば探り当てて可愛がるよう催促する。
そんな阿国が可愛らしく、孫市はきつく抱き寄せて自分の上に乗せた。
「あん!……もう…強引なお人…。」
「嫌いかい?」
「…ちゅき。」
『好き』と言うと同時にくちづけを交わしたために、変な発音になってしまった。
「どれどれ……」
その後たっぷりと阿国の唇を堪能し、その上着の内側に親指をかければ
ボロンッと音が立ちそうなほどに迫力ある乳房がこぼれる様にして出てきた。
堪らず凝視する孫市から熱いため息が吹きかかり、阿国は身をよじる。
「あんた…意外とでけぇ…な……」
「大っきいの……嫌い?」
「い〜や。俺は断っ然、巨乳派だ。」
どこか呆然とする孫市が乳房をフニッと軽く揉み、タプタプと左右に揺らした。
「そんな…恥ずかしいわぁ……」
「しかし……これは凄い…。」
両手ですくい、タップンタップン揺らしてみると頂点の桜色が上下に
残像をせわしなく残しながら固く尖っていった。
真っ白でしなやかな首筋に吸いつき、薄い胸板に絨毯的に口づけを落とす。
「吸っても……ええんよ…?」
「おねだりなら、ちゃんと言わないと…な?」
「そ…そんなん……」
「じゃあやめた。吸ってやらねぇ。」
「……す……吸って…吸ってください……」
「何をだ?」
「い…いややぁ!」
「言え。…っつーか言ってくれ。」
乳房を鷲掴みにして飛び出た乳輪の端をレロレロと舐めながら、
孫市が甘い声で震える阿国に命令する。
「…ち…………」
「ち?」
「……ちくび…」
「よし、いい子だ。」
「きゃううぅッ!!」
まるで痙攣したかの様に大きく弾ける阿国の体。
それからは乳首に加え乳房全体を思うがままにむしゃぶりつかれ、
いつしか阿国は孫市の頭を強く抱きしめていた。
絶品の柔らかさを誇りながらもその中にしっかりとした揉み応えのある乳房。
その乳房と絶妙の対比を織り成す綺麗な桜色の乳首と乳輪。
孫市もいつしか我を忘れてそのまろみを揉みしだき、貪っていた。
「ふぅ…。それじゃあ……」
さんざん阿国の乳房を唾液まみれにすると、続いて孫市は帯に手をかけたが、
「こぉら。」
ペチンと叩かれてしまった。
予想外の展開に、さすがに孫市も戸惑う。
「お、おいおい! 冗談だろ?」
「それは払い過ぎどす。」
「まじかよぉ…。」
阿国の胸の谷間に潜りこみ、顔を振って嘆く孫市。
その度に柔らかな乳房に波が走る。
「あん!………もう…しゃあないなぁ……」
「じゃあ…?」
「ちょっと多めに払いましょか。」
そう言うと阿国は孫市の膝から降り、椅子に座ったままの彼の股を
やや広めに開かせ、その間に膝をついて座った。
「おっ……いいのかい?」
「はいな。それに……」
「それに…?」
阿国が孫市の袴を脱がしながら続ける。
「それにこれからその鉄砲つこぉて、親玉撃つんでっしゃろ?
せやったら心も体もすっきりしといた方がよろしおす。」
見ぬいてやがる――。
孫市はそう思った。
たとえこの戦に勝っても、いつか数で押し切れられるのは必至である。
ならば狙撃すべきは敵大将、信長のみ。
「やれやれ、お前さんは大したやつだよ。」
「…何の事でっしゃろ?」
「まぁいいさ。」
「ん〜?」
目をパチクリさせ見上げる阿国だった。
「さぁ…頼むぜ…。」
完全に勃起した肉棒でペチペチと阿国の頬を軽く叩く。
「あん!…や!……こぉら……」
それ以上いたずらをしないように、阿国はパクリと咥え込んだ。
ゆっくりと奥の奥まで飲み込み、強く吸いつきながらチュポンと口から離した。
「おおぉ…上手いねぇ……」
慣れた手付きで阿国の前髪を掻き分けてやり、その頭を撫でてやる。
舌を口内で回すように動かしながら、唇を窄めて丁寧にしごく。
「いい…ねぇ……実にいい……」
全体に満遍なく口づけを落とし、丹念に亀頭を舐め回す。
奥から透明な液体が溢れ出せば、強く吸いついてそれを飲み干した。
「嬉しいねぇ……」
「んふ……ほんまに?」
窪みを舌で追いながら亀頭を一周すると、そのまま裏筋を下っていく。
「ぷは………こっちは…あら、ぱんぱんですやんか……」
脈打つ裏筋を指で押さえ、さらに下に潜りこみ陰嚢の片方を咥え込んだ。
チュー…と強めに吸い込んで、ポコンと解放すれば勃起がさらにビクつく。
もう片方もチロチロとくすぐられ、すぐに咥え込まれた。
チュポッ、チュポンッと左右交互に飲み込まれ、阿国の舌がさらに潜りこむ。
今度は陰嚢も持ち上げ、その付け根をチロチロと舐め回す。
