女の瞳の奥に、半蔵は確かに闇を見た。
戦乱の世。女でありながら、剣で身を立てようとしたその理由は知らぬ。
名だたる猛将達を打ち倒すだけの腕を、どれほどの修練の果てに得たのかは、知らぬ。
初めて相まみえたのは、半蔵の主が今川に決別した、桶狭間の戦でだった。
今川の追手として主に襲いかかった、名も知らぬ女。
女は恐るべき技の冴えを見せ、半蔵をうち破った。
無名の武士にとっては大手柄であろうに、女の表情に浮かれた色は無かった。
義元には似合わぬ。美しく研ぎ澄まされた剣技も、影を孕んだ瞳も。
天下に近い方へつき、生きのびるのが戦国のならい。
これほどの力を持つ女は、いずれ徳川に身を寄せることになるのだろう。
そんな半蔵の確信どおり、やがて女は今川家を去り、武田家を失い、半蔵の主の下へ流れ着いた。
柔肌を返り血に濡らし、戦場に立つ女。
顔色ひとつ変えず敵を屠る様に、自分と同じ匂いを感じていた。
女とふたり闇を駆ける夢すら、半蔵は見た。
だが、道は分かれていた。主の天下取りも目前となった上田城攻略のさ中、
女は突如半蔵に刃を向け、真田に降った。
大坂夏の陣。豊臣の将、真田幸村の配下として出陣した女と、半蔵は三たび対峙した。
それが、つい数刻前のことだった。
「……ころして……」
掠れた声で、女は半蔵に請う。後ろ手に縛られ、仰向けで床に転がされている。
もともと肌を覆う部分の少なかった衣服は、其処此処が破れて既に用をなさない。
「何故、主を裏切った」
半蔵は女の言葉に応えない。
女の体に覆い被さると、冷たい乳房にじわりと五指を食い込ませ、抑揚の無い声で問う。
「……わからない」
女は僅かに眉をひそめる。確かな苦痛にか、自らの不確かな答えにか。
「けど、徳川の天下とは、違う光を…見たのかも知れない」
「光、か」
半蔵が虚空に吐き出すように呟いた。
「……!ひぁっ……!!」
何の用意も無しに貫かれて、女の喉から軋むような叫びが上がる。
「やめ…て、いや……殺して…!」
「敗れた時から…否、女の身で剣を手にした時から、覚悟はしていたはずだ」
半蔵は、乾いたままの女体に容赦ない動きを送り込む。
「どう、して……?これは、罰、なの……?」
半蔵の体の下で為す術もなく揺さぶられながら、女が問う。
それには答えず、半蔵は抽送を繰り返す。
「…く…っ…お願い、やめ…て……!やっ……」
罰などではない。敗者の女が、勝者の嬲りものにされるなど、ありふれた出来事だ。
では自分は、この陵辱を楽しんでいるのか?暗く醒めた頭の奥で、半蔵は自問する。
裏切り者を主に差し出すこともせず、人に知られぬ場所で犯しているのは、欲望の故か?
