蘭丸と分かれた後、トコトコ進む阿国の目の前に再び関所の姿が見えてきた。  
入口から堂々と入れば、兵士達が出迎えるようにして整列している。  
「そう簡単に逃げきれると思いましたか?」  
その声の主を辿れば、兵士達の中心で馬に乗る武将らしき男がいた。  
「ええお人や……優しさがにじみ出てるわぁ…。  
 こないなしゅっとしたお人もよろしいなぁ……」  
「身の安全は約束しましょう。さぁ、あきらめなさい。」  
「あんさんが光秀様どすな?」  
完全に囲まれているというのに、懐をゴソゴソと探る阿国には  
どこか余裕というか自慢気というか、少なくとも焦りは見られない。  
すると彼女は一通の手紙を取り出し、馬上の光秀に手渡した。  
「これ、蘭丸様からもろてます。」  
「ほう……通行許可証…?」  
「はいな。……ほな、失礼します。」  
阿国はペコリと会釈し、堂々と先に進もうとした。  
どうやら彼女の頭の中では、通行許可証を持つ人=偉い人らしい。  
 
だが兵士達が囲いを解く様子は無く、守備頭も道を譲る気配は無い。  
「…残念ですが、やはり先に進む事は許可できませんよ………阿国さん。」  
「うち、阿国ちゃいます。」  
「これを見ても…果たしてそう言えますか?」  
蘭丸に渡されたという通行許可証を、光秀は阿国に返した。  
 
『 光秀様へ  
 阿国さんは決して悪人ではありません。私が保証します。  
 だからといって、阿国さんが先に進む事は許可すべきではありません。  
 この意味は光秀様もお分かりになると思います。  
                                     蘭丸   』  
 
「あらぁ……もろやんか……」  
「…………」  
「あかんわ…天然には勝てへん……」  
自分が天然である事を知らないという事が、真の天然であるのだが。  
「いえ、貴方の身の安全を考えれば当然でしょう。この先には……」  
「よっしゃ、強行突破どす。」  
「何!?」  
「えい!」  
豪快に傘を開き、光秀が乗る馬の鼻っ柱を叩きつけた。  
痛みと驚きで、光秀を落としかねない程に馬が暴れ狂う。  
「ほな、さいなら。」  
「くっ!!…ま、待ちなさい!!……どうっ!どうっ!!……」  
美しく脆いモノを取り扱う時、誰もがその力加減に戸惑い、躊躇する。  
阿国を取り囲んでいた兵士達もそのような感覚だったのだろう。  
誰も阿国を取り押さえる事ができず、逆に近づかれれば離れる者もいた。  
厚い包囲があっけなく突破され、脱兎のごとく阿国は小さくなっていった。  
 
「くっ…代わりの馬を!…彼女を追います!!」  
蘭丸と光秀が心配している事。  
それは堺で狼藉を働いた阿とされる阿国ではなかった。  
彼女の進む先に待ち構える一人の忍。  
冷酷無比なその男は、命とあらば女の命でさえ平気で奪う。  
光秀や蘭丸は、そんな彼の生き方が許せなかった。  
 
光秀は馬を走りに走らせた。  
すると小さな橋の上で倒れる阿国と、青黒い衣服を纏った忍の姿が見えてきた。  
忍独特の奇妙な武器が、阿国の首元に添えられている。  
 
「……殺…」  
「待ちなさいっ、半蔵殿!!」  
「…光秀公……」  
「間に合った…ようですね……」  
「主の命なり……」  
半蔵がグイッと髪を掴めば、気を失っている阿国の口から血が流れ落ちた。  
その白い首筋に、再び刃が当てられる。  
「いけません!」  
「何故……」  
「……その女性には、まだ聞く事があります。」  
「…………」  
「よろしければ半蔵殿のお力をお借りしたいのですが……」  
「…………」  
「まぁ、無理ならば無理で結構ですが?」  
「……承知。忍に不可は有らず……」  
挑発的に語る光秀の賭けは成功した。  
忍としての誇りを汚すまいと、半蔵は刃を引いたのだ。  
 