「お、おいッ…!」
「ひふぉひ良いどすか…?」
「あぁ……も…もうっ……」
「あらあら…ほしたらこれでいわしましょ。」
先端に溢れさせる液体を自身の乳首に塗りたくり、そのまま陥没させた。
亀頭そのものが乳房に沈み、柔らかな乳圧が先端を包みこむ。
「おぉっ……す…げぇ……」
「さらにいきますぇ?」
少しだけ舌を口から出すと、ポタ…ポタ……と唾液が勃起に垂れ落ちる。
充分に唾液を絡ませると、阿国は怒張を優しく挟み込んだ。
ヌコッ…ヌコッ…と淫靡な音が立ち、亀頭が谷間から見え隠れする。
「あ……うっ!………く…あッ……もっと強く…挟んでくれ……」
「こう…?」
肌のきめ細かな乳房がさらにネットリと勃起を包みこみ、
乳圧を誇る乳房が竿の隅々まで吸いつくように絡みつく。
「うおっ……も…もうっ……もうっ!!」
孫市が夢中で腰を振れば、阿国は度々突出する先端に口づけを送った。
「で…出るッ……いくぞ…いくぞッ!!」
「ええよ…ええよ…!!」
「ぅおおぉッ!!」
「ぷあっ!!…あっ!…やっ!……やぁっ!!……あ…ああっ!……」
勢いよく飛び出た精液が阿国の顔面を直撃し、口元を汚していった。
さらに溢れ出る精は谷間を溢れ、乳首や乳肉を伝って次々と垂れ落ちていく。
「す…げぇ……まだ出てやがる……」
谷間から勃起を引きぬき、孫市は残りをしごきながら阿国の頬に擦り付けた。
「あん!……も…もうっ…」
「しゃぶってくれ……」
徐々に萎えゆく陰茎を唇に導けば、阿国も何らためらい無しに咥えこんだ。
口内でまったりと転がし、尿道の分まで強く吸い出す。
「あぁっ!!……ま…また……勃っちまう……」
ズズズ…と唇全体で裏筋から陰嚢をもきれいに掃除され、
余韻を楽しむつもりがまた充血を始めてしまった。
「んふぅ……あかんで、もう。」
「ちぇっ、つれねぇなぁ。お…どうしたんだ…?」
「え…?」
まだ両手で乳房を寄せ、先程の姿勢で固まったままの阿国。
豊かな谷間には精液が水たまりを作っている。
「手を離して垂れるとこ、見せてくれよ…。」
「あかんて。」
グイッと阿国の手を解く。
「せ、せやからあかんて…!」
ドロォ……
「ははっ…こいつはすげぇ……」
「もう…あかん言うたやんか…。弁償していただきますきに。」
「は…はぁ?」
「コレ…服に付いたら染みになって取れまへんのよ?」
「そ、そうなのか? でもほら…ほんのちょっとだぜ?」
孫市の言う通り、阿国がとっさに手で防いだため、被害は少ない。
「うち、巫女やさかい…。汚れた服着たらあきまへん。」
「…やれやれ。それじゃあ最高級の巫女袴を用意しますよ。」
半ばあきらめ状態の孫市が、阿国に手拭いを手渡した。
「ほんまぁ? あ、あとできたら桜色の布も一枚もろたら嬉しいわぁ♪」
「分ぁった分ぁった、袴と布な。…そんじゃ調達してくるか……」
「ほんまおおきにぃ。」
「おっと、そうだ。あんたに頼みがある。」
「何でっしゃろ?」
「俺はたぶん…いや、確実に一度戦場から離れる。
その間、皆を鼓舞してやってくれないか?」
「はいな。うちの舞で堺に華咲かせましょ。」
「ありがとよ…」
「あ、阿国さん! どこ行ってたんですかぃ?」
「うち?…休憩してましてん。」
その後、阿国は町中で五右衛門と合流していた。
「ありゃりゃ、なんですかそれ。袴に桜の花びらの形の……」
「あぁ、これ? 可愛いよろしやろ? ちょいと布で模様付けましてん。」
「へえぇ…。ありゃりゃ、あとそのでっけぇ荷物は何ですかぃ?」
「これ? これは新品の巫女袴ですきに。もらいましてん。」
「じゃあこの前の財布同様、出雲に送るよう手配しときやしょうか?」
「あらぁ、嬉しいわぁ。ほな、お願いします。」
「合点!」
「あぁ…それとうち次の戦、参加しますきに。」
「ま、まじですかぃ!?」
「堺に一花咲かすんどす。」
そこに孫市が現れ阿国の肩に手を回す。
「そうさ。俺達の勝利の女神の役を引きうけてくれたってわけだ。」
「て、てめぇっ! 阿国さんに馴れ馴れしくすんじゃねぇ!!」
「五右衛門様はどうしますのん?」
「じゃあ俺様も、ア、大暴れするぜぇ〜!!」
「うふふ…頼りにしてますぇ?」
「ア、合点〜だぃ!!」
傾奇者特有の大袈裟な身振りで張りきる五右衛門を、阿国は満面の笑みを
浮かべながら、そして孫市はどこか憐れみを込めた表情で見つめていた。
その時、遠くで爆発音が鳴った。
ついに信長軍の侵攻が始まった。