肉のこすれあう部分が、徐々に湿り気を帯び始める。
「……やめ、て……あぁ……や…ぁっ……」
わずかでも苦痛を和らげるための、哀れな女体の理。
だが悲鳴の中にも甘く濡れた響きを感じ取り、半蔵は唇の端で薄く嗤う。
ほぐれつつある女陰は、侵入者の強張りに柔らかくまとわりつく。
不本意な体の反応が悔しいのだろう、女は目を閉じて顔をそむけた。
噛みしめた唇は、己の内から湧きおこる熱い呼吸に、あえなくこじ開けられてしまう。
「…っく、は、あぁっ……」
半蔵はことさらに単調な抜き差しを続ける。
体の摩擦に過ぎぬ行為に、全身を朱に染めた女を見下ろす。
「いや……だめ…っ……」
拒絶の言葉とはうらはらに、女の内壁は更なる愉悦を求めて蠢く。
突き上げを激しくしてやると、迎えうつかのごとく喰い締める。
「あ、あ、あ、あぁぁ……!!」
女の口から、絶望的な嬌声が漏れた。
戦うために磨き上げられた、精美な刃にも似た女の体。
今は自由を奪われ、望まぬ男を受け入れながら、
陸に打ち上げられた魚のように惨めにのたうつ。
接吻も、愛撫も与えられず、ただその身を抉られる感覚に、翻弄されている。
「っあ…はぁっ……!あ…んんっ…!」
一部分にのみ与えられる刺激に、未だ全身が馴染んでいないのだろう。
女は苦しげに眉根を寄せ、顔を左右に振っている。
「あ…!いや、ああぁ、だめ、もう、だめぇっ……!」
だが、紅ひとつ施されていない唇は蕩けた声を吐き出し、女の陥落が近いことを告げる。
一度、二度。半蔵が大きく動いた。
肉の凶器に最も深い場所までを突かれて、女は大きく身を仰け反らせながら達した。
「んぁ、あ、ひあぁぁぁ……っ!!」
荒い息をつきながら、女は半蔵を見上げる。
「これで……気が済んだ……?」
屈辱に涙をにじませ、それでも強い眼差しで見据えてくる。
半蔵は無表情にそれを受け止めると、貫いたままの女を再び責めはじめた。
「!…や…っ、どうして……!」
半蔵が未だ果てていなかったことに気付き、
女はこの残酷な交わりが続く予感に身を震わせる。
「こんなの、こんなのいや……!んっ……」
一度絶頂へ導かれた体は、早くも女の意志に関わりなく溶けはじめた。
半蔵の陽根にやわやわと吸い付き、新たな悦びを招き入れようとする。
濡れそぼった秘壷が、半蔵に甘やかな痺れを伝えてくる。
半蔵が腰を引くたびに、泡立つ愛液が掻き出され、床を汚す。
「ひぅ、あぁ、あ…っ!……あ…はぁ……!」
口を開けばあからさまな悦びの声が上がり、声を殺せば粘つく音が室内に響く。
半蔵は女が逃げ場を失ったことを見て取ると、さらに追い込んでいった。
先ほどとはうってかわって、抽送に緩急をつける。
深く貫くと、上ずった喘ぎが漏れる。
浅く引くと、花弁が追いすがるように絡みつく。
「あ、やぁっ、あぅ……んん!!」
時おりかき回すように動いてやると、髪を振り乱して身悶える。
その場所から生まれる重苦しい熱は、半蔵の全身にも広がっていた。
恥辱の果てへと女を導きながら、自らも情熱の伴わない快楽を貪る。
戦場ではけして目にすることの無かった女の泣き顔を見下ろすうちに、
体の深奥からこみ上げてくるものがある。
「あぅ…!だめ、また、そんな……っ!」
半蔵の突き上げが一段と強くなり、女は切羽詰まった声音で叫ぶ。
「ああっ、や、あぁ、あはぁっ!んはあぁぁっ……!!」
女が昇りつめたのと同時に、半蔵は自分の剛直を引き抜いた。
そのまま、女の顔めがけて精を放つ。
「!?……いやっ…!!」
一瞬呆然とした女が、すぐに気付いて懸命に顔を振る。だがその程度で振り落とせるはずもない。
半蔵は女の髪を掴み、強引に引き上げる。
仰向けのまま顔だけを起こされ、女はわずかに苦悶の表情を浮かべる。
「どうして……?」
女が繰り返す問いに、半蔵は答えを持たない。
ただ、女が光を見たと告げた瞬間に、己の中の闇が猛り狂ったのかも知れない。
女の中に闇を見た、初めて刃を交えたとき、確かにそう感じたはずだった。
あるいは、自分もまた女の中に光を見たのか。
女が天下を捨て、真田に身を投じたように。
自分も光に焦がれ、愚かしい夢を見たのだろうか。
半蔵は自分が汚した女の顔を凝視する。
覗き込んだ瞳は、闇でも光でもなく、ただ半蔵の双眸を映し返していた。
その下に暴くものなど何も無いことを恐れながら、半蔵は女の肌に冷たい指を這わせる。
そうして行く末の知れぬ交わりに、己を没入させていった。
(終)
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