(これでいい…。これでしばらくは半蔵も命を奪うまい……)  
 
こうして阿国は光秀の陣へと連れ戻され、監禁される事になった。  
阿国が五右衛門とはぐれてもう半日。  
間もなく、日が暮れようとしている。  
忍がその能力を最も発揮しやすい、闇夜が近づこうとしていた。  
 
 
…グチュッ……ブチャッ……グチュ……グチャッ…ビチャッ……  
「…あひっ!……やッ!!…ぃやぁっ!……ひいっ!!……」  
 
仄暗い部屋の中に、湿った淫靡な音とくぐもった悲鳴が響く。  
 
「名は……」  
もう何度目だろうか、阿国に同じ質問がされた。  
「…せ…やから……」  
全裸で四つん這いにされた阿国は半蔵の忍術により体を動かせず、  
その秘部には勃起した男性器を象ったものが挿入されていた。  
「臨…兵…闘…者………」  
「…いや…や……ま…また……」  
どっしりと腰掛ける半蔵が怪しげな呪文を唱えるたび、その擬似陰茎が――  
「……烈…在…前…」  
 
…ズプンッ!!…ブプッ!…ブチュッ!……ギュプッ!!……  
「ひっ…ぎぃっ!!」  
 
まるで意志を持ったかの様に蠢き、膣内を掻き回した。  
無残に貫かれるたびに愛液を飛沫かせ、太腿を伝い流れ落ちたものは  
まるで失禁したかの様にして床で大きな水溜まりを作っている。  
 
半蔵は一旦術を解くと、阿国の頬を掴んで再度質問した。  
「名は……」  
「…阿国……い…出雲から……」  
「真を語れ……」  
「ほ……ほんま…て……」  
「臨…兵…闘…者………」  
「ひっ……い…いややっ! もういややっ!!」  
恐ろしい程の快楽に恐怖し、阿国は必死に抵抗しようとするが体が動かない。  
 
唯一動く首を大きく左右に振って拒むが、  
「……烈…在…前…」  
「やっ、ぃやぁーーーっ!!!」  
人間の腰の筋力では不可能な程の凄まじい陵辱が始まった。  
擬似陰茎が残像を残しながら激しく阿国を穿ち、その腰ごと揺さぶる。  
その凄まじさから一回毎の抜き差しの音はもはや聞こえず、  
ブチャブチャブチャブチャと一定の滑った音のみを紡いだ。  
 
「…ひっ…ぎ……シ…あ……あひっ…あっ…ひいっ!!…」  
阿国は半分白目を剥き、その口からは止めど無く涎が垂れ滴らせる。  
「あ…っひ……あっ…あああっ…ああッ!!」  
何度目かの絶頂に無理矢理堕とされ、阿国は大きく腰を跳ねさせた。  
前では涎が、後ろでは愛液が、糸を引いて垂れ落ちていく。  
「…名は……」  
半蔵にとって、この質問はさほど重要ではなかった。  
単調な質問を幾度も繰り返し、その度に陵辱を激しくしていく。  
そうすれば女は狂い、肉欲に溺れ、全てを話す。  
その後で殺せばよいのだから。  
 
「…も…もう……」  
 
半蔵は一仕事を終えたと思った。今まで拷問してきた数多くの女は、  
この後『何でも話すから』と言って陥落したからである。  
「…何でも言いますきに………半蔵様の…おくれやす……」  
「……!?」  
「こんなおもちゃ…いやや……本物…欲しい……」  
「ふん……」  
半蔵が鼻で笑った通り、稀にこういった女もいた。  
 
それは女の忍、すなわちくノ一達である。  
彼女達は屈服したフリをして自らの秘部に陰茎をねだり、  
自らの膣内に仕込んだ毒を用いて死に至らしめようとする。  
「我に隙有らず……」  
用心深い半蔵は床に溜まった液体を拭って自らの陰茎に塗りたくると、  
阿国の背後に回って尻肉を思いきり強く左右にこじ開いた。  
「ぃやんっ…!!」  
「自らの戯言……」  
いまだ突き刺さる擬似陰茎は抜かず、その上にある窪みに亀頭を添える。  
「えっ!?…そっ…そっちは……!!」  
「…後悔すべし……」  
「そんなん…む…り……あぁッ…ぎ………ひぃッ!!…か…は…!!」  
無惨にも前後の穴を塞がれ、阿国はカチカチと歯を鳴らした。  
 
モチュ…ヌチュッ…ヌチュ……  
「んひいあぁああぁぁあッ…!!」  
ゆっくりと半蔵が勃起を引きぬくと阿国は吐息を漏らし、  
 
ズプンッ!!!  
「きゃうぅッ!!」  
一気に貫けば、背筋を反らして体を震わせた。  
 
「…お…尻……擦れ…るうぅ……」  
半蔵が肛門内を下に向けて突き込むと、肉越しに擬似陰茎と擦れる。  
「んひぃッ!!……か…堪忍……堪忍してえぇ!!」  
半蔵は腰を律動させ、ねじり込ませるかの様にして尻穴を責め出した。  
「あうっ!…ひんっ!…あっ、あっ!!…ぃやんっ!…やっ!!…あぁッ!!」  
 
「臨…兵…闘…者…皆…陣…烈…在…前…」  
背後から容赦無く尻を突き込みながら再び呪文を紡ぐと、  
擬似陰茎が半蔵の調子に合わせて交互に阿国を貫き始めた。  
つまり阿国は絶えず貫かれる事になり、  
「あッ!あんっ!あっ、やっ、やん!!ひいっ!やッ!いや!!やぁっ!!」  
まるで狂ったかの様にして泣き叫ぶ阿国。  
もういつ自分が絶頂を迎えたのかすら分からず、ただただ快楽に溺れていく。  
 
半蔵は好き勝手に阿国の肛門を蹂躙し、最後は奥深くまで勃起を突き込んだ。  
そのまま強烈な締まりに任せて射精を待つ。  
「…爆ぜよ……!」  
「やあぁっ!!!」  
次々に注ぎ込まれる精液に、阿国は大きく背筋を反らして絶頂に至った。  
「お…尻………熱…ぃ………」  
時々半蔵が腰を震わせると、その度に勢いよく精が放たれた。  
最後の一滴までじっくりと注ぎ込み、半蔵がその余韻を楽しんでいると、  
「…半蔵様……お掃除…させておくれやす……」  
泣き入りそうな声で阿国が懇願してきた。  
 
しばしの静寂の後に半蔵が呪文を唱えると、阿国の体に自由が戻った。  
ジュポン…と勃起を引き抜き、半蔵は大きく足を開いて椅子に腰掛ける。  
「あぁん…嬉しい……」  
力の入らない体を引きずらせ、うっとりとした目で股間に潜り込む。  
「ふん……」  
これも今まで相手してきたくノ一に見られる傾向だった。  
屈服したフリをして、男の最大の急所を噛み切るための芝居。  
しかし半蔵はそれでも術を解いて阿国を解放した。  
なぜならば先程金縛りの術を解いた際、『歯を立てれば顎を砕く』という  
呪法をかけたからであり、言わば彼なりの最後のお遊びといった所だった。  
 
咥えこんだ次の瞬間、この女は顎を砕かれのたうち回る――。  
 
そう確信していた半蔵は阿国を股間に導きながらも小刀を手にしようとした。  
だが、その予想は外れる事となる。  
「へぷぁ…んぷ…んふ……んふ♪」  
満面の笑みを浮かべながら、阿国は白く汚れた勃起に口づけを送っていた。  
「…………」  
「…ん…ぷぅ……うち…幸せぇ……」  
奥の奥まで咥え込み、強く吸いつきながら尿道に残る分をも味わった。  
ねっとりと舌を這わせながら裏筋を下り、陰嚢をも丸呑みにする。  
「…きもひよろひおふか?」  
陰嚢をチロチロと舌先でくすぐられながら真っ直ぐな瞳で見つめられ、半蔵は戸惑った。  
今までこのような態度を取った女はいなかったからである。  
そうする間にも阿国は頬に摺り寄せ、まるで子猫の様にしてねだる。  
「もっと…もっとぎょうさん可愛がっておくれやす……」  
ポッ…と頬を染め、恋人にするかの様にして亀頭にチュッと口づけを送る。  
「あぁん、なんやドキドキする……」  
「…………」  
その裏表の無い澄んだ瞳に見つめられ、半蔵の鼓動がさらに速まった。  
 
「…半蔵様……」  
その時、天井裏から女性の声が聞こえた。  
「如何した……」  
「家康様が一度戻られるように、と。」  
「……承知。」  
天井裏の気配が消えた。  
「半蔵様…どっか行かれてしまうんどすか?」  
「主の元なり……」  
 
「いつ…お仕事からお戻りはるんどすか…?」  
「……明け方頃…。」  
「ほんならうち、ここで半蔵様のお帰りお待ちしてます。」  
「何…?」  
再びポポ…と頬を染め、両手を添える。  
「いっぱい可愛がってもらうんどす…♪」  
「…光秀公に風呂を用意させる……」  
「あぁん…嬉しい……」  
半蔵の胸元にポテッともたれかかり、頬を摺り寄せる。  
「すぐに戻る……」  
そう言うと、半蔵は闇に消えた。  
「おきばりやすぅ。…………さてと……」  
 
 
「阿国さん……」  
半蔵が消えて十分程経ってから、監禁部屋に入ってきたのは光秀だった。  
「光秀…様……」  
意気消沈した阿国が目を合わせるが、すぐに俯いてしまった。  
「すみません……しかし、こうしなければ貴方は……」  
いまだ全裸のままの阿国の体に、優しく布をかける。  
「よう…分かってます…。」  
「風呂を沸かしてあります……お入りなさい…。」  
阿国はコクンと小さく頷くと、光秀に導かれていった。  
 
ザバ……ザバァ……  
 
「半蔵……やはり私は…貴方を認めない……」  
脱衣所近くで、光秀が改めて半蔵のやり方に怒りを覚えていたその時だった。  
風呂場から音がまったく聞こえなくなった。  
 
「…まさか!!」  
人が死のうと思えば、いくらでも方法はある。  
光秀は急ぎ風呂場に駆けつけ、何ら躊躇せずに扉を開いた。  
「阿国さんっ!?」  
「…光秀…様……」  
うなだれる様にして座り込む阿国と目が合う。  
「うち……うち……」  
「阿国…さん……」  
「うち…汚い?」  
「えっ?」  
「あの人……うちの事…淫売や…売女や言うて……」  
「…………」  
「散々好きにされて……」  
ポロ…ポロ……とその目からは大粒の涙が溢れ出て、  
それを手の甲で拭うたびに豊かな谷間が揺れる。  
「うち…汚い…?」  
「…いいえ。貴方は美しいです。」  
「ほんま…?」  
「ええ。どのような目に会おうとも、貴方は貴方だ。」  
「…光秀様…お願いどす……うちを…うちを綺麗にしておくれやす……」  
「私で…構わないのですか?」  
「光秀様が……ええんどす……」  
阿国はうっとりと目を瞑り、唇を差し出した。  
「……分かりました。」  
二人の唇が、触れ合った。  
 
 
言った通り、半蔵は明け方に戻ってきた。  
「…シク…シク……グスンッ……」  
「如何した……」  
すると阿国は衣服や髪を乱し、すすり泣いていた。  
「クスン……半蔵…様……半蔵様ぁ…!!」  
そのまま阿国は半蔵に抱きつき、胸元で涙をさらに流した。  
「うち……うち……」  
「述べよ……」  
「いやや…言うたのに……」  
「光秀公か…!?」  
コクッと小さく頷けば、大粒の涙が滴り落ちて半蔵の胸元に染みていく。  
「最初は優しい言葉をかけてくれて……でも急に襲われて……。  
 大人しくせんと殺すて言われて……いっぱい…体中触られて……」  
「……殺…」  
「無理矢理…何度も何度もイカされて……」  
「滅殺…!」  
「それだけやない……その後も散々胸とお口も犯されて……」  
「抹殺!!」  
息を荒げる半蔵は、部屋の施錠も忘れて光秀の部屋へと向かった。  
「………おきばりやす♪」  
 
自室で仕事に取り組む光秀の背後に、突如現れた一人の男。  
「光秀公……」  
「半蔵殿!?」  
半蔵が鎖鎌を構え、ジリジリと間合いをつめていく。  
「どうやら本性を現したようですね。……いいでしょう。  
 阿国さんの件もある。あの人は、貴方には渡しません!!」  
「……殺!!」  
仕組まれた決闘が始まった。  
 
すっかり日の昇った抜け道を、トコトコと進む巫女が一人。  
「あぁん…ええお天気さんやわぁ……」  
その背にはどっさりと今回の戦利品が背負われている。  
「この辺でよろしおすな。ほな品定めといきまひょか♪」  
光秀と半蔵が死闘を繰り広げる中、阿国は二人の部屋を物色し放題だった。  
 
まずは光秀の部屋で拝借した袋から開ける。  
「いやぁ…これ、お洋服やんか。でも…えらい裾短いし、胸なんか割れたあるし…。」  
しかも靴から下着まで、一式揃って袋に詰まっていた。  
「こんなん持ってて……光秀様、何する気やったんやろ…?  
 まぁええか。かいらしいし、どっかで使えるかもしれんし。」  
続いて半蔵の部屋で発見した袋をゴソゴソと開封した。  
「なんやこれ……巻物やんか。ご…ごりん?…五輪書…?」  
その時、阿国に素晴らしい予感が閃いた。  
「なんや秘宝の在り処やったり!?」  
シュルッと封を解き、急ぎ内容を確かめるが、  
 
『五種類すべて装備すると…』  
 
のみであった。しかも五巻とも。  
「いやぁ……あ〜あ、しょーもな。」  
ポイッと捨てようとしたまさにその時だった。  
「阿国さぁーーん!!」  
「…あらぁ、五右衛門様。どこ行ってはったんどす?」  
「どこって…いやぁ……その…まぁいいじゃないっすか。」  
下忍相手に大苦戦していたとは、とても言えない五右衛門。  
 
「あれ…阿国さん、何持ってるんですかぃ?」  
「これ?…なんやしょーもない巻物どす。拾てんけど…。」  
「へぇ……ってこれ、五輪書じゃねえっすか!!」  
「何それ?」  
「ご存知ねえんすか!? 五輪書といえば、日本中の武士達が欲して……」  
「へぇ、そうなん。」  
全く興味を示さない阿国だが、  
「五冊揃ってるから……五…いや、六十両ってとこだな。うん。」  
「ほっ、ほんまにっ!?」  
途端に食いついた。  
「その手には乗りまへんで?……嘘…でっしゃろ?」  
「あっしが阿国さんに嘘をつくわけねぇっす!」  
「いやぁん……ごっついわぁ。」  
と巻物に頬擦りしていた阿国だったが、疑問が一つ浮かんだ。  
「そういえば今、どっから出てきやったんどす?」  
「抜け道の抜け道ってやつでさぁ。関所も迂回してきやした。」  
「なんでそんなん知ってはったん?」  
「え!?…いや…それは………むっ?」  
阿国が歩いてきた道から、忍者達が迫ってくる。  
五右衛門にとっては、話題を止めると同時に株を上げる絶好の機会。  
「おらっしゃああ!!…行けえ!!  
 ここは俺に任せて、早く逃げるんだ!!」  
 
コクンと頷くと、よく分からないが言われるがままに阿国は走り出した。  
逃げろと言われた疑問や何故忍者達が迫り来るのかは、ほぼどうでもいい。  
 
ただ、町を見つけて五輪書を売り飛ばすために、阿国は走り出した。  
 
 

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